日本三大名園 「後楽園」 平成15~20年度 平成21年度~ 岡山大学教育学部附属中学校 岡山市立東山中学校 全校生徒数600名15クラス

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日本三大名園 「後楽園」 平成15~20年度 平成21年度~ 岡山大学教育学部附属中学校 岡山市立東山中学校 全校生徒数600名15クラス 平成15~20年度    岡山大学教育学部附属中学校              全校生徒数600名15クラス 平成21年度~   岡山市立東山中学校        全校生徒320名10クラス(特支クラス1) 真東へ 700m 徒歩10分 日本三大名園 「後楽園」 2 ★突然ですが、皆さんこの庭園をご存じでしょうか。 ★こちらは、日本三大名園の一つ、後楽園です。 ★東山中学は、岡山市の中心部、この後楽園の南1kmのところにある全校生徒320名の小さな学校です。 ★現任校には、平成21年度より勤務しておりますが、 ★その前は、ここから東へ歩いて10分のところにある岡大の附属中に  平成15年から6年間お世話になっておりました。 本日は、この附属中での実践研究を中心に発表させて頂きますが、 もし、お時間にお許しがいただければ、現任校での取組についてもご紹介できればと思っております。 2

中学校美術科の必修教科としての・・・ 「学びの本質を追究する中学校教科教育のあり方」 問題点 17年度~学校全体研究テーマ ・ 教科の目標が「豊かな情操を養う」等、学びの成果として示しにくいこと。 ・ 教科カリキュラムが他教科に比べ関連性や系統性(小学校図画工作との関係も含   めて)があいまいであること。 ・ 評価の観点・規準は示されているものの、学校・指導者によってかなり差があること。 ・ 一般的には、芸術は必要だと感じられているが、美術を学校で全員が学ぶ必要性に   ついて感じられていないこと。 ・ 美術科担当者でさえ、「なぜ美術を学ばなければならないのか」という問いに対して   明快な回答ができていないこと。                                問題点 3  前任校岡大附属中では、17年度から新しい研究に取り組むことになっておりました。 テーマは、中学校教科教育において、各教科ならではの学びとは何か、について追究するというものでした。 ★丁度、平成17年当時、新学習指導要領の改訂に向けた中教審の中で、中学校美術科の必修教科としての存続が議論されていたこともあり、自分自身の教科に対する考え方を根本的に見直す必要性を感じていました。  ★その過程で、ご覧のような美術科の問題点が浮かび上がってきました。  美術科の教育的役割として特に情操教育の面があげられます。 しかし、この教科がめざす「豊かな情操を養う」について達成できたかを明確に示すことは困難と感じていました。 これまでも、学習指導要領の改訂ごとに美術の存続の危機が叫ばれる中、この「情操」を前面に押し出した主張をしてきたもののこの危機を打開する決め手としては説得力に欠ける感がありました。  我々指導者の立場から、美術教育の必要性を訴えていくことは当たり前ですが、その前に、生徒たちがこの教科について「どう感じているか」をしっかりと受け止めておく必要があると考え、本研究にあたり、平成17年度入学当初の生徒に次のようなアンケートを実施しました。

平成17年度新入生200名を対象に次のようなアンケートを実施 現在のあなたの図工に対する感じ方の位置を選び,その位置を選んだ理由を教えてください。 「きらい・価値がない」と答えた生徒の主な理由 ・苦手で憂鬱だった。人の作品もうまいか下手だけで見ていた。 ・わざわざつくってそれを評価されても意味がないと思っていた。 ・なぜこんなとしなければならないのか、将来関係ないと思っていた。 ・図工美術は教わっても役に立たない。 ・何も考えずに作っていた。うまい=よいという考えがあったので楽しくない。 ・将来美術関係の仕事に就こうとは思っていなかったから。 ・見本通りにしか作ってはいけなくて堅苦しい。 ・下手だといわれ図工がきらいだった。 4 ★その結果,「楽しい」と感じる生徒の割合についてはおおむね予想範囲でしたが,「価値や必要性を感じないとした」とした生徒の割合が約67%も占めており。これまで図工美術は生徒たちにとって「楽しく価値あるもの」と信じて取り組んできただけにたいへんショックな事実でした。 ★また,生徒の記述からは,美術を学習する目的について感じられていない姿が見えてきました。 さらに、生徒たちが,小学校図画工作の中で形や色,材料に慣れ親しんできているものの, それらを表現においてどう扱えばよいか不安に思ったり扱いづらいものと感じたりしていること。 発達段階の特徴として写実表現に嗜好が偏る傾向があり,「写実的に正確に表現されているか,色塗りが丁寧であるか」によって「上手,下手」という評価をくだしがちであることをあらためて確認できました。 こうした本校生徒の実態について,一般的な生徒の発達段階から見てどうなのか, これからの美術教育の方向性をも含め,元教科調査官の遠藤友麗氏に質問した際の回答所見を紹介します(一部抜粋)。

