小川一仁 ※今回スライド全体の事前配布をしません。終わり次第webにupします。

Slides:



Advertisements
Similar presentations
CMU2005 海外エンジニアリングワークショップ参加報告書 1 「真の要求を見極めろ!」: teamB 要求定義をどう捉えるか ● 要求定義とは何か? 製品には、顧客の望むことを正しく反映させる必要がある。 そのために必要なものが要求仕様である。 すなわち、要求仕様とは、顧客と製品を結ぶものであり、これを作ることが要求定義である。
Advertisements

問1 図のようにコインが並んでいます。コイン を3枚だけ動かして、三角形を逆にしてく ださい。. 回答・解 説 ① ② ③ ①、②、③のコインを図のように動かし ます。
SNS によるストレスの研 究 鴫原 康太. 本研究の目的 今回私がこの研究を行おうと思ったきっかけは、 SNS によるストレスを自分も少なからず感じるこ とがしばしばあったということが今回の研究を 行ったきっかけである。 「既読無視」「バカッター」など SNS のあり方、 使い方を誤って使ったり、
ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ(第2回) 第2章 戦略形ゲームの基礎
いわきビジネスアイディア・プランコンテスト2009 プレゼンテーションの必須スライド雛形
本日のスケジュール 14:45~15:30 テキストの講義 15:30~16:15 設計レビュー 16:15~16:30 休憩
ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ (第4回) 第3章 完全情報の展開形ゲーム
ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ (第8回) 第5章 不完全競争市場の応用
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved
認知科学ワークショップ 第2回 記憶(1).
東京大学工学部 丁友会学生委員会 学生委員長 竹内健登
動画投稿サイトによる広告 宣伝効果の研究 本多 俊元.
第9章 ファイナンスの基本的な分析手法 ファイナンスの分析手法は、人々が金融市場に参加する際の意思決定に役立つ 扱うトピックは
ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ (第6回) 第4章 戦略形ゲームの応用
「生き残り競争」から抜け出したい! -ゲーム理論入門- 東京国際大学オープンキャンパス (2014年8月23日) 経済学部体験授業
MOT今後の活動について 2007/1/17 右立 真輝.
研修③支援の依頼を体験しよう! 「周りの人に協力を依頼してみよう! (ロールプレイ)」
情報モラル学習(4年-1) 電子メールを使おう.
クイズ 「インターネットを使う前に」 ネチケット(情報モラル)について学ぼう.
感情移入に基づく 共感性と信頼行動: 囚人のジレンマゲームによる検証
イントロダクション.
初級ミクロ経済学 -ゲーム理論入門- 2014年12月19日 古川徹也 2014/12/19.
A班 ランダム選択に一言加えたら・・・ 成田幸弘 橋本剛 嶌村都.
~ 回答数  ~ 回答数 206.
教育実習事前指導 第二回  2004.4.1 長谷川元洋.
政策決定のプロセス 政策過程論 公共選択 ゲームの理論.
初級ミクロ経済学 -ゲーム理論入門- 2014年12月15日 古川徹也 2014年12月15日 初級ミクロ経済学.
ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ(第3回) 第2章 戦略形ゲームの基礎
金融の基本Q&A50 Q41~Q43 11ba113x 藤山 遥香.
ハイパー氷河期の時代 ハイパー氷河期の時代(プレゼンテーション)
集団における適応 知識構造論講座 下嶋研究室          M1 関本 和弘.
~企画~ GO,桑田,ヒルズ.
慶應義塾大学経済学部 グレーヴァ香子 Takako Fujiwara-Greve
新ゲーム理論 第Ⅰ部 非協力ゲームの理論 第1章 非協力ゲームの戦略形
シミュレーション論 Ⅱ 第14回 実験とシミュレーション.
シミュレーション論 Ⅱ 第14回 まとめ.
シミュレーション論 Ⅱ 第15回 まとめ.
  情報に関する技術       情報モラル授業   .
0. 課題提出のルール How to submit the assignments
教育工学を始めよう ~研究テーマの選び方から論文の書き方まで~ (第1章)
WEBアプリケーションの開発 2002年度春学期 大岩研究会2.
心のバリアフリー研修 基本プログラム例C 00:00.
受講日:   月  日 暗黙知の見える化ワーク 第4回 話しかけるタイミングを読む.
意外と身近なゲーム理論 へなちょこ研究室 p.
受講日:   月  日 暗黙知の見える化ワーク 第1回 コミュニケーションとは.
教師にとっての「生の質」 青木直子(大阪大学).
「選挙の大切さについて」 資料モデル 1 選挙制度の意義や目的について、選挙の歴史や制度の特徴 などを踏まえてわかりやすく説明する。
役割課題への対処方法 参考資料.
テストが終わって 6月30日 全校集会.
企画 協力 制作 画像提供:JAXA/NASA 高学年用.
超短期トレードで生き残るためのテクニックと考え方
信頼の構造 原 謙治 2004/10/13.
★C++/オブジェクト指向実践企画★ Othelloゲーム作成
シミュレーション論 Ⅱ 第1回.
本日のスケジュール 14:45~15:30 講義 15:30~16:15 企画書レビューシート記入 16:15~16:30 休憩
佐世保市 保健福祉部 長寿社会課 生活支援体制整備事業 第2回 地域づくりを考える勉強会 佐世保市 第1層 生活支援コーディネーター 成冨努.
自由席にしています。 資料のある席へお座りください.
本当は消去できていない!? ~データを完全消去する方法~
本当は消去できていない!? ~データを完全消去する方法~
問題 あなたはポケモンGOをやっています. これから5か所のポケモンの巣(ポケモンがよく出る場所)を回って レアポケモンを捕まえに行こうと思っています. しかし,持ち物を見たらハイパーボール1つしかありませんでした. なるべくCPが高い(強い)レアポケモンを 捕まえたいのですが, 何か所目で捕まえれば.
or-8. ゲーム理論 (オペレーションズリサーチを Excel で実習するシリーズ)
探究科スライド 教材No.10.
第13回(通算29回) 福祉対象者への相談援助 合意形成
情報ネットワークと コミュニケーション 数学領域3回 山本・野地.
地域統計 第一回担当:小宮山.
人工知能概論 第4回 探索(3) ゲームの理論.
FPS(続き).
探究科スライド 教材No.12.
第6分科会 商品コンセプト開発の研究 要旨 2013年度テーマ 商品開発手法「キーニーズ法」(ニーズアプローチ)の有効性検証 1.研究の目的
地域と金融 前田拓生.
Presentation transcript:

小川一仁 kz-ogawa@kansai-u.ac.jp ※今回スライド全体の事前配布をしません。終わり次第webにupします。 社会システムデザイン総論 小川一仁 kz-ogawa@kansai-u.ac.jp ※今回スライド全体の事前配布をしません。終わり次第webにupします。

実験します 最初に以下の状況を思い浮かべて下さい。 AさんとBさんがいます。 Aさんはウサギを狩りに行くか、鹿を狩りに行くかを選べます。

実験します ウサギは一人でも狩ることができますが、鹿は2人で協力しないと狩ることができません。 今、ウサギを狩ると一人あたり2点もらえるとします。 鹿を狩ると、一人では狩ることができませんので、その場合は0点(もう一人はウサギを狩りに行ってるので、2点)、2人で狩る場合にはそれぞれ3点もらえるとします。

実験します 選択は同時にするので、事前の相談はできないとします。 誰と一緒に狩りに行くかもわからないとします。 後で設定を変更します。 合コンみたいなもの?だと思って下さい。

実験します 以上のお話を表にします。 Aさんの選択↓\Bさんの選択→ ウサギ狩り 鹿狩り 2(Aさんの得点), 2(Bさんの得点) 2, 0 0, 2 3, 3

実験します 今から記入用紙を配ります。 Aさんになったつもりで、ウサギ狩りに行くか鹿狩りに行くかを決めて、○をして下さい。 書けたタイミングでこちらから合図しますので、記入用紙を前に送って下さい。

実験結果 ウサギ狩りに行く人:163人 理由(一部抜粋) 相手に影響されずに確実に2点もらえるから。 必ず点がもらえる方がうれしい。 囚人のジレンマみたいな事ですか? 奈良県民なので鹿を殺せない。 鹿が4点なら鹿にしたのですが・・・。 一緒に鹿を狩った場合にけんかになりそうなので。

実験結果 鹿狩りに行く人:75名 理由(一部抜粋) リスクがあっても、より高いポイントを取りたい。 二人でウサギ狩りに行くよりポイントが高い。 二人でわいわい楽しめる(??) 協力して狩りをすることに意味がある。 相手も同じように鹿狩りに行くと予想して、私も鹿狩り♡

実験結果からわかること 社シス総論受講生全員で狩りに行くと何が起きるか? あなたがウサギ狩りを選んだ場合、162/(162+75)=68.4%の確率でペアになった人と一緒にウサギ狩りに行くことになる。(当然だが)31.6%の確率でペアになった人と一緒に鹿狩りに行くことになる。 あなたが鹿狩りを選んだ場合、163/(163 +74)=68.7%の確率でペアになった人と一緒にウサギ狩りに行くことになる。(当然だが)31.3%の確率でペアになった人と一緒に鹿狩りに行くことになる。

実験結果からわかること あなたがウサギ狩りに行く場合に得られるポイント=2 あなたが鹿狩りに行く場合に得られるポイント =0×0.68+3×0.32=0.96

実験します 2回目も同じように行います。 記入用紙に記入できたら、こちらの合図で前に送って下さい。 ただし一回目の結果を参考に、さらに自分のポイントを最も大きくするように行動することを心がけて下さい。 記入用紙に記入できたら、こちらの合図で前に送って下さい。

