地方自治体における ESCO事業の導入 京都大学総合人間学部足立ゼミ

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地方自治体における ESCO事業の導入 京都大学総合人間学部足立ゼミ (宮)京都大学総合人間学部足立ゼミ3回生の宮武です。(佐)佐藤です。(二人で)よろしくお願いします。 私たちは省エネルギーとCO2削減を実現するESCO事業の地方自治体における導入について、大阪府、京都市の実例などをもとに、その問題点、そしてその解決策について研究しました。 @

発表の流れ ESCO事業の説明:なぜESCO事業なのか? ESCO事業者側からの指摘 問題点 解決策の提示(大阪府の取り組み、それを踏まえた独自の策) この発表では次のような順番で論じていきます。 まず私たちがどのような問題意識からESCO事業に着目したのかを述べます。 次にESCO事業者側からの指摘を紹介します。 そして、そこからわかった問題点を明らかにし、それについて、大阪府の提示する解決策と、 それを踏まえた私たち独自の解決策を提示します。 @

ESCO事業の説明①:その仕組み ESCO=Energy Service Company 省エネルギーの実現により光熱水費を削減 コンサルティングから工事、管理に至る包括的サービス それまでの環境を損なうことなく実施可能 光熱水費 顧客の利益 削減額 光熱水費 顧客の利益 ESCO事業者の利益 光熱水費の削減 返済分 金利 まず、ESCO事業とはいかなるものなのか。その説明をしていきます。 ESCOとはEnergy Service Companyの略で、ESCO事業は省エネルギーを実現することで @ 光熱水費の削減を図るものです。 事業者は、コンサルティングから工事、管理に至るまで包括的なサービスを提供します。 そして顧客は、この浮いた光熱水費の範囲内で @ 工事にかかる費用・費用調達にかかる金利・ESCO事業者の利益分をまかないます。それ以外の部分は顧客の利益となり、工事費やサービス料の支払いが完了した後には @ 削減額全てが顧客の利益となります。つまり事業によって生まれたお金をその事業への対価に充てることで新たな負担を必要としない省エネルギー事業が可能になっているのです。 また光熱水費のエネルギー量などの削減量は @ 契約上保証され、もしそれを下回った場合でも顧客に不利益が及ばないようになっています。@ 初期投資 削減量を保証 ESCO事業実施前 ESCO事業実施後

シェアード方式では顧客の初期投資はゼロに ESCO事業の説明②:契約方式 ①ギャランティード・セイビングス方式 ②シェアード・セイビングス方式 ESCO事業者 ESCO事業者 パフォーマンス    契約 資金調達者 パフォーマンス    契約 債務返済 サービス料の支払い サービス料の 支払い 顧 客 融資 顧 客 融資 資金調達者 金融機関 金融機関 次にESCO事業の契約方式について説明します。 契約方式2つの方式があります。 この2つの方式は工事資金の調達を誰が行うかで区別できます。 ギャランティードセイビングス方式では @ 顧客が、シェアードセイビングス方式では顧客に代わって @ ESCO事業者が資金調達を行います。 つまり、 @ シェアードセイビングス方式では顧客に初期投資の負担がかからないことになるのです。 @ 債務返済 シェアード方式では顧客の初期投資はゼロに

なぜESCO事業なのか? 初期投資ゼロでもCO2削減が可能な ESCO事業が有効 地球温暖化問題の存在 7.8%増加 13.8%もの 削減が必要 地方自治体も積極的に 排出削減に取り組むべき しかし 地方自治体は 財政難 私たちはこのESCO事業を通して、地球温暖化の原因となるCO2排出量の削減を目指しています。 京都議定書で日本は1990年の値から温室効果ガスの6%の削減が義務付けられていますが、 @ 逆に排出量は増加し、目標の達成には @ 13.8%もの削減が必要となるのです。 これほどの削減のためには、@地方自治体も積極的に排出量削減に取り組むべきであることは言うまでもありません。 しかし、@地方自治体は現在財政難に苦しむところも多数存在しています。 そこで@初期投資をかけることなくCO2の削減が可能となるESCO事業を地方自治体が導入することが有効であると私たちは考えたのです。  @ 京都議定書での削減目標 →1990年 より6%減 初期投資ゼロでもCO2削減が可能な ESCO事業が有効

