大気の熱力学 乾燥大気 湿潤大気.

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1 重力 力に従って落下 → E P 減少 力に逆らって上昇 → E P 増加 落下・上昇にともなう重力ポテンシャルエネルギー 変化 P32 図2-5 力が大きいほど E P の 増減は大きくなる. ポテンシャルエネルギーと力の関係.
1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
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相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
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反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
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13 室内空気環境 ○気温、気湿:アスマン通風湿度計 ○カタ冷却力:カタ温度計(カタ係数÷カタ温度計が38℃から35℃に下降するまでの時間)
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2009年5月21日 熱流体力学 第6回 担当教員: 北川輝彦.
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雲の発生 < occurrence  of  clouds >  吉田 真帆 .
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2009年7月2日 熱流体力学 第12回 担当教員: 北川輝彦.
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
夏の中高緯度海上には、なぜ下層雲が多いのか?
雨と雪の気象学 (雲物理) 地学b 「雲と降水」の後半
地球惑星物性学1 ( ~) 参考文献: 大谷・掛川著 地球・生命 共立出版 島津康夫著・地球の物理 基礎物理学選書 裳華房
今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣
宿題を提出し,宿題用解答用紙を 1人2枚まで必要に応じてとってください 配布物:ノート 2枚 (p.85~89), 小テスト用解答用紙 1枚
熱量 Q:熱量 [ cal ] or [J] m:質量 [g] or [kg] c:比熱 [cal/(g・K)] or [J/(kg・K)]
13 室内空気環境 ○気温、気湿:アスマン通風湿度計 ○カタ冷却力:カタ温度計(カタ係数÷カタ温度計が38℃から35℃に下降するまでの時間)
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
2009年5月14日 熱流体力学 第5回 担当教員: 北川輝彦.
熱伝導方程式の導出 熱伝導:物質の移動を伴わずに高温側から低温側へ熱が伝わる現象 対流、輻射 フーリエの法則Fourier’s law:
固体→液体 液体→固体 ヒント P131  クラペイロンの式 左辺の微分式を有限値で近似すると?
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大気の熱力学 乾燥大気 湿潤大気

大気の熱力学(1) [熱力学第1法則:the 1st law of thermodynamics] ⊿U(内部エネルギー増加)+⊿W(外へする仕事)       = δQ(加熱量) 理想気体(ideal gas)を考える。 単位質量(unit mass) を考える。                                     定積比熱 比容 加熱量

大気の熱力学(1-2) 断熱であれば (adiabatic condition) (1) この状態方程式の全微分を取ると 熱力学の式(1)を書き換える 定積比熱+R=定圧比熱  右辺=dQ を考えるとよい) 状態方程式から

大気の熱力学(1-3) 断熱膨張、断熱圧縮 As P decreases  T decreases

外から熱を加えずに、気圧(p)が変われば、 気圧が下がれば(上空にいけば)、気温は下がる。 気圧が上がれば(下方にいけば)、気温は上がる。 大気の熱力学(1-3) 外から熱を加えずに、気圧(p)が変われば、 気温はp^0.286に比例して変わる。 空気が断熱的に運動するとき、 気圧が下がれば(上空にいけば)、気温は下がる。 気圧が上がれば(下方にいけば)、気温は上がる。 断熱膨張、断熱圧縮 As P decreases  T decreases

大気の熱力学(1-4) 2原子分子の定積比熱 (Cv) は5/2 R。[n f ½ R]

大気の熱力学(2) [温位(potential temperature)] 断熱過程では 温位は保存する。 Under adiabatic process, θ is conserved. Pの気圧でTの温度 の空気を断熱的に P0(基準気圧:通常 1000hPa)へもって くればθ の温度に なる。 At p=p0, T=θ.

