「食料・農業・農村基本法」、「環境基本法」 ◆ 日本の動向 「食育基本法」、「食品安全基本法」、 「食料・農業・農村基本法」、「環境基本法」 食品の安全性は、最終製品のみの問題ではありません。WHOは「食品衛生とは、生育、生産、製造から最終的に人に消費されるまでのすべての段階における食品の安全性、完全性、健全性を保障するのに必要なあらゆる手段を意味する」と定義しています。 既に述べてきたように、生産から消費までのフードチェーンにおける全ての構成員の協力によって、初めて、安全性は向上するのです。これらに関係する日本の法令の基本的考え方が、「基本法」で示されています。 日本の衛生水準と食中毒の発生状況、 フードチェーンを通したリスクの変動と衛生対策、 費用対効果を考慮した安全性向上システム
「食育基本法」 2005年7月15日から施行 この法律が準備された背景には、肥満や偏食による生活習慣病の広がり、自給率低下の中で食べ残しや廃棄の増加、食料生産についての知識の欠如、食品の安全性を巡る未曾有の騒動などがあり、それらを結ぶものとして食を通した生命観の涵養がある。「前文」には、次のように記載されている。 ・・・国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。・・・
「BSE問題に関する調査検討委員会報告」 (2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会) 「食育基本法」制定の背景 小冊子「いただきますが言えた日」 農水省HPにある。 朝食の前に家族揃って仏壇に御参りする日本の伝統が、戦後教育によって壊されてしまった。今日の社会的不安は、精神の支えを失った無宗教のためではないか? 「いのち(食べ物)への感謝」が失われ、競争・攻撃を基調とする金銭関係しかなくなった社会・・・。家族、社会、民族の絆をどこに求めたら良いのか・・・。 (岡本) 「BSE問題に関する調査検討委員会報告」 (2002年4月 BSE問題に関する調査検討委員会) 5)重要な個別の課題 ④ 食に関する教育いわゆる「食育」の必要性 今日の食品の安全性をめぐる事態に照らし、学校教育における食品の安全性や公衆衛生及びリスク分析などに係わる基礎的知識の習得・教育を強化する必要がある。農業や食品産業など、フードチェーン全般にわたる基礎的な知識および栄養や健康に関する教育も充実させる必要がある。 食品に、ゼロ・リスクはあり得ないこと、情報をもとに一人一人が選択していく能力を身に付けていくことの大切さの認識の普及が必要である。
「食」と「農」の再生プラン (2002年4月11日・農林水産省) 「食」と「農」の再生プラン (2002年4月11日・農林水産省) 1.食の安全と安心の確保 ●「食の安全運動国民会議」の発足: みんなで考える「食育」と「リスクコミュニケーション」の推進 「食の安全運動国民会議」の発足(「食育」の促進) : 子供の時から「食」について考える習慣を身につけるよう「食」の安全、「食」の選び方や組み合わせ方などを子供たちに教える「食育」を促進します。また、広く消費者が食の安全・安心などについて自ら考える国民会議の発足などの国民運動や女性によるキャンペーンを展開します。 「食品安全基本法」 (2003年5月16日成立) (食品の安全性の確保に関する教育、学習等) 第19条 食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、食品の安全性の確保に関する教育及び学習の振興並びに食品の安全性の確保に関する広報活動の充実により国民が食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めるために必要な措置が講じられなければならない。
食に関する指導体制の整備について(答申) (2004年1月20日・中央教育審議会) 「第1章 基本的な考え方」では、「1 食に関する指導の充実の必要性」、「2 学校における食に関する指導の現状」、「3 食に関する指導体制整備の方向性」が述べられ、「第2章 栄養教諭制度の創設」へと繋がっていく。「1 栄養教諭の職務」として、食に関する指導、学校給食の管理、食に関する指導と学校給食の管理の一体的な展開が挙げられ、それを担うために、「2 栄養教諭の資質の確保」として、栄養教諭の免許状の種類及び養成の在り方、栄養教諭の上位の免許状等取得のための方策、学校栄養職員に対する措置などが書かれている。最後の「第3章 食に関する指導の充実のための総合的な方策」として、学校における一体的取組、栄養教諭の効果的な活用、学校・家庭・地域社会の連携等による総合的取組が述べられている。 栄養教諭制度の創設に係る学校教育法等の一部を改正する法律等の施行について(通知) (2004年6月30日・文部科学省) 上記の答申を受けて、「学校教育法等の一部を改正する法律」が、平成16年5月21日に公布され、平成17年4月1日から施行された。また、これに伴い、「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令」が、平成16年6月30日に公布され、平成16年7月1日から施行された。
