Index signals (指標信号) 送り手は、生理的、物理的制約,情報不足等のため自分の意志で信号の情報を自由に変えることがでず,限られた選択肢からの情報しか伝達できない場合の信号を言う。 質指標(quality index)信号と指摘(pointing)信号(情報制約指標信号)に分類できる。前者は、送り手の大きさ、強さ、歳等を知らせるのに対して、後者は ,送り手が得た情報を送り手に知らせる。 質指標信号は、送り手の質についての情報を正直に伝えるが、不正確である場合もある。例えば、トラは自分の縄張りを木々の幹をひっかいて印をつける。この場合は、小さい個体は、高い位置に印をつけることができないが、大きい個体は、高い位置にも低い位置にも印をつけるので,受け手は、低い位置のひっかきを見た時,トラの大きさを正確には推定できない。
カメレオンの一種 Bradypodion pumilum 頭部のヘルメットの高さは噛む力と関係がある
カエルの多くは(ここではUperoleia rugosa) 鳴き声の主要周波数は体長の負の関係
Gambusia holbrooki (カダヤシ科)のオスの黒さの程度は,攻撃性,交尾成功と関係がある 多面発現か黒化を制御する遺伝子と攻撃などを司る遺伝子の間に強い連鎖があるため起こっていると考えられる
指摘(pointing)信号(情報制約指標信号) ジェレヌク (Litocranius walleri) 発見した捕食者をにらむ。 顔と耳の模様は, 捕食者を発見したことをしらせる信号を送る
近接信号(proximity signals) 資源を巡って競争者と闘争して時の主要コストは、相手からの攻撃である。この状況において相手にどちらが闘争に勝利するのか予想することを可能にする目的で信号が進化する。そして,その信号によって闘争を激しくすることなく闘争を終わらせることができる。しかし,この種の信号は、闘争するという意志の何らかの裏付けがないと,誇張とはったりになりがちである。正直な威嚇信号の確実な保証は,相手への近接である。 相手に近接して出される信号を近接信号と呼ばれる。
近接信号は、されに3つに分かれる。 無防備ハンディキャップ信号(vulnerability handicap).これは,相手に無防備な部分(首、腹、脇腹など)を見せる行為を指す。この行為は極めて危険で,勝つ自信がある個体によってしか行われない。 戦術威嚇信号(tactical threat).これは,闘争準備体勢をとったり,攻撃意志を示すディスプレイを示すことである。たとえば,歯をむき出したり,口を開けたり,嘴でどこかに向けたり,角を闘争準備体勢に置くこと。 防御威嚇信号(defensive threat). 相手に対しての防御態勢の準備をすることがこれに当たる。寝返り仰向けになり脚,爪,歯を防御態勢状態したり,方向を変え後ろ脚で蹴ることなどを指す。
オナガクロムクドリモドキ (Quiscalus mexicanus) における 無防備ハンディキャップ(vulnerability handicap)信号
ザリガニの一種Cherax disparにおける戦術威嚇(tactical threat)信号
防御威嚇(defensive threat)信号 ネコの例 耳を後ろにやり,歯を出し,尾をふくらまし下げる また,体を這わせる。その結果,すばやく仰向けになり,脚の爪と歯を攻撃のため使える体勢に移れる
慣習信号(儀礼的信号,conventional signals) 慣習信号とは,コストもかからず,指標信号でもない信号をさす。そのため,信号の様態は,種がこれまでにたどった歴史の影響を受け,種によって様々である。 慣習信号は,送り手も受け手も不正直になる動機がないとき正直信号となる。 例:魚類では,オスとメスは,産卵と精子放出を同調させるための近距離で有効となる信号を使うことがある。
例:送り手と受け手間の血縁度が高いとき,送り手も受け手も信号によって共通の利益を得やすい。これは,社会性昆虫で見られる多くの信号はこれに当てはまる。 送り手と受け手に利益を巡る対立があるとき、発信コストなし信号は進化しにくいが、社会的課されるコスト(socially imposed cost)があるとき、正直な信号は進化しうる。このコストとは、具体的には受け手の報復(receiver retaliation)である。それは、(1)受け手の懐疑的態度、(2)受け手による送り手の正直さの検査、(3)嘘つきに対する罰、(4)将来の報復の形で現れる。
一部のトリとトカゲの体表に見られる目立つ色パッチは階級付けされた慣習信号の例である(最近多雌創設のアシナガバチから報告有り)。パッチの大きさと色合いが優劣順位の順位をしめす。そのため,それはステイタスバッジ(badges of status)と呼ばれる。 大きいバッジは小さいバッジの個体からの攻撃を抑制するが,同じくらいの大きさのバッジを持った個体の攻撃をうけ,それが所有のためのコストとなる。ステータスバッジの進化のためには,同じサイズのバッジを持った個体からの正直さの検査を頻繁に受けることが必要である(自分より多きいサイズ,小さいサイズへの検査はしない)。
トリの ステータスバッジの例 全て,優劣順位の順と関連がある マヒワCarduelis spinus のオスの頭にある黒いパッチ 年取ったオスが平均して大きなパッチを持つ
イエスズメ(Passer domesticus) 胸にある黒パッチの大きさは,優劣順位,攻撃性,テストステロン(testosterone男性 ホルモンの一種)濃度と関係がある
ワシミミズク(Bubo bubo) 喉のパッチの鮮やかさは,メスでは体の大きさ,オスでは繁殖成功と関係がある
トカゲのステイタスバッジの例 サイズと彩度は優劣順位と闘争の勝つ確率に関係 Platysaurus broadleyi (ヨロイトカゲ科ヒラタトカゲ属) 喉のパッチの紫外線反射
ニワカナヘビ Lacerta agilis グリーンの脇腹パッチ
アルジェリアスナカナヘビPsammodromus algirus の頭部のオレンジ色パッチ
攻撃性低い 攻撃性高い Fig. 1: Portraits of four Polistes exclamans foundresses, illustrating some of the variation in facial pattern. Individuals are arrayed from those sig- naling low agonistic ability (lt) to those signaling high agonistic ability (rt). Head widths (lt to rt: 3.68, 4.04, 3.96, 3.60 mm).
信号の正直さの保証機構 正直さの検査 実験的に大きな黒のパッチを付けられたオスのイエスズメ(Passer domesticus)は,コントロールより多くの攻撃を受けた。攻撃を行った個体は平均より大きいパッチを持った。 大きい胸パッチをもったカオグロシトド(Zonotrichia querula)を小さい胸パッチに実験的に替えたところ,餌を巡って他個体と激しく闘争をする必要があったが,最終的には勝った。
ステータスバッジの例 ウズラクイナの鳴き声 ウズラクイナ(Crex crex) 単調鳴き(上)と間欠鳴き(下)
接近のしかたを点数化 単調鳴きを聞いた時に比べて,間欠鳴きを聞いたとき,オスは,スピーカーに速くより近くまで接近した(モードの点は低い)。これは,間欠鳴きに対してより激しい攻撃を加えていることを意味する 間欠鳴きをテープで流した後,間欠鳴きの個体は,単調鳴きの個体に比べて,スピーカーに高い頻度で攻撃的接近を行った
正直な信号を出さなかった個体に対する罰の例はほとんどないが,以下の報告がある。 アカゲザルでは,餌を見つけたとき,鳴き声をだすが,出さないで餌を食べているのが発見されたときは,かなりの攻撃を受ける。
将来の報復は,遅れのある罰である。それは,ごまかし行為を発見された個体は,他個体によって悪い噂を立てられ,将来利益を得損なうことを指す。 チンパージでは,過去に餌を盗んだ個体に対して報復することが知られている。