R 対人援助に必要な心理学(対人援助学) 立命館大学 応用人間科学研究科 望月 昭 ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」

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J.Kominato 個別ケアプラン作成の留意点 個別ケアプラン作成の留意点 J.Kominato.
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学習目標 1 .セルフマネジメントモデル,学習援助型教育とは何か を理解する. 2 .セルフマネジメント支援のために必要な構成要素につ いて理解する. 3 .セルフマネジメントにおいて看護職に求められる能力 と責任について理解する. SAMPLE.
特別支援教育と 個別の支援計画 ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」 立命館大学 応用人間科学研究科 望月 昭 R -15 RITSUMEIKAN 神戸市巡回08.
設置者・管理者の責務② ~職員の育成指導等~ 平成 26 年度 青森県障害者虐待防止・権利擁護研修 公益社団法人 日本社会福祉士会 平成 26 年度障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修から.
「バリアフリーの心理学」(望月) 配布資料(10/ )
広義の自閉症と考えてよい。 知的障害のある「自閉症」「非定型自閉症」と、知的障害のない「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」などがある。
販売行動を通した自発的コミュニケーションスキルの促進
「ストレスに起因する成長」に関する文献的検討
「コミュニケーションを考える」 継続的キャリアアップを実現するための コミュニケーション支援 (小学部から就労までのシームレスな総合支援)
特別支援教育: 子どもの『できる』を支える 分析・評価と情報移行
行動障害心理学 第1回:行動分析の枠組み 望月昭
(1)行動分析学の基礎 「実験する」ことの意味
登校しぶりのある小学生の教室復帰と自力登校行動の支援(加藤哲文・中川日里)についての発表
Ⅱ 訪問介護サービス提供プロセスの理解 Ⅱ 訪問介護サービス提供プロセスの理解.
11 応用行動分析(その5) 応用行動分析による実践・研究のデザイン  (援助者の責任を果たすために)
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
心理学測定法 水曜2限 担当:小平英治.
研修の目的(教材の狙い) 現場の負担軽減を図る 放射線の専門家になる必要はない 気持ちの負担に配慮
09行動分析学特論(その8)    学校教育を考える。 ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」.
(1)ノーマリゼーション、 QOL そして バリアフリー
平成27年度 埼玉県障害者 虐待防止・権利擁護研修
● ブログ:「対人援助学のすすめ」  応用行動分析学11(1)  応用行動分析とは?      望月昭 ● ブログ:「対人援助学のすすめ」 ●HP:「望月昭のホームページ」
バリアフリーのための心理学 2010 (1)社会参加とはどういうこと? ブログ:対人援助学のすすめ
   応用行動分析学(5) (5)行動の原則を行動的環境心理学の研究から確認する.
Ⅲ.サービス開発の方法.
(7)テレビ電話機能の使用 その前に・・・基礎研究例
「人を助ける」実践・研究に関する 倫理的課題(FC問題を中心に)
行動分析実習(7) もろもろ問題集 関連ブログ「行動福祉心理学
独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター認知症疾患医療センター 川島 佳苗
10 応用行動分析(その6) 行動の記録・実験(実践)デザイン なにがあれば「できる」のか?
この授業のねらい 個人的問題から、社会的課題までを、 「行動分析学」(Behavior Analysis) の枠組みでとらえ、具体的な対策について発言提案・実践することができる。
(2)なぜ君は 「応用行動分析」を選ぶのか?
2011 行動分析学特論(7) 対人援助における プロアクティブな対応の具体的内容  「自己決定」を援助する状況.