ESCO事業のメリット 省エネルギー、光熱水費削減を実現 →CO2の削減が可能! ※光熱水費の削減額は事業者が保証 初年度から顧客も利益を得られる 顧客の初期投資が必要ない 以上のように、ESCO事業は省エネルギー、光熱水費の削減が事業者の保証つきで可能であり、更に初年度から顧客も利益が得られます。そしてシェアード方式の場合顧客の初期投資は全く必要ありません。 つまり@財政難に苦しむ自治体にとってはシェアード方式のESCO事業は大変魅力的だといえるでしょう。 これにより従来の事業に比べて比較的気軽にCO2削減を手がけることができるのです! @ 財政難に苦しむ自治体にとって 特にシェアードESCO事業は魅力的

“事業者が”参入しやすい環境づくりが必要 問題点の概観 ESCO事業はそもそも事業者の負担が大きい 公募というシステム シェアード方式のESCO事業 事業採算性の低い中小規模施設 つまりESCO事業は構造上、顧客のメリットを重視して事業者側の負担が大きくなる仕組みです。それに加えて自治体の「公募」というシステム、また資金回収がより不利になるシェアード方式を自治体が多く採用しているといった事実も自治体におけるESCO導入の障害となっており、さらに対象が採算性の低い中小規模施設となると、さらに導入は困難になります。 従って地方自治体へのESCO事業の導入のためには、 @ 何より事業者が参入しやすい環境を作ることが中心の課題となるのです。 @ “事業者が”参入しやすい環境づくりが必要

ESCO事業者側からの指摘 提案書作成の負担大 資金調達負担、資産保有リスク 計測検証の後年度長期負担 過当競争による利益の圧迫 ヒアリングで得られた指摘 提案書作成の負担大 資金調達負担、資産保有リスク 計測検証の後年度長期負担 過当競争による利益の圧迫 では、肝心の事業者はどのように考えているのだろうか!? まず大阪府の調査では@提案書作成の負担の大きさ、計測検証の負担などが挙げられていました。 また、私たちの行ったヒアリングでは@自治体の事業の魅力の乏しさということが語られ、他にシェアード方式での資金調達などの負担が挙げられました。そのため、@今後は民間の事業を中心に実施していきたいとの姿勢を示していました。 @ 「(民間の事業と比較して)自治体事業は魅力に乏しい」 受注できるかどうかわからない公募の参加に多大な労力がかかる (自治体事業で多い)シェアード方式では負担が大きい 「今後のESCO事業は民間案件を中心に考えている」

問題点① 中小規模施設への導入 = 採算性が悪く、事業者にとって魅力が小さい ESCO事業 光熱水費削減額より工事費捻出 使えるお金の差 中小規模施設 大規模施設の 光熱水費 削減後の 光熱水費 顧客の利益 返済分 金利 ESCO事業者の利益 延床面積10000㎡以下 年間光熱水費1億円以下 中小規模施設の 光熱水費 削減後の 光熱水費 顧客の利益 金利 ESCO事業者の利益 初期投資 返済分 初期投資 それでは大阪府、事業者の意見などから得られた、地方自治体へのESCO事業の導入に向けた問題点を述べていきます。 まず始めに挙げられるのが中小規模施設への導入です。これまで述べてきたように、@ESCO事業は光熱水費より工事費を捻出する仕組みです。一方、@ここでいう延床面積10000㎡以下、年間光熱水費1億円以下の中小規模施設は@もともと光熱水費が少なく、それでいて@ESCO事業にかかる工事費が単純に少なくなるわけでもありません。@つまり工事費の捻出が難しく@事業者にとって採算性が悪くなり、魅力の少ないものとなるのです。 結局事業者が二の足を踏み、中小規模施設にはESCO事業導入が困難になります。 @ もともと光熱水費が少ない 単純に工事費も少なくなるわけではない 採算性が悪く、事業者にとって魅力が小さい

