問題と目的 方法 結果と考察 養護教諭の目を通した 児童生徒の自傷と援助・介入(2) 北海道大学大学院教育学院 ◯水野 君平・穴水 ゆかり ―児童・生徒の自傷行為の種別差・性差・学年差を中心に― 北海道大学大学院教育学院 ◯水野 君平・穴水 ゆかり Mail: kimihira0120@gmail.com URL: http://m-kumpei.jimdo.com/ http://bit.ly/1JdKRS1 問題と目的 中学生や大学生の自傷行為の研究では性差を検討した研究[1]はあるが、小学生~高校生の学年差・性差までを網羅した研究は見当たらない。 自傷行為についても切る自傷と打つ自傷が主な対象[2] →養護教諭の目を通すが、より広い範囲[3]で自傷行為・性差・年齢の検討を行なう必要性 [1][2]大嶽ら(2010), 岡田ら(2012) [3] 松本・今村(2009)を参考 方法 (1)調査協力者:3道府県の養護教諭628名 (小学校230名、中学校195名:高校192名、その他11名) (2)時期と方法:2005年1~3月、郵送法・質問紙調査 (3)調査内容:①対応した生徒の性別・学年、②生徒の自傷行為の種類、③生徒のその他の問題行動等 結果と考察 ◆結果1.自傷行為における性差の検討(カイ二乗検定、残差分析 p<.05) 表1 性別ごとの自傷行為の比率 リストカット 腕以外を切る 身体などを殴る 頭を打つ 身体を噛む 自己熱傷 過量服薬 男子(N=154) 55% 21% 52% 22% 11% 9% 2% 女子(N=463) 81% 40% 20% 12% 5% 4% 13% ◆結果2.自傷行為における学年差の検討(カイ二乗検定、残差分析 p<.05 ) 表2 学年ごとの自傷行為の比率 リストカット 身体などを殴る 頭を打つ 抜毛症 身体を噛む 過量服薬 好発学年 中2(N=72) 83% 高1 (N=124) 39% 22% 小3(N=11) 70% 小1(N=3) 100% 高1(N=124) 25% 中3(N=97) 84% 小4(N=9) 50% 高4 (N=4) 67% 小5(N=18) 19% ◆結果3.自傷行為とその他の問題行動の関連(2項ロジスティック回帰) 表3 各自傷行為とその他の問題との関連 リストカット 腕以外を切る 身体を刺す 身体などを殴る 皮膚を掻き毟る 過量服薬 性別(注) 2.962 ** 2.388 1.000 .204 1.007 4.695 飲酒 .990 1.679 * 1.192 1.350 .805 1.135 友人関係問題 1.176 1.080 1.028 1.364 1.072 1.484 異性関係問題 1.498 1.220 1.023 1.174 .738 1.278 家庭内問題 1.315 1.217 1.075 .949 1.863 精神科等を受診 .904 .969 1.059 1.186 1.231 1.731 性別*飲酒 .836 .395 1.046 .993 .945 1.255 性別*喫煙 1.536 3.072 .891 .847 1.375 性別*教室内問題 .916 .419 .886 1.304 1.068 1.146 性別*友人関係 1.222 1.700 .644 .683 1.122 .403 注1:男子=1,女子=2でコーディング * p<.05, ** p<.01 注2:係数はオッズ比(独立変数が1増えたときに、従属変数が起こりえる可能性が何倍になるかという指標) 交互作用項 性別×喫煙 男子で負の効果 (β=-.38, p=.05) 性別×教室内問題 女子で負の効果 (β=-.17, p=.02) 性別×友人関係 男子で正の効果 (β=.40, p=.03) 考察 ①女子、または中学2~高校1年生のほうが問題として比較的に深刻 ②リストカットと腕以外を切る自傷では関連要因が異なる→傷の見えにくさ・手首を切ることの意味への示唆 ③腕以外を切る自傷のみ飲酒の効果あり→行為の行いやすさ・傷の目立たなさによるものだと考えられる ④精神科等の受診との関連→自傷行為の傷等の見えやすさが要因だと考えられる