題材間の関連性系統性を重視した単元構成の工夫 研究主題 17年度~学校全体研究テーマ 「学びの本質を追究する中学校教科教育のあり方」 形・色・材料を介して学ぶ喜びや価値を実感する生徒の育成をめざして ア 指導者の立場から「美術を学習させる目的(価値や必要性)」を追究(確認)する。 イ 少ない時間数の中で効率的且つ効果的な指導を行うための内容を追究(精選,構成)する。 ウ 生徒に「美術を学習する目的(価値や必要性)」を自覚させるための指導法を追究(改善,開発)する。 エ ア~ウによる授業の成果について,生徒の「美術を学習する目的(価値や必要性)」を自覚する変容   から検証する。 「造形要素を学び活かす」ことを学習活動の基軸にする 造形要素に関する理解を深めること 造形要素からイメージを豊かに創出すること 6  そこで本研究では,全体研究主題である「学びの本質を追究する中学校教科教育のあり方」を受け, 美術科の研究テーマを 「形・色・材料を介して学ぶ喜びや価値を実感する生徒の育成をめざして」とし 「美術科の学びの本質」を ★次の観点で追究しながら取り組むこととしました。 そして、この研究過程で見えてきたのが、 ★「造形要素に関する理解を深めること」「造形要素からイメージを創出すること」など、   「造形要素を学び活かすこと」を学習活動の基軸することで、  厳しい授業時数の中、各題材の学習内容を効果的に関連づけられるということです。 そこで、本研究では、 ★「題材間の関連性や系統性を重視した単元構成の工夫」による従来の指導計画の改善から着手し、  「なぜ美術を学ぶのか,美術の学びの成果とは何か」を、  生徒の美術の学びに対する喜びや価値意識の変化を検証しながら研究に取り組みました。 題材間の関連性系統性を重視した単元構成の工夫

取 組 第1学年前半の単元構成 知 る 試 す 確かめる 「造形要素に関する理解を深めること」 「造形要素からイメージを豊かに創出すること」 取 組       第1学年前半の単元構成     視覚化にチャレンジ入門編     五感でとらえよう     視覚化にチャレンジ平面編     あの日あの時あの瞬間      視覚化にチャレンジ平面編      新感覚スウィーツはいかが 知 る 試 す 確かめる 単元1 単元2 単元3 色の相性実験 一 色 で 多 アクリル絵の具の水彩技法 色のはたらき 色の整理 スケッチに挑戦 形のはたらき 単元4 単元5 単元6 「造形要素に関する理解を深めること」 「造形要素からイメージを豊かに創出すること」 8 特に第1学年の基礎基本を定着させる段階において、 小学校段階まで無自覚に親しんできた造形要素が言語外のコミュニケーションツールであることを自覚させることをねらいとする単元構成を行いました。 ★これは 第1学年前期の題材配列及び単元構成を示したものです。  生徒が主体的に美術の異質や能力を身に付けていけるよう  「知る」「試す」「確かめる」の3段階の学習場面を設定し, ★ ★ 各題材間の関連性系統性を図った単元構成のもとで授業を実践してきました。 次にその結果について、一部、ご紹介します。

5点以下 このグラフは、平成18年度第1学年の生徒に行った検証結果です。  このグラフは、平成18年度第1学年の生徒に行った検証結果です。  入学時から単元「知る」の後、単元「試す・確かめる」の後の「楽しさ」「価値」の感じ方の平均値の変化について、 上位群中位群下位群を比較したものです。