問題点② ESCO事業者の大きな負担 多大な労力が必要 事業者にとって 魅力に乏しい 地方自治体ESCO事業 省エネ効果の保証 シェアード方式が多いため 資金調達が必要 長期間の計測・管理 が必要 多大な労力のかかる公募に 参加しても受注できるか不確定 ベースライン修正の難しさ 次に問題となるのがESCO事業者にかかる大きな負担です。 まず、地方自治体のESCO事業では@シェアード方式における資金調達の必要、大きな手間のかかる公募、受注のために自らの利幅を圧迫といった負担のため、地方自治体ESCO事業は@事業者にとって魅力に乏しいのです。 そして、ESCO事業のメリットの一つである省エネ効果の保証についても、保証のためには@長期間の計測管理が必要となり、更には年間エネルギー使用量の基準量であるベースラインを適切に修正しなければなりません。ここに@多大な労力が必要となります。 @ 多大な労力が必要 受注のため利益を圧縮 事業者にとって 魅力に乏しい

解決策の提示:大阪府の取り組み① 簡易公募型ESCO事業 その解決のため 公募参加の大きな負担 簡易公募型ESCO事業 提案書をA3用紙1枚程度に簡略化 それではこうした問題の解決に向けて、まずは大阪府が示した解決策を紹介していきます。 ひとつめは @ 提案書をA3用紙1枚程度に簡略化するという簡易公募型ESCO事業で事業者の負担を軽減させようとする案です。 しかしこの案は@採算性の向上につながるわけではないのでESCO事業に適さない施設への導入に関しては十分な対策とはいえません。 @ ただし採算性の改善にはならないので ESCOに不適な施設への導入促進とはならない

解決策の提示:大阪府の取り組み② ESCO推進ファンド 買い取り 機器の メンテナンス等 ESCO機器を 買い取り 一部サービス料の 受け取り権 一部サービス料 ESCO機器を 使用させる ESCO事業者の 資金調達が容易に       & 機器保有リスクが解消 ファンド 顧 客 一部サービス料 つぎに府が提案するのはESCO事業推進ファンドです。 このファンドが事業の初期段階で@ESCO機器を事業者から買い取り、実質的にファンドが資金調達者となることで事業者の資金調達の負担を軽減します。 この解決策は@資金調達の難しい中小ESCO事業者にとっては非常に魅力的なものといえます。しかし、@現時点でも資金調達を苦としない業者に対してはアピールに乏しいものとなっています。 @ 資金調達の難しい 中小事業者にとって 非常に魅力的 そもそも資金調達を 苦としない業者に対しては アピールに乏しい しかし

解決策の提示:大阪府の取り組み③ その他 複数施設を一括とすることで 規模のメリットにより 採算性向上を図る 計測検証を繰り上げ終了し ◆計測検証の繰上げ終了 ◆複数施設一括公募 省エネ効果の保証 複数施設を一括とすることで 規模のメリットにより 採算性向上を図る 計測検証・ベースラインの 適切な修正が必要 一定期間効果が確認されれば 在阪ESCO事業者の21%が効果を認める 計測検証を繰り上げ終了し 負担の軽減 ESCO事業のメリットのひとつに挙げられる省エネ効果の保証ですが、 @ 開始後一定期間保証されれば、それに伴う計測検証を繰り上げて終了し、負担を軽減しようというのが3つ目の解決策です。 府の4つ目の案としては複数施一括公募があります。 これは@採算性の悪い施設を複数一括公募することで、規模のメリットなどを生かし採算性を向上させるというものです。ただし、単純な大規模施設への導入に比べるとより手間がかかるのは事実です。@ 施設の数だけ手間が かかることには 変わらないという意見も アメリカでは既に実現 ESCO事業が 成熟すれば十分可能