「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」 (2005年6月21日・経済財政諮問会議) 第3章.新しい躍動の時代を実現するための取組:少子高齢化とグローバル化を乗り切る 5.人間力の強化 我が国を支える基本は“人”である。今後我が国がグローバル化を乗り切り、力強く成長を持続するという観点からも、すべての人が能力を最大限に開花させうる社会の実現が不可避であり、これに向けて取組を強化していく。・・・・・ さらに、食育基本法に基づき、食育推進基本計画を作成するとともに、関係行政機関等が連携し、国民運動として食育を推進する。 「食育推進会議」が8月24日に発足し、総理を含めて14名の大臣と、12名の学識経験者が発表された。栄養学関係者が4名も加わっているのに対し、フードチェーンにおいて食品の安全性確保に主要な役割を果たしている獣医師はゼロであり、食育推進会議専門委員にも獣医師の名前はない。 前項の関連法令等からすると、家畜保健衛生所、食肉検査所、ヒトの保健所、食品衛生監視員、医薬品業界、食品業界さらに伴侶動物や野生動物の医療を担っている獣医師こそ、学校教育現場において生命倫理を涵養する食育推進の中心に位置して当然と思われるのだが?
「安全に食べる」ための衛生教育の必要性は? 食育推進基本計画 (平成18年3月) 第1 .食育の推進に関する施策についての基本的な方針 7.食品の安全性の確保等における食育の役割 国民が安心して健全な食生活を実践できるようにするためには、まず、食品を提供する立場にある者がその安全性の確保に万全を期すべきことが必要である。食品を消費する立場にある者においても、食品の安全性をはじめとする食に関する知識と理解を深めるよう努め、自ら食を自らの判断で正しく選択していくことが必要である。 このため、食育の推進に当たっては、国際的な連携を図りつつ、食品の安全性やこれを確保するための諸制度等、食に関する幅広い情報を多様な手段で提供するとともに、国や地方公共団体、関係団体や関係事業者、消費者等の間の意見交換が積極的に行われるよう施策を講じるものとする。 第2 .食育の推進の目標に関する事項 (8)食品の安全性に関する基礎的な知識を持っている国民の割合の増加 第3 .食育の総合的な促進に関する事項 7.食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進 第4 .食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進 「安全に食べる」ための衛生教育の必要性は? 「安全性に関する基礎知識」とは? <基本計画の参考資料集>のこの項については 54.根拠となる統計名等 各種調査により今後把握する予定。
食育推進基本計画検討会構成員名簿 座長 内閣府特命担当大臣(食育) 委員 文部科学大臣 厚生労働大臣 農林水産大臣 (平成18 年4 月1 日現在) 座長 内閣府特命担当大臣(食育) 委員 文部科学大臣 厚生労働大臣 農林水産大臣 内閣府特命担当大臣(食品安全) (社)全国学校栄養士協議会副会長 長崎市長 JA全国女性組織協議会会長 全国消費者団体連絡会事務局長 日本チェーンストア協会会長 群馬大学教育学部教授 (社)日本栄養士会会長 服部栄養専門学校校長 全国食生活改善推進員団体連絡協議会理事 読売新聞東京本社生活情報部次長 (社)日本PTA全国協議会副会長 (独)国立健康・栄養研究所理事長 専門委員 酪農教育ファーム推進委員会委員 食生活・健康ジャーナリスト 日本保育協会岩手県支部女性部長 (社)調理技術技能センター理事長 (財)食品産業センター会長 (社)日本フードサービス協会会長 埼玉県北足立郡伊奈町立小室小学校長 公衆衛生学や食品衛生学を専門とする方は加えられていない。こうしたメンバーで、最新の科学的知見に基づいた「食品の安全性に関する基礎知識」が審議できる筈がない。 立派な基本法の趣旨を生かすために、計画内容の補完を働きかける必要がある。
男性 女性 日本人の平均寿命の推移 90 「日本の衛生水準と食中毒の発生状況」 85.2 80 78.3 70 平均寿命 60 44.3 矢印: 各年齢を超えた調査年 50 50 40 42.8 30 1891 ~98 1935 ~36 1950 ~52 1947 1955 1965 1975 1985 1990 1995 2000 2002 日本人の平均寿命の推移
