ポリオ寄付の新しい流れ 2009年1月21日の国際協議会で、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が世界ポリオ撲滅活動のために2億5,500万ドルの追加寄付をしたことを発表 これに応え、ロータリーも追加の1億ドルを独自に募金することを決定 2009年1月21日の国際協議会で、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が世界ポリオ撲滅活動のために2億5,500万ドルの追加寄付をしたことを発表しました。これに応え、ロータリーも追加の1億ドルを独自に募金することになりました。

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ポリオ寄付の新しい流れ 2009年1月21日の国際協議会で、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が世界ポリオ撲滅活動のために2億5,500万ドルの追加寄付をしたことを発表 これに応え、ロータリーも追加の1億ドルを独自に募金することを決定 2009年1月21日の国際協議会で、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が世界ポリオ撲滅活動のために2億5,500万ドルの追加寄付をしたことを発表しました。これに応え、ロータリーも追加の1億ドルを独自に募金することになりました。 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団がポリオ・プラス・プロジェクトに多額の寄付をすることは極めて喜ばしいことですが、2008年に「最後のポリオ寄付」と称して3年間の1憶ドルのチャレンジを決定した直後だけに、ロータリーがこれに加えてさらに1億ドルの財団寄付をすることに関しては、数々の意見が寄せられていますので、

ポリオ撲滅運動の経緯 1979年 3-Hプロジェクトとして、5年間フィリピンにおけるポリオの予防接種実施 1985年 ポリオ・プラス」を開始し、1億2,000万ドルの寄付を誓約する 1988年 寄付額2億4,700万ドル 1995年 寄付額5憶8,100万ドル 2005年にポリオ撲滅宣言をすることを決定 これを機会にポリオ撲滅運動の経緯を遡ってみようと思います。 1979年 最初の3-Hプロジェクトとして、フィリピンにおける600万人の子供たちを対象にしてポリオの予防接種を行う5カ年間の活動が開始されました。 1985年 国際ロータリーが、公共保健推進計画の民間部門支援としては世界初、しかも最大規模となるポリオ・プラス・プロジェクトを開始し、その資金として1億2,000万ドルの寄付を誓約しました。 1988年 当初の寄付目標を2倍も上回る2億4,700万米ドルが集まりました。 ロータリーの活動がきっかけとなり、世界保健総会が2000年までにポリオを撲滅するという決議を採択し、世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)の発足への道を開きました。世界ポリオ撲滅推進計画は、国際ロータリー、世界保健機関(WHO)、ユニセフ、米国疾病予防センター(CDC)が主導団体となって活動をしている組織です。 1995年 寄付額5憶8,100万ドルに達しました。 規定審議会において2000年までにポリオを撲滅し、2005年に撲滅宣言をだすことが採択されました。

ポリオ撲滅運動の経緯 2000年 西太平洋地域がポリオ無発生地域と宣言 2002年 ヨーロッパ地域がポリオ無発生地域と宣言 2000年 西太平洋地域がポリオ無発生地域と宣言 2002年 ヨーロッパ地域がポリオ無発生地域と宣言 2007年 寄付額6憶2,000万ドル 2007年11月 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が1憶ドル寄付  国際ロータリーは1億ドルの追加寄付 2000年 西太平洋地域がポリオ無発生地域と宣言されました。 2002年 ヨーロッパ地域がポリオ無発生地域として宣言されました。 2007年 寄付額6憶2000万ドルに達しました。 2007年11月 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が1憶ドルを寄付しました。これに対して国際ロータリーは1億ドルの追加寄付をすることが条件づけられました。 1クラブ当たり1000ドルを3年間寄付すれば1憶ドルの目標を達成できるとして、現在「ロータリーの1憶ドル・チャレンジ」の募金運動を継続中です。 2009年1月21日 の国際協議会で、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が世界ポリオ撲滅活動のために、さらに2億5,500万ドルの追加寄付をしたことを発表しました。これに応え、ロータリーも追加の1億ドルを独自に募金することになりました。 英国政府も追加の1億5,000万ドル(1億ポンド)、ドイツ政府もさらに1億3,000万ドル(1億ユーロ)を、世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)に寄付しました。

ポリオ撲滅プロジェクトの疑問 ポリオ撲滅までは、他のコーポレート・プロジェクトは採択されないのか ポリオ撲滅のみが、地域社会のニーズに適ったプロジェクトなのか いつまで続けるのか ポリオ撲滅は可能なのか このような形で推移しているポリオ撲滅プロジェクトに対して、数々の疑問がでているようです。 まず最初の疑問は、ポリオが完全に撲滅されるまでは、他のコーポレート・プロジェクトは採択されないのかという疑問です。 2004年規定審議会(決議04-525) 今後の規定審議会で承認されるまで、いかなるコーポレート・プロジェクトも採択しないことを決定しました。 2007年規定審議会(決議07-68)  野生ポリオ・ウイルス撲滅の証明がなされるまで、他のコーポレート・プロジェクトを採択しないことが決定しました。 以上の決議がされているために、野生ポリオ・ウイルスを撲滅するまでは、他のコーポレート・プロジェクトを実施することはできません。 ポリオ撲滅のみが、地域社会のニーズに適ったプロジェクトなのかという疑問もあります。 人道的奉仕は地域社会のニーズに従わなければなりません。ポリオ撲滅の重要性はよく理解できます。しかしポリオ撲滅のみが地域社会の人々が最も必要としているニーズなのかは疑問です。 来るべき人口爆発への対処、識字率向上、飢餓と貧困、疾病予防等々、地域社会の人々が必要としているニーズは限りなく存在します。ポリオ撲滅に拘るあまり、これらのニーズに対処することを避けるのは問題です。 いつまで続けなければならないのかという疑問もあのます。2000年までにポリオを撲滅し、2005年に撲滅宣言を証明することが採択されたにもかかわらず、それは不可能に終わりました。さらに何度となく「これが最後の募金だ」と言いながらその約束は破られてきました。進むも退くもいばらの道と言えましょう。 現在ポリオの常在国はナイジェリア、インド、パキスタン、アフガニスタンです。大規模なワクチン接種の努力にもかかわらずこれらの国でポリオを撲滅することができない理由は、貧困と劣悪な環境衛生、高い人口密度、無知、戦乱だと言われています。すなわちこのような環境がポリオウイルスを拡散しやすくし、ワクチンの効果を低下させているのです。従ってこれらの環境整備と特定の菌株に特異的な「一価」ワクチンを使うことで、これら障害を取り除いてポリオが撲滅できると考えられています。 学問的な見地から新ワクチンの開発は可能としても、これらの国から直ちに、貧困、劣悪な環境衛生、高い人口密度、無知、戦乱を解消することは不可能に近いのではないでしょうか。

実施上の疑問 奉仕プロジェクトの選択はクラブの自治権の範疇 財団への寄付は個人の意思 プロジェクト実施の真意 他団体との連携に関する問題 財団の管理運営に関する問題 奉仕活動の実践はクラブ自治権の範疇であり、決して強制されるものではありません。どんなに素晴らしいプロジェクトであろうとも、RIやガバナーが特定な奉仕活動を命令する権限は持っていません。推奨したり要請することはできても、それを選択したり実践するのはクラブです。 プロジェクトの選択権がクラブにあるという前提から、ロータリーの奉仕活動にコーポレート・プロジェクトという概念をあてはめること自体がおかしいのです 1923年、RIは無謀とも言える計画を立てました。 ①身体障害児に対する支援をクラブに強制する ②その資金として1ドルの人頭分担金を割り当てる これを阻止するために考え出されたドキュメントが決議23-34です。だから奉仕活動の選択はクラブの自治権だと定めた決議23-34は、上意下達を目論むRIにとって邪魔な存在なのです。 今、これと同じような無謀な計画が着々と進められています。RI主導型の「ポリオ撲滅」という奉仕プロジェクトが「要請」という名目で、実質的に強制されようとしています。 1クラブ当たり1000ドルを3年間寄付すれば1憶ドルの目標を達成できるとして、「ロータリーの1憶ドル・チャレンジ」として募金運動を開始中ですが、表面上は「要請」という名目ですが、実質的には1クラブ当たり1000ドルの財団寄付として割り当てされようとしているのです。RIからの強い要請に、てっきり命令だと誤解しているガバナーもかなりいるようですが、1クラブ当たり1000ドルは単なる要請であって強制割り当てではありません。 ポリオ撲滅は素晴らしい奉仕活動ですから、可能な限りこれに協力すべきでしょう。しかしクラブが自主的に行っている奉仕プロジェクトに資金を充当するために、やむなくポリオに対する財団寄付を断ることは、クラブの正当な権利行使です。 どうやらRIはノーベル平和賞を受賞しようという大きな夢を抱いているようです。ロータリー財団創立100周年を迎える2017年を目指しているらしいと穿った見方をする人もいます。そのためには、現在やっているようなクラブや地区レベルの小さなプロジェクトでは目立たないので、ポリオ撲滅のようらRI主導型の大型プロジェクトを手がける必要があるのかも知れません。 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団がポリオ撲滅活動のために多額の寄付をしたことは評価しますが、なぜロータリーがこれに見合った額の寄付をしなければならないのか、その理由がわかりません。さらになぜロータリーがマイクロソフトと連携活動をしなければならないのかもわかりません。 マイクロソフトはアメリカやヨーロッパにおいて独禁法違反で告発されて多額の罰金を支払ったことでも有名な会社です。マイクロソフト社が自社のイメージアップのためにロータリーを利用したのかも知れませんが、なぜロータリーが職業奉仕で大きな問題を抱えているためにフォーチュン誌の「アメリカの賞賛される企業10社」にも入ることのできないマイクロソフト社をパートナーに選んだのか、理解に苦しむところです。 ロータリー財団がイリノイ州法の下にあることも大きな問題です。人道的奉仕活動に公平に使うべきである浄財が、アメリカの法律の下に、それも州法の定めによって、その使途が左右されるのはおかしいことであり、当然のことながら、ロータリー財団は政治的な意図によって左右されない中立国に置くべきだと思います。 さらに資金の運用についても投資会社に一任しており、運営益に拘るあまり、虚業とみなされる会社、職業奉仕の観点から問題のある会社、軍需産業への投資の有無など、数々の問題が懸念されています。 こういった問題をよく考えながら、今後のポリオ撲滅活動に代表されるロータリー財団の活動全般を再検討する必要があるのではないでしょうか。

