2013年7月6日 日本のエネルギー・環境政策選択シンポジウム 日本の炭素税改革の経済・環境効果分析 ーE3MGモデルを用いた分析ー

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井手 鑑人 岡村 佳祐 中嶋 仁 橋本 佳奈.  生活水準の向上には、物価上昇しないことが関係  衣料費の場合 ファストファッションブランドが多数誕生  その背景には 安価 安価 良質 安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う.
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1 環境経済論環境経済論 第 13 回目 市場は地球環境を救えるか その 4 : 排出量取引. 2 Goods 課税による Bads 減税 (環境税の未来)
国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
1 II マクロ経済学のデータ. 2 第5章 国民所得の測定 マクロ経済学とは 国内総生産 = GDP ( Gross Domestic Product ) – 社会の経済的福祉を測定する尺度の1つ ミクロ経済学とマクロ経済学の違いについては、 pp. 40 – 41 も参照.
三面等価の原則 生産面からみたGDP =支出面からみたGD P =分配面からみたGD P. [ 備考 ] 内閣府経済社会総合研究所「 SNA ・1統計資料・国民経済計算確報・平成14年度確報(平成16年4月19日)・計数票・第1部 フロー編 1.統合勘定( 1 )国内総生産と総支出勘定、及び、 4.
経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
IS-LM 分析 マクロ経済分析 畑農鋭矢. 貨幣の範囲 通貨対象 M1M2M3 広義流動性 現金通貨(日銀券 +補助通貨) 預金通貨 (普通預金・当座 預金など) 主要銀行・信 用金庫など ゆうちょ銀 行・信用組合 など 準通貨 (定期預金など) 主要銀行・信 金など ゆうちょ銀 行・信用組合 など.
環境税導入の是非 肯定派 篠崎、畑、村 杉. 主張点 ①大規模での環境対策が可能! ②大幅な CO 2削減が可能! ③経済効果から日本の経済成長に つながる! 以上の3点から私たちは 環境税を導入すべきであると主張す る!!
最近の税制改正について 08bc134k 畑 優花 /17. 「 2011 年度税制改正」を創設するために、 ここ数カ月で様々な提案がなされている。 たばこ税 ペット税 環境税 エコカー減税 法人税減税 論点証券優遇税制 今回の発表.
  環境税導入の是非     -否定派-     神野・上原・入江.
乗数効果 経済学B 第6回 畑農鋭矢.
エコ税制.
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大震災後の日本経済再生のビジョンと財源問題
国際収支表をどう読むか 国際収支の均衡 国際収支とGDP
生ごみからエネルギー ~バイオガス発電の効果を考える~
二、高度経済成長期 神武景気 年代後半の民間設備投資 岩戸景気 2 2 国民所得倍増計画 オリンピック景気 いざなぎ 景気.
入門 計量経済学 第02回 ―本日の講義― ・マクロ経済理論(消費関数を中心として) ・経済データの取得(分析準備) ・消費関数の推定
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年11月16日
第1章 国民所得勘定.
消費税10%導入の是非                    肯定派 大岸・福田・山田.
地球環境問題班 今井 康仁 川内 雅雄 熊田 規芳 西田 智哉.
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第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
環境税 熊野雄太.
(出所)小峰隆夫(2003)『最新日本経済入門[第2版]』、日本評論社、p.186。
御国の光の作り方 明治大学2年 星野浩樹.
エネルギー基本計画 1 エネルギーの安定供給の確保を図るための基本方針 環境への適合を図るための基本方針
お金がなければ刷りなさい 於:未来構想フォーラム
トウモロコシの動向 2班.
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温暖化について ~対策~ HELP!.
CO2排出権取引市場の意義と各国の取り組み
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CO2の部門別増減率(国内) 増加率が高いのは、オフィスと家庭 環境省 1.
温暖化ガスの排出抑制の困難さ ●温暖化防止: 温暖化ガスの排出抑制が必要 ● CO2排出の抑制の困難さ
2012年度 九州大学 経済学部 専門科目 環境経済学 2013年1月21日 九州大学大学院 経済学研究院 藤田敏之.
電力班 小松・早川 藤丸・松浦 電力自由化に伴う 電力価格の変化.
第8章 開放マクロ経済学.
マクロ経済学 II 第5章 久松佳彰.
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関西学院大学産業研究所所長・経済学部教授 伊藤 正一
マクロ経済学初級I 第4回.
中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察
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第4章 投資関数.
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現代の経済学B 植田和弘「環境経済学への招待」第3回 第7章 環境制御への戦略と課題 京大 経済学研究科 依田高典.
超人大陸 『列島強靭化論』シリーズ 「B/C」に欺されるな, 常識で考えろ!
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国際貿易の外観.
デフレ・スパイラル 2009年以降の事例から 長谷川 正
持続可能社会実現にむけた現実的なシナリオ
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ちょっとヘンだぞ・変化している自然環境(第4回)
排出量取引について ~日本から見る排出量取引の意義~ 早稲田大学 地球環境班 外山公一 柿澤和哉 佐々木圭 川谷絵美 川上かおり
地球温暖化と京都議定書 E020303 豊川 拓生.
日本経済新聞朝刊 6/25(水)朝刊 石橋、馬場、春山、森、安田
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海外展開事業名: 「○○○○○」 (添付資料1) 業務概要資料
 EUの電力由来CO2排出量の推移 1990年 2010年 2015年 需要 (発電量) 26,000 億kWh 33,000 億kWh
経済学入門 ミクロ経済学とマクロ経済学 ケインズ経済学と古典派マクロ経済学 経済学の特徴 経済学の基礎概念 部分均衡分析の応用.
新エネルギー ~住みよい日本へ~ E 山下 潤.
Presentation transcript:

