No.14 摩擦振動している振動体に作用する摩擦力特性の測定

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No.14 摩擦振動している振動体に作用する摩擦力特性の測定  研究者   江里 隆輔,朝重 勇紀 指導教官 原 要一郎,森田 英俊 ナンバー14.摩擦振動している振動体に作用する摩擦力特性の測定

1.緒論

原因:乾性摩擦の特性 摩擦振動を原因とする問題 自動車や鉄道車両で,不快音による乗り心地の悪化 振動による構造物の破壊 びびり振動による製品不良 摩擦が発生している系では摩擦振動が発生することがあり、それを原因とした問題が起きています。その例として、自動車のブレーキの鳴きや鉄道車両がカーブを曲がるときの甲高い音などの不快音による乗り心地の悪化。また、振動による構造物の破壊や、旋盤などでのびびり振動発生による製品不良等が起きています。このまさつ振動の原因は乾性摩擦の特性であると言われています。 原因:乾性摩擦の特性

実際に測定した実験例はない 乾性摩擦の特性 摩擦速度がある速度以下のときに, 速度の上昇に伴い 摩擦係数(摩擦力)が減少する ここで乾性摩擦の特性とは、摩擦速度がある速度以下のときに、速度の上昇に伴い摩擦係数(摩擦力)が減少することです。しかし、実際に測定した実験例はありません。そこで 実際に測定した実験例はない

本研究の目的 1.摩擦力の時間変化 2.摩擦速度に対する摩擦力の変化 摩擦振動している振動体の変位と加速度を同 時に測定し,それより振動体に作用する摩擦力を 求め、以下の関係を調べる。 1.摩擦力の時間変化 本研究の目的は、摩擦振動を発生させ、振動体に作用する摩擦力を測定し次の関係を調べることです。 1に、摩擦振動発生時の摩擦力の時間変化。 2に摩擦速度に対する摩擦力の変化です。 2.摩擦速度に対する摩擦力の変化

2.理論

図1 2自由度系の力学モデル θ:回転角 M:振動体の質量J:振動体の重心回 りの質量慣性 モーメント K:ねじれの k:ばね定数    ばね定数 k:ばね定数 M:振動体の質量J:振動体の重心回  りの質量慣性    モーメント V:摩擦面の速度 H xG:重心の変位 F(t):摩擦力 摩擦面 振動体 振動体の重心位置と摩擦の位置が一致しない場合には振動体の重心回りの回転運動が発生し2自由度系となります。その力学モデルを図1に示します。今黒塗りしているところが摩擦面となります。Mは振動体の質量、Jは振動体の質量慣性モーメント、スモールkはばね定数、ラージkはねじれのばね定数、XGは振動体の重心位置の変位、θは振動体の重心回りの回転角、Fは摩擦力、Vは摩擦面の速度、ラージHは振動体の重心位置から摩擦部までの距離です。 図1 2自由度系の力学モデル

と は測定するのが困難 ・・・・(1) ・・・・(2) 重心の並進の運動方程式は 重心まわりの回転運動方程式は  と は測定するのが困難   ・・・・(2) 振動体の重心の並進の運動方程式は1式となります。Xgツードットは振動体の重心位置の加速度です。また、振動体の重心回りの回転運動方程式は2式となります。θツードットは重心周りの回転の角加速度です。しかし、θとθツードットは測定が困難です。そこで

図2.1 2自由度系の測定モデル K:ねじれのばね定数 θ:回転角 xu:上測定点の変位 xd:下測定点の変位 xG:重心の変位 F(t):摩擦力 h M:振動体の質量 J:振動体の重心回りの質量慣性モーメント H 図2に示すように測定モデルというものを考えました。ここで、M、J、スモールk、ラージk、XG、θ、F、ラージHは先ほどと同じく定義します。振動体の重心位置から上下スモールhの位置を測定点としてそれぞれ上測定点、下測定点とし、xuを上測定点の変位、xdを下測定点の変位とします。 図2.1 2自由度系の測定モデル

(1)、(2)式に代入 ・・・・(3) ・・・・(4) 下測定点の変位 上測定点の変位 ・・・・(6) ・・・・(5) 下測定点の変位  上測定点の変位     (1)、(2)式に代入 ・・・・(6) ・・・・(5) 上測定点の変位は3式、下測定点の変位は4式となります。ここで、θを微小として、3,4式および3,4式を時間で2回微分した式を1,2式に代入するとそれぞれ5、6式となります。