  第12回源流セミナー 人道的奉仕活動 製作  2680地区 PDG 田中 毅 

ロータリーの奉仕理念 職業奉仕理念 He profits most who serves best 人道的奉仕活動の理念   Service above self    社会奉仕・世界社会奉仕 ロータリーには二つの奉仕理念すなわち奉仕哲学があります。前者は職業奉仕の理念であり、He profits most who serves bestというモットーで表されており、後者は人道的奉仕活動の理念であってService above selfというモットーで表されています。そしてその二つの奉仕理念を明文化したドキュメントが決議23-34です。これがロータリーにおいて決議23-34が重要であるという所以です。今回は二つの奉仕理念のうちの人道的奉仕活動の分野に含まれる社会奉仕と世界社会奉仕についてお話してみたいと思います。

ロータリー設立の動機 大都会に住むすべての人はライバル 孤独感と疎外感に加えて、いつ過酷な自由競争に敗北するかもしれないという恐怖感が付きまとっていた 20世紀初頭のシカゴ市は、アメリカン・ドリームを夢見て、西へ向かう移民たちの交通の要衝として栄えました。極端な自由競争の下では、法さえ犯さなければ、いかなる手段を講じてでも、多くの富を得たものが成功者としてもてはやされる時代でした。万博後の大不況、ギャングの横行、金もうけのためなら手段を選ばないという職業倫理の低下、信頼関係の欠如という時代背景の中から、悪徳と腐敗の街シカゴでロ-タリ-は誕生しました。 一旗あげようという思いにかられて、田舎の村や町から集まってきた善良な人達にとって、更に、貧困や政治的な迫害から逃れて、新天地に自由を求めてやってきた移民達にとって、シカゴは決して住みやすい街とはいえませんでした。自分の周りにいる人はすべてライバルであり、僅かな弱みでも見せようものなら、寄ってたかって、引きずり落とそうとする過酷な競争社会でした。そんな街の中で事業を営んでいる人たちは、誰一人として心の底から語り合える友はなく、孤独感と疎外感に加えて、いつ過酷な自由競争に敗北するかもしれないという恐怖感が、常に付きまとっていました。

初期のロータリー思考 殺伐とした大都会の中でお互いに胸襟を開いて、どんなことでも語り合える友人をつくる シカゴ・クラブ定款 1. 会員の事業の利益の増大 2. 社交クラブに付随する親睦 殺伐とした大都会の中で、お互いに胸襟を開いて、どんなことでも語り合える友人を作りたい。ロータリーは、そんな発想から生まれたのです。 1906年1月に制定された、シカゴ・クラブの最初の定款には、「親睦の充実」と共に「職業上の利益の向上」が謳われています。会員の事業上の利益の向上を図るために、会員同士の相互扶助が活性化され、やがて、それは積極的な[互恵取引]に発展していきます。お互いの会員が、自分一人では掻くことのできない背中を掻き合おうという back scratchingの世界です。 Back Scratching の世界

会員同士の物質的相互扶助 原価取引 統計係 Statistician の設置 初期のシカゴクラブの記録を見ますと、統計係という役割があります。当時のシカゴ・クラブの例会は2週間に1回でした。統計係は前回の例会から今回の例会の間に会員同士がどんな取引をしたかということを発表する役割です。大きな取引があったらみんな拍手して喜びあい、取引が少なかったら、次はがんばろうと励ましあったという記録さえ残っています。 1911年に発行された全米ロータリークラブ連合会の会員名簿には、当時加盟していた24クラブについて3ページずつの情報が記載されています。1ページ目はそのクラブのクラブ名と会長、幹事の電話番号と住所や例会場所や時間が書いてあります。残りの2ページにはそのクラブのテリトリーの中にある著名な企業名、電話番号と住所が書いてあります。これは遠隔地におけるロータリアン同士の取引に使われたのです。騙すより騙される方が悪いという世の中ですから、シカゴの果物商がカリフォルニアの農園と取引したとしても、果物商に注文通りのオレンジが届く確証はありません。また農園の方にも約束通りの料金が支払われる確証がありません。しかしロータリアン同士の取引ならばお互いが信頼できたわけです。 1911年の連合会の組織表には、Local Trading Committee、Intercity Trading Committee、National Trading Committeeという委員会があります。Local Trading Committeeは自分のテリトリー内における取引を担当した委員会です。Intercity Trading Committeeは近隣都市間の取引、National Trading Committeeは全米です。そういった会員同士の物質的相互扶助を連合会が積極的に援助していたのです。

弱者に対する慈善活動 農夫と馬 新聞売りの少年 会員同士の物質的相互扶助によって事業を発展させたロータリアンが最初に行った対社会的奉仕活動は慈善事業でした。その一例としてよく紹介されるのが、農夫と馬の話です。 ジョリエットの近くに住んでいる貧しい男が、農業の傍らに説教をして回っていました。逆の言い方をすれば伝道の傍らに農業をしていたとも言えます。農耕にとっても伝道にとっても馬は欠かせない存在でしたが、ある日、突然その大切な馬が死んでしまったので、彼は途方にくれてしまいました。その話を聞いたシカゴ・クラブの会員が伝道師兼農夫に新しい馬を買って贈ることを提案し、それが採択されました。例会で回された帽子の中には次々とお金が投げ込まれ、新しい馬が彼にもとに届けられました。 新聞売りの少年への慈善も有名な話です。1908 年のある寒い日に、貧しい身なりをした体の不自由な新聞売り子を見かけたシカゴ・クラブの会員が新聞を買ってあげようと思いましたが、たまたま硬貨の持ち合わせがなかったので、両替をするためにその少年を例会場に連れてきました。彼は新聞代と共に自分が着ていたウールのセーターを脱いで与えました。他の人たちもシャツ、帽子、マフラー、ソックス、手袋や、さらにおよそ5ドルの金までも与えました。座車に乗った新聞売りの少年は、何年ぶりかの最高のおしゃれをしてその場を立ち去りました。 この二つの話は初期のロータリアン行った慈善行為であり、まだ組織的な奉仕活動に至る前の話です。

フレデリック・ツイードとドナルド・カーターの共同声明文 対社会的な奉仕概念の導入 フレデリック・ツイードとドナルド・カーターの共同声明文 対社会的奉仕活動の必要性 対社会的な奉仕活動の概念が正式にロータリーに導入されたのは1906年のことでした。鋳物業であるフレデリック・トゥイードが、いつも特許申請を依頼していた特許弁理士ドナルド・カーターにシカゴ・クラブへの入会を勧めました。当時盛んに行われていた物質的相互扶助の特典を説明して入会を促したところ、仲間内の相互扶助ばかり考えて社会に対する奉仕活動をしない組織は、世の中に受けいれられないと主張して入会を断りました。その考え方に共感したトゥイードは、入会して内部から改革を実現するように説得しました。カーターはこれに同意してシカゴ・クラブに入会しました。そして同年12月に定款が改正されて、第三節に「シカゴ市の最大の利益を促進し、忠誠心を市民の間に広げること。」という条文が加わりました。 物質的相互扶助が目的だったロータリーに社会に対する奉仕活動が加わったのです。 つい先日チェスレー・ペリーが残した資料の中から、この間の経緯を詳しく記したフレデリック・トゥイードとドナルド・カーターの共同声明文が発見されました。 物質的 相互扶助 社会に対する奉仕活動

