「リスクファイナンス・リスクコントロール」 事業リスクマネジメント学習支援教材 事業リスクマネジメント ケーススタディー NO.3-2 「リスクファイナンス・リスクコントロール」 実 習 解 説
目 次 1 中型クレーン事業計画 2 2 銀行からの提案 9 3 リスク処理手段の選択 15 (1)当初事業計画 3 目 次 1 中型クレーン事業計画 2 (1)当初事業計画 3 (2)3年間の利益の実績と予想 4 (3)追加投資 5 (4)資金繰りの問題(現状) 6 (5)資金繰りの問題(追加投資) 7 (6)事業計画の問題点 8 2 銀行からの提案 9 (1)【提案1】私募債 10 (2)【提案2】証券化 11 (3)【提案3】 取引信用保険 12 (4)【提案4】 手形割引 13 (5)実習1(信用リスク、資金繰りリスクに対する方策) 14 3 リスク処理手段の選択 15 (1)リスク処理手段の多様性 16 (2)実習2(リスク対策シート) 17 (3)リスク対策シートの解答例(為替リスクのケース) 18 1
1 中型クレーン事業計画
3年で年間480台販売(稼働率80%)、2年目で単年度黒字の計画 (1)当初事業計画 3年で年間480台販売(稼働率80%)、2年目で単年度黒字の計画 図表5 利益計画 (中型クレーン事業参入時)
販売台数は計画の8割どまり しかし、第3年度で単年度黒字を達成 (2)3年間の利益の実績と予想 図表6 利益の実績(過去3年)と予想 (現状生産体制維持ケース)
スケールメリットによりコスト競争力を強化 5期目以降大幅な利益増加が見込まれる (3)追加投資 40億円の追加投資で生産規模を2倍に拡大 スケールメリットによりコスト競争力を強化 5期目以降大幅な利益増加が見込まれる 図表9 利益の実績(過去3年)と予想 (追加投資ケース)
割賦販売比率が高く与信残高(割賦売掛金)が増大 キャッシュフローも悪化し、3年間で63億円の資金流出 (4)資金繰りの問題(現状) 割賦販売比率が高く与信残高(割賦売掛金)が増大 キャッシュフローも悪化し、3年間で63億円の資金流出 図表7、8 事業の仮想バランスシートとキャッシュフローの実績と予想 (現状生産体制維持ケース)
与信残高(割賦売掛金)の増大でバランスシートが悪化 7年間で180億円以上の資金流出 (5)資金繰りの問題(追加投資) 与信残高(割賦売掛金)の増大でバランスシートが悪化 7年間で180億円以上の資金流出 図表10、11 事業の仮想バランスシートとキャッシュフローの実績と予想 (追加投資ケース)
青空油圧はこのままで大丈夫? 利益は順調に拡大 しかし、資金流出とバランスシートの悪化 (6)事業計画の問題点 3期目には単年度黒字、現状生産の体制でも10期目には利益剰余金100億円の見込み 追加投資すれば10期目には100億円近くの経常利益の見込み しかし、資金流出とバランスシートの悪化 3期目で70億円超(総資産の半分超)の与信残高 3年間で63億円、追加投資すれば7年間で180億円もの資金流出 青空油圧はこのままで大丈夫?