研究成果 平成18年度第1学年 下位群生徒の記述変化 研究成果   平成18年度第1学年 下位群生徒の記述変化  9 こちらは、下位群生徒の各段階における理由記述です。

11    ここで、ぜひ読んでいただきたい生徒のコトバをご紹介します。   これは、18年度一学年終了時「私と美術」というテーマで自由記述させたものです。 以上のような、成果を元に、以後、各題材を関連づけ系統的な指導計画による授業改善を図っていきました。

12 12 さらに、こちらは、平成17年度入学した生徒たちが、3学年終了時、先と同じ「私と美術」というテーマで 記述したものです。 12     さらに、こちらは、平成17年度入学した生徒たちが、3学年終了時、先と同じ「私と美術」というテーマで    記述したものです。 一人ひとりが「なぜ美術を学ぶのか」「必要性や価値」といったことに対し、説得力のあるコトバで語ってくれ     ています。 12

13 13

14 14 生徒のコトバは、 「美術科の学びの本質」について語ってくれているように思いました。  生徒のコトバは、 「美術科の学びの本質」について語ってくれているように思いました。 そして、この教科の「本質」とは、生徒ひとりひとりの中に新たな価値意識を芽生えさせることだと実感しました。 14

改善点 問題点 〔共通事項〕の趣旨 〔共通事項〕の活用を 意識させる表現と鑑賞 による単元構成を行う。 ・全ての指導内容に・・・ 取 組  以上のような成果について、附属中内での発表だけでなく、多くのかたのご指導ご鞭撻を賜るべく、19年度20年度、国立教育   政策研究所から教育課程に関する研究指定をうけ、前教科調査官の村上尚徳先生に直接ご指導いただくことになりました。    その際、村上先生から、 ★ この単元構成は、「知る」段階が知識や技能の習得に偏っており、 発想や構想の能力を育成する学習機会に乏しいという   問題点をご指摘いただきました。  また、これまでの単元構成で重視してきた  「造形要素に関する理解」と「造形要素からイメージを創出する力」など「造形要素を学び活かすこと」が ★その当時は、まだ公表されていなかった、〔共通事項〕の内容に相当するものであったことから、 〔共通事項〕の主旨をしっかりと理解し、★生徒が〔共通事項〕を活用しながら表現や鑑賞を行えるよう、 各題材の指導内容に〔共通事項〕を明確に位置付けた単元構成による改善を行うことをご指導いただきました。   すでにご周知の、この〔共通事項〕について、村上先生から、   ・美術の全領域分野にわたって「豊かに感じ取る力,見取る力,思考する力」の育成をめざすものであり,   ・具体的には、「発想構想する能力・創造的な技能・鑑賞の能力」などの資質や能力を育むために必要な栄養素    なのだということ、・また、〔共通事項〕の内容だけを取り出して題材化するものではないということ、   ・更には、アとイが相互に補完しあうものであるということ、などのご説明いただいたのですが、  その解釈にはずいぶん時間がかかりました。   問題点 ・「知る」段階が知識や   技能の習得に偏り ・発想や構想の能力を  育成する学習機会に  乏しい。 〔共通事項〕の趣旨 ・全ての指導内容に・・・ ・共通事項だけを取り出して  題材化するものではない ・アとイの関係が相互補完                 など 改善点 〔共通事項〕の活用を 意識させる表現と鑑賞 による単元構成を行う。

形・色・材料を介して思考判断し、意味や価値をつくりだす生徒の育成をめざして 研究主題 17年度~学校全体研究テーマ 形・色・材料を介して学ぶ喜びや価値を実感する生徒の育成をめざして 題材間の関連性系統性を重視した単元構成の工夫 造形要素を学び活かすこと 造形要素に関する理解を深めること 造形要素からイメージを豊かに創出すること 新学習指導要領 〔共通事項〕 ア 形や色彩、材料、光などの性質や    それらがもたらす感情を理解すること イ 形や色彩などの特徴を基に 対象のイメージをとらえること 16    こうしたご指導のもとに、   ★これまでの研究を踏まえ、   ★19年度後半からの研究は,表現及び鑑賞活動の中で、思考判断しながら取り組み,   自分なりの意味や価値をつくりだすことのできる生徒の育成をめざして  〔共通事項〕を指導内容に明確に位置付けた単元構成の元での実践、検証を行うこととしました。  形・色・材料を介して思考判断し、意味や価値をつくりだす生徒の育成をめざして 〔共通事項〕 を明確に位置づけた単元構成からの考察   19・20年度国立教育政策研究所教育課程研究校指定の研究テーマ 研究仮説 〔共通事項〕を表現及び鑑賞の指導事項に明確に位置づけた単元構成のもとで授業を展開することは、自分なりの意味や価値を追究しながら、資質や能力を豊かに育み、美術を学ぶ喜びや価値意識を深める生徒の育成に有効であろう。