公衆便所設置運動 市民団体の代表を集め、連合公衆便所建設委員会を設立 シカゴ醸造組合と百貨店組合の妨害を受けて 着工まで2年がかかる 1909年に市役所と公立図書館の横に二つの公衆便所を設置 フレデリック・トゥイードとドナルド・カーターの発案で行われた対社会的奉仕活動の実践例が、ループ地区(シカゴ中心部)における公衆便所設置活動です。 シカゴ・クラブは、グレート・ノーザン・ホテルに25の市民団体の代表を集め、連合公衆便所建設委員会を設立して、行政に働きかけますが、既に施設内にトイレを持っていることを強く主張する、シカゴ醸造組合と百貨店組合の激しい妨害を受けます。  当時のループ地区で顧客用にトイレを供用していたのは、百貨店かバー位しかなく、トイレを借りる必要に迫られた通行人は、女性は化粧品を買うことと引き換えに百貨店のトイレを借り、男性はビールの一杯も飲みにバーの扉をくぐらなければなりませんでした。もし、無料のトイレができれば、これらの店の収入に影響を与えることは、誰の目にも明らかでした。交渉は長引き、土地を掘り起こすまでに2年の歳月が掛かってしまいましたが、最終的には、建設用地と20,000ドルの補助金を市当局から受け取ることに成功して、1909年に市役所と公立図書館の横に二つの公衆便所が出来あがったのです。 公衆便所設置は市民のニーズに従って市民団体を組織し、行政当局に働きかけて、実施にこぎつけたものであり、俗にいわれるような単に金銭を拠出した団体奉仕活動ではなかったことに注目しなければなりません。 D.カーターとF.ツイードの発案

ロータリーの 二つの 奉仕理念 ロータリーには二つの奉仕理念があります。

He profits most who serves best 職業奉仕理念 He profits most who serves best その一つは職業奉仕の理念であり He profits most who serves best 最もよく奉仕する者、最も多く報いられるというモットーで表されています。 職業奉仕とは、アーサー・フレデリック・シェルドンがミシガン大学経営学部のマスター・コースで専攻した販売学を基本として、1902年に自らが設立したシェルドン・ビジネス・スクールで、20世紀の経営学の基本理念として教えていた考え方を、そのままロータリーが受け入れて、ロータリーの職業奉仕理念として導入したものであり、自分の儲けを優先するのではなく自分の職業を通じて社会に貢献するという意図を持って事業を営めば、結果として継続的な事業の発展が得られるという独自の思考です。 最もよく奉仕する者、最も多く報いられる アーサー F. シェルドン

人道的奉仕活動の理念 Service above self 超我の奉仕 社会奉仕・世界社会奉仕 このモットーの原型となったものが、フランク・コリンズが引用した、ミネアポリス・ロータリークラブで兼ねてから用いられていたService not selfというフレーズです。ミネアポリスには170人の会員を要するパブリシティ・クラブという職業分類クラブがあり、1910年にそれがそっくりそのままミネアポリス・ロータリークラブに名前を変えました。Service not selfという言葉はパブリシティ・クラブの時代から好んで使われていた言葉だと思われます。 超我の奉仕 社会奉仕・世界社会奉仕

身体障害児対策 1913年、シラキューズ・クラブによるリハビリテーション実施 1915年、トレド・クラブによる肢体不自由児への教育事業 エリリア・クラブによるオハイオ身体障害児協会の設立 1939年、エリリア・クラブのエドガー・アレンによる国際身体障害児協会設立 まず最初にロータリーに定着した理念は職業奉仕ですが、1910年代の後半から、対社会的な奉仕がロータリー運動の中で市民権を得るようになり、特に中小クラブは競って身体障害児対策に取り組むようになります。 1913年にはシラキューズ・クラブがリハビリテーション事業をを、1915年にはトレド・クラブが肢体不自由児への教育事業に取り組んでいます。 親しみを持ってダディ・アレンと呼ばれたエドガー・アレンは、身体障害児対策をすることを条件にしてエリリア・クラブに入会し、エリリア・クラブもそれを全面的に後援して、オハイオ身体障害児協会を設立し、最終的にはそれを国際的な組織にまで発展させました。

奉仕活動の実践をめぐる論争 利益の 適正配分 職業倫理 高揚 自己改善 理念提唱 個人奉仕 人道主義 的活動 実践活動 金銭的 奉仕 しかしこれらの社会奉仕活動は大きな資金とマンパワーを必要とするために、奉仕活動の実践をめぐって熾烈な論争が起こりました。ロータリアンの心に奉仕の心を形成することがロータリー運動の本質だとする理論派と、奉仕活動の実践こそロータリアンの使命だとする実践派との論争です。 理論派は、ロータリークラブの使命は、ロータリアンに奉仕の心を形成させることであり、ロータリアン個人個人が奉仕の心を持って、自分の職場や地域社会の人々の幸せを考えながら、職業人としての生活を歩むことであると考えました。すなわち、クラブ例会で会得した高いモラルに基づく奉仕の心で事業を行い、その考えを業界全体に広げていくことが、全ての人々に幸せをもたらし、それが地域社会の人々への奉仕につながることを確信していたのです。もし、職業奉仕以外の分野で、奉仕に関する社会的ニーズがあれば、夫々の会員が個人の奉仕活動として実施するか、自分が属している職域や地域社会の団体活動として実施すればよいのであって、クラブはあくまでも、どのような社会的ニーズがあるのかを提唱するだけに止めるべきであり、社会奉仕活動の実践は、ロータリークラブが実施母体になるのではなく、そのニーズを世に訴え、それに対処する運動が盛り上がるような触媒として機能すべきである。どうしても、地域社会に何かしたいのならば、職業上得られた Profits から個人的に行ったらよい、という考え方でした。 これに対して実践派は、現実に身体障害者や貧困などの深刻な社会問題が山積し、これまでにロータリークラブが実施した社会奉仕活動が実効をあげていることを根拠に、理論派とことごとく対立しました。実践派から見れば、奉仕の機会を見出して、それを実践することこそロータリー運動の真髄であり、単に、奉仕の心を説き奉仕の提唱に止まる理論派の態度は、責任回避としか写らなかったのです。両派の論争は、個人奉仕と団体奉仕、さらに金銭的奉仕の是非にまで発展して、激しい対立が続きました。 実践活動 金銭的 奉仕 団体奉仕

理事会の対応 決議22-17 身体障害児対策の推奨 ロータリアンが身体障害児対策のみに狂奔することを戒める理事会決定 決議22-17 身体障害児対策の推奨 ロータリアンが身体障害児対策のみに狂奔することを戒める理事会決定 決議23-8 全米身体障害児協会を支援し、人頭分担金1ドルを徴収する シカゴクラブは激しい反対運動を行い決議23-29を提案して対抗 決議23-8、決議23-29を取り下げ、その代わりに決議23-34を提案することで収拾 これに対してRI理事会の対応は極めて歯切れの悪いものでした。 1922年、RI理事会はエリリア、トレド、クリーブランド各クラブより共同提案を受けて、決議 22-17 を採択して、身体障害児に対する対策を奨励しました。 しかし、この決議を行った直後に開催された理事会では、理論派の人たちに配慮して身体障害児救済の事業のみに狂奔することを戒める理事会決定を行いました。 理事会の態度は更に二転三転し、1923年の大会に「決議 23-8 障害児並びにその救助活動に従事する国際的組織を支援する件」という決議案を提案することを決めました。これは積極的に身体障害児対策を推奨するために、ロータリーが国際身体障害児協会の活動を代行し、その費用として、RIが年間1ドルの特別人頭分担金を徴収することを定める内容であり、もしも、これが決議されれば、奉仕活動実践に関するクラブ自治権の侵害という視点から、収拾がつかない状態になることは必至でした。 これに反対したシカゴ・クラブは、RIが奉仕活動の実践をクラブに指示することを禁止する決議23-29提案するという反対活動を展開しました。 当時の規約改正は国際大会で行われていたため、大きな混乱が起これば大会運営そのものが困難になることは必至でした。そこで、決議23-8と決議23-29の双方を撤回する代わりに折衷案とも言える決議 23-34を提案するという高等戦術によって、この論争に終止符が打たれることになりました。決議委員長の指名を受けたウイル・メーニァは他の4名の委員と共に決議 23-34を起草し、この1,000語からなる決議は直ちに大会で皆に披露され、一言の訂正もなく採択されました。

