重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症 PMS担当者研修テキスト(12) PMSフォーラム作成 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
急性腹症は定番 CT の重要性 解剖、腫瘍疾患の所見は必須 MRI 婦人科疾患の鑑別 T1 強調像、 T2 強調像の意味 消化管造影は減少? 内視鏡との相補的な扱い ポリポーシス、大腸疾患は依然重 要 肝、胆道系(腫瘍の鑑別)は? 腹部の画像診断のポイント.
Advertisements

2008 年医師国家試験解説 ー画像診断のポイントー 放射線科 石口恒男 2008 年 7 月 1 日 (1) 頭部.
三例の糖尿病性腎症導入例 仁和寺診療所 田中 貫一 仁和寺診療所.
A case of pneumatosis cystoides intestinalis attributed
アレルギー・アナフィラキシー 山形大学輸血部 田嶋克史.
つちだ小児科  土田晋也
体重減少 ◎食欲があるのに体重が減る ⇒糖尿病、甲状腺機能亢進症、吸収不良症候群などを疑う ◎食欲がなくて体重が減る ⇒その他の疾患を疑う
体重増加 短期間で 急に太った いつもと同じ食生活をしているのに… 定期的に運動をしているのに…
全身倦怠感 全身倦怠感はさまざまな病気にみられます 疲れやすい… だるい…
マイコプラズマ感染による豚の 慢性呼吸器疾病
失神.
動悸にはこんな種類があります 心臓の動きが 考えられる病気 動悸とは、心臓の動き(心拍)がいつもと違って不快に感じることをいいます。
順序立った判読の仕方.
I gA腎症と診断された患者さんおよびご家族の皆様へ
磁気治療機器が、線維筋痛症患者の痛みを抑制 できるかどうかを検討する。 同時に機器の安全性を検討する。
糖尿病の病態 中石医院(大阪市) 中石滋雄.
重篤副作用疾患シリーズ(3) 薬剤性過敏症症候群
PMS担当者研修テキスト(12) PMSフォーラム作成 重篤副作用疾患シリーズ(16) 横紋筋融解症 重篤副作用疾患シリーズ(16)
関東地方会 症例検討(治療) 東京医科大学 乳腺科学分野     寺岡冴子.
がんの家族教室 第2回 がんとは何か? 症状,治療,経過を中心に
糖尿病とは インスリン作用不足による 慢性の高血糖状態を主徴とする 代謝疾患群 まず糖尿病とはどんな病気か知ってしますか?
2型糖尿病患者におけるナテグリニドと メトホルミン併用療法の有効性と安全性の検討
1. 糖尿病による網膜の病気 =糖尿病網膜症 2. 自覚症状が現れないまま 進行します 3. 糖尿病網膜症の 予防法・治療法 4.
脳性まひをもつ 子どもの発達 肢体不自由児の動作改善を目指して 障害児病理・保健学演習 プレゼンテーション資料 2000年2月24日
重篤副作用疾患シリーズ(1) スティーブンス・ジョンソン症候群
PMS担当者研修テキスト(12) PMSフォーラム作成 重篤副作用疾患シリーズ(10) 血小板減少症 重篤副作用疾患 シリーズ(10)
自律神経の研究成果 神経生理 平山正昭.
糖尿病の合併症について 三大合併症 神経障害 網膜症 腎症 フットケアを日頃から 心がけましょう! 単純網膜症・前増殖網膜症
牛の尿路コリネバクテリウムによる 血尿を主徴とする感染症
高血圧 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 二次性高血圧を除外 合併症 臓器障害 を評価 危険因子 生活習慣の改善
重篤副作用疾患シリーズ(19) 偽アルドステロン症
脳血管障害 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 緊急処置 一般検査 画像検査 治療 診断
自転車で転倒し    脾臓損傷した症例 ○○消防署 ○○救急隊  ○○○○.
糖尿病 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 検査 診断 治療