出生後早期死亡率の推移 70 (1950 ⇒2002) 60 :新生児死亡率 ( 27.4 ⇒ 1.7 ) :乳児死亡率 ( 60.1 ⇒ 3.0 ) 50 割合(人口千対) :出 生 率 ( 28.1 ⇒ 9.2 ) 40 30 20 10 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 出生後早期死亡率の推移
500 g/人/日 (50) 国内生産量+輸入量 4.5 豚肉 48.7 人口×365 30.2 鶏肉 408.5 400 一人当たり一日消費量 (40) 300 (30) 200 63.8 乳 262.8 (20) 4.3 牛肉 28.8 100 20.4 鶏卵 56.6 (10) 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 国民一人当たりの一日消費量の推移 表示: 1960年の値 畜産物 2001年の値
主要国の死因別死亡率 (総務省統計局) 腸炎、下痢疾患 フランス ドイツ イギリス 米国 日本 自殺,自傷 10 20 30 40 50 10 20 30 40 50 腸炎、下痢疾患 自殺、自傷 フランス ドイツ イギリス 米国 日本 不慮の事故 自動車事故 腸炎、下痢疾患 呼吸器系疾患 脳血管疾患 5 10 15 20 25 自殺,自傷 心疾患 悪性新生物 50 100 150 200 250 300 人口10万人当たり 主要国の死因別死亡率 (総務省統計局)
英国における食品媒介感染症の推定数 英国人口は日本の約半分。日本の厚生労働省の食中毒統計では、患者総数約3万5000人、死亡総数約8人。 入院 日数 病原体 症例数 通院者数 入院者数 死亡数 死亡数 カンピロバクター属 ウェルシュ菌 腸管出血性大腸菌 O157 O157以外 その他の病原性大腸菌 リステリア サルモネラ 黄色ブドウ球菌 カンピロバクター属 359,366 84,081 995 111 62,050 194 41,616 2,276 171,174 44,253 995 111 13,850 194 29,726 910 16,946 354 377 42 319 194 1,516 57 62,701 5,240 2,149 240 1,561 3,473 8,793 69 86 89 22 2 6 68 119 86 ウェルシュ菌 89 サルモネラ 119 出典:「EU食品衛生法の統合のための提案」、附属文書2 食品媒介感染症の推定、2000 英国人口は日本の約半分。日本の厚生労働省の食中毒統計では、患者総数約3万5000人、死亡総数約8人。
米国における既知の食品媒介性病原体による 患者数、入院者数、死亡者数の推定値 腸管出血性大腸菌 疾病名または 病原体名 カンピロバクター サルモネラ non-O157 STEC O157:H7 計 食品媒介性 割合(%) 2,453,926 1,963,141 80.0 13,174 10,539 80.4 124 99 79.8 1,412,498 1,341,873 95.0 16,430 15,608 582 553 73,480 62,458 85.0 2,168 1,843 61 52 85.2 36,740 31,229 85.0 1,084 921 30 26 86.7 患者数 入院者数 死亡者数 99 553 52 Paul S. Mead, et. Al.: Food-Related Illness and Death in the United States. Emerging Infectious Diseases, 5( 5), 607-625, 1999
カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率 0.25 100 :カンピロバクター、 :サルモネラ 0.2 80 10万人当り死亡率 10万人当り罹患率 0.15 60 0.1 40 0.05 20 0.0014 日本 英国 米国 日本 英国 米国 カンピロバクターとサルモネラ食中毒の発生率
日本における食中毒による健康被害の発生状況 二つの要素を同時並行的に解決していかないと、抜本対策とはならない 年度 事故数 死者数 患者数 一事故当り ’69-’78 1,259 46.3 33,266 26.4 ’79-’85 1,074 16.6 34,667 32.3 ’86-’95 773 6.3 33,370 43.1 ’96-’02 2,130 9.3 37,781 17.7 生産過程が見えない ハイリスク集団の比重が増加 都市と農村の乖離 農産物の自由化(1994) 高齢化(絶対数) 少子化(希少価値) 「食育教育」、産地交流 食品衛生法に健康弱者を規定する 二つの要素を同時並行的に解決していかないと、抜本対策とはならない