なぜ 決議23-34 は 重要なのか 決議23-34のことをロータリーにおけるバイブルとか般若心経に例える人がいます。ロータリーは宗教ではありませんから、その例えは当を得ないとしても、決議23-34がロータリーにとって極めて重要なドキュメントであることは間違いのない事実です。そこで、なぜ、決議23-34がロータリーにとって重要なのかという理由について、お話してみたいと思います。

ロータリーの綱領に基づく すべての活動に対する指針 決議23-34 ロータリーの綱領に基づく        すべての活動に対する指針 第一条 ロータリーの奉仕理念 利己的な欲求と利他の心との間の矛盾を調和する人生哲学 二つの奉仕理念 He profits most who serves best Service above self この決議案が最初に採択された当初のタイトルは、「綱領に基づく諸活動に対するロータリーの方針を再確認し、国際ロータリーとロータリークラブにおける今後の手引きとなる原則を定めること」という長いタイトルでした。このタイトルからも、この決議23-34はロータリーの綱領に基づくすべての活動、すなわち四大奉仕すべてを規制するドキュメントであることが判ります。 現在の手続要覧は、決議23-34が社会奉仕の項目に入っており、その表題も「社会奉仕に関する1923年の声明」となっているため、社会奉仕の指針であると間違って解釈している人が多いのですが、ロータリーおいて四大奉仕の考え方が導入されたのは1927年からであり、その際に文中で使われているCommunityという言葉が、Community Service 社会奉仕という言葉と関連付けられて、現在付けられているタイトル「社会奉仕に関するロータリーの方針」と変更されに過ぎません。本来は、社会奉仕のみではなく、全ての奉仕活動の指針であることを忘れてはなりません。 決議23-34はロータリーの奉仕理念を確定した重要なドキュメントです。私たちは好んでIdeal of Service 奉仕の理想という言葉を使います。私は敢えてこれを奉仕理念と訳していますが、ロータリーの公式文献の中で奉仕理念について明確に定義しているのが決議23-34の第一条です。 私たちの深層心理には自らの幸せを第一義に考える利己的な欲求と、他人のことを思い遣る利他の心があり、この相反する二つの心が常に葛藤を繰り返しているのが人生です。この感情を和らげるのが、ロータリーの奉仕の心すなわち人生哲学なのです。この哲学はService above self という奉仕哲学であり、He profits most who serve best という実践理論の原則に基づくものなのです。この第一条はロータリーの奉仕哲学を定義したものですから、これを削除したり変更したりするとロータリーとは異なる組織になる可能性が生じます。

ロータリーの綱領に基づく すべての活動に対する指針 決議23-34 ロータリーの綱領に基づく        すべての活動に対する指針 第二条 ロータリークラブの役割 奉仕理念を団体で学ぶ 実践例を団体で示す 個人が日常生活で実践する  第二条はロータリークラブの役割について、①奉仕の理論を団体で学ぶこと ②奉仕の実践例を団体で示すこと ③奉仕活動の実践を個人で行うこと ④ロータタリーの奉仕理念と実践を一般の人に受け入れてもらうことが述べられています。しかし組織の管理運営は時代の変化に従って変えていかなければ、制度疲労を起こす可能性があります。従ってロータリークラブの役割も現在の社会情勢や産業構造に合うように進化させる必要が生じてきます。

ロータリーの綱領に基づく すべての活動に対する指針 決議23-34 ロータリーの綱領に基づく        すべての活動に対する指針 第三条 RIの役割 奉仕理念の普及 拡大と管理 情報提供 クラブ運営の標準化 第三条はRIの役割について述べられています。RIの目的は奉仕理念の育成と普及にあり、その役割は拡大、援助、管理と情報伝達です。 しかしRIの組織の管理運営もクラブと同様に、時代の変化に従って変えていかなければなりません。つまり現在の社会情勢や産業構造に合うように進化させる必要があるのです。 現在のRIは言語、管理、財務全般においてグローバル・スタンダードとはほど遠い、アメリカン・スタンダードで運営されています。ロータリーの創立はアメリカであったことは厳然たる事実です。しかしロータリー運動が世界中に広がり、さらにこの運動の発展を考えるならば、言語、民族、思考を考慮した中間管理体制を考える必要があると思います。 グローバル・スタンダード化     中間管理体制

ロータリーの綱領に基づく すべての活動に対する指針 決議23-34 ロータリーの綱領に基づく        すべての活動に対する指針 第四条 実践哲学の定義 理念の提唱だけではなく、客観的な行動が必要 団体的奉仕活動の諸条件 第四条ではロータリー運動は単なる理念の提唱ではなくて、実践哲学であり、奉仕するものは行動しなければならないと述べられています。往々にして理論派と称する人の中には、理屈だけは人一倍述べても、実践活動には興味を示さない人を見受けます。WCSのプロジェクトに参加して、発展途上国を訪れて共に汗を流し、始めて一人前に理屈を述べる権利が与えられることを忘れてはなりません。そして、クラブが団体奉仕活動を行う際の条件として、毎年一つの新しいプログラムを実施すること。単年度で終了すること。地域社会のニーズに従うこと。クラブ全員の協力が得られることが定められており、条件付とは言え、クラブの団体奉仕が認められていることを忘れてはなりません。 しかし、ここで定められたクラブが団体奉仕をする際の条件は、必ずしも地域社会のニーズ満たすものとは言いがたいので、ニーズに基づいた実践活動がやり易いように修正する必要があると思います。 社会のニーズを満たす奉仕活動

ロータリーの綱領に基づく すべての活動に対する指針 決議23-34 ロータリーの綱領に基づく        すべての活動に対する指針 第五条 クラブ自治権の定義 クラブは奉仕活動の実践に関する絶対的な権限を持っている RIはクラブに奉仕活動の実践を命令したり干渉することはできない 第五条にはクラブ自治権について定められています。クラブが地域社会に適した奉仕活動を選ぶ絶対的権限を持っていますが、ロータリーの綱領に違反したり、クラブの存続を危うくするような活動をすることが禁じられています。なお、RIは、例えそれが間違った活動であっても、クラブが行っている活動を禁止したり、特定の活動をするように命令することはできません。 RIとしてはポリオ・プラスや3-HのようなRI主導型の奉仕活動を強制したいと考えているようですが、RI定款、RI細則、ロータリークラブ定款で定められている規約以外は、奉仕活動の実践、RIのテーマ、強調事項もすべて推奨なり、要請に過ぎません。それを実施するか否かはクラブの裁量権の範疇にあることを忘れてはなりません。

ロータリーの綱領に基づく すべての活動に対する指針 決議23-34 ロータリーの綱領に基づく        すべての活動に対する指針 第六条 クラブの団体奉仕活動の制限 大規模プロジェクトの禁止 宣伝目的の活動の禁止 他団体との重複事業の禁止 サンプルとしての団体奉仕活動 第六条ではクラブが実施する社会奉仕実践の指針が述べられています。すでに他の機関が実施している奉仕活動と重複する奉仕活動は禁止されています。大規模活動に対する制約。宣伝目的の活動の禁止。奉仕活動の実践は個人奉仕を原則としながらも、サンプルとして行うクラブの団体奉仕も認められています。 人道的奉仕活動は地域社会のニーズを満たすものでなければなりません。従ってすでに他の機関が実施しているからとか、大規模活動であるといった理由で、地域社会のニーズがあるにもかかわらず、その活動を拒否することが正しい選択であるか否かは、大きく意見が分かれるところです。すなわち、この第六条は時代のニーズに合致したものに変える必要があります。

決議23-34撤廃の動き ロータリー・モットーがロータリーの奉仕理念であることを明記した唯一のドキュメントが決議23-34である 第二モットー廃止の動き 手続要覧から決議23-34の削除 1984年 第二モットーの格下げ 第二モットーの使用停止 手続要覧からの第二モットー削除 ロータリーの奉仕理念が明記された唯一のドキュメントが決議23-34であるにもかかわらず、決議23-34に関心を抱くロータリアンは、世界的には皆無に近い状態になってしまいました。 その影響を受けて1984年の手続要覧からは突如として決議23-34が削除されましたが、日本からの強い反対を受けて1986年には復活されました。 1989年の規定審議会で、He profits most who serves bestが第二モットーに格下げになり、Service above selfが第一モットーとして優先されることになりました。 2001年の規程審議会で、あらゆるロータリーの文書や声明には、性限定用語を使わないという決議案が採択されたのを理由に、2001年6月のRI理事会は、He profits most who serves bestを使用停止にする決定をしましたが、日本からの強い反対を受けて使用停止を撤回しました。 しかし、2001年版の手続要覧中の決議23-34は第二モットーが削除され、2007年にやっと復活したものの They profit most who serve bestに変更されました。