1自由度系 F(t):摩擦力 H F(t):摩擦力 重心 摩擦面が重心の位置に接近 また、摩擦面が振動体の重心位置に接近した場合には、振動体の回転運動が無視できるほど小さくなり1自由度系と考えることができます。 1自由度系

図2.2 1自由度系の力学モデル F(t):摩擦力 M:振動体の質量 x:振動体の変位 k:ばね定数 V:摩擦面の速度 その力学モデルを図3に示します。ここで、Mは振動体の質量、スモールkはばね定数、xは振動体の変位、Fは摩擦力、Vは摩擦面の速度です。 図2.2 1自由度系の力学モデル

1自由度系の運動方程式は 測定点を1箇所とできる ・・・・(7) また ・・・・(5) 変位と加速度を同時に測定すれば そのときの振動体の運動方程式は7式となります。7式より、1自由度系の摩擦力の測定は測定点を1点とすることができます。またさきほどの5式とあわせ、変位と加速度を同時に測定すれば摩擦力を求めることができます。 変位と加速度を同時に測定すれば 摩擦力F(t)が求まる

3.実験装置

図3 実験装置全体図 回転円板 摩擦部(真鍮) 板ばね固体部 振動体 板ばね 主軸 ステッピングモータ 図4に本実験で使用した装置の概略図を示します。板ばね固定部⑫に固定された板ばね⑤の自由端に振動体④が取り付けられており、その振動体に取り付けられた真鍮製の摩擦部③が回転円板①の回転中心から半径方向に距離72mmの位置で回転円板の上面と接触しています。回転円板はナットにより主軸⑧の先端に結合されており、主軸の他端はステッピングモータ⑪と結合されています。摩擦の発生は回転円板を回転させることにより行います。次に振動体近くの拡大図を示します。 図3 実験装置全体図

振動方向 板ばね 振動体 回転円板 摩擦面 振動体の振動方向は図の赤矢印の方向となります。 図4 振動体部の拡大図

重心位置 1自由度系 おもり 2自由度系 φ5mm 接触面 5mm 振動体

4.実験方法

変位計と加速度ピックアップ, 速度ピックアップの取付け位置 ギャップセンサ(AEC-2525-30) 加速度ピックアップ 速度ピックアップ ギャップセンサ(AEC-2525-05) 次に振動体の変位と加速度、および摩擦面の上下変位の測定機器の取り付け位置を示します。振動体の変位はこのギャップセンサで、摩擦面の上下変位はこちらのギャップセンサで測定します。どちらのギャップセンサも非接触型です。また振動体の変位、摩擦面の上下変位のプラス方向は図の黒矢印の方向となります。加速度ピックアップは振動体の中心線上、重心位置近くに、速度ピックアップはその側に取り付けました。 変位計と加速度ピックアップ, 速度ピックアップの取付け位置

実験条件 回転円板の摩擦面の上下変位と速度 (1)1自由度系および2自由度系での摩擦力特性の測定 (2)測定値は、振動体の 変位、加速度、速度、 回転円板の摩擦面の上下変位と速度 (3)測定機器の不足により、2自由度系での測定にも変位,加速度それぞれ     1点測定とし,摩擦力特性の基本的なものの測定 (4)回転円板の摩擦面の速度Vは 9.3,18.9,48.9,111.2,189.2mm/s の5種類に変化 本実験の条件は、1自由度系、および2自由度系での摩擦力の測定を行いました。実験で行った測定は振動体の変位、加速度、速度、回転円板の摩擦面の上下変位、回転円板の回転数の測定からもとめた摩擦面の速度です。2自由度系での摩擦力の測定には振動体の変位と加速度をそれぞれ2点必要としますが、本実験では測定機器の不足により2点測定とし、摩擦力特性の基本的なものを測定しました。回転円板の摩擦面の速度は9.3、18.9、48.9、111.2、189.2mm/sの5種類に変化させました。データの収録は摩擦を発生させ充分ならした状態にしたあと、ならし運転での熱の影響をなくすために時間をおいてから行いました。 (5)データの収録は,摩擦を発生させて十分ならした状態にしたあとに,時間を置い てから行った

実験諸量 振動体の質量M 1自由度系 0.987kg 2自由度系 1.104kg 板ばねのばね定数 k 6060N/m 押付け力 約20N 次に実験の諸量を示します。振動体の質量は1自由度系の場合には0.987kg、2自由度系の場合には1.104kgです。また板ばねのばね定数は実験による測定値、6060N/mです。