食品の安全性の観点からより不安を感じているもの 内閣府食品安全委員会: 平成15年 食品安全モニター・アンケート調査 農薬 輸入食品 添加物 汚染物質 組換え食品 健康食品 微生物 飼料 プリオン 器具・容器包装 カビ毒・自然毒 ウイルス 放射線照射 新開発食品 動物用医薬品 肥料 異物混入 その他 10 20 30 40 50 60 70 80 % 食品の安全性の観点からより不安を感じているもの 内閣府食品安全委員会: 平成15年 食品安全モニター・アンケート調査 「食の安全性に関する意識調査」結果
1997年以降は、1名の場合も計上することになったため、見かけ上多くなっている 件 :細菌 2,500 :化学物質(10倍表示) :自然毒(10倍表示) 2,000 :動物性 :植物性 1,500 1377 123 1,000 79 500 44 9 1975 1980 1985 1990 1992 1993 1,994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 食中毒事故件数の推移 1997年以降は、1名の場合も計上することになったため、見かけ上多くなっている
食中毒患者数の推移 細菌 40,000 自然毒 35,000 化学物質 細菌 100 200 300 400 500 600 30,000 100 200 300 400 500 600 30,000 25,000 自然毒 20,000 15,000 化学物質 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 食中毒患者数の推移
原因物質別にみた食中毒による死者数の推移 20 :総数 18 :細菌 16 :自然毒 14 化学物質による死亡者はいない 年間死亡数 12 10 8 6 4 2 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 原因物質別にみた食中毒による死者数の推移
原因菌別にみた食中毒事故件数の推移
原因食品別にみた食中毒死亡者数 25 20 累積死亡者数 15 10 5 卵 フグ キノコ 貝類 不明 その他 野菜及び その加工品 卵 フグ キノコ 貝類 不明 その他 野菜及び その加工品 複合調理食品 原因食品別にみた食中毒死亡者数 (1996~2002)
食事場所別にみた食中毒死亡者数 40 30 累積死亡者数 20 10 家庭 病院 学校 旅館 飲食店 事業所 その他 老人ホーム 家庭 病院 学校 旅館 飲食店 事業所 その他 老人ホーム 食事場所別にみた食中毒死亡者数 (1996~2002)
食中毒患者数および死者数の年齢別割合 死者数 人口 患者数 20 40 60 80 100% 50歳 15歳 :0~4 :5~9 20 40 60 80 100% 食中毒患者数および死者数の年齢別割合 :0~4 :5~9 :10~14 :15~19 :20~29 :30~39 :40~49 :50~59 :60~69 :70~
年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数 累積死亡者数 年齢 (1996~2002) 4 2 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 累積死亡者数 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 ハイリスク者への特別対策 12 :動物性自然毒 :植物性自然毒 :大腸菌 :サルモネラ :ぶどう球菌 :腸炎ビブリオ 10 衛生教育 8 6 4 2 30~39 40~49 50~59 60~69 70~ 年齢 年齢・死亡原因物質別にみた死亡者数 (1996~2002)
日本における人口構成の変化 昭 和 25 年(1950) 平 成 12 年(2000) :女性 :男性 85~ 80~84 75~79 年齢 昭 和 25 年(1950) 総人口: 84,114,574 平 成 12 年(2000) 総人口: 126,925,843 :女性 :男性 85~ 80~84 75~79 70~74 65~69 60~64 55~59 50~54 45~49 40~44 35~39 30~34 25~29 20~24 15~19 10~14 5~9 0~4 600 400 200 200 400 600 万人 日本における人口構成の変化