2 銀行からの提案
青空油圧が私募債40億円を発行、大地銀行が引受 (1)【提案1】私募債 青空油圧が私募債40億円を発行、大地銀行が引受 期間10年の普通社債で固定金利8%
(Asset Backed Securities) (2)【提案2】証券化 割賦債権の証券化(大地証券がアレンジャー) 債権は年率7%で割引、資金回収手数料(サービシング・フィー)は1% 証券化利用のデメリット 債権譲渡特例法による対抗要件取得手続きが面倒 集金の手間は省けるが顧客との関係が疎遠になる 割賦債権をまとまったロットにして譲渡(証券化)するため、資金調達の機動性は低い 割賦債権証券化スキーム (Asset Backed Securities) 大地証券 格付機関 証券化のアレンジ 格付付与 割賦債権 チャーター業者 SPC(発行体) 投資家 青空油圧 割賦債権の売却 ABS発行 譲渡代金(現金化) 発行代り金 割賦債権回収 回収代金 元利払い サービサー
取引信用保険(割賦販売代金保険)による信用リスクの移転 (3)【提案3】取引信用保険 取引信用保険(割賦販売代金保険)による信用リスクの移転 グループ会社(大地損保が引受) 保証対象は信用力のあるチャーター業者に限定(全体の半数程度) 保険料は与信残高の6% 保険金=実損額=与信残高-回収金(クレーン下取金額) 取引信用保険のスキーム 保険料支払 大 地 損 保 青 空 油 圧 チャーター業者 クレーン販売 割賦債権保有 (信用保証) 割賦債務支払 チャーター業者の債務不履時: 保険金=実損額(与信残高-回収金)の支払い
信用力の比較的高いチャーター業者とは手形取引 (4)【提案4】手形割引 信用力の比較的高いチャーター業者とは手形取引 大地銀行の取引先 対象銘柄は信用力の高い企業に限定 割引率は(年率)7%
(5)実習1(信用リスク、資金繰りリスクに対する方策) 銀行からの提案を検討する前に、信用リスク、資金繰りリスクに関して、 青空油圧が自らできる、あるいは、自ら行うべき対応策はありません か? 銀行からの4つの提案のメリット、デメリットを論じてください。 また、各提案に対する改善策(カウンターオファー)はありませんか? グループで検討してください。 (正解はありません。自分だったら、自分の会社だったどうするか考えてください。)
3 リスク処理手段の選択
リスクへの対応方法は様々 ケース・バイ・ケースでの対応能力が重要 (1)リスク処理手段の多様性 リスクへの対応方法は様々 ケース・バイ・ケースでの対応能力が重要 日頃からリスクへの対策をイメージして備えておくことが、 リスクに遭遇した際の対応 能力を高める 【リスク処理手段】
(2)実習2(リスク対策シート) 青空油圧にとって重大だとあなたが考えるリスクに関して、想定しうるリスク処理手段とリスク削減目標等を考え、リスク対策シートにまとめてください。 グループで検討してください。 (正解はありません。自分だったら、自分の会社だったどうするか考えてください。)
(3)リスク対策シートの解答例(為替リスクのケース) リスクの内容 為替変動(円/米ドル) リスクの重大度(発生確率×影響度) 円高時に輸出額(中古クレーン販売価格)が低下する恐れ。(ランク2×2~3) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 輸出市場からの撤退、円価格での取引に限定。 為替リスクとともに、輸出による収益機会もなくなる。 低減 輸出比率を一定限度に抑える。 輸出にあたって価格条件を設ける。 輸入比率拡大、現地事業開始等により外貨使途を増す 為替リスクは減らせるが、収益機会も減少。 実際に外貨使途があれば極めて有効。 移転 為替先物予約、為替オプション 無料だが為替収益機会は失う。 ヘッジ可能だがコスト高。 保有 外貨での資金運用開始、外貨運用担当者を置く。 コストはかかるが収益(損失)機会も拡大。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) ロスカットルール(円高が進めば輸出停止、為替予約を実行等) 低コストだが、ある程度の損失は生じる。 先物契約の実行、オプションの実行 先物は逆効果(損失)もあり、オプションは効果大。 相場が回復するまで含み損を抱えた外貨を保有、 相場回復時に外貨を円転。 表面上低コストだが資金運用機会喪失。損失拡大危険有り。 適用するリスク対策 1.短期的にはブローカとの取引は円建てとする。 2.中期的には為替先物予約を取り入れる。 3.長期的には輸入品利用、中国事業による外貨使途を増やす。 リスク削減目標等 短期的には為替リスクゼロ。長期的には外貨ポジション(残高)を資本の○○%以内にとどめる。