5.実験結果および考察

振動体の変位 V=48.9mm/s V=111.2mm/s V=189.2mm/s (mm) (mm) (mm) 3.5 -1.5 図に摩擦面の速度を変えた場合の振動体の変位の例を示します。摩擦面の速度は図の上から、48.9mm/s、111.2mm/s、189.2mm/sです。摩擦面の速度が48.9、と189.2mm/sでは振幅が変動していますが、111.2mm/sではほぼ一定振幅となっています。これは2自由度系の場合にも同じことがいえました。 振動体の変位

摩擦面の速度と変位両振幅 18.9 111.2 189.2 2自由度系 48.9 9.3 1自由度系 このグラフは摩擦面の速度の変化に対する、振動体の両振幅の変化を表したグラフです。図の上の数字と破線は摩擦面の速度を表しています。図の青線は1自由度系、赤線は2自由系の結果です。1自由度系の場合には摩擦面の速度が増すと両振幅が増加して、111.4で最大となり、189.2mm/sでは小さくなっています。2自由度系では1自由度系の場合と同じように摩擦面の速度は上昇すると変位の両振幅が増加していますが、189.2mm/sでの両振幅が最大となっています。 摩擦面の速度と変位両振幅

拡大図と振動数の1例(V=111.2mm/s) 11.8Hz 73.6Hz 10 3.5 [mm(dB)] (mm) -1.5 -90 0 50 100 150 200 63.0 64.0(s) (Hz) 振動体の変位 30 15 73.6Hz [m/s2(dB)] (m/s2) -15 -70 0 50 100 150 200 63.0 64.0(s) 図に振動体の変位と加速度の波形、およびそれぞれのFFT解析結果の例を示します。図は上から振動体の変位とFFT解析結果、振動体の加速度とFFT解析結果です。変位と加速度の両方に出ているFFT解析結果のピークは11.8Hz、加速度ピックアップの高調波は73.6Hzです。11.8Hzは振動体の並進の固有振動数と、また、73.6Hzは回転運動の固有振動数と近くなっています。 (Hz) 振動体の加速度 拡大図と振動数の1例(V=111.2mm/s)

18.9 9.3 111.2 189.2 48.9 1自由度系 2自由度系 摩擦面の速度に対する振動体の振動数変化のグラフです。青線が1自由度系、赤線が2自由度系の結果です。どちらの場合も、摩擦面の速度が変化すると振動数がわずかに変動していることがわかります。また、1自由度系と2自由度系での平均の差は、重心の位置を変化させるために取り付けたおもりにより、2自由度系の振動体の固有振動数が小さくなったことが原因です。しかし、摩擦面の速度が9.3mm/sでは1自由度系、2自由度系の振動数が近くなっています。 摩擦面の速度と振動数

1自由度系と2自由度系の比較(V=111mm/s) 11.8 1自由度系の場合 10.9 10.9の整数倍 1自由度系 2自由度系 摩擦面の速度が111.2mm/sでは1時湯度系と2自由度系で振動の様子が大きく異なったので図に示します。図は振動体の変位とFFT解析結果で上が1自由度系の場合、下が2自由度系の場合です。FFT解析結果をみると、1自由度系の場合にはピーク点が一点であるが、2自由度系の場合には高周波がのっています。この高周波は10.9Hzの倍数成分となっています。次に波形の拡大図を示します。青線が1自由度系、赤線が2自由度系の波形です。プラス方向の最大変位では2つの波形は同じような形をしていますが、マイナス方向の最大変位付近では、2自由度系の波形が平たくつぶれている事がわかります。 2自由度系の場合 1自由度系と2自由度系の比較(V=111mm/s)

×k + ×M = 次に摩擦力の求め方を説明します。振動体の変位の波形にばね定数をかけたものと、加速度の波形に振動体の質量Mをかけたものを足し合わせることで摩擦力を求めます。 摩擦力の求め方

0.5N 摩擦面の上下変位と摩擦力の変化の関係について述べます。図は上から摩擦力の時間軸波形、下が摩擦面の上下変位の時間軸波形です。これらを比較するために重ね合わせます。図は黒線が摩擦力、水色の線が摩擦面の上下変位です。摩擦面が上下すると、同じように摩擦力も変動していることがわかります。しかしその変動の両振幅は約0.5Nと小さいです。 摩擦力と摩擦面の上下変位の関係

