ユニバーサルデザイン化された障害者スポーツへの期待

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学習目標 1 .セルフマネジメントモデル,学習援助型教育とは何か を理解する. 2 .セルフマネジメント支援のために必要な構成要素につ いて理解する. 3 .セルフマネジメントにおいて看護職に求められる能力 と責任について理解する. SAMPLE.
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第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
はじめに 近年、飲酒が関与する重大な交通事故が発生しており、未成 年の時からのアルコールについての正しい教育がより重要と なってきている。 タバコは学校において健康被害等の防煙教育が徹底されてき ているが、アルコールは喫煙と異なり健康を促す側面もあり全 否定できないため防酒教育導入の難しさがある。しかし、一方.
学習動機の調査 日下健 西原直人 津川眞希 吉田優駿 山下剛史.
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出発点となる2つの問い 概念化 1つめの問い 「(自立生活)能力の有無」を軸にして、なぜ位相の異なるQOL観が並列的に位置できているか(例えば「寝たきり老人」「認知症高齢者」における違い) 2つめの問い 昨今、「QOL」が数値化されているが、そもそも主観を尺度化できるのか 尺度化.
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ユニバーサルデザイン化された障害者スポーツへの期待 第3回総工連携研究会 2006.7.18 ユニバーサルデザイン化された障害者スポーツへの期待 佐藤充宏 徳島大学総合科学部 スポーツ社会学研究室

リハビリテーションのICIDH計画的変化モデル (Vermeer,1985,1991) 国際障害分類 (ICIDH Model WHO,1980) リハビリテーションのICIDH計画的変化モデル (Vermeer,1985,1991) 一般目標         達成目標      リハビリテーション disease  ↓ 疾患 ↓ impairment  ↓ 機能障害 disability  ↓ 能力障害 handicap  社会的不利  治療(Cure) 身体的機能   身体的療法                 physical therapy 保護管理(Care)  知覚や動作の 運動療法           コミュニケーション能力  exercise therapy 教授(Teach)    知覚や動作の 体育          技術      physical education 教育/支援 日常生活の身体 健康運動 (Educate Support) 身体活動の調整 遊びやスポーツ                  play sports G.W.Van Der Gugten(1997)

障害者スポーツ・レクリエーションの考え方 医療的リハビリテーション   社会的リハビリテーション      スポーツ リハビリテーション・スポーツ 管理された活動 機能訓練的なメニューから    スポーツ活動の導入へ リハビリテーションセンター     などで実施       生涯スポーツ    自主的な活動  リハ・スポーツから完全に自立したスポーツへ 障害者スポーツセンターなどで実施 地域のクラブでの活動 佐藤充宏(1997)

障害者のスポーツをどう捉えるか 身体活動 + 遊び + 人間性 = スポーツ文化 島崎仁(1997)

障害の定義 ICF(国際生活機能分類)2001 ICIDH Model (WHO,1980) クラブ 指導者 スポーツ用補助具の開発 健康状態 変調または病気 心身機能・身体構造         活 動                参 加             環境因子             個人因子 クラブ 指導者 パートナー プログラム アクセシビリティ スポーツ用補助具の開発 ルールの加工 障害意識 スポーツ意欲 生活状況 社会支援

介助器具からスポーツ器具へ スポーツが求める身体動作に適応させるために、より合理的な構造に加工されてきた車椅子 テニス用車椅子 マラソン用車椅子 バスケット用車椅子

アスリートとパートナーとのユニット関係をつくりスポーツ活動を通じた共感体験を相互に築いていく アスリートの技能 実施者の技能 パートナーや補助具の支援 障害者の技能 指導・教育的側面 補助・活動的側面

障害児 12-16  日常の友人・遊び友達・遊び集団の規模の比較 佐藤充宏・野田由美子(2004)

レクリエーション活動による居場所づくり 子どもたちが学校卒業後も地域の人たちの間で暮らしていけるようにと「クリの木クラブ」は月1回、音楽やダンス、遊びなどのワークショップを開催している。

地域活動としてのスポーツ・レクリエーションクラブづくりへ ファミリー・友人 地域ボランティア   指導者   パートナー   地域団体 参加者の地域における人的ネットワークの基盤をつくっていく

スポーツ関与障害者イメージ 車椅子バスケット ダウン症児スポーツ 全盲ランナー 障害者ショッピング 片足切断者水泳 生活不全 病気 支援   低いQOL 障害者固定観念因子得点 生活あり・交流あり群 生活あり・交流なし群 生活なし群 分析1 障害者の家族あり群 障害者の家族なし群         分析2 障害者の友人あり群 障害者の友人なし群        分析3 障害者の活動あり群 障害者の活動なし群        分析4 スポーツ関与障害者イメージ 車椅子バスケット ダウン症児スポーツ  全盲ランナー 障害者ショッピング 片足切断者水泳 そこで、因子分析で、得た、障害者のステレオタイプ4因子の因子得点と、スポーツに関与する障害者イメージの評価点を、これら4つの分析視点から、比較検討しました。 Frida Rebeca & Mitsuhiro Sato (2005)

分析1:共同生活の有無と交流活動の有無が与える影響 Factor1「生活不全」Factor2「病気」Factor3「支援」  Factor4「低いQOL」 * * 右のグラフでは評価値が高く、共同生活を経験し交流活動があったグループが他のグループと比較して高い値を示しました。 *P<.05 *P<.05 共同生活を経験していない人は、障害者への病気、支援、低いQoLを認知する傾向がみられた 共同生活の経験があり交流経験があるグループは、スポーツに関与する障害者イメージを肯定的をより強くとらえる傾向がみられた