STEP1 気付く段階 STEP2 試す段階 STEP3 確かめる段階 Ⅰ知る段階 Ⅱ試す段階 Ⅲ確かめる段階 取 組 Ⅰ知る段階 ・用具や描画材料の特徴、形色材料のも  つはたらきなどについて自覚 ・美術の学びに対する興味関心を高める Ⅱ試す段階 ・刺激や感情など   非視覚的なものを抽象表現 ・造形要素に対す  る価値意識を高める。 Ⅲ確かめる段階 ・形・色・材料を分析的に読み取る鑑賞活動 ・互いの感じ取ったことを共有、相違に気付かせ、表現の効果を確認 ・造形要素のはたらきを意識して活用しようとする意欲や態度を高める。 平成17年度~ 形・色・材料に性質や感情効果があることに気づかせる。 STEP1 気付く段階 STEP2 試す段階 STEP3 確かめる段階  1単元内で〔共通事項〕の活用を意識させる学習場面の設定 STEP2の表現に使用されている形・色・材料の特徴を基にイメージをとらえテーマを感じ取る鑑賞活動を通して,互いの考え方,見方,感じ方の相違のよさや価値に気づかせる。 STEP1の状態で,形・色・材料のもつ性質や感情効果やそれらの特徴がもたらすイメージを意識させ,発想や構想,表現に取り組ませる。 平成20年度 17  ★まず、これまでの「知る・試す・確かめる」の3段階の学習場面をあらため、  ★〔共通事項〕を活用し表現や鑑賞に取り組みながら、資質や能力を身に付けていけるよう      「 気付く 試す 確かめる」   の3段階の学習場面を、各単元内に設けるように改善を図りました。

単元構成及び題材配列の改善の様子 取 組 平成19年度まで 平成20年度から ア ヤカンの鑑賞 色の相性実験 一 色 で 多 色のはたらき 取 組 単元構成及び題材配列の改善の様子 色の相性実験 一 色 で 多 色のはたらき 色の整理 形のはたらき 視覚化にチャレンジ入門編 五感でとらえよう 視覚化にチャレンジ平面編 あの日あの時あの瞬間 視覚化にチャレンジ立体編 新感覚スウィーツはいかが 知 る 試 す 確かめる 単元1 単元2 単元3 単元4 単元5 単元6 アクリル絵の具の水彩技法 スケッチにチャレンジ 平成19年度まで 18  ★ 20年度は、ご覧のように1単元内で「3段階」の学習場面を設定しました。   なお「視覚化立体編」は、実践期間の関係で、今回の研究対象から割愛しています。 平成20年度から A 身近なもの をみつめて ア ヤカンの鑑賞 イ ○△□の鑑賞 B スケッチに 挑戦 ア 主人公をスカウト ・キャラクター探し   ・テーマ作り イ スケッチのコツ  ・対象の捉え方  ・筆圧、筆勢、筆触 ウ 物語制作    ・アイディアスケッチ    構図の工夫  ・物語の一場面を   選んで制作 C 物語を伝え あおう ・相互鑑賞 D 色を感じて ア 色でショッピング   ・色彩の鑑賞    明度    色相     彩度 E 五感をはたらかせて  ア 五感によるテーマの創出  イ  アイディアスケッチ ウ 鑑賞クイズ F 「あの日あの時あの場所で」 ア テーマの創出 イ 色づくりのコツ ・水のコントロール ・三原色による混色 ウ アイディアスケッチ(色づくり) エ 水彩技法のコツ ・ドライブラシ にじみ 重色 オ アイディアスケッチ(塗り方) カ 制作(画用紙の特性を工夫) G 私の感じ方 友達の感じ方  ・作品のテーマを形や 色彩からテーマを想 像する。   ・友達の感じ方と自分 の感じ方の違いから 自己の作品を客観 的に評価。 気付く 試 す 確かめる       単元1 形を感じて           単元2 視覚化に挑戦