温度・温位の緯度・高度分布(1月) 対流圏では 上空ほど 気温は下がる T decreases with height 温位は上がる θ increases with height 中緯度で 温位面は 傾斜している

乾燥断熱減率 dry adiabatic lapse rate 空気塊を断熱的に持ち上げたときの温度変化(高さとともに温位一定)を考える。 Suppose that air is lifted adiabatically. 乾燥してるとき、高度増加にともなう気温減少率(-dT/dz)を乾燥断熱減率という。

乾燥断熱減率の導出 断熱条件での熱力学第1法則から Cv dT + p dv = 0 (v=1/ρ :比容) Cv dT + d (pv) – v dp = 0 (Cv+R) dT - v dp = 0 Cp dT – 1/ρdp = 0 両辺を dz で割る。 Cp dT/dz – 1/ρ dp/dz = 0 静力学平衡の式を用いて、 Cp dT/dz + g = 0 ー dT/dz = g/Cp

水蒸気量の表し方-いろいろ(1) Expression of atmospheric water vapor 混合比 (mixing ratio) ρwater-vapor /ρdry-air 飽和混合比 混合比は保存する。 比湿 (specific humidity)   ρwater-vapor/ρair 飽和比湿(saturated ..) es is a function of T esは気温のみの関数!

Saturated vapor pressure over ice Saturated vapor pressure over water ニューステージ 新訂 地学図表 浜島書店 より

飽和混合比は温度とともに指数関数的に増大 10度あがると ほぼ2倍となる。

地表面 20 g/kg > 700hPa 8 g/kg > [一般気象学第2版」(小倉義光)より

凝結熱(condensation heat) 乾燥空気1kg の飽和した空気がTからT-ΔTへ冷却すると、飽和水蒸気混合比は、WからW-ΔWへとかわる。 このとき、LΔWだけの熱を放出する。 Lは、凝結熱(蒸発熱)で、 2.50 ×106 J kg-1 空気が上昇し、p  p-dp, T  T-dT となれば、 W  W-dW となり、 大気を LdW  加熱する。

湿潤断熱減率 moist adiabatic lapse rate 水蒸気で飽和した空気塊を断熱的に持ち上げたときの温度変化を考える。 そのとき、高度増加にともなう気温減少率 (-dT/dz)を湿潤断熱減率という。 凝結熱により乾燥の場合ほど気温は下がらない。 対流圏で、6~8K/km程度(温度による) 標準大気の減率は 6.5 K/km。

水蒸気量の表し方-いろいろ(2) 相対湿度 W/Ws x100 (%) relative humidity 露点温度 (dew-point temperature; Td) 気温を下げたときに飽和に達する気温 露点差(湿数):T-Td 小さければ湿っている

湿潤断熱減率 (moist adiabatic lapse rate)

エマグラム Emagram [一般気象学第2版」(小倉義光)より

相当温位 θe (equivalent potential temperature) *飽和しているとき:相当温位は保存する。 *未飽和のときは、持ち上げ凝結高度におけるT (Tc)を使う。混合比はその場所の混合比。そう定義すれば、相当温位は偽断熱過程で飽和、未飽和にかかわらず、保存する。

LCL = 125(T-Td) [一般気象学第2版」(小倉義光)より

乾燥大気の安定性(stability of dry air) [一般気象学第2版」(小倉義光)より

湿潤大気の安定性(stability of moist air) Γm<Γ<Γd [一般気象学第2版」(小倉義光)より

Level of Free Convection Cloud top Level of no-buoyancy height Level of Free Convection Lifting Condensation Level temperature [一般気象学第2版」(小倉義光)より

[気象がわかる数と式(二宮著)」より

フェーン現象(Foehn) 乾燥断熱減率 10 K/km、 湿潤断熱減率 6 K/km とする。 風上で飽和しており、凝結した水分は降水として落ちるとする。 18℃ 1000m 28℃ 24℃

乾燥静的エネルギー dry static energy ( s = CpT + gz) 前頁の熱力学第1法則から断熱であれば、Sは保存する。(ただし、静力学平衡を仮定している) 1st law of thermodynamics + hydrostatic balance 上の式から乾燥断熱減率は求められる。 CpT : Enthalpy (thermal energy under const. P) gz: 位置のエネルギー(geopotential) s is conserved under adiabatic processes

湿潤静的エネルギー moist static energy ( h = s + Lw) 偽断熱過程であれば、飽和でも未飽和でも保存する。 CpT : エンタルピー(顕熱のエネルギー) gz: 位置のエネルギー(geopotential) Lw: 潜熱のエネルギー (latent energy)