項目間の対応関係を用いた XBRL財務報告書自動変換手法の提案

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項目間の対応関係を用いた XBRL財務報告書自動変換手法の提案 高尾祐治*,渡辺貴史**, 松下誠*,井上克郎*,湯浦克彦*** * 大阪大学大学院情報科学研究科 ** 大阪大学基礎工学部 *** 株式会社日立製作所

発表の流れ 研究の背景,目的 XBRLについて 提案手法 項目間の対応 変換アルゴリズム ツールと実験 考察・まとめ ソフトウェアシンポジウム2003

財務報告書 企業の財務状況を記述した文書 財務情報をコンピュータで扱うため標準化したい 財務情報の記述に適した 貸借対照表,損益計算書,etc… 投資家は, 財務報告書を比較分析し投資対象を決定 一般的な貸借対照表の形式 財務情報をコンピュータで扱うため標準化したい 正確な情報をより早く得られる 大量の情報を,効率よく比較検討することができる 情報の再利用が可能 財務情報の記述に適した   XMLベースの言語 “XBRL” が提案 ソフトウェアシンポジウム2003

財務報告書の変換 財務報告書には様々な種類,形式がある 財務報告書を変換するニーズが高い 株主や投資家へ公開する財務情報 証券取引所へ提出する決算短信 金融機関へ提示する申告書 財務報告書を変換するニーズが高い 財務データを変換して,様々な財務報告書を作成するため 多くの会社が出している財務報告書を比較するため 財務報告書を様々な形式で見るため ソフトウェアシンポジウム2003

XBRL文書の変換 財務情報をXBRLデータとして入手すると,コンピュータを使って変換作業を行える 一般的なXML変換技術(XSLTなど) 概念等価な要素   財務情報としての意味は同じだが,複数回記述された要素   区別できないため、重複して計算してしまう 複雑なプログラムを書かなければならない 子要素からの値の計算   入れ子構造で子要素を定義しないので,複雑な処理が必要 ソフトウェアシンポジウム2003

問題点と研究の目的 XBRL文書の変換を既存の技術で行うと,うまくいかない場合があったり,プログラムが複雑になることがある 既存のXBRL文書から,異なる形式のXBRL文書を 自動生成し,財務文書変換を効率よく,正確に行う 対応定義の記述方法 できるだけ簡単に変換の指定を行う 変換アルゴリズム 正確な変換を行う ソフトウェアシンポジウム2003

発表の流れ 研究の背景,目的 XBRLについて 提案手法 項目間の対応 変換アルゴリズム ツールと実験 考察・まとめ ソフトウェアシンポジウム2003

XBRL eXtensible Business Reporting Language 財務情報記述のための,XMLをベースとした言語 2000年4月に公開 (http://www.xbrl.org/) 日本でも採用が進んでいる(東京証券取引所など) 財務情報の柔軟な記述が可能 項目間の関係を定義(親子関係など) 値の計算方法を指定(重み付き加算式) ソフトウェアシンポジウム2003

値の計算方法の指定 要素A =要素B×1 +要素C×3 要素A 要素C 要素B = 1,500×1 + 1,800×3 ×1 ×3 ソフトウェアシンポジウム2003

XBRL文書の構成 インスタンス タクソノミ リンクベース 財務情報を記述したXML文書 インスタンス インスタンス文書で使う語彙(要素名, 属性など)を定義したXML Schema リンクベース タクソノミで定義された要素間の関係や,各項目に対する追加情報を定義した文書(XLink) 語彙を定義 定義リンク 項目間の関係  (例,親子関係) 計算リンク 値の計算方法(重み付き加算式) プレゼンテーションリンク 項目の表示順 ラベルリンク 項目の表示名称 リファレンスリンク 項目の参考文献 要素間の関係を 定義 ソフトウェアシンポジウム2003