「農場から食卓まで」を通したリスクの変動 A: 細菌、ウイルス、寄生虫、害虫などの 生物学的危害因子 B: 重金属やカビ毒などの 加熱によっても失活しない危害因子 リスク・レベルのモデル 衛生検査 加熱調理 生産過程 処理・加工過程 流通過程 消費過程 危害因子の種類による 「農場から食卓まで」を通したリスクの変動
食肉の安全性に関わる社会システム(1) リスクが減るのは2箇所だけ リスク・レベルのモデル 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 調理時の加熱は細菌を殺滅する。 しかし、食材や料理を室温での放置すれば、菌は増殖する。 輸送距離が延びるにつれ、細菌増殖に必要な時間も長くなる。 温度管理等の法的基準もない。 病気 動物薬残留 食中毒菌 薬剤耐性菌 と畜検査員による法律に基づく検査 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(1)
? ? 食肉の安全性に関わる社会システム(2) リスク・レベルのモデル GAP QAP HACCP リスクは 残る! 農場 食肉センター 農場における 適正な衛生管理 病原体低減/HACCP Pathogen Reduction / HACCP リスク・レベルのモデル 解体処理工程など 食肉センターの 衛生管理 GAP QAP 消費者は ? ? HACCP リスクは 残る! 流通過程が 変わらなければ 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(2)
? ? 食肉の安全性に関わる社会システム(3) 食品輸送衛生法 (米国、1990) Sanitary Food Transportation Act 台所のHACCP Kitchen HACCP 適正取扱い規範 Good Handling Practice リスク・レベルのモデル GAP QAP 消費者 教育 流通過程の 衛生基準 ? ? HACCP 農場 食肉センター 流通過程 消費過程 「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実施することによって、初めてリスクが小さくなる。 素畜 飼料・飲水 畜舎環境 動物薬 食肉検査 解体 カット 出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存 喫食 食肉の安全性に関わる社会システム(3)
食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針 世界の人口増加に見合った、持続性のある食料生産 ∧農作物∨ 食料 ・農業・農村基本法 食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針 農薬取締法 毒物及び劇物取締法 肥料取締法 世界の人口増加に見合った、持続性のある食料生産 化製場等に関する法律 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律 「食品衛生法」は農産物が食品として加工された段階から適用される 家畜伝染病予防法 家畜保健衛生所法 牛海綿状脳症対策特別措置法 薬事法 動物用医薬品等取締規則 動物用医薬品の製造管理及び品質管理に関する省令 動物用医薬品の輸入販売管理及び品質管理に関する省令 動物用医薬品の使用の規制に関する省令 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律 飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令 と畜場法 (ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ等の検査) 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律 これらの法律に基づいて、獣医師は活動しています 人畜共通感染症 ∧畜産物∨ ヒトは、生物の一種であり、動物の仲間である 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 (通称 感染症法、 旧 伝染病予防法) 生産過程に関わる法律
生産管理手順に、法令に定められた衛生基準を組み込む作業 法令に基づく適正規範(GMP、GAP) 衛生標準作業手順 (SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure) 生産管理手順に、法令に定められた衛生基準を組み込む作業 一般的衛生管理プログラム (PP;Prerequisite Program) 標準作業手順 (SOP;Standard Operation Procedure) 法令に基づく適正規範(GMP、GAP)