2011 行動分析学特論(3) 行動の原則を行動的環境心理学の研究から確認する.
研究倫理 対人援助の実践研究を促進するツールとして
 08応用行動分析(その6)        基礎的内容その2 応用行動分析・行動分析学特論 共通資料 (^^);
11 行動分析学特論(8)  障害者の就労支援: 「障害のある個人」への就労支援  あるいは、「キャリア支援」
「就労支援」とは何か? キャリア・アップ、FA宣言
2013 応用行動分析学(2)  行動科学・学習理論 そして     行動分析学 望月 昭.
認知症老人の介護   家族に対するケア 上野公園病院 高 田 靖 子.
交通死亡事故の根絶 交通安全教育の推進 = 交通指導取締り 交通安全施設整備 Ⅲ 交通安全基盤の整備・充実と諸対策の推進 交通警察活動の目的
11応用行動分析(その8)         望月 昭  ●「生活の質」は定量化できるか?  ●「人権」は定量化できるか?  ●権利のボトムアップ支援の担い手は誰?
輝いて、自宅で ~終わりよければすべてよし~
行動障害心理学05 第5回:機能分析を中心とした方法
出発点となる2つの問い 概念化 1つめの問い 「(自立生活)能力の有無」を軸にして、なぜ位相の異なるQOL観が並列的に位置できているか(例えば「寝たきり老人」「認知症高齢者」における違い) 2つめの問い 昨今、「QOL」が数値化されているが、そもそも主観を尺度化できるのか 尺度化.
(1)ノーマリゼーション、 QOL そして バリアフリー
行動分析実習 第7回: 行動的QOL:行動の選択肢の拡大を軸とする作業目標.
立命館大学応用人間科学研究科 望月昭 ブログ:「対人援助学のすすめ」
大学生における援助要請行動の 調査研究.
小学部児童が友だちに要求を 受け入れられなかったときに自傷をせず 言葉で伝えることができるための支援
就労継続支援B型事業所で行う個別支援計画の一例(案)
自己決定(対人援助のキモ) 09行動分析学実習(7)
生活支援 中央研修 H26.9.4(木)~5(金) 品川フロントビル会議室 H26.9.6(土)~7(日) JA共済ビルカンファレンスホール
第7回:環境と随伴性を自らが変容する 行動の獲得とその援助: 1)「要求言語行動」(マンド)の獲得とその成立のための実践
第6回:環境と随伴性を自らが変容する 行動の獲得とその援助: 1)「要求言語行動」(マンド)の獲得とその成立のための実践
10 就労継続支援B型事業所で行う個別支援計画の一例(案)
2.介護に必要な「時間」に置き換えて「要介護度」を判定します。 聞き取った「心身の状況(5項目の得点)」から直接、「要介護度」を求めることはできません。病気の重さと必要な介護量は必ずしも一致しないからです。 そこで、調査結果をコンピュータに入力し、その人の介助にどのくらいの「時間」が必要なのかを推計することで、介護の必要量の目安としています。この「要介護認定基準時間」を用いて要介護度を判定します。
行動分析学特論 5 「学生ジョブコーチ」という行動分析学に基づく実践の例:.
要求言語行動(マンド)の獲得とその成立のための実践
09応用行動分析(その6) 基礎的内容その2  09応用行動分析(その6)        基礎的内容その2 「対人援助学のすすめ」
11応用行動分析(その7) 自己決定(Self-Determination)
「対人援助の方法」(対人援助学)としての応用行動分析の“応用”
アクティブ・シミュレーション の場としての大学 ①物理的資源としての大学 ②人的資源としての大学 ③情報蓄積資源としての大学
2011 行動分析学特論(4) 「思い」と「事実」の違い 強化、罰、の いったいどれを?
2011 行動分析学特論 (1)行動分析学と 対人援助(学)
行動福祉学 来し方行く末 行動福祉学・対人援助学という コンテクスト 立命館大学 望月昭 HP:望月昭のホームページ
09応用行動分析(その9) 自己決定(対人援助のキモ)
 10応用行動分析(その5)        基礎的内容その2 コメントは、以下のブログのコメント欄に ハンドルネイムでもいいですから・・・・
2010応用行動分析(3) 対人援助の方法としての応用行動分析
   学習・行動理論   行動分析学のご紹介 (3)行動の原則を行動的環境心理学の研究から確認する.
Presentation transcript:

R 対人援助に必要な心理学(対人援助学) 立命館大学 応用人間科学研究科 望月 昭 ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」 090117 乙訓介護専門員研修会 1月号 対人援助に必要な心理学(対人援助学) ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」  HP :   望月昭のホームページ  立命館大学 応用人間科学研究科         望月 昭 R RITSUMEIKAN

対人援助学とは? 「助ける」 Science for Human Services 対人援助とは・・・・・   対人援助学とは? Science for Human Services 対人援助とは・・・・・ 「知る(測る)」「教える」「治す」ではなく 「助ける」

「助ける=援助」のキモ Service 御主人(当事者)が、好きな方向(自己決定)へ打つために最適なボールをあげる。

「学」としての対人援助 「過不足なく助ける」とは? 助ける行動のありかたや方法を、どのように表現するか? ・ マンツウマンの「助ける」(直接の支援行為)だけじゃなぜダメか?

表現方法って? ・学=「科学」とは、何かを人に伝えるための 公共的な「書式設定」。 ・対人援助「学」では、何を伝えようとするのか? (それによって書式は決まるだろう)

伝達したい内容は? 一般論(「認知症の高齢者は・・・自閉症の子どもは」)ではなく 「個別の個人」において、 (「欠陥」「できない」ではなく)、 「今できること」や 「今」に続く「できる」可能性 (キャリアアップ)を伝える

「学」の特徴として 「当事者が『やりたい』という気持ちが維持される行動の選択肢を拡大する(できる)」プロセスを表現する 当事者の「個人属性の記述」ではなく、 「これがあれば『できる』という条件についての表現を追及する

「できる」は発見されるもの? ある条件があれば「できる」(本人が「やりたい」と思ってやれる行動が成立する) ・「ある条件」(これが対人援助の内容となる)には無限に近い方法がある。 「できる」は、創造していくものである。

「これ」があれば「できる行動」の表現  行動 先行事象 結果事象   この3つで表現 基本枠組みは「行動分析学」から採用

われわれの3つの仕事 「当事者が『やりたい』という思いで維持される行動の選択肢を拡大する」ために必要な 対人援助者の3つの仕事   「援助」「援護」「教授」

3 2 1 対人援助作業の3つの機能の連環的発展 治療・教授 援護 援助 Instruction advocate assist 個人の行動(反応)形成 3 治療・教授 2 Instruction 援助 援護 advocate assist 1 進歩するとは? 援助設定の定着のための要請 行動成立のための 新たな環境設定

対人援助の際の3つの基本 Given ではなく Get 正の強化 という原則 自己決定という社会的関係

Get Given Given でなく Get ①“物を与える事ではなく、彼らが物を得るということに「生活の質」の目標をおくこと” 自発的に「行動できる」ということが基本 「人を援助する際の倫理」(The ethics of helping people)           Skinner, 1978

正の強化と負の強化 ②罰やそれを背景とした「負の強化」でコントロールされるのではなく、「正の強化」でなされるように環境設定を整える。 (Skinner,1990.「罰なき社会」→ HP参照) 「自発的に行動できる」というのは、周囲の環境と無関係に振る舞えるということではない。自由=正の強化で行動が維持されている場合の自己記述

負の強化から正の強化へ 事例:万引き防止策:ふつうはネガティブ ・防犯カメラ ・取り締まりの強化の表示 ・警察官の巡回 ●「正の強化」:具体的表示の重要性とネガティブな統制を避ける方法はないか?