発表の流れ 研究の背景,目的 XBRLについて 提案手法 項目間の対応 変換アルゴリズム ツールと実験 考察・まとめ ソフトウェアシンポジウム2003

提案手法 研究の目的:XBRL文書変換を効率よく,正確に行う 次の事実に注目 同じ財務活動についての報告書であれば,形式が異なる文書でも財務情報として等価な項目が含まれる 財務情報として等価な項目ならば,その値も等しい,もしくは,計算によって求められる   項目間の対応を定義して,既存のXBRL文書から,異なるタクソノミで定義されるXBRL文書を生成する手法 ソフトウェアシンポジウム2003

項目間の対応 タクソノミ間で対応する要素の定義 要素を生成するかどうか判断するための条件 要素の加工をするための式 値が1億以上なら要素を生成 値を100分の1に 資産合計 2,310  流動資産 1,500  固定資産 810   有形固定資産 800   無形固定資産 10 貸借対照表1(単位:百万円) 資産合計 23  流動資産 15  固定資産 8   有形固定資産   無形固定資産 貸借対照表2(単位:億円) 変換 ソフトウェアシンポジウム2003

値の加工は,then属性, else属性に指定 対応定義文書 項目間の対応をXML文書に記述 タクソノミで定義された要素を関連付ける <equivalentArc xlink:actuate="onRequest“ xlink:arcrole="element-element" xlink:from="tax_assets" xlink:show="replace" xlink:to="tax2_assets2" xlink:title="equivalent" xlink:type="arc" calculation="true" value="true" cond="cs1"/> 項目間の対応 値の加工は,then属性, else属性に指定 <conditionalStatement if="exp1" then="n / 100" id="cs1" type="numeric"/> <condition id="exp1" xlink:href="C:\test\testData\tax.xsd#assets" value="100000000" operator="greater than" type="element"/> 条件の定義 条件の指定 ソフトウェアシンポジウム2003

発表の流れ 研究の背景,目的 XBRLについて 提案手法 項目間の対応 変換アルゴリズム ツールと実験 考察・まとめ ソフトウェアシンポジウム2003

変換アルゴリズム 変換元インスタンス文書の木を構築 対応定義文書を利用して,インスタンス文書の木を生成 木をインスタンス文書として出力 ... 変換元XBRL文書 ① ② ③ ... 変換後XBRL文書 対応定義文書 ソフトウェアシンポジウム2003

1. 変換元インスタンス文書の木の構築 タクソノミ,定義リンク,計算リンクから情報を取得 タクソノミ ー 要素名,属性 定義リンク ー 要素間の親子関係 計算リンク ー 子要素の値の計算で値を得られる要素 取得した情報から, 変換元のインスタンス文書の木を構築 XBRL文書はフラットなデータ構造で記述される 定義リンクから得た親子関係の情報で,子の要素の生成と追加を行い木を構築する ソフトウェアシンポジウム2003

2. インスタンス文書の木の生成 対応する要素の値を,変換元文書から取得 条件判定, および, 値の加工 子要素の追加 (再帰的に行う) 子要素の追加 (再帰的に行う) 子要素からの値の計算   (重みつき加算式が定義されている場合) 属性の処理 ソフトウェアシンポジウム2003

発表の流れ 研究の背景,目的 XBRLについて 提案手法 要素間の対応 変換アルゴリズム ツールと実験 考察・まとめ ソフトウェアシンポジウム2003

自動変換ツールの構成 変換元のXBRL文書 生成するXBRL文書 タクソノミ・ リンクベース タクソノミ・ リンクベース 自動変換ツール 文書形式 文書形式 タクソノミ・ リンクベース 自動変換ツール インスタンス インスタンス 要素の値 出力 項目間の 対応関係 対応定義文書 ソフトウェアシンポジウム2003

実験 提案手法の有効性を確かめるために実験を行った 単純な対応関係 条件判定と,値の加工 子要素からの値の計算 定義リンクの変更にともなう親子関係の変更 ソフトウェアシンポジウム2003