実践事例Ⅰ 〔共通事項〕ア 〔共通事項〕イ 形や色彩、 材料、光な どの性質や、 それらがもたらす感情を理解すること 形や色彩などの特徴を基に 対象のイメー ジをとらえること 〔共通事項〕ア 形や色彩、 材料、光な どの性質や、 それらがもたらす感情を理解すること 19  それでは、実践事例をご紹介します。 こちらは、単元1における題材及び学習活動と観点に照らした指導内容を整理したものです。 この単元では、美術の学習を積み重ねていく上で、 基本となる対象の捉え方とスケッチの基礎的な技能の習得を図りながら, 形のもつはたらきを感じ取ることの楽しさを味わわせることをねらいとしました。 ★ そして各段階の指導内容に共通事項アとイの内容をこのように位置づけました。  [共通事項]を盛り込むことで、従来よりも、ねらいや評価の観点の整合性が図りやすくなり、   また、学習内容を生徒たちに明確に伝えることが可能になりました。

○△□の鑑賞 ○△□の性格は? STEP1 気付く段階 A 身近なものをみつめて ア ヤカンの鑑賞 イ 実践事例Ⅰ 単元1 形を感じて  STEP1 気付く段階 1時間 A 身近なものをみつめて ア ヤカンの鑑賞 どれが欲しい? お芝居の役を させるとしたら?  物の見方が一層深まった。前は物をありのままにしか見ていなかったけど、今ではいろいろな視点角度から見ることができるようになった。 いろいろな見方ができるようになった。 ○、△、□やヤカンの勉強で身近なものの形の特徴から性格を想像することがおもしろいと思うようになった。 学習自己評価の記   述 20  まず 気付く段階では、 ★ 身近なものの形態や基本形態の特徴から様々な情報が得られることに 生徒自身が主体的に気付きながら, ★ 形のもつ性質や感情効果への興味関心を引き出していくよう授業を進めました。 ★生徒の自己評価の記述です。 イ ○△□の鑑賞 ○△□の性格は?

STEP2 試す段階 B スケッチに挑戦 一つの身近な物からでも物語が作れることにおどろき感心した。 実践事例Ⅰ 単元1 形を感じて STEP2 試す段階 B スケッチに挑戦 1時間 ア 主人公をスカウト ・キャラクター探し   ・物語作り 生 徒 A 一つの身近な物からでも物語が作れることにおどろき感心した。 身近な物から話を作るということができるようになったと思う。 いろいろな物の特性を知ることができるようになった。 学習自己評価記   述 21 次に 試す段階では 対象から捉えたイメージを基にテー マを創出させ,単に形を写し取らせるのではなく,  自分の感じた対象のイメージを大切にさせながら スケッチの基本的な技能の習得を図っていくことをねらいとし、  ★気付く段階での学習を生かして、   身のまわりにある様々なアイテムを主人公にした物語を作成していくことを伝え、 ★主人公をスカウトすることから始め、そこからストーリーを考えさせました。 ★生徒の自己評価の記述です。 生 徒 B

STEP2 試す段階 B スケッチに挑戦 イ スケッチのコツ ・対象の捉え方 ・筆圧 筆勢 筆触 実践事例Ⅰ 単元1 形を感じて 1時間 イ スケッチのコツ ・対象の捉え方 ・筆圧 筆勢 筆触 生徒 B 生徒 A 22 ここでは、これから自分の考えた物語の一場面を制作していくにあたり、 ★スケッチの基礎的な技能として, 描画材料の特徴を生かすことや 対象の捉え方などについて ★手のスケッチを題材に習得を図りました。 ★こちらは授業後の生徒の自己評価の記述です。   前はシャーペンで書いてばかりだったけど鉛筆のよさを知っていろいろ描くときに使い分けるようにしました。美術では理科と違って線を重ねたり、影をつけたりという違いが分かりました。 スケッチなど絵を描くのはあまり好きではなかったけど、少しずつコツがつかめて、少しずつきれいに描けるようになった。 学習自己評価 記述