万引きしたら「罰」 しなければ「罰なし」 衣笠のある書店のポスター

万引きは犯罪です。見つけ次第、警察に通報します。 店主 General(and)Negative Sign 万引きは犯罪です。見つけ次第、警察に通報します。   店主 Identification sign ★印のついた商品は、よく万引きされます。       店主

ベースライン 警告サイン 一般的警告サインでは 効果なし 万引き品数 売れた品

何もせず 棚に★印をつける 上着 万引き数 ズボン

「来談者の迷惑になるので階段に  座りこまないでください」 抑制的 心理教育相談センター前のステップ

http://d.hatena.ne.jp/marumo55/20050804 参照  「猫のベンチに座りましょう」          威嚇からユーモアのある指示へ http://d.hatena.ne.jp/marumo55/20050804 参照

侵襲的(嫌悪的刺激の除去を基本とした)方法では 限界あり 罰や負の強化による行動の行方(1)) 侵襲的(嫌悪的刺激の除去を基本とした)方法では 限界あり

罰や負の強化で維持された行動の行方(2) いったんミスをしたらパニック!! http://d.hatena.ne.jp/marumo55/20050505 参照

スピートを下げさせるには どうしたら良いでしょう?

  京都府警 交通標語の現状:  punish の予告 Negative な control

こんなんやってみたらどうだろう?ふふふ という態度が重要! なんて、のんきで、ポジティブなんでしょう!! Positive なcontrol こんなんやってみたらどうだろう?ふふふ という態度が重要!

自己決定 Service 本人(ご主人様の)好きな方向へ打てるように

選択肢提供者の予想を「裏切れる」選択肢 Choice option 1 Choice option 2 Rejection

「選択肢否定」は要求言語行動の機能の 条件でもある。(要求していないものが供給された場合に,「違います」という 否定の反応が出るか) Choice option 3 Choice option 4 Rejection

…..less of we want them to want 既存選択肢(選択機会自体)からの離脱 …..less of we want them to want 長期にわたる施設生活 聴覚障害の疑いあり JASH(1995) Nozaki & Mochizuki 食事・水分制限あり

「 Option 1 Option 2 Option 3 Rejection Nozaki & Mochizuki (1995) 自発的ノート選択 ノート持ってきて」の依頼 Nozaki & Mochizuki (1995) 「

      この研究で示されたこと 1)最重度の知的障害のある個人でも、その個人に   合わせた選択設定を準備すれば選択表明を行える 2)既存選択肢を「おだやかに」拒否する選択肢の   設定を行うことも可能 3)設定のみではなく、教授機会ももちろん必要 4)「本人の好きなものを」のではなく   「選択機会を常に提供すること」が重要        そして、さらに 5)本人に選択を任せても過剰(逸脱的)にはならない   (ウーロン茶の例)  過剰・逸脱:選択機会や選択肢内容の貧困から(?) 6)本人の属性的な障害性(聴覚障害/無力症状)も   選択できる「やりたい行動」の経験によって軽減  

1.「自己決定」は、単独で行う行動ではない 2.何より選択後のフォローが大切 3.好きな物を見つけようとするのではなく「自由に」選択できる機会の設定とは違う。 4.自己決定の援助:選択肢の拒否の選択肢設定をきちんと設けること

対人援助の心理学 個別の支援計画において何を強調すべきか なにを「引き継いでいけばいいか」 そのためにどんな表現をとっておけばいいか 2009年11月7日~8日あたりで、 第一回対人援助学会を開く予定です。 こぞって参加してください。 (立命館大学衣笠キャンパス)

参考文献 ●望月昭 編(2007) 対人援助の心理学.朝倉書店 ●望月昭 編(2007) 対人援助の心理学.朝倉書店 ●望月昭(1997-1998)「コミュニケーション指導再考).その1からその10.学研.       http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/14-       Mochizuki(1998-1999).pdf ●村上勝俊・望月昭(2007) 認知症高齢者のQOLを高める援助設定:選択機会設定による活動性の増加の検討.立命館大学人間科学研究,15、9-24.      http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/hs/publication/files/ningen_15/ningen15_9.pdf