解決策の提示:更なる解決策① 想定工事費からの減少分の活用 自治体の 想定する 工事費 減少分 ESCO事業者 提案の工事費 減少分の一部 ESCO事業者の 初期投資 + 金利分 光熱水費 顧客の利益 ESCO事業者の利益 返済分 金利 初期投資 } 光熱水費削減額 返済分 金利 初期投資 返済分 金利 初期投資 返済分 金利 初期投資 返済分 金利 初期投資 先に挙げた問題点の中には大阪府の解決策だけでは対応しきれないものがあると私たちは考えます。 そこで、ここからはそうした問題に対応する更なる解決策を述べていきます。 まずは、想定工事費からの減少分の活用を提案したいと思います。 これは、 @ 自治体の想定工事費と業者の提案工事費の差額も @ サービス料に充てる案です。そうすれば光熱水費削減分以外にも初期投資の回収が可能となり、 @ 事業採算性の向上が図れると考えます。 @ 返済分 金利 初期投資 返済分 金利 初期投資 工事費削減額の一部を サービス料にあてる 事業採算性の向上

解決策の提示:更なる解決策② 設備改修一体型ESCO事業 採算性の悪化 中には効果は大きいが 費用も大きいものも こうした設備のみ自己資金で調達 2つ目の解決策は設備回収一体型ESCO事業です。 ESCO事業で用いられる手法の中には@効果が非常に高いものの多大な費用がかかる設備を用いるものがあります。 そこで@こうした設備のみ自治体が自己資金で調達し、その他の部分でESCOを行うというのが設備回収一体型ESCO事業です。 @ 資金は必要となるが効率的なESCO事業が可能に 実際に京都市はこうした手法を検討中

解決策の提示:更なる解決策③ チューニングの活用 Ⅰ 解決策の提示:更なる解決策③ チューニングの活用 Ⅰ ESCO事業 = 主に設備導入で省エネを実現 設備に頼らずとも 省エネは可能 設備の導入には資金が必要 しかし 運用改善(チューニング)により省エネが可能 次に挙げる解決策はチューニングの活用です。 これは、現在の一定の資金が必要な設備の導入で行うESCO事業とは違う、設備の運用改善による省エネ手法です。 このチューニングのノウハウをサービスの一部としてESCO事業者が提供するのがここでの提案です。チューニングに特別な設備は必要ないので、@初期投資が少なくなり採算性が向上します。 @ このノウハウをESCO事業者が提供 それをサービスと捉えESCO事業に組み込む 初期投資が少なくなり採算性が向上

解決策の提示:更なる解決策③ チューニングの活用 Ⅱ 解決策の提示:更なる解決策③ チューニングの活用 Ⅱ しかしチューニングでどれだけの省エネが可能なのか? チューニングにより 7年連続前年比5%減の 省エネを実現した 福岡市総合図書館の例 福岡市総合図書館の取り組み ブラインドを水平にすることで空調の効率を上げる 中間期には風除室の室内側の自動ドアを開放したままにし、無駄な開閉をなくす 照明スイッチにシールを貼り、無駄な点灯をなくす チューニングを成功させた事例としては福岡市総合図書館が挙げられます。@ 7年間で18個ものチューニングを実施 チューニングによる省エネも十分可能である

解決策の効果 地方自治体ESCO事業 が容易に 大阪府の解決策 国の支援強化 工事費削減分の活用 設備回収一体型事業 チューニングの活用 問題点 大阪府の解決策  中小規模施設への導入 地方自治体ESCO事業 が容易に 国の支援強化  自治体事業の魅力のなさ 工事費削減分の活用  保証に伴う多大な労力 @ このようにここで挙げた全ての問題点が解決され、地方自治体でのESCO事業が推進されるといえるでしょう。 以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。 設備回収一体型事業  不十分な国の支援 チューニングの活用  契約上のリスク管理