R 対人援助に必要な心理学(対人援助学) 立命館大学 応用人間科学研究科 望月 昭 ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」 090117 乙訓介護専門員研修会 1月号 対人援助に必要な心理学(対人援助学) ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」 HP : 望月昭のホームページ 立命館大学 応用人間科学研究科 望月 昭 R RITSUMEIKAN
対人援助学とは? 「助ける」 Science for Human Services 対人援助とは・・・・・ 対人援助学とは? Science for Human Services 対人援助とは・・・・・ 「知る(測る)」「教える」「治す」ではなく 「助ける」
「助ける=援助」のキモ Service 御主人(当事者)が、好きな方向(自己決定)へ打つために最適なボールをあげる。
「学」としての対人援助 「過不足なく助ける」とは? 助ける行動のありかたや方法を、どのように表現するか? ・ マンツウマンの「助ける」(直接の支援行為)だけじゃなぜダメか?
表現方法って? ・学=「科学」とは、何かを人に伝えるための 公共的な「書式設定」。 ・対人援助「学」では、何を伝えようとするのか? (それによって書式は決まるだろう)
伝達したい内容は? 一般論(「認知症の高齢者は・・・自閉症の子どもは」)ではなく 「個別の個人」において、 (「欠陥」「できない」ではなく)、 「今できること」や 「今」に続く「できる」可能性 (キャリアアップ)を伝える
「学」の特徴として 「当事者が『やりたい』という気持ちが維持される行動の選択肢を拡大する(できる)」プロセスを表現する 当事者の「個人属性の記述」ではなく、 「これがあれば『できる』という条件についての表現を追及する
「できる」は発見されるもの? ある条件があれば「できる」(本人が「やりたい」と思ってやれる行動が成立する) ・「ある条件」(これが対人援助の内容となる)には無限に近い方法がある。 「できる」は、創造していくものである。
「これ」があれば「できる行動」の表現 行動 先行事象 結果事象 この3つで表現 基本枠組みは「行動分析学」から採用
われわれの3つの仕事 「当事者が『やりたい』という思いで維持される行動の選択肢を拡大する」ために必要な 対人援助者の3つの仕事 「援助」「援護」「教授」
3 2 1 対人援助作業の3つの機能の連環的発展 治療・教授 援護 援助 Instruction advocate assist 個人の行動(反応)形成 3 治療・教授 2 Instruction 援助 援護 advocate assist 1 進歩するとは? 援助設定の定着のための要請 行動成立のための 新たな環境設定
対人援助の際の3つの基本 Given ではなく Get 正の強化 という原則 自己決定という社会的関係
Get Given Given でなく Get ①“物を与える事ではなく、彼らが物を得るということに「生活の質」の目標をおくこと” 自発的に「行動できる」ということが基本 「人を援助する際の倫理」(The ethics of helping people) Skinner, 1978
正の強化と負の強化 ②罰やそれを背景とした「負の強化」でコントロールされるのではなく、「正の強化」でなされるように環境設定を整える。 (Skinner,1990.「罰なき社会」→ HP参照) 「自発的に行動できる」というのは、周囲の環境と無関係に振る舞えるということではない。自由=正の強化で行動が維持されている場合の自己記述
負の強化から正の強化へ 事例:万引き防止策:ふつうはネガティブ ・防犯カメラ ・取り締まりの強化の表示 ・警察官の巡回 ●「正の強化」:具体的表示の重要性とネガティブな統制を避ける方法はないか?
万引きしたら「罰」 しなければ「罰なし」 衣笠のある書店のポスター
万引きは犯罪です。見つけ次第、警察に通報します。 店主 General(and)Negative Sign 万引きは犯罪です。見つけ次第、警察に通報します。 店主 Identification sign ★印のついた商品は、よく万引きされます。 店主
ベースライン 警告サイン 一般的警告サインでは 効果なし 万引き品数 売れた品
何もせず 棚に★印をつける 上着 万引き数 ズボン
「来談者の迷惑になるので階段に 座りこまないでください」 抑制的 心理教育相談センター前のステップ
http://d.hatena.ne.jp/marumo55/20050804 参照 「猫のベンチに座りましょう」 威嚇からユーモアのある指示へ http://d.hatena.ne.jp/marumo55/20050804 参照
侵襲的(嫌悪的刺激の除去を基本とした)方法では 限界あり 罰や負の強化による行動の行方(1)) 侵襲的(嫌悪的刺激の除去を基本とした)方法では 限界あり
罰や負の強化で維持された行動の行方(2) いったんミスをしたらパニック!! http://d.hatena.ne.jp/marumo55/20050505 参照
スピートを下げさせるには どうしたら良いでしょう?
京都府警 交通標語の現状: punish の予告 Negative な control
こんなんやってみたらどうだろう?ふふふ という態度が重要! なんて、のんきで、ポジティブなんでしょう!! Positive なcontrol こんなんやってみたらどうだろう?ふふふ という態度が重要!
自己決定 Service 本人(ご主人様の)好きな方向へ打てるように
選択肢提供者の予想を「裏切れる」選択肢 Choice option 1 Choice option 2 Rejection
「選択肢否定」は要求言語行動の機能の 条件でもある。(要求していないものが供給された場合に,「違います」という 否定の反応が出るか) Choice option 3 Choice option 4 Rejection
…..less of we want them to want 既存選択肢(選択機会自体)からの離脱 …..less of we want them to want 長期にわたる施設生活 聴覚障害の疑いあり JASH(1995) Nozaki & Mochizuki 食事・水分制限あり
「 Option 1 Option 2 Option 3 Rejection Nozaki & Mochizuki (1995) 自発的ノート選択 ノート持ってきて」の依頼 Nozaki & Mochizuki (1995) 「
この研究で示されたこと 1)最重度の知的障害のある個人でも、その個人に 合わせた選択設定を準備すれば選択表明を行える 2)既存選択肢を「おだやかに」拒否する選択肢の 設定を行うことも可能 3)設定のみではなく、教授機会ももちろん必要 4)「本人の好きなものを」のではなく 「選択機会を常に提供すること」が重要 そして、さらに 5)本人に選択を任せても過剰(逸脱的)にはならない (ウーロン茶の例) 過剰・逸脱:選択機会や選択肢内容の貧困から(?) 6)本人の属性的な障害性(聴覚障害/無力症状)も 選択できる「やりたい行動」の経験によって軽減
1.「自己決定」は、単独で行う行動ではない 2.何より選択後のフォローが大切 3.好きな物を見つけようとするのではなく「自由に」選択できる機会の設定とは違う。 4.自己決定の援助:選択肢の拒否の選択肢設定をきちんと設けること
対人援助の心理学 個別の支援計画において何を強調すべきか なにを「引き継いでいけばいいか」 そのためにどんな表現をとっておけばいいか 2009年11月7日~8日あたりで、 第一回対人援助学会を開く予定です。 こぞって参加してください。 (立命館大学衣笠キャンパス)
参考文献 ●望月昭 編(2007) 対人援助の心理学.朝倉書店 ●望月昭 編(2007) 対人援助の心理学.朝倉書店 ●望月昭(1997-1998)「コミュニケーション指導再考).その1からその10.学研. http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/14- Mochizuki(1998-1999).pdf ●村上勝俊・望月昭(2007) 認知症高齢者のQOLを高める援助設定:選択機会設定による活動性の増加の検討.立命館大学人間科学研究,15、9-24. http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/hs/publication/files/ningen_15/ningen15_9.pdf