HACCPと衛生水準 永続的改善システム 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析 衛生標準作業手順 SSOP 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析 衛生標準作業手順 SSOP 再吟味 検証 記録 重要管理点 危害分析 衛生標準作業手順 SSOP HACCPは定まった衛生水準を規定するものではなく、衛生水準を向上させる永続的システムであり、そのシステムの可否を認証するものである。 標準作業手順 SOP 一般的衛生管理 PP HACCPと衛生水準
適正農業規範(GAP)とHACCPシステム リスク・アナリシス (Risk Analysis) 重要管理点 (CCP;Critical Control Point) HACCP 生産過程で制御すべき 危害の特定 危害分析 (HA;Hazard Analysis) 衛生標準作業手順 (SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure) GAP 家畜の飼養管理に関する管理記録簿(標準作業手順)に、家畜伝染病予防、と畜場法、飼料安全法などの法に定められた衛生基準を盛り込む作業 一般的衛生管理プログラム (PP;Prerequisite Program) 標準作業手順 (SOP;Standard Operation Procedure) 適正農業規範(GAP)とHACCPシステム
リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(残留農薬) 食品による健康障害の現状 食品Ⅱ~X リスクの低減目標 リスク・アナリシス 農薬A 食品Ⅰ リスクの低減目標 農薬B~X 第三者による監視(モニタリング) リスクレベル 現状 改善後 生産段階 加工段階 流通段階 消費段階 処理段階 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(残留農薬)
リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(細菌) 食品による健康障害の現状 食品Ⅱ~X リスクの低減目標 リスク・アナリシス 危害因子A 食品Ⅰ リスクの低減目標 第三者による監視(モニタリング) 危害因子B~X リスクレベル 現状 改善後 生産段階 加工段階 流通段階 消費段階 処理段階 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 危害分析 CCP設定 モニタリング 記録 検証 リスク・アナリシスとHACCPとの関連性(細菌)
食品の安全性に関わる社会システム:食品工場 健康弱者 (ハイリスク集団) HACCP (食肉処理場・食品工場) 農場でのQAP 一般的衛生管理 一般衛生基準 (PP;Prerequisite Program) 適性製造規範 (GMP;Good Manufacturing Practice) 衛生標準作業手順 (SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure) 自主衛生管理 免疫低下者(HIV、糖尿病、 癌、重度の疾患など) 子供、老人、妊婦、病弱者 に対する特別措置 高度の安全性 = 付加価値 第三者認証 HACCP (食肉処理場・食品工場) 一般的衛生管理 一般健康成人 法律による規制 食品衛生法 衛生基準 営業許可 営業停止 衛生教育 食品の安全性に関わる社会システム:食品工場
健康弱者(ハイリスク者)向けに、より高度の安全性システムを生産過程に導入 (GAP;Good Agricultural Practice) 認定農家 HACCP (食肉処理場・食品工場) 農場でのQAP 一般的衛生管理 一般衛生基準 (PP;Prerequisite Program) 適性製造基準 (GMP;Good Manufacturing Practice) 衛生標準作業手順 (SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure) 自主衛生管理 健康弱者(ハイリスク者)向けに、より高度の安全性システムを生産過程に導入 高度の安全性 = 付加価値 第三者認証 農場でのQAP 一般農家 法律による規制 家畜伝染病予防法など 一般健康成人向けの生産 適性農業規範 (GAP;Good Agricultural Practice) 適性製造規範 (GMP;Good Manufavturing Practice) 農場段階における衛生管理システム