振動1周期における摩擦速度に対する摩擦力の変化を示しています。図は上から摩擦力の1周期、摩擦速度の1周期、そして一番下の図は縦軸に摩擦力、横軸に摩擦速度をとったものです。赤丸と黄色三角はそれぞれ摩擦力の波形と摩擦速度の波形の赤丸、黄色三角と対応しています。また、この面積は摩擦力が1周期にした仕事に相当します。

9.3 18.9 48.9 111.2 189.2 9.3 48.9 18.9 111.2 189.2 先ほどの摩擦速度に対する摩擦力の変化を、1自由度の場合の摩擦面の速度ごとに求めたものを図に示します。図より、摩擦面の速度が111.2mm/sまでは図の形が楕円に近い状態となっていますが、189.2mm/sではほぼ直線状に重なっています。また、この図に2自由度系の場合を重ねます。図の青線は1自由度系、赤線は2自由度系を表しています。2自由度系の場合について1自由度系と比較すると摩擦面の速度が9.3mm/sではほぼ点に近くなっていて1自由度系の場合とは形も面積も異なります。18.9と48.9でも同じように形および面積が異なります。111.2mm/sでは他の4点の摩擦面の速度とは大きく異なっており、2自由度系での形が三日月に近い状態となっています。 摩擦速度に対する摩擦力の変化

摩擦力-摩擦速度の1次近似曲線の例を示します。摩擦速度を横軸、摩擦力を縦軸として回転円板の摩擦面1周分の摩擦力と摩擦速度をとり、最小二乗法を用いてその1次近似曲線を求めたものです。 摩擦力-摩擦速度の1次近似曲線の例

1次近似曲線での比較(全体) 18.9 111.2 回転 円板の摩擦面の速度(mm/s) 直線の傾き(×10-5) 1自由度 2自由度 9.3 400 -100 18.9 -1050 48.9 90 -3 111.2 60 21 189.2 560 -110 9.3 48.9 189.2 2自由度系 9.3 18.9 48.9 1自由度系 111.2 図は摩擦速度に対する摩擦力の変化の1次近似曲線を、1自由度系の場合、2自由度系の場合ともにまとめたものです。青線は1自由度系、赤線は2自由度系の結果です。1自由度系の場合は摩擦面の速度が18.9以外では傾きが正となっているが、摩擦面の速度が18.9mm/sで大きな負の勾配となっています。また、摩擦速度に対する摩擦力の勾配は、50mm/s付近で負から正になり、そのあとは上昇していくような特性を示しています。しかし、それに反し、摩擦速度が9mm/s付近では傾きが正となっています。しかし、この速度付近での振動体の変位は小さく正確な摩擦力の測定にはより高精度な測定が必要であると考えています。次に2自由度系の場合には1自由度系の場合とは大きく異なり、摩擦速度が111mm/s付近で正となっているほかはすべて負となっているが、その値は1自由度系の場合に比べるとほとんど0にちかい。 189.2

結言 (1)摩擦位置が振動体の重心位置にある場合と重心から離れた場合では,摩擦振動は異なった様子を示す. (1)摩擦位置が振動体の重心位置にある場合と重心から離れた場合では,摩擦振動は異なった様子を示す.             (2)摩擦位置が振動体の重心位置にある場合と,重心から離れた場合ともに,回転円板の摩擦面の速度が約112mm/sで一定振幅の振動をし,摩擦力が1周期にした仕事が最大になる.           

結言 (3)摩擦位置が振動体の重心位置にある場合では,摩擦速度が50mm/s付近から摩擦力-摩擦速度の1次近似曲線の傾きの正負が変化している. (4)摩擦振動の振幅が一定となるのは,摩擦力-摩擦速度の1次近似曲線の傾きがほぼ0の付近である.

糸 2m 摩擦部 振動体

縦方向のばね定数の計算 縦弾性係数 E= 2.06E+11 Pa 腕の長さ L= 0.157 m はりの幅 b= 0.003 m はりの高さ h= 0.018 m I= 4 はりの断面二次モーメント 1.458×10-9 m ばね定数 k= 232.8×103 N/m = 232.83 N/mm = 0.23 N/µm

測定機器の感度 ギャップセンサ          振動体用:1.2mm/V 摩擦面上下変位用:0.15㎛/mV 加速度ピックアップ:100mV・s2/m 速度ピックアップ:20mV・s/m