STEP2 試す段階 B スケッチに挑戦 ウ 物語制作 ・アイディアスケッチ 構図を工夫しながら ・物語の一場面を選んで制作 実践事例Ⅰ 単元1 形を感じて STEP2 試す段階 B スケッチに挑戦 1時間 ウ 物語制作  ・アイディアスケッチ 構図を工夫しながら   ・物語の一場面を選んで制作 生徒 A 生徒 B 23  以上の学習を踏まえ、 ★自分の表したい場面をどのように構成すればよいか  アイディアスケッチで構図を確かめさせてから制作に入りました。 ★こちらが完成作品です。 ★生徒の自己評価の記述です。 よく観察して特徴を生かしたり考えたりして、イメージを絵にできた。  実物の物をよく見、詳しく描くことができました。 前までは物を見て描くことが苦手だったけど、今は見る方向を工夫して上手に描けるようになった。今まで思わなかったところまで目がいったので、将来役に立つと思う。 学習自己評価 記述

友達の考えや意見を聞いたりすることでそれぞれの表し方や感じ方が分かって参考になる。 実践事例Ⅰ 単元1 形を感じて 1時間 STEP3 確かめる段階  C 物語を伝えあおう ・相互鑑賞 生徒 A 生徒 B もうすぐ捨てられそうな赤絵の具さんのために、白絵の具さんと水色絵の具さんが画用紙君と協力して大きな空を描いてあげた。そのお礼に赤絵の具さんは最後の絵の具で大きな太陽を描いた。すると・・・ 木づちは、親友の金づちの敵を取ろうと、ペンチに戦いを挑む。 さて、この後どうなってしまうのか! 24 ★この単元の最後の題材として、先ほどの作品について、一人ずつ物語を発表させながら相互鑑賞を行いました。    互いの表現の工夫やよさを感じ取らせながら,  身近なものを見つめる楽しさや面白さ、また形や構図を工夫して表現することへの  関心や意欲を高めることをねらいとしました。 ★生徒自己評価  友達の考えや意見を聞いたりすることでそれぞれの表し方や感じ方が分かって参考になる。 ヤカンの鑑賞したときはなんでこんなことするんだろう?不思議だなと思っていたが、形から色から材質からいろいろな性格を、描き方を生み出すことができる。美術の心は十人十色で答えはないと実感した。 学習自己評価 記述

実践事例Ⅱ 〔共通事項〕ア 〔共通事項〕イ 形や色彩、 材料、光な どの性 質や、 それらがもたらす感情を理解すること 形や色彩などの特徴を 基に 対象のイメー ジをとらえること 〔共通事項〕ア 形や色彩、 材料、光な どの性 質や、 それらがもたらす感情を理解すること 25    続いて 単元2「視覚化に挑戦」の実践についてご紹介します。      この単元では、先ほどの単元1で学んだことを生かしながら、   刺激や感情など非視覚的なものをテーマとした抽象表現を,   これまでの学びを意識させながら取り組ませることにより   造形要素に対する感覚や価値意識を高めていくことをねらいとしました。   題材設定にあたっては、あえて具象的な表現を避け抽象的な表現に限定し、   主題の発想のタネとして刺激や感覚、感情など非視覚的なものを対象とすることで,   形や色、材料によって視覚化する活動を通して,描くことみることの楽しさを体験させながら   造形要素の持つ感情効果を一層実感させることができると考えました。 ★ そして各段階の指導内容に共通事項アとイの内容をこのように位置づけました。

単元2 視覚化に挑戦 STEP1 気付く段階 D 色を感じて 実践事例Ⅱ ア 色でショッピング ・色彩の鑑賞 明度 色相 彩度 1時間 ア 色でショッピング  ・色彩の鑑賞   明度 色相 彩度 A C D E F B どっちの カバンが欲しい? どうして? 自分が選んだ 理 由 友達が選んだ理 由 26   まず 「色を感じて」ですが ★ この題材では、同形の品物について色彩の違いに(明度・色 相・彩度)着目させ, ★ ウインドウショッピングの感覚で鑑賞を行いました。   さらに、各属性の違いがもたらす感情効果について、 ,   例えば明度なら軽重,色相なら寒暖,彩度なら新古といったことを   互いの感じ方の違いから気づかせていきました。 ★ 生徒自己評価 色から受ける印象って不思議だなと思った。私たちは色から受ける印象を日々感じていることに気付いた。これからは色の印象を理解して生活していきたいと思う。 学習自己評価 記述

