剛体回転のより良いシンプレクティック積分 2012/12/11 福島登志夫(国立天文台) Submitted to J. Comp. Phys. 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012 CfCAユーザーズミーティング2012
動機 目標:太陽系天体の自転諸現象の起源 手法:自転運動を含んだ重力N体計算 金星の逆行自転、天王星の横倒し自転 地球の自転軸傾斜、水星の自転公転共鳴(2:3) 近接衛星(月、ガリレオ衛星)の自転公転共鳴(1:1) 小惑星の自転速度分布、YORP効果 手法:自転運動を含んだ重力N体計算 安易:衝突時の変化のみ考慮、他は自由自転 複雑:自転・軌道相互作用 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
三軸不等剛体の自転 水分子 小惑星Ida A/C=0.345, B/C=0.653 他分子との分子間力 重力、衝突、合体、分裂 自転公転周期比 38200 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
剛体回転の単精度 シミュレーションの困難 パーソナルHPC環境の台頭 単精度の剛体回転シミュレーションは皆無 問:なぜか? NVIDIA GeForce/Tesla, Intel Xeon Phi, … 単精度の剛体回転シミュレーションは皆無 問:なぜか? 答:丸め誤差の蓄積 →エネルギー誤差が時間に比例して増大 →向きの誤差が時間の2乗に比例して増大 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
シンプレクティック積分法 時間可逆力学系専用の新しい数値積分法 数値積分:正準変換で近似 コストパフォーマンス 大局的に正しい計算 位置・速度などの変化量:計算精度が悪い エネルギーなどの保存量:長期的にみると高精度 コストパフォーマンス 高次公式:従来法(ルンゲクッタなど)よりコスト高 長期計算、低精度計算では効率が良い 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
剛体回転の シンプレクティック積分 3回転分離法 (Dullweber et al., 1997) ハミルトニアン 2次公式 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
単一軸周り回転運動の シンプレクティック積分 単一軸回転運動のハミルトニアン シンプレクティック積分 = 軸周りの回転操作 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
諸悪の根源:平面回転 通常の表現←時間対称性が保証されない ずれ行列を用いた書き換え (Karney 1986) 数学的には同じだが、コンピュータで計算すると結果が異なる 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
Leap-frog解釈 中間変数の導入 調和振動子のLeap-frog 数値積分 計算コードは簡単 座標 速度 刻み幅 角速度 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
誤差成長の比較 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
ところが… 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
誤差の定常状態? 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
実は、極限サイクル化 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
従来法のエネルギー誤差 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
新方法のエネルギー誤差 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
高次の数値積分法 対称構成法による次数増加 最良の方法:必要最小限より多い段数 4次5段 (Omelyan et al., 2002) Suzuki (1990), Yoshida (1990), McLachlan (1995) 最良の方法:必要最小限より多い段数 4次5段 (Omelyan et al., 2002) 6次9段 (Kahan & Li, 1997) 8次17段 (Kahan & Li, 1997) 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
高次の方法:単精度計算 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
高次の方法:倍精度計算 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
長期積分:単精度計算 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
長期積分:倍精度計算 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
丸め誤差の蓄積 単精度計算では深刻 倍精度計算では長期・高精度計算で顕著 刻み幅を小さくすると悪化 理想(=ランダム) 深刻(=完全相関) ブラウアーの法則 (Brouwer, 1937) 深刻(=完全相関) 予想外(=無相関) 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
結論 Karney(1986)の書き換え 丸め誤差の影響:ランダム化or無力化 YOU AIN’T HEARD NOTHIN’ YET! 平面回転行列→ずれ行列3重積 時間対称性が自明化 丸め誤差の影響:ランダム化or無力化 理想的シンプレクティック積分が有限桁計算で実現 剛体回転の単精度シミュレーションが実現可能 YOU AIN’T HEARD NOTHIN’ YET! 「お楽しみはこれからだ」 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
参考文献 Dullweber, A., Leimkuhler, B., and McLachlan, R., 1997, J. Chem. Phys. 107, 5840. Fukushima, T., 2008a, Astron. J., 135, 2298. Fukushima, T., 2008b, Astron. J., 136, 649. Fukushima, T., 2008c, Astron. J., 136, 1728. Fukushima, T., 2009a, Celest. Mech. Dyn. Astron., 105, 245. Fukushima, T., 2009b, Celest. Mech. Dyn. Astron., 105, 305. Fukushima, T., 2009c, Astron. J., 138, 210. Fukushima, T., 2010, Numer. Math., 116, 687. Fukushima, T., 2011a, Math. Comp., 80, 1725. Fukushima, T., 2011b, J. Comp. Appl. Math., 235, 4140. 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012
参考文献(続き) Fukushima, T., 2012a, J. Comp. Appl. Math., 236, 1961. Fukushima, T., 2012b, Numer. Math., DOI 10.1007/s00211-012-0498-0. Fukushima, T., 2013, J. Comp. Appl. Math., 237, 43. Kahan, W., and Li, R.-C., 1997, Math. Comp., 66, 1089. Karney, C.F.F., 1986, Particle Accelerators, 19, 1089. Leimkuhler, B., and Reich, S., 2004, Simulating Hamiltonian Dynamics, Cambridge Univ. Press, Cambridge. Omelyan, I.P., Mryglod, I.M., and Folk, R., 2002, Comp. Phys. Comm., 146, 188. Vilmart, G., 2008, Physica D 76, 375. 2012/12/11 CfCAユーザーズミーティング2012