高齢者の肺炎による死亡率. 高齢者の肺炎による死亡率 誤嚥のメカニズム 誤嚥は、脳卒中や全身麻痺、あるいは麻痺などの症状のない脳梗塞で、神経伝達物質の欠乏によって、咳(せき)反射や、物を飲み下す嚥下(えんげ)反射の神経活動が低下して起こる。
血管と理学療法 担当:萩原 悠太  勉強会.
山羊関節炎・脳脊髄炎(届出) 山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルスによって起きる成山羊の関節炎や乳房炎、幼山羊の脳脊髄炎や肺炎を主徴とする疾病
脳血管 MR診断に必要な脳動脈の解剖 荏原病院放射線科 井田正博
1. 糖尿病の患者さんは、脳梗塞や 心筋梗塞に注意が必要です 2. 脳梗塞と心筋梗塞の原因は どちらも動脈硬化です 3.
学習目標 1.急性期の意識障害患者の生命危機を回避するための看護がわかる. 2.慢性期の意識障害患者の回復に向けた看護がわかる. 3.片麻痺患者のADL獲得に向けた看護がわかる. 4.失行・失認の患者が生活に適応するための看護がわかる. 5.失語症の患者のコミュニケーション方法の確立に向けた看護がわかる.
重篤副作用疾患シリーズ(14) 急性肺損傷・ 急性呼吸窮迫症候群
「糖尿病」ってどんな病気?? ★キーワードは・・・「インスリン」!!!
2015年症例報告 地域がん診療連携拠点病院 水戸医療センター
重篤副作用疾患シリーズ(6) 再生不良性貧血
重篤副作用疾患シリーズ(9) 無顆粒球症 PMS担当者研修テキスト(12) PMSフォーラム作成 重篤副作用疾患 シリーズ(9) 無顆粒球症.
コンゴー赤染色 (Congo red stain) アミロイド染色
最近の国試問題における 画像診断のポイント
小児に特異的な疾患における 一酸化窒素代謝産物の測定 東京慈恵会医科大学小児科学講座 浦島 崇 埼玉県立小児医療センター 小川 潔、鬼本博文.
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その7
大宮ソニックシティー 足利赤十字病院 外科 戸倉英之
福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇
高脂血症.
研究内容紹介 1. 海洋産物由来の漢方薬の糖尿病への応用
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
血栓性血小板減少性紫斑病 TTP 溶血性尿毒素症候群 HUS
小腸カプセル内視鏡により 診断しえた小腸出血の一例
UFT服薬に関しての注意事項 ☆ 患者さんには「UFT服用のてびき」をお渡し下さい。.
2015年症例報告 地域がん診療連携拠点病院 水戸医療センター
経過のまとめ 家族歴、基礎疾患のない14歳女性 筋力低下、嚥下障害を主訴としてDM発症 DMは、皮膚症状と筋生検にて確定診断
高槻市医師会地域連携クリティカルパス(患者様用)
異所性妊娠卵管破裂に対する緊急手術中の輸血により輸血関連急性肺障害(TRALI)を発症した1例
患者さんへの説明補助イラスト -脳せきずい液中のオステオポンチン に関する疾患比較研究- 版
肺の構造. 肺の構造 肺の間質とは? IPF(特発性肺線維症)とは? IPF患者さんの肺の画像(胸部X線)
病理学実習2:女性生殖器Ⅱ 卵巣の疾患・絨毛性疾患
一過性脳虚血発作の機序: (1990年NINDSの定義と 2009年AHA/ASAの定義別に)
間欠型一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素治療の限界
(上級医) (レジデント) 同意説明取得 無作為化 割り付け群による治療開始 来院時
1. 糖尿病による網膜の病気 =糖尿病網膜症 2. 自覚症状が現れないまま 進行します 3. 糖尿病網膜症の 予防法・治療法 4.
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
誰も言わなかったが、実は誰もが知っている
Presentation transcript:

重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症 PMS担当者研修テキスト(12) PMSフォーラム作成 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

患者へのインフォメーション 【白質脳症とは】 大脳白質が主に障害されるのが、白質脳症であり、初発症状としては、「歩行時のふらつき」が最も多く、次いで「口のもつれ」、「物忘れ」が起こります。進行すると、様々な程度の意識障害が起こり、昏睡状態になることもあります。 発生頻度:人口100 万人当たり年間 不明 発症メカニズムについては、医薬品などの代謝産物により脳内脂質代謝が障害され空胞を形成し、それによる慢性神経毒性によって髄鞘が障害されて神経症状等が生じると推定されています。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

患者へのインフォメーション 【原因薬剤】 【初期症状】 主に抗がん剤で、代表的な医薬品としては、カルモフール、テガフール、フルオロウラシル、メトトレキサート、シクロスポリンなどがあります。 【初期症状】 「歩行時のふらつき」が最も多く、次いで「口のもつれ、言語障害、構音障害」、「物忘れ、認知症様症状」、「動作緩慢、無動」、「異常行動、精神症状」、「不随意運動、振戦」等が起こります。進行すると、様々な程度の意識障害が起こり、昏睡状態になることもあります。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

患者へのインフォメーション 【早期対応のポイント】 白質脳症の症状があることを自覚する、その症状が続く場合は担当医に連絡して、対応方法を検討してもらいます。担当医に連絡が取れない時は、医薬品の服用を中止し、できるだけ早く受診する。 カルモフールの発生例では、服用後1ヶ月~2ヶ月で約半数が初発症状が出現している。 検出する検査としては、脳波検査、頭部CT検査、頭部MRI 検査の3 つがあります。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

白質脳症 副作用名(日本語、慣用名含、英語等) 早期発見のポイント ⇒前駆症状、鑑別診断法(特殊検査含) 副作用としての概要(薬物起因性の病態) ⇒原因薬剤とその発現機序、危険因子、病態生理(疫学的情報含)、頻度、死亡率等予後 副作用の判別基準(薬物起因性、因果関係等の判別基準) 判別が必要な疾患と判別方法 治療方法(早期対応のポイント含) 典型的症例概要⇒公表副作用症例より その他(特に早期発見・対応に必要な事項) ⇒これまでの安全対策 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

副作用名(日本語、慣用名含、英語等) 日本語 白質脳症 同義語 英 語 Leukoencephalopathy 病 態 日本語 白質脳症 同義語  英 語 Leukoencephalopathy 病  態    発熱(38℃以上)を伴う口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹及び皮膚の紅斑で、しばしば水疱、表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認め、その多くは、薬剤性と考えられている。ただし、一部のウイルスやマイコプラズマ感染に伴い発症することもある 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

早期発見のポイント 前駆症状、鑑別診断法(特殊検査含) (1)早期発見と対応のポイント 初発症状を見逃さない 症状が持続する場合 脳波検査:最も早期に異常が出現するが、特異性が  やや低い 頭部MRI、頭部CT:頭部MRIの方が検出感度がよい 他の病態の可能性 (転移性脳腫瘍,脳血管障害など) も考え  て検査する 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

初発症状は基本的に医薬品を問わず類似しているが、多少以下の異なる点がある。 (2)早期に認められる症状 初発症状は基本的に医薬品を問わず類似しているが、多少以下の異なる点がある。 ① カルモフールでは、初発症状として「歩行時のふらつき (60%)」、「口のもつれ (28%)」が多く、以下、「物忘れ、認知症様症状 」がそれに次ぐ。進行期の症候としては意識混濁が最も多い。 ②テガフールでは、白質脳症の診断で気づくことが多いが、起立性低血圧による失神や膀胱障害などの自律神経障害が初発症状であることもあるので、注意が必要である。 ③ メトトレキサート静注療法では、亜急性脳症が起こることがあり、神経症候の頻度は、片麻痺、言語障害、けいれん発作、意識障害の順である。なお、この場合、白質脳症を示唆する頭部CT・MRI 異常がみられる症例とみられない症例とがある。 ④ 可逆性後白質脳症 (RPL)は、「頭痛、意識障害、けいれん、視力障害」を主徴とし、画像上、後頭葉白質を中心に病変がみられ、症状が著明に軽快する~消失する (可逆性reversible)症例である。基礎疾患は様々であるが、共通する病態として高血圧性脳症、あるいは免疫抑制剤 (シクロスポリン、タクロリムス)などの投与が挙げられている。RPL の病態はまだ十分解明されておらず、その後、可逆性でない症例、低ナトリウム血症の補正による症例なども報告されている。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

カルモフールの場合、以下の特徴がみられるが他の医薬品にも当てはまるものと思われる。 (3)発症時期と投与量の関係 カルモフールの場合、以下の特徴がみられるが他の医薬品にも当てはまるものと思われる。 投与後、「白質脳症」と診断されてから投薬中止になるまでの期間は16 日~311 日までと様々であるが、47.5%は31 日~60 日の間に初発症状が出現している。 発症までの期間は、総投与量・投与日数よりも一日投与量が多い患者で短く、一日投与量が少ない患者では長い傾向がある。 体重当たりの投与量が多い患者で有意に起こりやすく、また、肝機能障害を伴う患者にも多い傾向 がみられている。 従って、体重の軽い患者 (女性など) や肝機能障害または腎機能障害のある患者ではカルモフールの投与量を減量する必要性がある。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