ビル・サージャント元RI副会長とエド・フタ RI事務総長の2007年11月開催のRI理事会に対する提案 ロータリー章典や手続要覧の改訂版からこの声明を削除する 遂に、2008年には信じられないような事件が起こりました。元RI副会長ビル・サージァントとエド・フタ事務総長は、決議23-34の多くの部分が現在のロータリーの社会奉仕原則と合致しないという理由で、2007年11月に開催された理事会に、社会奉仕に関する1923年の声明を、ロータリー章典と手続要覧の改訂版から削除するように提案しました。

具体的理由 アメリカに限定して、小規模な商売人で構成されていた時代に作られた組織なので現代にそぐわない 現在のクラブの社会奉仕活動とは合致しない。これを遵守すれば何もできなくなってしまう 決議23-34に敢えて違反したので、ポリオや3-Hが可能になった 決議23-34が現在の社会奉仕の理念や国際ロータリーやクラブの方針と合致しない理由として、 「決議23-34はロータリーがアメリカ中心の組織であり、かつロータリアンの大多数が小規模な商売人で構成されていた1923年に作られたものなので、現在の状況には必ずしも適応するものではありません。決議23-34は、明らかに現在のロータリークラブにおける社会奉仕活動とは合致しませんし、これを厳守しようとすれば、私たちは何もできなくなってしまうでしょう。現に、私たちは決議23-34の原則を破ってきたからこそ、3-Hやポリオ・プラスの活動ができたのです。」と開き直りともとれる発言をしています。

当時の仕立屋や靴屋にはこの問題があったとしても、現在利己と利他との調和に悩む人はほとんど存在しない RIはプロジェクトの提案だけではなく指示をすべきである 他の組織が全くそれをしない場合だけ奉仕活動を実施するのならば、何もできない さらに決議23-34は、他人のために奉仕したいという義務と利益との間に常に存在する矛盾を和らげようという哲学を引用していることに関して、「当時の仕立屋や靴屋の経営者にはこの問題があったとしても、今日、この矛盾が存在するのは僅かな人に過ぎません。決議23-34は、国際ロータリーが役立つ提案をするのはかまわないが、プロジェクトを指示してはならないと定めていますが、ポリオ・プラスはこれに違反することで大きな成果をあげました。決議23-34は、他の組織が全くそれをしない場合だけ、ロータリークラブが社会奉仕プロジェクトに従事すべきであると定めていますが、この条文が好きで何もしないクラブが多く見られます。現に1947年当時私のクラブがそうでした。」と述べています。 第1条に記載されている「ロータリーは、基本的には、一つの人生哲学であり、それは利己的な欲求と義務およびこれに伴う他人のために奉仕したいという感情とのあいだに常に存在する矛盾を和らげようとするものである。この哲学は奉仕-超我の奉仕-の哲学であり、-最もよく奉仕する者、最も多く報いられる-という実践理論の原理に基づくものである。」という文章はロータリーの奉仕理念すなわち奉仕哲学を定義した極めて重要な文章です。 ビル・サージャントが述べたように、もしも現在のアメリカに利己と利他との調和に悩む人など存在しないのならば、エンロンの事件など起こる道理がありません。アメリカ人の利己と利他の心が調和しているとは笑止千万な話であり、自分が儲けるためにレバレッジ、デリバティブとあらゆるテクニックを使って結果として世界の金融不安を作った責任を反省すべきです。祖国を捨て、かつ僅か250年の文明しか持たない新興国の人に哲学を語らせることの危険性を感じます。 ロータリーはボランティア組織でもNPOでもありません。当然のことながらRIの命令によって奉仕活動を実践する組織ではありません。奉仕活動の実践はクラブ自治権の範疇にあることを忘れてはなりません。 奉仕活動の実践はクラブ自治権の範疇

決議23-34は、社会奉仕の理念やRIやクラブの方針を必ずしも正確に説明していないように思われる 2008年1月の理事会決定 決議23-34は、社会奉仕の理念やRIやクラブの方針を必ずしも正確に説明していないように思われる 今後の手続要覧の改訂版に、決議23-34を歴史的文書として保存すること 1923年の声明が歴史的な価値を有するものとして、手続要覧に記載されていることを言及する文をロータリー章典に含めること この提案を受けて、2008年1月に開催された国際ロータリー理事会は「ロータリー章典を下記のように修正する。現在の方針や手続きに加えて、ロータリアンにとって歴史的な価値を持つ過去のRI理事会や国際大会の決定や声明がある。このような決定や声明は、現在のRIの方針を表すものではないが、歴史的な意味合いからロータリアンやロータリークラブによって参考になるものである。事務総長は、ロータリアンにとって歴史的な価値があると思われる、すべての過去の方針、手続き、および声明のリストを保存するように努力しなければならない。今後の手続要覧の改訂版に、社会奉仕に関する1923年の声明を歴史的文書として保存すること。1923年の声明が歴史的な価値を有するものとして、手続要覧に記載されていることを言及する文をロータリー章典に含めること 。」を決定しました。 すなわち歴史的文書として保存することを定めたものの、決議23-34の全文が手続要覧やロータリー章典に掲載されるか否については、この決定からは明らかではありません。

2008年11月 ロータリー章典 決議23-34の本文抹消 歴史的文書としての記載なし 1923年の社会奉仕に関する声明 2008年11月 ロータリー章典 決議23-34の本文抹消 歴史的文書としての記載なし 1923年の社会奉仕に関する声明  理事会は、歴史的な価値を考慮して 手続要覧の将来版の発行に当たって社会奉仕に関する1923年の声明を含めることを事務総長に要請した。 しかしながら、2008年11月および2009年1月の発表されたロータリー章典には、決議23-34の本文は抹消されたままで、歴史的文書としての別途記載もありません。その代わりに「8.040.2. 1923年の社会奉仕に関する声明」という項目が新設されて、「理事会は、歴史的な価値を考慮して手続要覧の将来版の発行に当たって社会奉仕に関する1923年の声明を含めることを事務総長に要請した。(2008年6月RI理事会)」という記載が加わっています。 すなわち現在のロータリー章典には「1923年の社会奉仕に関する声明」という言葉だけが残ったものの決議23-34の本文は完全に姿を消してしまい、現時点では歴史的に貴重な文献という項目は、RIの諸規約、公式文献、ウエブサイトのどこを見ても見当たりません。かつて道徳律が公式文献から抹消され、なんとか道徳律という言葉だけが国際ロータリー細則16条に残ったものの、やがて道徳律という言葉そのものも消えていったことを思い出し、決議23-34も同様な経緯をたどりはしないかと心配しています。 「手続要覧に1923年の声明を含めることを事務総長に要請する。」という表現も引っ掛かります。RIにおける最高の意思決定機関であるRI理事会が、事務職員の長に過ぎない事務総長に要請するのはいささか筋違いで、これは指示ないしは命令すべきでしょう。ボランティアとして奉仕しているロータリアンと給料をもらって働いている事務総長とは、立場の違いを明確にする必要があります。さらにこの決議23-34を削除しようという提案をだした張本人の一人が事務総長ですから、理事会からの要請を無視する可能性は否定できないと考えるのは果たして杞憂に過ぎないのでしょうか。

世界は絶えず変化しています。そして私たちは世界とともに変化する心構えがなければなりません。ロータリー物語は何度も書き替えられなければならないでしょう ロータリーがその適正な運命を理解するとしたら、ロータリーは必ず進歩しなければなりません。時には革命が起こる必要があります 「世界は絶えず変化しています。そして私たちは世界とともに変化する心構えがなければなりません。ロータリー物語は何度も書き替えられなければならないでしょう。」 「ロータリーがその適正な運命を理解するとしたら、ロータリーは必ず進歩しなければなりません。時には革命が起こる必要があります。」 これは、ポール・ハリスが残した有名な言葉です。この言葉を例に出して、ロータリーは変わらなければならないことを力説する人も多いようですが、ロータリーにおいて、「変えなければならないもの」と「変えてはならないもの」をはっきり分類しておく必要があります。 ポール・ハリス語録より

ロータリーの奉仕理念 He profits most who serves best 変えてはならないもの ロータリー哲学 ロータリーの奉仕理念 He profits most who serves best Service above self まず、絶対に変えてはならないものは「ロータリーの哲学」すなわち「ロータリーの奉仕理念」です。ロータリーの哲学を変えれば、それはロータリーではなくなるからです。 ロータリーの奉仕理念は次の二つのドキュメントで定義されています。その一つは「決議23-34」であり、「この哲学はService above Selfの奉仕の哲学であり、He profits most who serves vestという実践倫理に基づくものである。」とService above SelfとHe profits most who serves vestがロータリーの奉仕理念であることが明記されています。 もう一つのドキュメントは、RIから毎年発行されるOfficial Directory RI会員名簿であり、その最終ページには「A brief history of Rotary」には「Rotary clubs everywhere have one basic ideal – the “Ideal of Service,” which is thoughtfulness of and helpfulness to others. いかなる場所においても、ロータリークラブは一つの基本理念-「奉仕理念」を持っている。それは他人のことを思い遣り、他人のために尽くすことである。」という言葉が記載され、Service Above Selfの真意が説明されています。 すなわち、ロータリーの奉仕理念は、奇しくも決議23-34に明記されているHe profits most who serves vestと Service Above Selfの二つのモットーであり、この二つのモットーはどんなことがあっても絶対に変えてはならない奉仕理念であることを強調しておきたいと思います。奉仕理念とはロータリー哲学そのものであり、哲学は万古不易なものであることは、当然なことです。また第5条 クラブ自治権も堅持する必要があります。

