英国の創造性教育の展開 弓野憲一 (静岡大学教育学部)
日本の創造性教育 1960-70年代に興盛 高度経済成長期→確実な知識の習得 [現在]先進的な学校(教師)→総合的学習の時間に実施(非常に少数) 附属小・中の理数科で一部実施 スーパーサイエンススクールで実施 ロボコン(工業高校・高等専門学校) 工学・情報系の大学・大学院
英国の創造性教育 1997年→NACCCEが創造性教育の勧告書(All Our Futures: Creativity, Culture and Education) 2000年→全国の公立小中に導入される(2003年→1000校以上) 2006年→「英国の創造性教育に関する展望:Promoting Creativity in Education: Overview of key National Policy Developments Across the UK,2006/9」
創造性心理・教育関係図書 この7-8年間に創造性心理・教育に関する図書がたくさん発刊される。 R.Jones & D.Wyse( Eds) 2004 Creativity in the Primary Curriculum . David Fulton. B. Duffy 2006 Supporting Creativity and Imagination in Early Years. Open Univ. Press. R. Fisher & M. Williams(Eds.) Unlocking Creativity. David Fulton. M. Fleetham 2003 How to create and develop a Thinking Classroom. LDA. A. Craft, etc( Eds.) 2001 Creativity in Education. Continuum. M. Fautley & J. Savage( Eds.) 2007 Creativity in Secondary Education. Learning Matters. A. Wilson(Ed.) 2005 Creativity in Primary Education. Learning Matters.
英国の初等学校における創造性教育(翻訳中:仮題) 1章 教育における創造性をめぐる風景の中での変化 Anna Craft 2章 創造性についての思索 Avril Loveless アイデアの展開と事・ものの実現 3章 口語表現芸術: 物語表現とドラマ Terasa Grainger 4章 創造的な若い読者 Prue Goodwin
その2 5章 創造的作文 Debra Myhill 6章 詩歌、子どもと創造性 Anthony Wilson 7章 科学教育における創造性とは何か Jane Johnston 8章 創造的数学 Mary Briggs
その3 9章 子ども、創造性と体育 Sue Chedzoy 10章 創造的かつ想像的な初等美術・デザイン Paul Key 11章 音楽カリキュラムにおける創造性 Sarah Hennessy 12章 市民教育を取り扱う中で創造性は何を得たか Hilary Claire
その4 13章 初等デザイン・技術における創造性 Dan Davies & Alan Howe 14章 流れに逆らって前進する: Tedd Wraggへのインタビュー
QCAの創造性のとらえ方 ①あることについて想像的に考えたり振る舞ったり,②一つの目的を達成するために想像的な活動を行ったり,③何かオリジナルなものを産出するために思考や行為や作業を行ったり、 ④産出物が目的に照らして価値のあるものであるかを評価する。 創造性の教育は,初期の段階では①の「想像」を大切にし,発達に伴い,②,③,④に対応した創造性の教育が必要になると考え,その目的を達成するための実践を奨励している。
創造性教育の方略 生徒の創造を刺激する 生徒の学習に明確な目的を持たせる 他の学習や経験を通して生徒のイマジネーションに火をつける 生徒が共同で働く機会を設ける 成功の基準を確立する 生徒のオリジナルなアイデアを尊重する 末広がりの質問をして, クリティカルな反省を勇気づける,
教科における創造性の育成 英語(創造的作文、詩) 数学(整数a/b = 4.125) 理科(誘導的発見) 社会(市民教育) デザイン・技術(創作) ドラマ(創作劇) ICT(Information and Communication Technology)等の教科で,単独であるいは教科をクロスさせて,創造性の育成を行っている。
もう一つの創造性教育 Creative Partnership 最も貧しい36地域にある学校間、創造的な生徒間、関連した組織間が連携して、創造性教育を実施しようとする政府基金による国家プログラムがある。 その目的は: ①若い人の熱望と業績の伝達 ②教師と学校の接近法と態度の伝達 ③学校で働くことを希望する創造的実践者ならびに組織の実践の伝達
創造性教育促進機関・組織 CASE(Creativity and Cultural Working Group):初期に活躍 DfES(Department for Education and Skills):創造性教育を進展させるために必要な情報をさまざまな機関、部門に流し、鍵となる政策、プロジェクト、施策を共有させた QCA:創造性促進→慣習や仮説に疑問を呈し挑戦 ②発明的な結合と連想をつくる ③視覚化する: イメージをつくる- 心の眼でものを見る ④アイデア、行動、結果をクリティカルに顧みる
その2 OFSTED(Office of Standard for Education):すぐれた実践の調査: 生徒の能力如何に関わらず、教師が創造性を育成するための高い教科知識と十分に広い教授スキルをもてば、困難を克服できる。 OFSTEDは「生徒に見いだされる創造性は、急進的な新たな教育学によってではなく、生徒が目的的にアイデアを発展させるのを教師が熱心に観察し、聞き出し、協同作業すること」によって育成される
北アイルランドの創造性教育 K.Robinson:Unlocking Creativity: A Strategy for Development, 2000. ①教育、仕事を通して、創造的・文化的教育を発展 ②創造的・文化的教育の目的と価値を認識するための評価・検証方法と原理を発展 ③創造的および文化的教育の重要性を積極的に推進するための職業的および学問的な資格を設ける ④ICTを用いた創造性教育 ラジオ教材作製、ドキュメンタリー・フィルムやディジタル・コンテント
スコットランドの創造性教育 [生徒側] Creativity in Education, 2001 27校レポート:創造性教育の成果 ①動機付け高め、熱狂、楽しみを増した ②学習に対して独立的になった ③資料を駆使し、レフレクティブになった。 ④グループワークは、自信のない子どもの自己評価を増大させた ⑤生徒はイマジネーションを使用する上での失敗を上手に処理して自信を作り上げ、新しいアイデアに対する正の態度を形成した。
スコットランドの創造性教育 [教師側] ①干渉、突き放し、計画、即興の4スキル発展できる ②創造性関与4要因特定-関与・刺激方法・構造化・フィードバック ③評価とフィードバックは、所産と過程を含むべき ④生徒を評価に参加させると、課題に対するアイデアを明確にして、それへの対処法を確立する
スコットランドの創造性教育 所産の評価 ①評価の基準は所産の目的を反映させ、創造的体験そのものの理由も考慮する必要がある。 ②リスクを冒したり独創性を追求することは、しばしば技量に重みを置く評価基準によって抑制される。 ③教師はしばしば「それは目的に合っている」「よくできた」「よく見える」ときくが、本当は「どれほど独創性があるの」とか「リスクがあった」「その効果は何であったか」ときくべきである。
スコットランドの創造性教育 教師の将来教育政策・実践計画 ①創造性は、全カリキュラム領域に組み込まれるべき ②創造性は早期段階から育成すべきだ ③創造性の意味を明確に定義し、それの全カリキュラムへの組み込み例が必要 ④何をいかに教える必要があるかについて、強調し過ぎない ⑤創造性を育成するつもりなら、現在の評価手続きはもっと柔軟にするべき。生徒同士評価や自己評価が必要