法令は、社会活動における最小限のルールを定めるものであり、ハイレベルの規制は社会活動を沈滞化させる。 「民法は、権利の行使および義務の履行は、信義にしたがい誠実にこれをなすことを要すと定め(同法第1条第2項)、その権利義務の内容を確定する契約についても、それが社会の一般的な秩序や道徳観念(公序良俗)に反するときは、その契約は無効であるとしている(同法第90条)。」 水俣病見舞金訴訟の判決文より 六法全書を読まなくても、法令に規定された犯罪を犯すことは通常はない。公序良俗に反する法令はないからであり、この意味で、公序良俗の最低限のレベルを定めたものが法令である。 法令の役割は、社会秩序を乱す行為があった場合に、その最低限のレベルが守られているかどうかを判定するものである。 一般常識では問題が起きる場合には、特別の要件を課すことになる。運転免許のように、所定の学習(自動車学校)を義務化し、所定の法令(道交法)を遵守することが求められる。 今日起きていることは、「一般常識や公序良俗の崩壊」であり、それを法令によって規制しようとする二重の過ちである。
Prevention of foodborne illness Protection of reputation Objectives of application of the HACCP system HACCP システムを 適用する目的 食品媒介性疾患の防止 Prevention of foodborne illness More efficient quality assurance system より効果的な 品質保証システム Reduction of costs of food analyses 食品検査に要する 費用の削減 製品回収による 損失の削減 Reduction of losses due to product recall 企業の評判を守る Protection of reputation WHO 「HACCPシステムの必要性」 の 1枚
法的規制 リスク管理と経費負担のモデル 衛生教育に掛かる費用 低 リスク・レベル 高 商品価格 国民経済として 無駄な経費 税金 個人衛生 低 リスク・レベル 高 衛生教育に掛かる費用 法的規制の水準を上げると、その分、衛生対策費と監視業務の経費を税金で賄わねばならない。赤字国債が問題となっている現状で、実行できますか? 法的規制 自主衛生管理 商品価格 HACCP等の費用 国民経済として 無駄な経費 法的規制 税金 一般健康成人 ハイリスク集団 リスク管理と経費負担のモデル
HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準 全国的に統一された 適性農業基準(GAP) 農畜水産物の安全性向上のための社会システム ○○地域における 適性農業基準(GAP) ●●地域における 適性農業基準(GAP) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準 ○○県食品安全推進会議 ●●県食品安全推進会議 全国的に統一された 適性農業基準(GAP) 生産者、消費者、流通業者ならびに専門家が参加する 全国食品安全推進会議 品質保証計画(QAP) 第三者としての民間の認定機関・試験機関
(GAP;Good Agricultural Practice) 適性農業基準とは (GAP;Good Agricultural Practice) HACCP手法に基づく一般的衛生管理の認証基準例 チェックリスト 評価点 衛生管理コスト 認証マーク 非参加農場 50点未満 50点以上 60点以上 70点以上 80点以上 90点以上 無印 ★ ☆ ☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 安心価格で 自分に見合った 安全性を購入できる 市場価格 10%上乗せ 20%上乗せ 30%上乗せ 40%上乗せ 50%上乗せ
チェックリストによる評価システム Q1: チェックリストは誰が作成したのですか? ○○県食品安全推進会議が、生産者、消費者、流通業者ならびに専門家を加えた委員会を設け、農場の生産工程を詳細に調べ上げ、危害が発生しやすい作業工程を探しだし、管理措置と管理基準を設定したものです。この方法は、HACCP手法に基づいており、透明性が高いものです。 Q2: チェックリストはどのようにして作成されたのですか? 農林水産省が専門家に委嘱して「家畜の生産段階における 衛生管理ガイドライン」を2002年に刊行しました。素畜、飼料、畜舎、家畜の取扱い、作業員の健康と作業内容、出荷など、農場内の全ての要因について衛生管理マニュアルが示されています。これに基づいて、全国的に「生産衛生管理体制整備事業」が展開されています。 ガイドラインの内容を、実際に農場で点検することにより、実務に即した重要項目を選び出したものです。