変えなければならないもの RI・地区、クラブの管理運営 奉仕活動の実践 変えてはならないものがある一方で、変えなければならないものがあります。組織の管理運営を長年変更せずに放置しておくと、必ず制度疲労を起こして、その組織は衰退の道を辿ります。すなわち第2条、第3条は現状にマッチするように変える必要があります。さらに奉仕活動はロータリアンの思いつきで選択をすべきではなく、社会のニーズに従って実践する必要があります。そのためには、第4条、第5条、第6条は社会のニーズに沿った内容に変える必要があります。

大連宣言    古沢丈作 須らく事業の人たるに先立ちて道義の人たるべし。蓋し事業の経営に全力を傾倒するは因って世を益せんがためなり。ゆえに吾人は道義を無視していわゆる事業の成功を獲んとする者に与せず。 成否を日うに先立ち退いて義務を尽さむことを思い進んで奉仕を完うせんことを念う。自らを利するに先立ちて他を益せむことを願う。最も能く奉仕する者、最も多く満たさるべきことを吾人は疑わず。 かつて大連クラブの古沢丈作が、[ロータリーの綱領]と[ロータリー倫理訓]の真髄を、格調高い日本語で適格に表現して1928年に発表した大連宣言があります。無味乾燥な現行のロータリーの綱領にかえて、これを英訳して新しいロータリーの綱領にしようという運動は功を奏しませんでしたが、創立まもない新しいクラブがこういう素晴らしい提案をだした戦前の日本のロータリーを見習うべきであると思います。 その全文をご紹介します 須らく事業の人たるに先立ちて道義の人たるべし。蓋し事業の経営に全力を傾倒するは因って世を益せんがためなり。ゆえに吾人は道義を無視していわゆる事業の成功を獲んとする者に与(くみ)せず。 成否を日うに先立ち退いて義務を尽さむことを思い進んで奉仕を完うせんことを念う。自らを利するに先立ちて他を益せむことを願う。最も能く奉仕する者、最も多く満たさるべきことを吾人は疑わず。

大連宣言    古沢丈作 あるいは特殊な関係をもって機会を壟断しあるいは世人の潔しとせざるに乗じ巨利を博す、これ吾人の最も忌むところなり、吾人の精神に反してその信条を紊るは利のため義を失うよりはなはだしきは無し。 義をもって集まり、信をもって結び、切磋し琢磨し、相扶け相益す。これ吾人団結の本旨なり。しかれども党をもって厚くすることなく他をもって拒むことなく私をもって党する者にあらざるなり。 あるいは特殊な関係をもって機会を壟断しあるいは世人の潔しとせざるに乗じ巨利を博す、これ吾人の最も忌むところなり、吾人の精神に反してその信条を紊る(みだるる)は利のため義を失うよりはなはだしきは無し。 義をもって集まり、信をもって結び、切磋し琢磨し、相扶け相益す。これ吾人団結の本旨なり。しかれども党をもって厚くすることなく他をもって拒むことなく私をもって党する者にあらざるなり。

大連宣言    古沢丈作 徒爾なる角遂と闘争とは世に行なわるべからず、協力をもって博愛平等の理想を実現せざるべからず、しかり吾が同志はこの大義を世界に敷かむがために活躍す吾がロータリーの崇高なる使命ここに在り、その存在の意義またここに存す。 徒爾なる角遂(かくちく)と闘争とは世に行なわるべからず、協力をもって博愛平等の理想を実現せざるべからず、しかり吾が同志はこの大義を世界に敷かむがために活躍す吾がロータリーの崇高なる使命ここに在り、その存在の意義またここに存す。

新しい声明の策定 ロータリーの理念とすべての奉仕活動の実践の指針 ロータリー哲学の再確認 RIとクラブとロータリアンの役割を明確に規定する 現在の人道的奉仕活動のニーズに適った指針 決議23-34の内容に現代にそぐわなくなっている個所があることは事実です。いたずらに決議23-34にしがみつくのではなく、大連宣言のようにロータリーの理念とすべての奉仕活動の指針となるような格調高いドキュメントを日本から発信して、それを今後のロータリー活動の指針とするような試みを、是非とも行いたいものです。 哲学としてのロータリーの奉仕理念を再確認することは当然として、現状に沿うようにRIとロータリークラブの組織の管理運営を改革し、ロータリアンの役割を明記し、現在の地域社会や国際社会のニーズにかなうような奉仕活動の指針を新たに策定したドキュメントを早急に策定して、それに基づいてロータリーの諸活動を実践すべきだと思います。 非常に残念なことには2010年の規定審議会における立法案の提出期限は2008年12月31日までなので、クラブや地区からの提案は不可能なので、2013年の規定審議会に期待したいと思います。

人道的奉仕活動の分類 Community の解釈の変化 広義のCommunity 家庭、職場、業界、町、国    家庭、職場、業界、町、国 狭義のCommunity Service    地域社会における奉仕活動 広義のCommunity Service    地球全体が一つのCommunity    世界社会奉仕 人道的奉仕活動は社会奉仕活動と世界社会奉仕活動に大別されます。社会奉仕はコミュニティ・サービスの翻訳ですから、このコミュニティ範囲をどこにするかによって、活動範囲が変わってきます。   1915年にガイ・ガンディカーが書いたThe talking knowledge of Rotaryではコミュニティを、自分の家庭、職場、業界、自分の町や州や国と定義しています。 しかし1927年の四大奉仕によって社会奉仕という分野ができた際には、コミュニティが狭義の地域社会と定義されました。 21世紀はボーダーレス社会だと言われています。ボーダーレス社会ということは、ボーダー(境界)が無いわけですから、コミュニティの範囲も地球全体に広がってくるわけです。従って、今後は社会奉仕という概念が拡大されて、現在の国際奉仕の一分野である世界社会奉仕を包括したものになると考えられます。

世界社会奉仕 WCS とは 地域社会のニーズに基づくプロジェクト その地域の クラブによる 社会奉仕活動 外国のクラブ・地区との共同事業 人的資金的制約 地域社会のニーズに基づくプロジェクト その地域の  クラブによる 社会奉仕活動 外国のクラブ・地区との共同事業 ロータリーの社会奉仕の原則は地域社会のニーズに基づいた活動をすることです。   地域社会のニーズがあれば、その地域のロータリークラブが社会奉仕活動として実践しなければなりません。 しかし、日本のような社会保障が充実している国では、地域社会のほとんどのニーズは行政や専門団体がこれに対応しているため、その隙間を探す作業は限られてしまいます。それが日本のロータリーの社会奉仕活動の低調さの原因かも知れません。 しかしコミュニティの範囲を拡大して地球レベルで考えれば、国や行政がそのニーズを満たすことができない発展途上国や開発途上国は数限りなく存在します。さらにマンパワーや資金の制約で奉仕活動の実践が不可能なロータリークラブもの数多いはずです。そしてそれらのクラブは、外国の地区やクラブに援助を求めることができます。これが世界社会奉仕です。 単に金銭を贈るだけではなく、なんとか時間と旅費をやりくりして現地に行って、現地のロータリアンと共にプロジェクトを探し実際の作業に参加すれば、WCSプロジェクトの恩恵が及ぶのは、単に援助される側の人たちだけではなく、この事業に参加した自分たちであることが実感できます。自分たちの協力によって助けられた人たちの喜びを見るとき、この奉仕の実践に参加したロータリアンにも大きな喜びが与えられるのです。 共に奉仕活動を実践したという達成感

WCSプロジェクトの選択 WCSプロジェクト交換表の活用 地区やクラブによる現地調査 他クラブとの共同事業も可能 トゥイン・クラブによる共同事業 年2回、RIからWCSプロジェクト交換表が発表されますから、その中から自分のクラブにふさわしいプロジェクトを選ぶことができます。単にプロジェクト交換表に頼るのではなく、できれば現地に赴いて、ニーズの度合いや要請クラブの状況を把握すればさらに効果的なプロジェクトを見つけることが可能です。必ずしも要請国にロータリークラブがなくても実施可能ですが、その場合は、事業がどのように行われているのかを把握する必要があります。   プロジェクトの規模が大きい場合には、幾つかのクラブの共同事業や地区として実施することも可能です。最近は要請クラブとトゥインクラブとなり共同でプロジェクトに取り組む例も増えています。

