デジタル信号処理④ 2002.6.4
前回までの内容 サンプリング定理 フーリエ変換 線形システム 実フーリエ級数 複素フーリエ級数 離散フーリエ変換 (DFT(FFT)) ラプラス変換 Z変換 インパルス応答 ①② ③
今回の内容 Z変換の復習 Z変換 Z変換を行う上での重要な公式 Z変換の具体例 デジタルフィルタ フィルタの種類 FIRフィルタ
Z変換の復習① Z変換とは、パルス状の信号系列を一種の周波数のパラメータ と考えられる変数z(複素数領域)の関数へ変換すること。 これにより、デジタル信号処理を行うシステムの設計と解析が 容易になる。 デジタル信号系列をx(n)とするとき、z変換は、以下。 (Tは、サンプリング周期) nを0,1,2,3からなる自然数とすると、
Z変換の復習② ラプラス変換の式で、 なる置き換えを行い、有理多項式に変換したものであるが、ラプラス変換を使うことなく、デジタル信号系列x(n)から容易に求めることが可能。
Z変換の復習③ Z変換を行う上で重要な公式 のとき、 σ 線形性 推移定理 たたみ込み
Z変換の復習④ Z変換の具体例 x 2 1 n
たたみ込みの復習 インパルス応答 x x(t) y(t) y インパルス応答は、以下。 1 2 3 4 重ね合わせ 時不変性 線形性 1.0 0.8 0.7 x(t) y(t) 0.5 0.3 y インパルス応答は、以下。 1 2 3 4 重ね合わせ
たたみ込みの具体例① たたみ込みから出力パルスを求める 線形時不変システムにおいて、 インパルス応答がh(n)で、入力がx(n)であるとき 出力y(n)は以下のようになる。 例えば、インパルス応答と入力データが以下のとき
たたみ込みの具体例② たたみ込みから出力パルスを求める と求めることが可能
たたみ込みの具体例③ Z変換を利用して出力パルスを求める x h n n
デジタルフィルタ① フィルタ 様々な信号から望みの信号だけを取り出す技術 (濾紙やコーヒーのフィルタ) フィルタ 様々な信号から望みの信号だけを取り出す技術 (濾紙やコーヒーのフィルタ) デジタルフィルタ 信号をパルス列として表現し、数値演算処理に基づいて行うフィルタ
デジタルフィルタ② フィルタの種類 特性 フィルタの呼称 ローパスフィルタ (低域通過フィルタ) ハイカットフィルタ (高域除去フィルタ) デジタルフィルタ② フィルタの種類 特性 フィルタの呼称 ローパスフィルタ (低域通過フィルタ) ハイカットフィルタ (高域除去フィルタ) 振幅スペクトル 通過 除去 f 色がついた部分を除去 するフィルタを バンドエリミネーション フィルタ (帯域除去フィルタ) バンドパスフィルタ (帯域通過フィルタ) 振幅スペクトル f ハイパスフィルタ (高域通過フィルタ) ローカットフィルタ (低域除去フィルタ) 振幅スペクトル f
デジタルフィルタ③ フィルタの周波数特性の表し方 通過域 遷移域 減衰量 振幅スペクトル f カットオフ 周波数 カットオフ 周波数
FIRフィルタ① FIRフィルタ(Finite Impulse Response) そのインパルス応答が有限時間長で表されるもの フィルタの設計とは、フィルタ係数h(n)を決めること y(n),x(n)とフィルタ係数h(n) の関係 FIRフィルタの伝達関数
FIRフィルタ② 4次(フィルタ係数5個)のFIRフィルタのブロック線図 1サンプリング時間の遅延 1個前のデータ x(n) h0 h1 + + + + y(n)
FIRフィルタ③ FIRフィルタの具体例(フィルタ長13) デジタルフィルタの インパルス応答の例 h(n) {h(n)}={0.0000 0.0637 -0.0000 -0.1061 0.0000 0.3183 0.5000 0.3183 0.0000 -0.1061 0.0000 0.0637 0.0000 -0.1061 -0.0000 0.0637 0.0000 -0.0455 -0.0000 0.0354 0.0000}
FIRフィルタ④ FIRフィルタの具体例 フィルタの周波数特性 ローパスフィルター 振幅スペクトル fs:サンプリング周波数 横軸は、 なる正規化がされている。
FIRフィルタ⑤ FIRフィルタの具体例 実際に使ってみる フィルタのインパルス応答h(n)と入力x(n)から、 の計算を行う。
