(兼任:食の安全研究センター・リスク評価科学部門)

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(兼任:食の安全研究センター・リスク評価科学部門) 東大・食の安全研究センター・第19回サイエンスカフェ 食の安全を守る研究最前線! -魚の寄生虫と食中毒のコト- 横山 博 東京大学大学院農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻 魚病学研究室 (兼任:食の安全研究センター・リスク評価科学部門) 40分(講義35分、質疑5分) 平成28年7月28日(木) 於:東大農・フードサイエンス棟「カフェアグリ101」

食品衛生上の問題となる主な魚介類の病原体 分類群 病原体 原因食材 ウイルス ノロウイルス カキなどの二枚貝 細菌 腸炎ビブリオ 海産魚介類 ビブリオ・バルニフィカス 寄生虫 横川吸虫 アユ、シラウオ 肝吸虫 モツゴなどのコイ科魚類 肺吸虫 サワガニ、モクズガニ 剛棘顎口虫 ドジョウ 日本海裂頭条虫 サクラマス アニサキス サバ、タラ、イカなど海産魚介類 旋尾線虫 ホタルイカ クドア・セプテンプンクタータ ヒラメ

ヒラメのクドア食中毒 平成21年6月22日(月)の読売新聞(夕刊) ヒラメやクドアが原因だとはわからなかった

「謎の食中毒」年度別発生件数 注:平成21年度の件数は4月~12月までの9ヶ月間のみ 近年、増加してきた理由は不明 (倉敷市保健所)

「謎の食中毒」発生地域(平成21年度) (倉敷市保健所より) 0 件 1~ 4件 5~ 8件 未回答    0 件   1~ 4件 5~ 8件   未回答  平成21年の原因不明の食中毒事件(57件)を基に、全国地図を作成しました。 (倉敷市保健所より) 5

原因食材の推定 件 数 図.原因不明食中毒のメニューに載っていた食材別(魚介類のみ)の件数(平成21年6月から23年3月に発生した198件)

学術雑誌での発表 →ヒラメに寄生するクドアという寄生虫(粘液胞子虫の1種)が新しい食中毒の原因体として科学的に証明された。 網羅的遺伝子解析 培養細胞 (Caco-2) 動物実験(スンクス、 乳のみマウス) Kawai et al. (2012) CID, 54, 1046-1052 →ヒラメに寄生するクドアという寄生虫(粘液胞子虫の1種)が新しい食中毒の原因体として科学的に証明された。

全国紙での発表 →「風評被害」により消費が停滞 薬事・食品衛生審議会(平成23年4月25日於厚労省) 23年4月26日 産経新聞 薬事・食品衛生審議会(平成23年4月25日於厚労省)  「謎の食中毒」の原因は、ヒラメのクドアという寄生虫である。 23年4月26日 朝日新聞 9分 →「風評被害」により消費が停滞

1.クドアとは 2.粘液胞子虫病の一般的特徴 3.ヒラメのクドア食中毒について ①現状の対策 ②今後の課題 目 次 1.クドアとは 2.粘液胞子虫病の一般的特徴 3.ヒラメのクドア食中毒について ①現状の対策 ②今後の課題 9分~

1.クドアとは? 極 嚢 粘液胞子虫という胞子を作る寄生虫 胞子の大きさは10 μm程度で、極嚢が特徴的。 A B 極 嚢 図.クドアの胞子。A: 模式図、B: Kudoa prunusi(サクラクドア)の胞子 粘液胞子虫という胞子を作る寄生虫 胞子の大きさは10 μm程度で、極嚢が特徴的。 100種類以上知られており、多くは海産魚に寄生する。

一般的な粘液胞子虫類の生活環 粘液胞子虫 ステージ 交互宿主 放線胞子虫 ステージ 魚類 環形動物 魚類と環形動物(淡水種ではイトミミズ、海産種ではゴカイなど)を交互に宿主とし、環形動物の体内で放線胞子虫に変態する。 →水槽内で魚から魚へうつることはない。

想定されるクドアの生活環 陸上水槽 ヒラメ 放線胞子虫? 交互宿主? 粘液胞子虫 沿岸環境 環形動物(多毛類?)

2.粘液胞子虫病の一般的特徴 病気の発生:風土病的であることが多い (環形動物の生息域に依存する)。   (環形動物の生息域に依存する)。 対策:治療薬やワクチンはないので、生活環の遮断(環形動物の駆除など)という考え方が基本である。 19分~ 発生に地域性がある、

代表的な粘液胞子虫病 1.ブリの粘液胞子虫性側湾症(骨曲がり) 原因:Myxobolus acanthogobii (極嚢2個) 病理:ブリの脳内に形成されたシストが神経系を物理的に圧迫し、運動機能障害を引き起こす結果、脊椎湾曲する。 25分~ 抗生物質の使用により曲がるのではないかとの説が出されました。もちろんその説は科学的に明らかな間違いだったのですが、マスコミがセンセーショナルに報道をしてあおった結果、病魚のショッキングな症状、見た目の悪さも手伝って、一般消費者も養殖魚は薬漬けになっていると信じ込んでしまった。その結果として、養殖魚全体のイメージダウンをもたらしました。その当時の世相を象徴するものとして、 備考:1980年代には社会問題に発展した(「骨曲がり」の原因として、養殖魚の細菌病対策に使われていた抗生物質が疑われ、「養殖魚は「薬漬け」である」として、養殖魚全体のイメージ低下をもたらした)。