副作用としての概要(薬物起因性の病態) 原因薬剤とその発現機序、危険因子 5-FU とその誘導体であるカルモフール、テガフールによる白質脳症は、動物実験の結果では、3 剤の共通の代謝産物であるα-fluoroβ-alanine (FBAL)が第3 脳室壁の脳弓柱に選択的に沈着・蓄積し、アストロサイトの脂質代謝を障害して空胞を形成し、それによる慢性神経毒性によって髄鞘が障害されて起こると推定されている。また、この障害は可逆的で、原因医薬品を中止することにより改善することも知られている。ただし、動物実験では、ヒトのカルモフール脳症を再現できず、それとは異なった異常がみられているので、この推論がヒトに当てはまるかどうかはまだ不明である。 副作用発現頻度 昭和57 年から平成7 年までに起きた「カルモフール白質脳症」の推定発現率は0.026%であるが、その他の医薬品によって起こる頻度は不明 自然発症の頻度 自然発症の頻度は明らかではない。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

副作用の判別基準 (白質脳症の判別基準) (1)早期発見に必要な検査と実施時期 頭部のCT・MRI 検査、脳波検査が早期発見に必要な検査である。異常の検出感度は頭部CT・MRI 検査よりも脳波検査の方が優れており、左右対称性の徐波化が起こり、脳症の経過観察に極めて有用であるが、特異性に関してはCT・MRI 検査よりも劣る。 CT 検査とMRI 検査を比較すると、MRI の検出感度の方が優れているが、いずれも白質脳症の初期には異常が出ないことがあるので、注意が必要である。症状が持続するようであれば、再検査する。 初期症状が出現し、持続するよ うであれば直ちに脳波検査と 頭部MRI 検査を行う。白質脳症 が進行すると、CT 検査では大脳 白質の左右対称性のびまん性低 吸収域 (図1 の*) が出現し、 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

MRI 検査では、T1 強調画像で低輝度病変 (図2A、図3A の*)、T2 強調画像では高輝度病変 (図2B、図3B の*) がそれぞれ認められ、T1 強調画像よりもT2 強調画像 (図2B,図3B) の方に異常が出やすい。 なお、長期間高血圧症を有する患者・多発脳梗塞の症候のある患者にみられるBinswanger 病でも類似の白質異常がみられるので、そのような患者では、医薬品を投与する前に頭部MRI 検査をしておいた方がよい。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

①臨床検査値:一般検査・髄液検査で白質脳症に特異的な異常はなし。 ②画像検査所見: (1)「早期発見に必要な検査と実施時期」を参照。 (2)臨床所見と経過 中枢神経症状が出現すると、医薬品を中止しても神経症状、画像異常は短期間(2~3 週間) 進行することがあるので注意する。中止1 か月後から症状が改善し始めることがあるので、合併症の予防・治療を含む全身管理が重要であり、徐々に様々な程度に回復する 。早期に中止した場合および一日投与量が少ない場合 は比較的予後がよいが、進行すると予後が悪い 。 (3)検査所見 ①臨床検査値:一般検査・髄液検査で白質脳症に特異的な異常はなし。 ②画像検査所見: (1)「早期発見に必要な検査と実施時期」を参照。 (4)病理検査所見 カルモフール白質脳症の剖検例では、一次性脱髄性病変を主体とするびまん性異常が大脳白質にみられている。具体的には、 ①異常は大脳白質にびまん性に認められるが、皮質、基底核、脳幹、小脳には著変はない ②大脳白質の中心に半透明膠状の壊死巣が広汎にあって、この部位では髄鞘は完全に脱落しているが軸索は比較的保たれ、また、多数の大食細胞を認めるがアストロサイトの反応は乏しい ③壊死巣周辺部には脱髄病変があり、壊死巣との境界部に線維性グリオーシスがみられる ④血管病変はみられない の4 点が特徴である。イヌを用いた動物実験では、ヒトのカルモフール脳症の病変とは異なった異常がみられているが、ニューロンよりも髄鞘への障害性が強いという結果が得られている。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

判別が必要な疾患と判別方法 白質脳症は抗悪性腫瘍剤で起こることが多いので、まず、悪性腫瘍による脳転移と判別する必要がある。 また、高齢者では脳血管障害 (脳梗塞,脳出血など) との判別も必要である。 その他の疾患としては、急性散在性脳脊髄炎、多発性硬化症、脳膿瘍、脳炎、薬剤中毒 (抗てんかん薬の過量投与・過量服薬を含む)、種々の原因による起立性低血圧などがある。 判別法 ①臨床経過 ②診察所見 ③頭部のCT・MRI (単純と造影の両者を行う。病変の多発の有無も重要。) ④必要であれば腰椎穿刺による髄液検査 ⑤一般検査 (血液・尿検査、心電図、胸部のX-P・CT を含む) などによって鑑別可能である。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