李 秀澈 名城大学経済学部 slee@meijo-u.ac.jp 2013年7月6日 日本のエネルギー・環境政策選択シンポジウム 日本の炭素税改革の経済・環境効果分析 ーE3MGモデルを用いた分析ー い すぅちょる 李 秀澈 名城大学経済学部 slee@meijo-u.ac.jp 共著者    Hector Pollitt(Cambridge Econometrics, UK)    植田和弘(京都大学大学院経済学研究科教授)

本研究の目的 日本の地球温暖化政策の概要 日本の炭素税改革 目次 E3MG モデル シナリオ分析と推定結果 結論

本研究の目的

本研究は、ケンブリッジエコノメトリックス研究所により開発されたE3MGモデルを用いて、日本の炭素税改革が日本の経済及び環境に与える影響を定量的に評価することである。 まず、2012年10月に施行された日本の炭素税が経済及び環境に与える影響を分析 日本がコペンハーゲンで宣言した2020年に1990年レベルの25%削減を達成するために必要な炭素税 率を求める. 炭素税改革の二重配当論(炭素税による二酸化炭素 削減効果と、その税収を所得税など他の税の削減に 充てることによる経済活性化効果)を検証

環境税の二重配当論のしくみ 減税分 環境税収 政府 税・社会保険料 雇用促進 企業 消費者 景気活性化

日本の地球温暖化政策の概要

1998年に「地球温暖化対対策法」が制定 温室効果ガスの算定、産業界や家庭部門の努力義務炭素税や排出権取引制度など国民に費用負担を求める制度は保留 特に産業界は、経団連を中心とした「環境自主行動計画」に大きく依存 家庭部門は、政府主導のクールビズやワームビズキャンペインに参加

政府は2009年に「地球温暖化対策基本法案」を国会に提出 この法案では、温室効果ガスの中期目標(2020年まで1990年レベルの25%削減)と長期目標(2050年まで80%削減)を設定 目標達成の手段として ①炭素税, ②排出権取引制度 (ETS),③再生可能エネルギーに対する固定価格買取制度の導入 2012年10月に、アジアでは最初に炭素税を導入したが、排出権取引制度は保留 2012年7月には、再生可能エネルギーに対する固定価格買取制度を導入.

図表1 日本の中長期温室効果ガス削減目標 出所: 環境省(2012) 100 108 99.7 (13.6億トン) (1990=100) 図表1 日本の中長期温室効果ガス削減目標  100 108 99.7 (13.6億トン) (1990=100) (13億トン) (12.6億トン) 90 福島原発事故後民主党政府の 政策レポート2012 の中での削減目標 80 75 2010日本政府の目標 長期目標 (-80%) 2010 2020 2030 2050 1990 2005 出所: 環境省(2012)

日本の炭素税改革

図表2 日本の石油石炭税と炭素税(1) 2,800円/kl 1,860円/ton 1,370円/ton 炭素税 図表2 日本の石油石炭税と炭素税(1) 新しい 石油石炭税の税率 (既存税+炭素税) 2,800円/kl 1,860円/ton 1,370円/ton 炭素税 320円/CO2 ton(炭素税) 旧 石油石炭税(CO2換算税) 原油、石油製品 LNG, LPG 石炭 旧 石油石炭税の税率 2,040円/kl 1,080円/ton 700円/ton

図表3 日本の石油石炭税と炭素税(2)

E3MG モデル

E3MGモデルの概要 E3MGモデル (Energy-Environment-Economy Model at Global level)は、ケンブリッジ大学とケンブリッジエコノメトリックス研究所が開発したコンピュータベースの計量経済モデルである。 E3MGのヨーロッパ版であるE3ME( Energy-Environment-Economy Model at Europe level )モデルは、EU Commissionやイギリス政府を中心としたEUの政府関連機関の政策レポートの作成に数多くかかわってきたモデルであり、特にIPCCの第4次報告書では、計量経済モデルとしては唯一分析に採用されたモデルでもある。

e.g. industrial emissions of SF6 図表4  E3MG モデルの基本構造 経済 (国家別国民勘定) e.g. industrial emissions of SF6 funding R&D 技術・関連 コスト prices and activity investment fuel use fuel use fuel prices and costs エネルギー (国家別エネルギー 統計) 環境排出物 (国別環境統計) fuel use 詳しくは www.e3mgmodel.com を参照