ブリの「骨曲がり」が話題になっていた時期なので、「タイムリーな風刺」ともいえるが、 抗生物質を投与していたのは事実ですが、出荷前に休薬期間といって薬の濃度を低下させてから出荷することが義務付けられているので、消費段階で風邪に効いてしまうほどの量の薬剤が残留していることは考えられないのですが、当時、骨曲がりと薬漬けの関係が大騒ぎしていたので、信じてしまった人もいたかもしれません。これにより、その後、長年にわたって続く養殖魚バッシングの引き金になったともいえます。 ブリの「骨曲がり」が話題になっていた時期なので、「タイムリーな風刺」ともいえるが、 水産業界に大きなダメージを与えた漫画ともいえる。→一種の「風評被害」

代表的な粘液胞子虫病 2.ブリの奄美クドア症 原因:Kudoa amamiensis (アマミクドア)極嚢4個 38分~ 原因:Kudoa amamiensis (アマミクドア)極嚢4個 症状:筋肉に径1~2 mmの白いシスト(米粒状異物)を作る      →商品価値を落とす

奄美クドア症の「風土病的」発生状況 100% 50 km 1990年代になり、沖縄全土でブリを試験飼育 →地理的分布が本部海域に局在 5.6% 2.0% 0% 0% 100% 0 % 0% 1975年に沖縄県本部町で開催された 沖縄国際海洋博覧会の行事(海洋牧場) において、飼育展示されたブリすべてに発生した。 →それ以降、沖縄ではブリ養殖は不可とされた。 0% 3.8% 50 km 1990年代になり、沖縄全土でブリを試験飼育  →地理的分布が本部海域に局在   →交互宿主となる環形動物が偏在している? Sugiyama et al. (1999)

3.ヒラメのクドア食中毒 1 2 3 原因体はKudoa septempunctata(和名:ナナホシクドア) 極嚢数は、5~7個と変異がある(写真1)。 ヒラメの筋繊維の細胞内に寄生する(写真2)。 肉眼的に寄生しているかどうか分からない(写真3)。   → 気づかずに食べてしまう

クドア食中毒の特徴 食後数時間で一過性の下痢や嘔吐が発生する。 軽症で回復は早く、およそ一晩で治る。  →クドアが人間の体内で増えるわけではない。 発症は摂取量依存性があり、約107 (1千万)個以上の胞子の摂取が必要(刺身1切れでも発症する)。  →重度の寄生を受けたヒラメ肉を摂取した場合に限る。  →クドアは死んだヒラメの体内で増えることはない。  →調理や保管の不備ではなく、食材自体の問題 冷凍、加熱は有効だが、商品価値を損ねる。 後遺症や家族へうつす心配はない。 多くの食中毒菌、バクテリアの場合は、体内で増殖するので、ほんの微量を取り込んだだけでも発症するため、包丁やまな板などの汚染も注意しなければいけませんが、このクドアの場合は、その点は注意する必要がない。

国産養殖ヒラメの生産過程でのクドア対策 0歳 1歳 陽性種苗は排除する 胞子密度が1×106個/g以上 →食品衛生法第6条違反 3月 6月 9月 12月 3月 6月 9月 12月 種苗生産場 養殖場 出荷 流通 遺伝子検査 顕微鏡検査 陰性 検査証明書 の添付 トレーサビリティー(どこから来たものかを追跡できるか)が整備されていない日本の水産流通の問題点でもありますが、ひどい場合には、日本の養殖業者が作成した検査証明書をコピーして韓国産ヒラメのロットにつけて、日本産の検査されたものですよといって流通させた疑いのある業者も現れ始めた。これは明らかに産地偽装で犯罪ですが、それを裏付ける証拠がなかった。ヒラメは同じ種類なので遺伝子解析をもってしても区別できないため、クドアで区別できないか、研究する必要に迫られた。 陽性種苗は排除する 陽性 胞子密度が1×106個/g以上 →食品衛生法第6条違反

日本のヒラメ消費量 (韓国産) (国産)

ヒラメの種苗生産場および養殖場 種苗生産場 養殖場 種苗(養殖用の稚魚)の生産も 養殖も、陸上水槽で行われている。

国産ヒラメの生産過程でのクドア対策の問題点① 0歳 1歳 3月 6月 9月 12月 3月 6月 9月 12月 種苗生産場 養殖場 出荷 流通 感染 遺伝子検査 顕微鏡検査 トレーサビリティー(どこから来たものかを追跡できるか)が整備されていない日本の水産流通の問題点でもありますが、ひどい場合には、日本の養殖業者が作成した検査証明書をコピーして韓国産ヒラメのロットにつけて、日本産の検査されたものですよといって流通させた疑いのある業者も現れ始めた。これは明らかに産地偽装で犯罪ですが、それを裏付ける証拠がなかった。ヒラメは同じ種類なので遺伝子解析をもってしても区別できないため、クドアで区別できないか、研究する必要に迫られた。 感染防除法の開発