治療方法(早期対応のポイント含) 症状を早期に発見し、可能な限り早期に原因医薬品の投与を中止することが最も重要である。 白質脳症の治療には、副腎皮質ホルモン、濃グリセリン、マンニトール、脳循環改善剤、脳代謝賦活剤および各種ビタミン剤が用いられているが、治療効果は少ない。 全身管理および合併症の予防・治療を行いながら自然回復を待つことになる。 特に、四肢の拘縮予防、褥創予防が重要である。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

典型的症例概要 【症例】50歳代、女性 (初診):1984年6月 (主訴):意識障害 (既往歴):- (現病歴):昭和59 年6 月、卵巣腫瘍(類内膜癌)と診断され、単純子宮全摘術、両側付属器切除、大綱切除術を受けた。術後、シスプラチン、ビンブラスチン、ブレオマイシンの併用治療を2 クール実施 84年11月 化学療法2クール実施後、カルモフール 400 mg/ 日(連日)経口、ピシバニール(OK432) 5KE/ 週(毎週)筋注の治療開始 85年夏   、手足のしびれ、耳鳴り、動悸を自覚 85年10 月 上旬に足がよろけ始め、中旬に呂律が回らなくなる 85年11 月 意識がもうろうとして言動がおかしく、翌日、自分からはしゃべらず、質問に対し支離滅裂なことをいい、タクシーにうまく乗り込めず、ぐったりとしていた。2 日後、何もしなくなり、鏡の前で何回も同じことを繰り返し、翌日には寝たきりで尿失禁状態となったため、産婦人科に入院 85年12月 神経内科と併診し、その時点でカルモフールを中止する 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

当科初診時所見:一般所見;体温37.0℃、血圧116/ 72 mmHg、脈拍96/ 分整、全身理学的所見に異常なし. 神経学的所見:意識状態は昏睡状態に近く、Ⅲ−3−9 度方式(意識障害レベルの尺度)でⅢ−200 点であり、つねる痛み刺激でわずかに払いのけようとし、顔をしかめた。脳神経は眼底を含め正常、左手の自発運動はやや低下、深部腱反射は、上肢は正常、下肢でやや低下し、左Babinski徴候は陽性であった。左上肢、特に屈筋に軽度の筋緊張の亢進を認めたが、下肢には痙縮・筋強剛はなかった。知覚系の精査は、意識障害のため、精査不能であった。 検査所見:尿一般:正常、血算;白血球9, 900(分画正常)、赤沈88 mm(1時間)、CRP(++)。血液生化学検査は正常。心電図(EKG):正常。 髄液検査:初圧・色調・細胞数・総蛋白濃度・糖濃度は著変無かった。 頭部CT:両側大脳白質にびまん性低吸収域 (図1) が認められた。11 月末の脳波:3~4 Hz のδ波を主体とする左右対称性のびまん性徐波がみられた。 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

86年1月 カルモフール中止後約1 か月後から症状が改善し始める 86年2月 中止1ヶ月半後には追視し、簡単な命令に応じるようになる 86年1月 カルモフール中止後約1 か月後から症状が改善し始める 86年2月 中止1ヶ月半後には追視し、簡単な命令に応じるようになる 86年3月 中止3か月後、会話が多くなり内容がしっかりしてきたが、無表情で体の動きはゆっくりである 86年4月 4 カ月後、表情も豊かになり、会話の内容もさらに改善してくる。また、歩行可能となっていたが、ややふらついていた。 86年5月 神経学的にほぼ正常となる 86年6月 入院6 カ月後に退院し、家庭で普通の日常生活を送っている 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

その他(特に早期発見・対応に必要な事項) これまでの安全対策 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症

○PT:基本語 (Preferred Term) 白質脳症 ○LLT:下層語 (Lowest Level Term) 英語名 参考 MedDRAにおける関連用語 名称 ○PT:基本語 (Preferred Term)  白質脳症 ○LLT:下層語 (Lowest Level Term) 英語名 Leukoencephalopathy 重篤副作用疾患シリーズ(17) 白質脳症