牛の尿路コリネバクテリウムによる 血尿を主徴とする感染症

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牛の尿路コリネバクテリウムによる 血尿を主徴とする感染症 牛の膀胱炎および腎盂腎炎 牛の尿路コリネバクテリウムによる 血尿を主徴とする感染症

牛の膀胱炎・腎盂腎炎 全国各地でみられるが、寒冷地、特に冬期に発生することが多い。 主として雌成牛に発生し、子牛や雄牛の症例は稀である。 妊娠や分娩が誘因となり、菌が上行性に侵入し膀胱内で増殖して感染が成立する。 さらに上行後、尿管炎や腎盂腎炎を起こす。

原因菌 原因菌はCorynebacterium renale, C.pilosum, C.cystitidisの牛の尿路コリネバクテリウム菌である。 グラム陽性、通性嫌気性、松葉状桿菌で、ウレアーゼ陽性を示す。 線毛を有し、牛の膀胱粘膜への付着に関与する。 病原性が強いのはC.renaleとC.cystidisで、ともに膀胱炎と腎盂腎炎を起こす。 C.pilosumはほとんど病気を起こさない。 C.renaleのみがCAMP(Christic – Atkin – Munch – Peterson)反応陽性である。 (ブドウ球菌のβ毒素による羊および牛の不完全溶血を完全溶血にする物質を産生)

牛の膀胱炎・腎盂腎炎の症状 膀胱炎では血尿、頻回排尿、時には排尿困難な姿勢をとる。 C.cystidis感染では顕著な出血性膀胱炎を起こす。 病勢が進み腎盂腎炎を起こすと発熱・食欲不振・乳量低下を招く。 尿検査により蛋白質や血色素が検出され、尿沈査には上皮細胞、赤血球、白血球、グラム陽性桿菌が観察される。

牛の膀胱炎・腎盂腎炎の病変 膀胱粘膜は浮腫、出血がみられ、尿は混濁している。 尿管は片側あるいは両側が拡張腫大する。 腎臓は腫大し、皮膜は癒着し剥離困難となり、腎臓表面には灰白色斑がみられる。 腎盂は拡張し多量の膿や結石を含む。 組織学的には、膀胱では出血を伴う潰瘍または糜爛がみられ、腎臓では間質における結合組織の著しい増殖がみられる。

牛の膀胱炎・腎盂腎炎の診断・予防 血液寒天培地を用いて尿から菌を分離する。 C.renaleはCAMP反応陽性であるので、他の尿路コリネバクテリアとの鑑別に本反応を用いるのは簡便な方法である。 各種の血清反応があるが、デオキシコール酸ナトリウム処理抗原を用いたゲル内沈降反応が利用されているが、膀胱炎のみの場合は血清抗体が陰性で、腎盂腎炎を起こすと陽性となる。 ワクチンなどはなく、感染牛の尿中には多量の菌が含まれているので、早期に摘発し隔離治療する必要がある。 治療にはpenicillinやstreptomycinなどの抗生物質が用いられるが、再発することが多いので1週間以上の連続投与が必要である。