ミクロ経済学II 第18回 要素価格と所得分配 2 所得分配率 現在割引価値と土地の価格決定
生産要素市場 → 所得分配 所得分配の問題: だれがどれだけ稼ぐか? ー 労働者は賃金を稼ぎ、資本家は利子を稼ぎ、地主は地代を稼ぐ 生産要素市場 → 所得分配 所得分配の問題: だれがどれだけ稼ぐか? ー 労働者は賃金を稼ぎ、資本家は利子を稼ぎ、地主は地代を稼ぐ (所有する生産要素を供給して支払いを受ける) 要素価格(賃金、利子、地代など)はどのように決まるか? ー それぞれの市場の需要と供給で決まる ー 企業の生産活動 → 派生需要(労働需要、資本需要、土地需要など)
派生需要のまとめ 労働需要関数: w=P×F'(N) 賃金(w)と労働1単位がうみだす収入と等しくなるように企業は雇用量を決定 資本需要関数: r=P×F'(K) 資本レンタル料(r)と資本1単位がうみだす利益と等しくなるように企業は資本投入量を決定 土地への需要関数: a=P×F'(L) 地代(レント、a)と土地1単位がうみだす利益と等しくなるように企業は土地の利用量を決定
今日やること 1.所得分配率 2.割引現在価値 土地の価格決定 課税と地価 4
国民所得・資本所得・労働所得 三面等価の原則 ⇒ 国民所得=国民総生産 生産されたものは最終的には必ず誰かの所得になる 三面等価の原則 ⇒ 国民所得=国民総生産 生産されたものは最終的には必ず誰かの所得になる 所得: 生産要素の供給量×生産要素価格 資本所得=資本レンタル料×資本供給量 労働所得=賃金×労働時間 5
所得分配率 資本家と労働者はどのようにパイ(=国民所得)を分けているか? 6
コブ=ダグラス型生産関数 経済全体の生産関数がコブ=ダグラス型 ⇔ このとき、資本所得の分配率はα、労働所得の分配率は1-αとなる 例) 経済全体の生産関数がコブ=ダグラス型 ⇔ このとき、資本所得の分配率はα、労働所得の分配率は1-αとなる 例) ⇒ 資本所得の分配率=労働所得の分配率=0.5 7
証明 労働需要関数: w=P×F'(N) 資本需要関数: r=P×F'(K) ⇒均衡においては、w=F'(N) & r=F'(K) 8
証明-つづき これを代入すると 9
コブ=ダグラス生産関数がよく使われる理由 収穫一定 (確認してみよう) 現実に労働所得の分配率は時間を通じてそれほど変化しない 微分可能 10
今日やること 1.所得分配率 2.割引現在価値 土地の価格決定 課税と地価
投資プロジェクトの比較 今、100万円投資資金を持っているとします。市場利子率は毎年1%とします。 次のような投資プロジェクトのどちらかに投資するか、もしくは利子率1%で銀行に預けるか? プロジェクト1: 1年後に102万円になって戻ってくる プロジェクト2: 2年後に103万円になって戻ってくる
1年後にはどうなっているか? 銀行に預金した場合: 利子率が1%なので 100万円×(1+ 0.01)=101万円 銀行に預金した場合: 利子率が1%なので 100万円×(1+ 0.01)=101万円 プロジェクト1: 102万円 プロジェクト2: (1年後からさらに)1年後に103万円 ⇒ 銀行に預金するよりプロジェクト1のほうが得 プロジェクト2は他の二つと比べてどうか?
2年後にはどうなっているか? 銀行に預金した場合: 利子率が1%なので 100万円×(1+ 0.01)×(1+ 0.01)=102.01万円 銀行に預金した場合: 利子率が1%なので 100万円×(1+ 0.01)×(1+ 0.01)=102.01万円 プロジェクト1: 1年後に102万円もらったお金を1年間銀行に預金して利子を受け取ることができるので 102万円×(1+ 0.01)=103.02万円 プロジェクト2: 103万円 ⇒ プロジェクト1がベスト
現在割引価値 利子率をrとおくと、 今のx円→1年後のx×(1+r)円 ⇒ 1年後のy円→今のy÷(1+r)円 今のx円→2年後のx×(1+r)2円 ⇒ 2年後のy円→今のy÷(1+r) 2円 ・・・ 今のx円→n年後のx×(1+r)n円 ⇒ n年後のy円→今のy÷(1+r) n円
投資プロジェクトの現在割引価値 今 1年後 2年後 銀行預金 100 100*(1+0.01) 100*(1+0.01)2 プロジェクト1 102/(1+0.01) 102 102*(1+0.01) プロジェクト2 103/(1+0.01) 2 103/(1+0.01) 103
土地の価格=地代の現在割引価値の和 1年後の地代がd1→現在割引価値=d1÷(1+r) 2年後の地代がd2→現在割引価値=d2÷(1+r) 2 ・・・ n年後の地代がdn→現在割引価値=dn÷(1+r) n ⇒ 無限期先までの地代の現在価値をすべて足し合わせたものが土地の価格
もし地代収入が不変なら簡単な式になる 地代が今も将来もdのまま変わらないとすると、土地の価格Pは 両辺に(1+r)をかけると (2)から(1)を差し引くと rP = d ⇒ P = d/r
土地の価格は無限大にならないの? 土地の価格は無限期先までの地代の現在価値の和 ⇒ どうして土地の価格は無限大にならないの? 理由: ⇒ どうして土地の価格は無限大にならないの? 理由: 先になるほど地代の現在割引価値は小さくなり、無限期先にはゼロになるから 例) 利子率を1%とすると 100年後の100万円の現在割引価値≒37万円 1000年後の100万円の現在割引価値≒47円 もし利子率がゼロなら土地の価格は無限大になる 19
地代が毎年同じ割合で上昇するケース 地代が毎年sの割合で上昇するなら、今の地代をdとすると、n年後の地代はd(1+s)nになるので、 両辺に(1+r)/(1+s)をかけると (2)から(1)を差し引いて、Pについてとくと (sが0に十分近いときの近似)
地代上昇で土地価格が無限大にならない条件 地代上昇率≧利子率 ⇒ 土地の価格も無限大に 地代上昇率<利子率 ⇒ n年後の地代収入の現在価値は が1より小さければ、nが無限に大きくなると も限りなくゼロに近づく 21
利子率上昇と地価 利子率の1%の上昇は地価をどれだけ下げるか? 現在の地代収入を年間100万円、利子率を3%、毎年の地代上昇率を2%とすると、地価は 100万円÷(0.03-0.02)=1億円 利子率が4%のときの地価は 100万円÷(0.04-0.02)=5000万円 地価が半分に!
課税と地価 1%の土地保有税は地価をどれだけ下げるか? 現在の地代収入を年間100万円、利子率を3%、毎年の地代上昇率を2%とすると、課税前の地価は 100万円÷(0.03-0.02)=1億円 1%の課税は地代上昇率が2%から1%に下がるのと同じ効果を持つので、課税後の地価は 100万円÷(0.03-0.01)=5000万円 地価が半分に!