Q3: チェックリストは地域によって違うのですか? 基本的にはガイドラインに沿っておりますが、寒冷地と温暖地では家畜の飼養形態や気候によるストレスも異なり、疾病の発生状況が若干違います。こうした地域特性をガイドラインに付け加える作業を行っているためです。将来的には、全国統一のチェックリストを作成する予定です。 Q4: 衛生管理コストとして消費者が余分の負担をするのですか? 食中毒菌に対する抵抗力は、一般健康成人でも一人毎に異なります。体調を崩している時もあるでしょう。安全性を高めるには費用がかかります。全てのヒトに健康障害が起きないようにするには、全ての生産物に安全性のコストを掛けなくてはなりません。それを補助金で賄えば、税金が重くなります。 税金として一律に負担するよりも、体調不順の時に多少の負担を払った方が、総体として低コストで健康障害を防ぐことができます。現状でも一般健康成人が食中毒に罹る頻度は高くはありません。罹っても、下痢・腹痛程度で、死亡等の重大な障害はありません。一律負担で増税するより、合理的なシステムです。
Q5: 衛生管理コストは誰が決めたのですか? 食品安全推進会議が、経営経済学の専門家に依頼して、これまで実施してきた一般的な衛生対策に新たな対策を付け加えるために必要な費用を集計してもらいました。その結果を、推進会議で検討し、妥当であると合意したものです。 Q6: 衛生管理コストの内容はどんなものですか? 素畜、飼料、畜舎、家畜の取扱い、作業員の健康と作業内容、出荷など、農場内の全ての要因について衛生管理マニュアルに従って実施するために必要となる費用です。畜舎の補修・改善には費用がかかります。畜舎の洗浄・消毒を徹底するには、消毒薬の使用量が増え、作業時間が長くなります。畜舎への出入りの際、着衣や履物を交換するなど、ガイドラインを忠実に実施するには、作業効率が落ちることもあります。作業員が衛生的に家畜を取扱うには、教育時間を設けて学習することも必要になります。これも賃金として支払われます。 こうした費用を専門家が積算して衛生管理コストを算定し、推進会議でも妥当と判断したものです。
Q7: 品質保証計画(QAP)とは? 工業製品では「品質保証」が付いていますが、農業分野では、工場のように管理された空間で製造されるものではないため、一定の品質を確保することは容易ではありません。そのため、品質規格を設定し、それを保証する取組みが遅れていました。 特定の危害要因に絞って、生産過程の危害発生要因を分析し、さらに試験検査によって具体的に発生状況を調べ、最も効果的にリスクを下げる工程を定め、定期検査することによって、リスクが極めて低いことを「品質保証」するものです。 これを実行するには、第三者としての民間の認定機関・試験機関を育成する必要があります。 Q8: 適正農業基準( GAP)と品質保証計画(QAP)の関連は? 適正農業基準が充足された段階でしか品質保証計画は実施できません。安定した生産性が保たれなければ、検査の度にデータがバラつき、解析できません。検査に耐えられる高い生産性を確保することが先決です。 生産環境がほぼ完全に制御された水耕栽培野菜などでの実施が先行するものと思われます。
「基礎編」 、 「採卵鶏編」、「ブロイラー編」、「養豚編」、 「肉牛・乳牛編」 HACCP手法研修用教材(日本獣医師会 ) 食生活における不安をなくし、安全性についての自信を取り戻すためには、農場から食卓までの関係者すべての努力が必要とされています。 衛生対策の強化には、モノも労働も必要です。その経費を公正に負担する社会システムを皆で考え、作り上げましょう。 安全性についての正しい知識と理解を広げることが、何よりも大切です。 <その他の視聴覚資料> 「基礎編」 、 「採卵鶏編」、「ブロイラー編」、「養豚編」、 「肉牛・乳牛編」 HACCP手法研修用教材(日本獣医師会 )
公衆衛生学概論 平成18年度 衛生管理責任者等講習会 1. 食品を取り巻く世界と日本の情勢 2. 食品の品質・安全性向上のための社会システム 平成18年度 衛生管理責任者等講習会 公衆衛生学概論 鹿児島大学教授 岡本嘉六 農学部獣医公衆衛生学 1. 食品を取り巻く世界と日本の情勢 2. 食品の品質・安全性向上のための社会システム 3. 食品の品質・安全性基準、管理記録、検証、認証 4. 食肉センターにおける衛生管理の進め方 生産から消費までのフードチェーンにおける全ての構成員が協力することによって、初めて、食の安全が向上する。