FIRフィルタ⑥ FIRフィルタの具体例(チャープ信号) 入力x(n)として、「チャープ信号」と呼ばれる信号を与える。チャープ信号とは、時間の経過とともに周波数が高くなる特殊な信号。 だんだん高い音になる 「全ての周波数を ほぼ均等に含んだ 信号」であることがわかる FFTで 振幅スペクトル を出す 波形
FIRフィルタ⑦ FIRフィルタの具体例 チャープ信号を利用してフィルタの周波数特性を調べてみる チャープ信号を入力することで、どの周波数がどのように影響を受けるかが直感的に理解できる。 FIRフィルタ 2[kHz]ぐらいから 急に小さくなっている。 0[Hz] 4[kHz]
FIRフィルタの具体例 MATLABを使ったプログラム例 %チャープ信号の作成 Ts=1; %計測時間1[s] Fs=8192; %サンプリング周波数8192[Hz] delta_t=Ts/Fs; %サンプリング周期 t=linspace(0,Ts-delta_t,Ts*Fs); %時間 y=sin(2*pi*Fs/4*t.*t); %チャープ信号の作成 sound(y,Fs); %音を聞く
FIRフィルタの具体例 MATLABを使ったプログラム例 %チャープ信号のスペクトルを見る ffty=fft(y,Fs); %FFT delta_f=1/Ts; %周波数分解能 f=linspace(0,Fs-delta_f,Fs); %グラフの横軸データ plot(f,abs(ffty),‘LineWidth’,2.0);axis([0 4096 0 70]) %描画
FIRフィルタの具体例 MATLABを使ったプログラム例 for n=-6:6, %FIRフィルタの係数の作成 h(n+7)=1/2*sinc(n/2) end y(1:13)=0; %出力y(n)の作成 for i=14:8192, y(i)=0; for j=1:13, y(i)=y(i)+h(j)*x(i-j); plot(t,y) %y(n)を描画する sound(y,Fs) %y(n)を音として聞く
フーリエ級数法① 希望のデジタルフィルタの周波数特性H(ω)を フーリエ逆変換することでFIRフィルタのフィルタ係数 を求める方法 なる置き換えを行い H(ω)を求めると、 複素フーリエ級数展開の式 に似ている
フーリエ級数法② 希望のデジタルフィルタの周波数特性H(ω)を フーリエ逆変換することでFIRフィルタのフィルタ係数 を求めることが可能
フーリエ級数法③ 問題例 次のようなローパスフィルタを設計する。 遮断周波数100[Hz], サンプリング周波数400Hzとする。 H(f) 1 100 f[Hz]
フーリエ級数法④ 問題例 周波数をサンプリング周波数で正規化しておく fc=100/400 各周波数ωc =2πfc=0.5π H(f) 1 H(f) フーリエ変換を 行うためy軸対称 にしておく。
フーリエ級数法⑤ 問題例 フーリエ逆変換する k=0,±1,±2, ±3, ±4,…を代入してh(k)を求める。
フーリエ級数法⑥ 問題例 実際に、h(k)を使うときは、例えば、k=0, ±1 ±2, ±3,…,±Nのとき、 h(-N) →h(0) h(N-1) →h(2N-1) h(N) →h(2N) と係数をずらし、以下のFIRの式 で使える形にする。
FIRフィルタの特徴 利点 設計が容易である 直線位相特性をもつ 常に安定なフィルタを実現できる 欠点 フーリエ級数を利用した設計法がある 直線位相特性をもつ フィルタ処理を行った後の波形は、位相に関しては、 元波形を平行移動させた結果が得られる 常に安定なフィルタを実現できる ある周波数について発散することがない 欠点 鋭いカットオフ特性を得るには、フィルタの係数を多くしなければならない。ソフトウェアの処理の負荷を増大させる原因となる。
これまでの内容 サンプリング定理 フーリエ変換 線形システム デジタルフィルタ 実フーリエ級数 複素フーリエ級数 離散フーリエ変換 (DFT(FFT)) DFTを使った実際のフーリエ変換 線形システム ラプラス変換 Z変換(インパルス応答・たたみ込み) デジタルフィルタ FIRフィルタ ①② ③④
これまでの内容
試験日程のお知らせ 2002.7.9に実施 持ち込みの可否に関しては、後日、連絡がある デジタル信号処理については、 FFTの結果得られるフーリエ係数の解釈の方法 デジタル信号系列のz変換 z変換を利用した周波数応答の解析 FIRフィルタ の範囲から出題予定。 資料:http://www.dh.aist.go.jp/~ynishida/lecture 質問:y.nishida@aist.go.jp