ツールによる変換例 子要素からの計算処理 単純な要素対応 条件:値が3000より大きい 真:(n * 10) + n Balance Sheet Assets 8000 CurrentAssets 1000 NoncurrentAssets 5000 LongTermInvestments 2000 AssetsHeldForSale 3000 500 1500 LiabilitiesAndStockholdersEquity Liabilities StockholdersEquity 6000 PreferredStock 3500 CommonStock 2500 Balance Sheet Assets 3000 CurrentAssets 1000 Liabilities 2000 LiabilitiesAndStockholdersEquity 79000 NoncurrentAssets 55000 LongTermInvestments AssetsHeldForSale 18000 500 1500 StockholdersEquity 6000 PreferredStock 3500 CommonStock 2500 単純な要素対応 条件:値が3000より大きい 真:(n * 10) + n 偽:(n * 10) - n ソフトウェアシンポジウム2003

結果 手作業で行われる部分の多かったXBRL文書間の変換が自動的に行えることを確かめた 親子関係の変更 値の加工 項目数2000程度のXBRL文書(一般的な大きさ)を約2分で変換することができた ソフトウェアシンポジウム2003

考察 対応付けに設定する条件を,もっと細かく指定できるのか 値の加工をする際に,もっと複雑な処理が可能か インタープリタ言語の導入 XMLを使って条件,データ加工を指定するよりも,   プログラミング言語を使って指定した方が詳細に書ける 一般的なXML文書の変換にも使えるのか インタープリタ言語の導入 XBRL は XML に基づいて定義されている. 本手法は一般のXML文書に対する変換手法として応用することが可能 ソフトウェアシンポジウム2003

まとめと今後の課題 既存のXBRL文書を変換し,異なる形式のXBRL文書を生成する手法の提案 実験の結果,有用性を確かめた 対応定義文書 変換アルゴリズム 実験の結果,有用性を確かめた 柔軟な条件処理,値の計算のため,XBRL文書処理に特化したインタープリタ言語の開発 ソフトウェアシンポジウム2003

終 ソフトウェアシソポジウム2003

株式会社×× 貸借対照表 (資産の部) (負債・資本の部) 流動資産 2,621,216 流動負債 2,618,777 現金及び現金同等物 株式会社××  貸借対照表 (単位:百万円) (資産の部) (負債・資本の部) 流動資産 2,621,216 流動負債 2,618,777   現金及び現金同等物 327,098   短期借入金 771,342   受取手形及び売掛金 1,089,540   支払手形及び買掛金 981,970   短期金融債権 166,190   その他の流動負債 865,465   棚卸資産 629,659 未払退職及び年金費用 950,997   その他の流動資産 408,729 長期借入金及びその他の固定負債 922,153 長期受取手形及び売掛金 27,153 少数株主持分 175,945 長期金融債権 260,361 資本 571,064 投資等 396,059   資本金 274,926 有形固定資産 1,199,285   資本剰余金 285,736 その他の資産 734,862   利益剰余金 462,058   その他の包括損益累計額 △450,775   自己株式 △881 資産計 5,238,936 負債・資本計

( 資  産  の  部) 流動資産 2,621,216   現金及び現金同等物 327,098   受取手形及び売掛金 1,089,540   短期金融債権 166,190   棚卸資産 629,659   その他の流動資産 408,729 長期受取手形及び売掛金 27,153 長期金融債権 260,361 投資等 396,059 有形固定資産 1,199,285 その他の資産 734,862 資産計 5,238,936

conditionalStatement 条件処理のフロー conditionalStatement 処理 if属性の有無 無 有 条件式の処理 条件式の結果 偽 真 then属性の有無 else属性の有無 無 無 有 有 thenの式で 値を加工 値を加工しない elseの式で 値を加工 要素を生成しない ソフトウェアシンポジウム2003