第8回講義 文、法 経済学 白井義昌
第8回講義の内容 8.1 財市場と貨幣市場の同時均衡 8.2 財政政策の効果 8.3 金融政策 8.4 金融政策の効果
8.1 財市場と貨幣市場 (資産市場)の同時均衡 財市場と、貨幣市場の両方が同時に均衡するように利子率と総生産が決定される。 r IS曲線 8.1 財市場と貨幣市場 (資産市場)の同時均衡 財市場と、貨幣市場の両方が同時に均衡するように利子率と総生産が決定される。 r IS曲線 LM曲線 均衡利子率 Y 均衡 総生産
政府購入の増大は GDPおよび利子率に どのような影響をあたえるか? 8.2 財政政策の効果 政府購入の増大は GDPおよび利子率に どのような影響をあたえるか?
政府購入の増大 政府購入の増大は有効需要を拡大する 利子率一定の下で政府購入乗数分だけ有効需要を拡大⇒IS曲線の右シフト r Y ΔG/(1-c) Y
政府購入の増大とクラウディングアウト効果 政府購入の増大はGDPの増大をもたらし、それは貨幣需要の増大へつながる。利子率が一定であれば貨幣市場は超過需要状態になる。 貨幣市場の均衡のためには(貨幣供給は一定)利子率が上昇して貨幣需要の超過需要が解消されなくてはならない。 利子率の上昇によって投資は減少し、そのぶんだけ有効需要は減少する。これを政府購入が民間投資を(押しのける)するという。クラウドアウト 政府購入のクラウディングアウト効果
r IS2 IS1 LM E2 E1 Y 利子率一定の場合のGDP増大効果 利子率上昇による クラウディングアウト効果
LM曲線の傾きクラウディングアウト効果 貨幣需要の利子弾力性が小さいほど(すなわちLM曲線の傾きが急なほど)政府購入のクラウディングアウト効果は大きい。
LM r IS2 IS1 貨幣需要の 利子弾力性が 非常に小さい場合 (LM曲線の傾き が急な場合) E2 E1 Y 利子率一定の場合のGDP増大効果 利子率上昇による クラウディングアウト効果
金融政策はどのようにして 行われるか? 貨幣供給量のコントロール 利子率のコントロール 8.3 金融政策 金融政策はどのようにして 行われるか? 貨幣供給量のコントロール 利子率のコントロール
金融政策当局が貨幣供給を コントロールする方法 M= [(q+1)/(q+s)]H q;現金預金保有比率 s;預金準備率 H;ハイパワードマネー(マネタリーベース、 ベースマネー) 公開市場操作 Hを変化させる 公定歩合政策 公定歩合の変化を通じてHを変化させる 法定準備率操作 sを変化させる
公定歩合政策 公定歩合: 日本銀行が民間銀行に貸し出しを行う際の利子率 日本銀行が決める 公定歩合: 日本銀行が民間銀行に貸し出しを行う際の利子率 日本銀行が決める 公定歩合が下落(上昇)すると民間銀行は安い(高い)コストで日銀からの資金調達ができる。したがって、民間銀行はより多くの(少ない)資金を日銀から借り入れ、貸し出しと預金準備の両方を増やす(減らす)。すなわちハイパワードマネーが増大する(減少する)。
公開市場操作Open-market operations 公開市場操作:日本銀行が債券市場において国債や手形を売買することでハイパワードマネーを調節する。 買いオペ:日銀が国債を購入すると資金が国債を保有していた民間銀行やその他の民間に資金が流れハイパワードマネーが増加する 売りオペ:日銀が保有している国債を売却すれば民間銀行やその他の民間が保有する資金が日銀にもどり、ハイパワードマネーは減少する
法定準備率操作 通常、民間銀行は余分な資金を保有しようとはしない(利子費用などがかかるため)。したがって、預金準備率はほとんど法定準備率に等しい。 日銀が法定準備率を変化させることによって預金準備率を変化させ、貨幣乗数に影響を与えることを通じて貨幣供給を変化させることができる。 法定準備率の減少は預金準備率の減少、すなわち貨幣乗数の増大をもたらし貨幣供給を増やす。 rt +ρ
公定歩合政策 公定歩合: 日本銀行が民間銀行に貸し出しを行う際の利子率 日本銀行が決める 公定歩合: 日本銀行が民間銀行に貸し出しを行う際の利子率 日本銀行が決める 公定歩合が下落(上昇)すると民間銀行は安い(高い)コストで日銀からの資金調達ができる。したがって、民間銀行はより多くの(少ない)資金を日銀から借り入れ、貸し出しと預金準備の両方を増やす(減らす)。すなわちハイパワードマネーが増大する(減少する)。
日銀の資金貸し出しルート 窓口貸し出し(Discount Window Lending) 日銀の役割は「最後の貸し手」 日銀の役割は「最後の貸し手」 民間銀行が預金の引き出しや預金準備維持のため資金が急に必要になる場合に日銀窓口から民間銀行に貸し出す。この日銀貸し出し利子率が公定歩合(discount rate)である。
コール市場 民間銀行が急に資金が必要になった場合でも日銀はなるべく窓口貸し出しをしないようにする。民間銀行は他の民間銀行で資金に余裕のあるものから短期的に借り入れをする。このような銀行間短期資金貸借の場がコール市場である。ここで定まる利子率がコールレート(Fed Funds rate)と呼ばれる。 日銀もこのコール市場に参加し、貸し出しを増やしてコールレートを下げたりすることができる。
8.4 金融政策の効果 貨幣供給の増大効果
貨幣供給の増大はLM曲線を右シフトさせ利子率の下落とGDPの増大をもたらす。 IS r r’ Y Y’
投資の利子弾力性が 小さいときは金融政策のGDPにたいする効果は小さい LM LM’ IS r r’ Y Y’
流動性の罠があるときには 金融政策は効果がない r LM LM’ IS Y