実施上の留意点 プロジェクトの事前調査 援助要請クラブの現況調査 送金方法の選択と確認 プロジェクト進行状況確認 プロジェクト完了の確認 財務処理の確認 運営状況の定期的確認 そのプロジェクトがその地域において本当に必要としているプロジェクトかどうかを確認する必要があります。さらにプロジェクトの選定に当たっては自助努力を助けるものでなければなりません。魚を贈ってもそれを食べてしまったら終わりになりますが、魚を獲る方法を教えれたりその道具を提供すれば継続的な援助になります。 日本を絶好の援助国と見て、毎日のように数多くの援助要請が寄せられています。別のクラブが日本から援助を貰ったので、うちのクラブも貰わなければといったものもあり、その傾向は、援助を受けることが日常化している国で強いようです。中には単なるおねだりのようなものや、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる式のもの、更にはロータリアンにあるまじき詐欺のようなものさえ含まれています。従って、本当に必要なプロジェクトなのかを充分に事前調査することが必要です。 援助を要請しているクラブの状況をよく把握する必要もあります。そのプロジェクトの実践は要請クラブが行うわけですから、実施する能力があるのかまた熱意があるのかを十分見極める必要があります。そのためには、現地に行って、プロジェクトの必要性や現地クラブのプロジェクトに対する取り組み方を調査するのが一番よい方法です。   マッチング・グラントを活用すれば、受領側に使途や会計報告の義務が生じるので安心感がありますし、送金はロータリー財団を介するのが安全で確実です。送金しっぱなしではなく、現地を訪れてプロジェクトの進行状況を確認したり、その後の運営状況を確認することも大切です。なお、マッチング・グラントを活用したプロジェクトが完了したときには、final report の提出が義務づけられています。これを怠ると提唱側が次のマッチング・グラントを申請することができなくなりますので注意する必要があります。

マニラ市内のストリート・チルドレン 私が関わった海外における人道的奉仕活動の幾つかをご紹介します。 現在のフィリピンにおける活動の原点となったのは1980年代後半から始まったマニラ市郊外トンド地区のスモーキー・マウンテンにおけるストリート・チルドレン対策です。 マニラ市内のストリート・チルドレン

1990年にはスモーキー・マウンテンに隣接するナボタスに、2年計画でロータリー・センターを建設して、そこを拠点にして現地の医師の協力を得て、乳幼児や歯科の無料健診をしたり、 乳幼児無料健診

電動ミシンを導入して、スラム街の女性のための授産所を運営したり、 電動ミシン授産所建設

現地ロータリアンと共に母子栄養相談やフーディング・サービスをしたりしました。

1990年代後半には、ネグロス地区における深井戸掘削、ケソン地区におけるスープ・アンド・キッチン・プロジェクトと飲料水提供を、 ケソン地区 スープ・アンド・キッチン

さらに2003年からはマニラ市西部の4学校群を対象にして、CLEによる識字率向上運動に取り組み、4年間にわたるWCSを継続して、

2007年にはロータリー財団から30万ドルの3-H補助金が認められ、約40万人の学童を対象にしてタガログ語と英語によるバイリンガルによる識字教育を実施中です。 CLEによる授業風景 2

人道的奉仕活動実践の原則 元RI会長 グレン・キンロス 私たちが地域社会のニーズを推測するのではなく、地域社会の人たちが必要だと感じるものを見つけて実施する 自らが地域社会に入り込んで、地域社会の関心を探る    元RI会長 クリフ・ドクターマン 地域社会の既存団体に寄付するのではなく、自分たちの力で、プロジェクトを完成すべき              元RI会長 グレン・キンロス 私たちが人道的奉仕活動を実践する場合に留意しなければならないことは、その活動が地域社会のニーズにかなった奉仕活動かどうかということです。私たちが一人よがりの思いつきや憶測で援助するのではなく、本当に地域社会の人たちが必要としているプロジェクトであるかどうかを見極める必要があります。元RI会長クリフ・ドクターマンは、そのニーズを探るためには、自らがその地域社会に赴くことが必要だと語っています。 日本のロータリークラブに往々にして見られる、単なる金銭の送付によってWCSをしたと錯覚する風潮を反省する必要があります。   元RI会長グレン・キンロスは、地域社会の既存団体に寄付するのではなく、自分たちの力でプロジェクトを完成すべきであると語っています。クラブの年次報告を見ますと、何々協賛、何々に援助という形で、1万か2万寄付しているクラブが多いようです。他の団体に寄付することでお茶を濁すのではなく、ロータリークラブが独自に地域社会のニーズに基づいたプロジェクトを開発し、そのための資金調達を行い、完結型の奉仕活動の実践を行うこと必要です。

活動資金の調達方法 本会計より予算化 日本では一般的ではない プロジェクトを事前に決定する必要がある ニーズの変化に対応しにくい 予め予算化しにくい 人道的奉仕活動を実践するための資金を調達するためにはいろいろの方法があります。 先ず本会計の中で予め活動資金を予算化する方法が考えられますが、特別の記念事業以外では日本では一般的ではないようです。予算案作成時にプロジェクトをあらかじめ決定しておく必要がありますし、突然起こってきた地域社会のニーズに柔軟に対応することができないという難点があります。私の地区にはこの方法でお金を貯めて、周年事業として大量の盲導犬を贈呈したり、冠名奨学金制度を行ったクラブがあります。

活動資金の調達方法 ニコニコ箱より支出 日本では一般的な募金方法 アメリカの Fine (罰金)とは異なる 慶事中心なので集め易い・・歳入超過 余剰金の処理・・安易な寄付行為           ・・本会計への流用 昨年度実績を繰り越して支出 本年度予測より支出 ニコニコ箱から支出する方法が日本では一般的ですが、この方式は日本特有のもので外国にはありません。1936年に大阪ロータリーが始めたものと言われ、会員、家族、事業場等の慶び事、お祝い事にかこつけてニコニコしながら献金する制度です。   アメリカではFineという罰金箱があって、欠席や遅刻の際に1ドル程度を入れる習慣がありますが、これはもっぱらクラブ運営に使われ、人道的奉仕活動の資金には使われません。 ニコニコ箱は慶事中心の募金箱であるために非常に集め安い利点がある反面、目的別募金ではないため、使途に関して問題が生じます。奉仕活動の実践が低調なクラブではニコニコ箱会計に余剰金が生じるため、これを消化するために安易な寄付行為に流れやすく、年次報告書の中で「・・・への寄付」とか「・・・への援助」といった項目が目立つようになって、他団体への寄付を禁じているロータリーの原則に違反することになります。 さらにほとんどのクラブでは本会計が逼迫して、ニコニコ会計に余剰金がでる状況ですから、いろいろな理由をつけてニコニコ箱のお金を本会計に流用するクラブが見受けられます。任意の寄付金であるニコニコ箱の資金を本会計に流用することは、会費負担の平等性に違反しますから、硬く禁じられている行為であることをここで強調しておきたいと思います。 昨年度に集まったニコニコ会計の決算額を、次年度に繰り越して使う方法と、本年度の集金額を予測して使う方法がありますが、前者の方が無難な処理方法だと思います。

活動資金の調達方法 目的別集金 外国では一般的な募金方法 実績に基づくので無駄がない 活動計画・・募金・・実施 完結型 活動計画・・募金・・実施  完結型 これに対して、外国で一般的に行われている募金方法が目的別の募金であり、まずプロジェクトを決めてそれに必要な資金を募金する方法です。必要額を定めてそれに見合う額を募金するわけですから、無駄がなく、余剰金も生じない合理的な募金方法と言えます。 私が実際に経験したワシントン州のあるクラブの例をご紹介します。 奉仕活動として中央アメリカのある国の深井戸堀のWCSプロジェクトを選択しました。その原資として募金額4000ドル、MG2000ドル、合計6000ドルを充てることにして、会員に花の種を配って自宅で栽培してもらい、それを持ち寄って市役所の駐車場で花市場を開設して資金を作りました。さらに数名の会員がそのお金を持って現地を訪問して、プロジェクトの成功を見届けたという事例です。このように外国ではプロジェクトの立案、活動資金の調達、実施までを完結型で実施し、一連の活動を通じて、会員相互の親睦を図りつつ人道的奉仕活動を実践する例が見られました。   シカゴ・クラブには1010年からsunshine committeeが設立され、貧しい子供たちにクリスマス・プレゼントを贈る活動を唯一の委員会の活動方針にして、現在に至るまで継続しています。贈り物はすべて会員が提供した品物で、委員は1年間かけてそれを集め、2、300個箱に梱包して、それを子供たちの家まで運びます。 Sunshine Committee

