市民とともに学ぶ色素増感太陽電池 川村康文,田山朋子,兒玉明典 Journal of the Japan Institute of Energy(2012) 東京理科大学 川村研究室 石黒 貴裕
§1.はじめに 理科嫌い・理科離れ 理科の楽しさ・理科の素晴らしさを伝える活動が広く行われるようになった。 Ex) SSHやSPPなどの活動 しかし 2011年3月 東日本大震災 多くの国民が、エネルギー政策の在り方に戸惑う状況が生じる。 ⇒ 科学リテラシーの見直しが必要
市民が自然エネルギーを体験する実験教室のテーマとして、 「色素増感太陽電池の手作り」 を行った。 高度科学技術社会に生きる 市民にとって科学リテラシーは必要である 本研究では、 市民が自然エネルギーを体験する実験教室のテーマとして、 「色素増感太陽電池の手作り」 を行った。
§2.開発した色素増感太陽電池 本研究の色素増感太陽電池 ・手作りが可能 ・材料費を安価にする ・身近に手に入るものを使用する 市民の太陽電池のイメージ ・既製品を用いて実験 色素増感太陽電池 ・手作りが可能 心をつかむことができる 従来の色素増感太陽電池 ・実験費用が高額 本研究の色素増感太陽電池 ・手作りが可能 ・材料費を安価にする ・身近に手に入るものを使用する
表1 実験材料費(40人分) 本研究室教材比較(一部) 従来の実験材料のなかで高額なものを安価のもので実験できないか工夫した。
歯磨きペーストに二酸化チタンが含まれる。 2-1 二酸化チタンペーストに関する検討 従来の二酸化チタンペースト ・粉末二酸化チタン(SP210) ・ポリエチレングリコール ⇒ペースト状にして使用 発電効率は良いが、高価 歯磨きペーストに二酸化チタンが含まれる。 本研究の二酸化チタンペースト ・粉末二酸化チタン(P25) ・歯磨きペースト ⇒ペースト状にして使用
歯磨きペースト単体では、色素増感太陽電池は作製できなかった。 二酸化チタンと混合することで作製可能 表2 配合の違いによる実験結果
身近な材料を使用することで、科学に対する親近感がわく 2-2 ヨウ素電解溶液に関する検討 市販の高額なヨウ素電解溶液 身近な材料を使用することで、科学に対する親近感がわく ヨウ素入りのうがい薬
2-3 材料費の比較 表3 実験材料費(40人分) 本研究室教材比較 実験費用が半分に!!
§3.発電性能の評価 開放電圧 太陽電池の性能を表す因子 ・曲線因子ff ・最大電力 ・変換効率 開放電圧 太陽電池の変換効率η (太陽光の単位面積当たりのエネルギーは、 地表平均の100mW/cm^2として計算)
変換効率・開放電圧において十分な性能を示した 市販の製品 本教材 図2 色素増感太陽電池の性能評価実験の結果 変換効率・開放電圧において十分な性能を示した 表4 性能評価実験の比較
§4.体験講座 2010年12月 「理科大好き実験教室」 「色素増感太陽電池を手作りして、電子メロディーを鳴らそう」 参加者 小学4年生…7名 小学5年生…6名 小学6年生…3名 中学生…2名 高校生…1名 社会人…2名 参加者全員が 電子メロディーを 鳴らすことに 成功!!
参加者の声 どのくらい長持ちしますか? 家に持って帰って再実験できますか? 鳴らなくなったらどうしたらよいですか? 自然エネルギーや地球環境問題への大きな関心がうかがわれた。
§5.おわりに 身の回りの日用品を利用・紹介することで、少しでも科学や科学技術へのアレルギーを取り除く工夫をした 日用品の紹介・利用 電気伝導性ガラス 液晶テレビ・タッチパネル 歯磨き粉・洗顔料 二酸化チタン 電解液 うがい薬
エネルギー環境分野における最先端技術を基本にした教材 体験的に市民に広く知ってもらう 市民の科学リテラシーの養育 エネルギー環境問題の解決
§6.論文を読んで 多くの人々の科学リテラシーの養成には、日常品などを用いた安価な実験教材の開発が必要であることを再認識しました。 多くの人々の科学リテラシーの養成には、日常品などを用いた安価な実験教材の開発が必要であることを再認識しました。 オープンキャンパスでの反応なども考えると、今後もこのような研究によって多くの人々に科学に対する親しみを持ってもらえるといいと思います。