分析2:家族内障害者の有無が与える影響 * * Factor1「生活不全」Factor2「病気」Factor3「支援」  Factor4「低いQOL」 最初のグラフは、家族に障害者がいる学生と、生活不全イメージ、病気イメージに関する神話を拒絶していることを示した。第二のグラフは、家族に障害者がいる学生の場合が、いない学生に比べて、すべての項目で肯定的なイメージの認識が強くなっている傾向があった。 この結果は、スポーツをする障害者イメージは家族に障害者のいる学生にとって、強い肯定的なイメージを与える可能性を示していると考えられる。 * n.s. * *P<.05 家族内に障害者を持つグループにおいて、生活不全、病気のイメージを認知しない傾向があった スポーツをする障害者イメージでは、全体的に高い評価値だが、家族内に障害者のいるグループがより高い肯定的な評価を示した

分析3:障害のある友人の有無が与える影響 * 障害のある友人をもっているグループほど、支援、低いQoLを認知しない傾向があった。 Factor1「生活不全」Factor2「病気」Factor3「支援」  Factor4「低いQOL」 最初のグラフは、障害のある友だちをもつ学生の場合、支援イメージ、低いQOLイメージといった神話を拒絶していることを私たちに示した。第二のグラフは、スポーツをする障害者に対する肯定的なイメージには、障害者の友人の有無による影響を受けていないことがわかった障害のある友だちをもつ学生の場合、支援イメージ、低いQOLイメージといった神話を拒絶及びスポーツをする障害者に対する肯定的なイメージあった。 * *P<.05 n.s. 障害のある友人をもっているグループほど、支援、低いQoLを認知しない傾向があった。 スポーツをする障害者のイメージに差はみられなかった。

分析4:地域における活動経験の有無が与える影響 Factor1「生活不全」Factor2「病気」Factor3「支援」  Factor4「低いQOL」 * 最初のグラフは、障害者と一緒の活動をした経験のある学生は、障害者の神話の因子に対する認識が低いことを示した。逆に障害者との活動経験のない学生の場合、病気イメージ、支援イメージ、低いQOLイメージに対して高い因子得点を示した。特に病気イメージでは、統計的に有意な差がみられたので、障害者と一緒の活動をする経験は病気イメージを軽減させる傾向があると思われる。 第二のグラフは、障害者と一緒の活動経験があるなしに関わらず、スポーツをする障害者イメージが肯定的に捉えられたことを示した。障害者と一緒の活動をする経験は病気イメージを軽減させる傾向があると思われる。 n.s. *P<.05 地域での活動経験がないグループほど、病気、支援、低いQoLの認知が高くなる傾向がみられた。スポーツをする障害者イメージには差がみられなかった。

生活不全 病気 支援 低いQOL 障害者に対する固定観念の認知 生活あり・交流あり群 - 分析1 生活あり・交流なし群 + +        障害者に対する固定観念の認知            生活不全  病気 支援 低いQOL       生活あり・交流あり群         -      分析1 生活あり・交流なし群    +      + 生活なし群              ++    +     + 分析2 障害者の家族あり群    --    --    障害者の家族なし群                    分析3 障害者の友人あり群         - -    障害者の友人なし群 分析4 障害者との活動あり群             障害者との活動なし群      + この表は、4つの分析結果の因子得点平均値を、このような基準で記号化し、表にあわらしたものです。網掛けは統計的に有意な差がみられた関係です。この表から、病気イメージを高める要因として、交流経験がないことがあげられ、逆に、障害のある家族をもっていたり、障害者との共同生活があり、交流している場合は、この病気イメージを低める要因となっていることがわかります。また、障害者の友だちがいれば、支援イメージや、低いQoLのイメージの認知が低くなる傾向も示されました。このことから、障害者との接触回数が多くなり交流が深まれば、障害者のステレオタイプの改善にもつながると思われます。 因子得点平均値で記号を付記:               -.20      -.10      .10      .20  (--)       (-)    (no mark)   (+)       (++) 網掛け :P<.05

肯定的 否定的 情報源 交流経験 障害者に対する神話 生活不全 病気 支援 低いQoL 障害者への態度/イメージ ある ない 家族 友人 家族   学校  メディア  友人 生活不全 病気 支援 低いQoL 障害者への態度/イメージ ある  肯定的 ない 否定的 交流経験 家族 友人 仲間 学生の障害者に対する態度/イメージに影響を及ぼしているものとして、障害者の神話の情報源は、学校、メディアが9割を超えていました。(c) その要素は、生活不全、病気、支援、低いQoLのイメージを形成していました。(c) 交流経験は、学校と地域活動で6割と高く、共に活動していたかどうかが重要な影響を及ぼしていることがわかりました。(c) 交流経験があることで障害者への態度/イメージが肯定的になる傾向が示され、(c) 逆に、交流経験がないと否定的な態度/イメージの認知をしていることがわかりました。(c) このことから障害者との交流、共に活動を行うプログラムを実施することで、否定的な態度/イメージの改善が期待できるとおもわれます。 (c) スポーツに関与する障害者のイメージはどのタイプの学生においても高い肯定的なイメージの評価を得たことから、障害者のスポーツ情報や、交流場面としての障害者スポーツプログラムは、インクルージョンを目指した教育プログラムとして高い効果が得られる可能性があると思われます。 スポーツに関与する障害者イメージ

NPO法人 スペシャルオリンピックス日本・徳島

総合型地域スポーツクラブ「チャレンジドクラブ」(高知県春野町)

みんなのクラブという楽しい居場所づくり レクリエーション協会 自治会 A 地域スポーツ指導者団体 総合型地域スポーツクラブへの共通の活動 福祉施設 地域スポーツ団体 障害者クラブ 障害者支援団体 クラブライフの創造・組織間の緊張緩和・地域の活性化