感染防除法の開発(生活環の遮断) ヒラメ種苗生産場の屋内水槽にて実験中

感染防除法の開発(生活環の遮断) →砂ろ過とUVを併用することで、完全に感染防除できる 種苗生産場の飼育用水処理による感染防除 感染成立 未感染ヒラメ稚魚(5 cm) 種苗生産場の飼育用水処理による感染防除 感染成立 ①陽性対照(生海水) 砂ろ過 ②砂ろ過海水 UV ③紫外線照射(46 mJ/cm2) ④砂ろ過+紫外線 感染 不成立 非感染海域の陸上施設 62分~ ⑤陰性対照 →砂ろ過とUVを併用することで、完全に感染防除できる

国産ヒラメの生産過程でのクドア対策の問題点② 0歳 1歳 3月 6月 9月 12月 3月 6月 9月 12月 種苗生産場 養殖場 出荷 流通 遺伝子検査 顕微鏡検査 トレーサビリティー(どこから来たものかを追跡できるか)が整備されていない日本の水産流通の問題点でもありますが、ひどい場合には、日本の養殖業者が作成した検査証明書をコピーして韓国産ヒラメのロットにつけて、日本産の検査されたものですよといって流通させた疑いのある業者も現れ始めた。これは明らかに産地偽装で犯罪ですが、それを裏付ける証拠がなかった。ヒラメは同じ種類なので遺伝子解析をもってしても区別できないため、クドアで区別できないか、研究する必要に迫られた。 検査のためにヒラメを殺さなくてはならない →非殺傷検査法の開発

非殺傷検査法・簡易診断法の開発 非殺傷検査法の開発 簡易診断法の開発 注射器で尾柄部から微量の肉を PCRや顕微鏡のない現場でも迅速に 採取して、顕微鏡検査する PCRや顕微鏡のない現場でも迅速に 検査できるキット →消費の末端でも応用できる クドア検出用イムノ・ クロマト(ARK Checker IC Kudoa septem- punctata M)

国産ヒラメの生産過程でのクドア対策の問題点③ 0歳 1歳 3月 6月 9月 12月 3月 6月 9月 12月 種苗生産場 養殖場 出荷 流通 遺伝子検査 顕微鏡検査 混入 トレーサビリティー(どこから来たものかを追跡できるか)が整備されていない日本の水産流通の問題点でもありますが、ひどい場合には、日本の養殖業者が作成した検査証明書をコピーして韓国産ヒラメのロットにつけて、日本産の検査されたものですよといって流通させた疑いのある業者も現れ始めた。これは明らかに産地偽装で犯罪ですが、それを裏付ける証拠がなかった。ヒラメは同じ種類なので遺伝子解析をもってしても区別できないため、クドアで区別できないか、研究する必要に迫られた。 韓国からの輸入ヒラメ (クドア検査が不十分) 日本と韓国のクドアの識別

日韓クドアの識別法 6極嚢の胞子 7極嚢の胞子 →極嚢数の比率(%)を測定

日韓クドアの識別法 2% (0~13%) 44% (12~61%) →7極嚢の出現割合で識別可 図.日本産ヒラメと韓国産ヒラメのクドア胞子における極嚢数の出現割合 →表現型に差異が出る原因は不明

日韓クドアの識別法 年月 由来 極嚢数の比率(%) 5 6 7 8 2011年 12月 国産? 58.5 35 0.5 2012年 9月 1 表.産地表示が疑わしいとされた事例のクドアの極嚢数測定 年月 由来 極嚢数の比率(%) 5 6 7 8 2011年 12月 国産? 58.5 35 0.5 2012年 9月 1 39 59 →形態学的には「韓国産」の可能性が高いと推定された。 →流通過程における混入の抑止力になると期待される。

今後の課題-1 研究者がやるべきこと ・生活環の解明 →環形動物の駆除法の開発→国産ヒラメのクドア駆除 行政がやるべきこと ・韓国からの輸入ヒラメに対する監視強化 →輸入ヒラメのクドア防疫 風評被害 ・消費を回復させるため、ヒラメの安全性の周知・啓蒙 →だれがやる? だれがやる?研究者の仕事の範疇には思えないかもしれませんが、今は違う。研究費を使って研究している以上、説明責任がある。 →関係者全員による情報公開

今後の課題-2 養殖業者:自主的に検査結果を公開すること 行政:検査体制や食中毒件数の現状を公表すること (HPや冊子体など) 研究者:研究成果を公表すること(学会、シンポジウム、公開講座) マスコミ:それらの情報を偏見なく評価して、冷静に報道すること (現在はインターネットやSNSの影響力も無視できない?  →消費者も自ら発信できる時代になってきた) マスコミについては、以前のブリの骨曲がりを教訓にしていますが、最近は、 それぞれ立場は違えど、目指すところは同じはずだと思うからです。それはひとえに、・・・ 産官学民の関係者が相互に理解を深める リスク・コミュニケーション

みんなで美味しいヒラメを食べましょう!