STEP2 試す段階 E 五感をはたらかせて 実践事例Ⅱ 2時間 ア 五感によるテーマの創出 ウ 鑑賞クイズ イ アイディアスケッチ 単元2 視覚化に挑戦 ア 五感によるテーマの創出  ウ 鑑賞クイズ イ  アイディアスケッチ 味が見えるとしたらどんな形?どんな色? アイディアスケッチ はどんどん描く。 消さない。 27 ★ 続いて 試す段階では2つの題材を設定しています。 ★一つ目の題材では、 五感から得られる情報をテーマとし、  目には見えない刺激や感覚を形や色彩のはたらきを生かして抽象による表現をさせました。 ★そして、お互いのテーマを感じとる鑑賞クイズを行い、  形や色彩のはたらきへの関心や理解を深め,  そこからイメージを捉えたりすることができることを実感させ,  描くことみることの楽しさを味わわせていくことをねらいとしました。。 ★生徒の自己評価の記述です。 友達の描いた味をいくつ当てられるかな?   五感で感じたことを色や形に表せられることを知って表現方法が豊かになったと思った。 また,同じ感覚を表すのにもいろいろな色や形で表せることを知っておもしろいなと思った。 学習自己評価 記述

一番印象に残った出来事を体験したときの気持ちが他の人にもわかるように作文 実践事例Ⅱ 単元2 視覚化に挑戦 STEP2 試す段階 F  あの日あの時あの場所で 0.5時間 夏休みの 出来事を ピックアップ ア テーマの創出 28  ここから2つ目の題材になります。  ここでは感情をテーマとし、アクリル絵の具の扱い方などの習得を図りながら、  制作に取り組ませました。 ★まず主題の発想段階では、 自分の体験の中で最も忘れられない出来事をテーマとし, ★そのときの感情わかるように作文によってテーマを明確にさせておきました。  一番印象に残った出来事を体験したときの気持ちが他の人にもわかるように作文

STEP2 試す段階 F あの日あの時あの場所で イ 色づくりのコツ 実践事例Ⅱ 単元2 視覚化に挑戦 STEP2 試す段階 F  あの日あの時あの場所で 2.5時間 イ 色づくりのコツ ・三原色による混色実験 ・ 水のコントロール 29   ★この題材ではアイディアスケッチをアクリル絵の具を使って進めていくにあたり、   ★アクリル絵の具の特徴や色づくりにおける水分量のコントロールや   ★3原色による混色の違いなど、用具の扱いなどと合わせ,     基礎的な知識技能の習得を図ることをねらいとしました。   ★生徒感想 一色で何色 つくれるかな? 絵の具セットにはどうして 赤色系、青色系、黄色系が2色ずつあるんだろう? 中学校に入学する以前は例えば混色なら赤と黄はオレンジ,くらいにしか感じていなかったが中学で詳しく学びはじめてにごりの少ない混ぜ方など少し発展した知識を知った。またそれを実際にやってみることで塗り方描き方のコツが見えてきてとてもおもしろかった。 学習自己評価 記述

STEP2 試す段階 F あの日あの時あの場所で 実践事例Ⅱ 重色やドライブラシなど今までは知らずに何となくできていたものが、学習してからは 単元2 視覚化に挑戦 STEP2 試す段階 F  あの日あの時あの場所で 2時間 ウ アイディアスケッチ(色づくり ) エ 水彩技法のコツ ドライブラシ にじみ 重色 オ アイディアスケッチ(塗り方) 30 そして、先ほどの作文で確かめたテーマについて ★まず、どのような色で表現すればよいか色づくりをしながらアイディアスケッチさせました。 ★その過程で、彩色の基本としての重色やにじみといった水彩技法を試させる場面 を導入し、 ★塗り方も工夫させながら更にアイディアスケッチを進めさせました ★生徒感想 重色やドライブラシなど今までは知らずに何となくできていたものが、学習してからは 意図的に使っていけるようになった。ここの場面はこの塗り方、こっちの場面はこの塗り方 をしようというふうに自分の表現が広がった。 学習自己評価 記述