活動資金の調達方法 地区からの資金提供 地区補助金 DDFの20% ボランティア奉仕活動補助金 個人 $3,000 グループ $6,000    個人 $3,000   グループ $6,000 マッチング・グラント    クラブ・個人 50%  DDF 100% 3-H 補助金 $100,000~$300,000   ロータリアン個人やクラブが提供した資金だけでは大きなプロジェクトを実施することが不可能な場合には、これに地区の補助金を加えると大きなプロジェクトをすることが可能になります。地区補助金として地区資金DDFの20%までが活用でき、これは地域社会のみではなく、海外の人道的奉仕活動にも適用されます。   また海外の奉仕活動を視察したり実施するための旅費として、個人3000ドル、グループ6000ドルのボランティア奉仕活動補助金制度があります。 マッチング・グラントとして、クラブおよび個人の資金の50%が、またDDFの100%がRIから補助されますので、大型のプロジェクトを実施する場合にはこの制度を活用すべきです。ただし5000ドル未満のプロジェクトにはマッチング・グラントが適用されませんから注意する必要があります。さらにもっと大型のプロジェクトには3-H補助金として10万ドルから30万ドルの補助がでます。ちなみに私の属する2680地区ではフィリピンにおけるCLEプロジェクトに30万ドルの3-H補助金をいただいて現在プロジェクトを実施中です。

21世紀の地球環境 21世紀後半はどのような世界になるのでしょうか。そして21世紀後半の人類が最も必要とするニーズは何でしょうか。 温暖化を懸念する人もいますが、長期スパンで考えれば温暖化と寒冷化が繰り返されるという学説もあって定かではありません。しかしただ一つ確信を持って言えることは、人口爆発によって食料の絶対量の不足が起こることです。

21世紀の地球環境 開発途上国・発展途上国の人口爆発 開発途上国・発展途上国の先進国化 先進国の少子化、地域格差の増大 環境破壊、資源の枯渇 年  度 世界総人口 先進国人口 2010 68億6千万人 11億8千万人 2025 80億3千万人 12億1千万人 2050 95億4千万人 11億5千万人 開発途上国・発展途上国の人口爆発 開発途上国・発展途上国の先進国化 先進国の少子化、地域格差の増大 環境破壊、資源の枯渇 貧困を原因とする地域紛争 2010年の推定人口は68億6千万人と言われています。これが2025年には80億。2050年には約95億になるという推定されます。地球のキャパシティーは約80億だと言われていますから、これを越すことになります。これに対して、先進国人口はほとんど変わらず、約11億で推移します。   これは発展途上国、開発途上国で極端な人口爆発が起こると同時に、先進国では自分の国の労働力すら確保できない少子化現象が起こることを意味します。すなわち、開発途上国、発展途上国はこれから50年の間にどんどん先進国の仲間入りをするわけなので、先進国が増えるにも関わらず、先進国人口は11億で変わらないということは、先進国に極端な少子化現象が起こってくることを意味します。 その結果、地球全体の環境破壊や資源が枯渇し、資源確保や貧困を原因とする地域紛争が起こってくるでしょう。そう考えると、21世紀の後半は過密な人口と飢えと貧困と騒乱の時代であるとも考えられるのです。果たして人類は22世紀を迎えることができるのか、これを真剣に考える必要があるわけです。

人口爆発の抑制 計画的出産 発展途上国の若い女性の識字率向上 非識字者・・10億人 成人の25% 女性の2/3 アジア人・・75% アジア人・・75%  人口爆発を抑える唯一の方法は、開発途上国における計画的出産によって人口を抑制することです。そのための現実的な方法として、若い女性を中心とした識字率向上があげられます。先進国の出生率は2人以下ですが、開発途上国は6名、7名という出生率なのです。従って、私達は人口問題に対して、決して逃げることなく積極的に取り組んでいくことが必要です。人口爆発を抑制する唯一の方法は若い女性に対する識字教育だと言われています。宗教上の戒律から産児制限に反対する国もあるので、ロータリーが介入すべきではないという意見もありますが、人類が生き延びるための英知を結集する必要があります。この分野では国連とロータリーとは連動して活動していますから、ロータリーがポスト・ポリオの最優先活動として識字率向上に取り組む必要があります。   ちなみに、地球上の非識字者の数は10億人、成人の25%を占め、非識字者の2/3は女性であり、アジア人が75%を占めると言われています。

地球人口は確実に増加する 食料を燃料に代える愚かさ 50年間で地球上の資産を使い切った愚かさ 物質至上主義からの決別 価値観の変化 人類愛に基づく分かち合いの精神 しかし我々が如何に努力しようと、地球人口は確実に増加します。人口爆発の持つ意味を、もっと真剣に考えていく必要があるのです。   発展途上国の人たちにとって必要不可欠な主食であるトウモロコシを使って自動車を走らそうという愚かな考えのために、飢えに苦しむ人が増えています。自動車に乗ることと人の命とはどちらが大切なのでしょうか。 人間はこの50年間で、地球の資源のほとんどを使い尽くしてしまいました。後の世代に何も残さずにみんな使い切ろうとしています。如何にして限られた資源を保持するのかが最も重要な問題です。 今まで持ってきた価値観をここで180度変えなかったら、地球の資源は必ず枯渇します。従って今までの物質至上主義から決別して、心の豊かさを優先する考え方に転換する必要があるのです。大量生産、大量消費というアメリカ型文化に決別して、東洋とか、ヨーロッパの伝統的な考え方である、物を大切にするとか、皆なで分かち合うといった精神を発揮していかなければ、人類は破滅してしまうのです。 アメリカ型の資本主義の悪影響を受けて拝金思想に走り、現実には存在しないお金をレバレッジとかデリバティブとかいった手法を弄してペーパー商法をしたとて、一旦つまずけば自らが破滅するばかりでなく全世界に大きな経済的影響を与えることは、今回の一連の事態から学び取ったはずです。そう考えれば、あらゆる職業は社会に奉仕するために存在すると定義したロータリーの職業奉仕理念は決して間違いではありません。 価値観は一朝一夕に転換できるものではありません。従って今この瞬間から、考え方を転換していかないと手遅れになります。もう20年後には、その兆しが起こってくるのです。価値観を転換することに関するロータリアンのリーダーシップが、大きく期待されます。マータイ女史が世界中に広めてくれた「もったいない」運動こそ、今後の地球の寿命を延ばすための大切な活動なのです。 ロータリーの存在価値

ロータリーが生き残る道 ロータリー固有の奉仕理念の堅持 職業奉仕を捨て去り、ボランティア組織に移行することの愚かさ 組織管理運営方法の改革   職業奉仕を捨て去り、ボランティア組織に移行することの愚かさ 組織管理運営方法の改革   地域的特色や言語を尊重した中間管理組織   グローバル・スタンダードに基づいた管理運営 社会のニーズに適応した奉仕活動の実践   地域社会の人々が真に望むプロジェクトの実施 会員の減少によってすべての奉仕団体は存亡の危機に立たされています。それを打開するためにも、ロータリー固有の奉仕理念は変えてはならないことを再確認する必要があります。ロータリーが他の奉仕団体と本質的に違う点は職業奉仕の概念を持っていることです。職業奉仕の理念を捨て去ってボランティア組織に移行することの愚かさを自覚しなければなりません。今からボランティア組織に看板を塗り替えたところで、数ある先発ボランティア組織の影に埋没してしまうことは必至です。 ロータリーは素晴らしい職業奉仕理念を構築しました。しかしその後の産業構造の大きな変化に職業奉仕の実践方法を適用する努力を怠ってきたことが悔やまれます。昔ながらの職業分類を引きずって、新しい産業構造の変化に対応しなかったことが、ロータリーの特徴であるはずの職業奉仕を形骸化してしまったのです。   組織の管理運営は時代の変化に応じて思い切った改革を試みる必要があります。ロータリーの組織を全世界に広げるためには、異文化を尊重して地域特性や言語を尊重して、連邦制のような中間管理組織による運営をすることが好ましいと思います。アメリカが敵対国だとみなしている国や、忌み嫌っている中近東の国にも、ロータリーの奉仕理念は伝わるはずです。規定審議会で公式言語と定めながら、現実には英語以外の言語による情報提供は微々たるものに過ぎません。現在のアメリカン・スタンダードから離れて、真のグローバル・スタンダードに基づいた組織管理に改める必要があります。 奉仕活動の実践内容は地域社会のニーズの変化に適応したものに変えていく必要があります。そのためには机上の空論ではなく、真に地域社会の人々が必要とするプロジェクトを見つけてそれに全力を傾注すべきです。 こういった改革なしには、ロータリーという組織が次の世紀に生き残ることができないことを肝に銘じなければなりません。

  第12回源流セミナー 完 人道的奉仕活動 製作  2680地区 PDG 田中 毅