炭素税 影響の経路 CO2排出削減 図表5 炭素税の経済への 化石燃料需要減少 燃料輸入減少 製造コスト上昇 貿易効果 消費者物価 上昇 化石燃料価格 上昇 化石燃料需要減少 製造コスト上昇 CO2排出削減 貿易効果 消費者物価 上昇 生産影響 国内消費減少 図表5 炭素税の経済への 影響の経路 雇用影響

図表6 炭素税税収の還元効果 炭素税収入 所得税など 減税 雇用増加 可処分所得 増加 生産増加 国内消費増加

シナリオ分析と推定結果

4つの政策シナリオを想定 1つは、2012年に導入された日本の炭素税の環境及び経済へ与える影響を分析 残り3つは、1990年基準2020年までに二酸化炭素排出量を25%削減可能な炭素税プランを設定

図表7 シナリオの要約 シナリオ 炭素税率 炭素税収の活用 2012年の炭素税率 財政赤字返済 2020まで25%削減 図表7  シナリオの要約 シナリオ      炭素税率   炭素税収の活用 S1 2012年の炭素税率 財政赤字返済 S2a 2020まで25%削減 S2b 95%は所得税減税、5%はエネルギー効率投資 S2c 75%は所得税の減税、25%は雇用者の勤労者に対する社会保険負担緩和(医療・雇用保険など)

図表8 E3MGによる炭素税インプット 石油 LNG 石炭 燃料平均 E3MG 炭素税インプット (円/toe) S1 S2a S2b S2c 石油 LNG 石炭 燃料平均 2012 325 305 371 17,721 20,529 19,812 2013 26,982 25,843 29,316 2014 651 610 743 29,508 29,215 32,487 2015 30,709 28,652 32,468 2016 989 915 1,131 32,500 27,460 33,318 2017 35,257 28,750 35,868 2018 39,749 33,140 41,531 2019 43,192 36,528 45,426 2020 44,240 35,615 45,811    注: 為替レートは、2012年末時点の 1ドル = 76.8 円を適用. S1 は、2012年日本の炭素税率を適用 S2 は、1990~2020年にCO2を25%削減するための炭素税率    出所: E3MG, Cambridge Econometrics.

環境とマクロ経済効果 S1 S2b S2c S1 S2a S2a,S2b,S2c 分析結果 1        分析結果 1 環境とマクロ経済効果 下記の図は、各シナリオ別基準年対比CO2の削減のレベルを示している 下記の図は、各シナリオ別 基準年対比GDPに与える影響を示している ⇒S2bのGDPパフォーマンスが最も良い S1 S2b S2c S2a,S2b,S2c S1 S2a 炭素税導入初期には、GDPは急速に落ちるが、 その後、税収還元効果とエネルギー効率投資 の影響により好転される。

25%削減目標の雇用と産業別生産に与える影響               分析結果 2 25%削減目標の雇用と産業別生産に与える影響 S2b は、雇用にももっとも良い影響をもたらしている 生産に最も悪い影響を受ける業種は、 電気、ガス、金属、繊維などであり、良い影響を受ける業種は飲食・宿泊、商業など消費関連産業である。

図表9 シナリオ別マクロ経済効果 マクロ経済効果 S1 S2a S2b S2c GDP 0.0 -1.2 1.1 0.9 雇用 -0.1 図表9  シナリオ別マクロ経済効果 マクロ経済効果   S1 S2a S2b S2c GDP 0.0 -1.2 1.1 0.9 雇用 -0.1 0.4 家計消費 -1.6 2.0 1.7 投資 -0.6 0.7 輸出 -0.5 -0.4 輸入 -0.3 物価 0.1 2.5 1.4 注: 各数値は、基準年度からの変化率である。 出所: E3MG, Cambridge Econometrics.

図表10 実質生産効果 部門別実質生産効果 S1 S2a S2b & S2c (S2b) (S2c) ガス -0.3 1次金属 -2.0 図表10  実質生産効果 部門別実質生産効果 S1 S2a S2b & S2c (S2b) (S2c) ガス -0.3 1次金属 -2.0 出版 6.1 5.6 電気 -1.0 繊維・衣服 -2.6 宿泊 5.3 5.1   -6.6 飲食 4.8 -28.5 繊維 4.1 注: 各数値は、基準年度からの変化率である。 出所: E3MG, Cambridge Econometrics.

Conclusion

日本の2012年の炭素税プランは、GDPと雇用に与える影響は軽微である。 25%削減目標を達成するための経済的コストは大きい方が、耐え難いほどではない。 しかも税収が効果的に他の税の減税に回せば、経済にプラスの影響を与える。 結論的に、炭素税改革が適切にデザインすれば、CO2排出削減と経済改善のいわゆる「二重配当」の恩恵を頂くことにある。

Thank you for your kind attention!