STEP2 試す段階 STEP2 試す段階 F あの日あの時あの場所で 単元2 視覚化に挑戦 実践事例Ⅱ 単元2 視覚化に挑戦 STEP2 試す段階 F  あの日あの時あの場所で 2時間 単元2 視覚化に挑戦 STEP2 試す段階 カ 制 作 (描くだけでなく、画用紙の特性等も工夫して) エスキース  感情を視覚化するのに,今までに習った「ドライブラシ」「にじみ」などを使うことにより,表現しようとしたものが表せた。 学習自己評価 記 述 「ある夏の日」 10cm×10cm 31  ここから制作に入るのですが、 ★ まず、描くことに加えて,   画用紙の特性(折る,破る,切る,貼る,ひっかく,しわを入れるなど)についても   工夫できることに気づかせておきます。 ★ そして、これまでの学習の中で身につけてきた知識や技能を活用することを意識させるために、  エスキースで再度作品の構想を練らせました。 ★これは先ほどのスライドでアイディアスケッチしていた生徒の完成作品 です。 ★できあがった作品の裏面には,  鑑賞の際,テーマが何であったかを確かめられるように作文を貼らせておきました。 作文

STEP3 確かめる段階 G 私の感じ方友達の感じ方 実践事例Ⅱ 単元2 視覚化に挑戦  STEP3 確かめる段階  G 私の感じ方友達の感じ方 2時間 ① 形や色彩, 塗り方などからテーマを予想、コメント記入 友達の感じたことや気持ちなどが表現されているものを鑑賞してみて自分との価値観の違いや表現の方法などを学んだ。 また,自分の感じ方なども知ることができた。 学習自己 評価 記述 ② コメントを交換 ③ コメントを分類 テーマと一致したコメント テーマと一致しなかったコメント 32 確かめる段階では、 形・色・材料のもつ感情効果への理解を深めながら, 造形的な表現が感情を伝えたり感じ取ったりする手段となり得ることに 自ずと気づくことをねらいとした相互鑑賞を行いました。 ★まず 形や色彩、塗り方などを手がかりにクラス全員のテーマを予想させ、 なぜそう感じたのかをコメントカードに記入させておきます。 ★次に互いの感じ取ったことをコメントカードで伝え合い, ★自分が表したかったテーマと一致したものとそうでないものとに分類し、 ★互いの感じ方の相違に着目させながら作品の自己分析を行わせました。 ★生徒感想 以上、実践事例の一端をご紹介しました。 ④ 友達の感じ方と自分の感じ方の違いから自己の作品を客観的に評価。

34 このような内容のアンケート調査を実施し, 単元前後の、それぞれの項目対する5段階の回答人数割合の変化と 生徒の記述により検証を行いました。

「気付く」「試す」「確かめる」の3段階の学習場面設定 成 果 「気付く」「試す」「確かめる」の3段階の学習場面設定 〔共通事項〕を明確に位置付けた単元構成 43    ご覧のように、各アンケート項目の割合の全体の変化は   入学時に比べ単元1・2と経るに従って肯定的に捉える変化が確かめられました。   こうした結果から研究の成果として、 ★ 〔共通事項]を各指導内容に明確に位置付けた単元構成のもと, ★生徒は,形や色彩,材料などのはたらきを理解したりイメージを捉えたりすることによって, ★主体的に形や色彩,材料などを意識し思考・判断しながら, 豊かに発想や構想を巡らし,自分なりの表現を創意工夫して追究するようになり,  鑑賞においては, 作者の表現の工夫や意図を感じ取るようになったものと思われます。 ★そして、こうした学習を通して、自分なりの見方捉え方を身につけられたことで、 美術を学ぶことへの喜びや価値を実感している姿を確かめることができました。 一方   指導者にとって、[共通事項]をしっかりと意識することは、   ・指導目標を明確にした題材設定や評価の観点との整合性が図れる    など、冒頭であげた中学校美術科の課題に対する改善の指針となるものだと強く感じています。 形や色彩,材料などのはたらきを理解したり,イメージを捉えたりすること 主体的に形や色彩,材料などを意識し思考・判断 豊かに 発想・構想 自分の表したい感じを 創意工夫・追究 表現の工夫や意図の感受 形や色彩など自分なりの見方捉え方ができたことに 喜びや価値を実感