実験結果 ウサギ狩り: 177人 鹿狩り: 57人

リスク支配と利得支配 ウサギ狩り:他人が何をしようとも2の利益を獲得できる。 リスクに対して強い ※正確な定義はより専門の講義で出てくるかも知れない。 リスクを考慮して行動する結果得られるのは、2人ともウサギ狩りに行く=リスク支配均衡

リスク支配と利得支配 一方、利益が最も高くなるのは、2人とも鹿狩りに行くこと=利得支配均衡 利得支配均衡では、補完性が観察される。 2人で力を合わせると、1人ではできなかったことが可能になる。 1人で鹿は狩れないが、2人だと狩れる。

現実の例 一人ずつでは持ち上げられない荷物を二人同時に持ち上げる。 一人では終わらない仕事を二人で片付ける。 1社では完成されられないプロジェクトを2社協同で実施する。

一言言っておくと・・・ 社会科学では現実をありのまま見ることは殆どありません。 殆どの場合、モデルを作って、説明したい事柄を抽象的に表現します。 そうしないと、説明したい事柄の背後にあるメカニズムが見えてこないからです。 特に経済学はその傾向が強く、さらに世の中の一見関係のなさそうな事柄同士をつないで共通性を議論します。

一応言っておくと・・・(2) 大相撲の八百長と企業間の長期取引。 昇進とゴルフトーナメント。 例えば・・・どこが一緒? 大相撲の八百長と企業間の長期取引。 昇進とゴルフトーナメント。 パラサイトシングル(古っ!)とマフィアのお兄さんの生活パターン。 AKBと宝塚歌劇

リスク支配と利得支配 実験結果から見るに、皆さんはリスク支配均衡に引っ張られました。 というのは、理論的にはリスク支配均衡の方が選ばれやすいため。 進化ゲーム理論の予想による。 進化ゲーム理論については、学部生の時に学ぶことはほとんどないので「へーそんなもんなんや」と思っておいて下さい。

リスク支配と利得支配と制度設計 基礎的な制度設計をしてみよう。 目的=利得支配均衡が実現するためには、どのような制度を作ったらいいか?

リスク支配と利得支配と制度設計 選択前に話し合い? 話し合いの結果を忠実に実行させることができるか? 話し合いの結果の忠実に履行させる制度設計を考えないといけない=もう一段上の制度を考えなければならない。 同じ相手と繰り返し意思決定するなら可能かも知れない。 今回はやりません。

リスク支配と利得支配と制度設計 意思決定に順序を付ける? 最初の人が鹿狩りを選ぶと、二人目の人も鹿狩りを選ぶだろう。 最初の人がウサギ狩りを選ぶと、二人目の人もウサギ狩りを選ぶだろう。 最初の人の行動は何で決まるだろうか?

リスク支配と利得支配と制度設計 ともあれ、実際にやってみましょう。 教卓から見て左半分の人が先手。先手の人の結果を見て、残り半分の人が選択。

リスク支配と利得支配と制度設計 1回目結果 先手:ウサギ狩り 29 鹿狩り 56 後手:ウサギ狩り 29 鹿狩り 68 2回目結果 先手:ウサギ狩り  29  鹿狩り 56 後手:ウサギ狩り  29  鹿狩り 68 2回目結果 先手:ウサギ狩り    鹿狩り 後手:ウサギ狩り    鹿狩り

リスク支配と利得支配と制度設計 最初の人の行動はリスク回避的かどうか。 Q1:必ず10000円もらえる 皆さんならどっち?

リスク支配と利得支配と制度設計 最初の人の行動はリスク回避的かどうか(その2)。 Q1:必ず10000円もらえる 皆さんならどっち?

リスク支配と利得支配と制度設計 リスク回避的な人は、先手になったときにウサギを選択する可能性がある。 どうですか?

制度設計の仕方 (結果を見ずに書いていますが)、順序をつけるだけで、鹿狩りに行く人が増えたはず・・・。 順序をつけるって、簡単な変更ですよね?

制度設計の仕方 現状を少し入れ替えるだけでうまくいく例。 臓器提供意思表明 意思表明カードのみ・・・なかなか記入してくれない。 運転免許証の裏、健康保険証の裏に記載スペース記入しやすい

制度設計の仕方 貯蓄させるための方法:貯蓄って難しい! アメリカで実施されているSMarT あらかじめ毎月の預入額を設定 給与が上がった場合、手取額を変更しないように預入額が自動的に増加 入社後に推奨プランとして提示され、特に意思表明がない場合、このプランが選択される。 脱退、再加入は任意。

制度設計の仕方 少しの制度変更で、人や企業の行動を変え、社会をよりよい方向に導く。 Nudgeという。 発展途上国での貯蓄推進方策とか。

参考資料:一部 セイラー&サンスティーン,『実践行動経済学』, 日経BP, 2008 中島隆信, 『大相撲の経済学』, 東洋経済新報社, 2003 レヴィット&ダウナー, 『ヤバイ経済学』, 東洋経済新報社, 2007 依田高典, 『行動経済学』, 中公新書2009