読書課題 R. Penroseの『皇帝の新しい心』 の第1章 「コンピュータは心をもちうるか」

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読書課題 R. Penroseの『皇帝の新しい心』 の第1章 「コンピュータは心をもちうるか」 G. H. ミードの「自我の発生と社会的コントロール」pp.58-69

人間のコミュニケーション コミュニケーションの当事者に「心がある」点が、人間以外のコミュニケーションと違うと考えることもできるが、「心」は見えない。機械にも「心」があるかのようにみえる。 人間の心も「あるかのように」見える存在(仮想的な存在)かもしれない。 では、何が人間ならではの特徴なのか?

Genie 0~13歳まで父親に監禁された。 「社会化されておらず、未発達で人間らしいところはほとんどない」 言語などの複雑な技能の学習には「限界期」があり、この時期を過ぎると習得できない。

人間の人間らしさとは Genieの例でわかるように、人間は生まれただけでは「人間らしく」はならない。 生まれつき・もともと「心」を持った人間がコミュニケーションするのではなく、コミュニケーションすることで、「心」を持つかのような「人間の人間らしさ」が成立する。

人間のコミュニケーション コミュニケーションを学習する・実行する機会がなかったら、人間は人間になれない。 したがって、人間にかんしては、コミュニケーションはたんなる情報の伝達ではない。 人間にとってコミュニケーションは「個人」や「社会」を作り出す創造的な過程である。

幼児の初期発達 生まれたばかりの段階では視覚は未発達。30センチ以上さきはあまりよく見えない 無地のものより模様があるものや人の顔のような絵を頻繁にみるようになる。 笑う?…微妙。生後1ヶ月くらいから。 でもまだ自分の体の感覚などはない。

笑うこと 微笑みは学習されるものではない。 もって生まれた反応と考えられている。 微笑みは学習されるものではない。 もって生まれた反応と考えられている。 盲目で生まれた子どもたち…他の人が微笑むのを見てまねる機会はないが、目の見える子どもと同じ年齢で微笑み始める。 しかし、どのようなとき、どのような場面に微笑むことが適当かは学習しないといけない。 e.g. アメリカの挨拶

幼児と介護者 生後3ヶ月で主たる介護者を区別することができるようになる。 介護者にたいする愛着が確立するのは生後7ヶ月。 目の前にいなくても母親が存在することがわかるようになる。

愛着と喪失 人生の初期段階の安定した情緒的関係の経験はとても大事。言語、知能、自己の意識などにかかわる。 「隔離されたサル」の実験…隔離されて育つと、他の猿と交流できない。交尾できない。人為的に妊娠させた隔離された猿は子どもが生まれても育てられない。

母性愛剥奪maternal deprivation 「乳幼児には母親との安定した断絶のない愛情関係が必要である。母性愛剥奪、つまりそのような関係の欠如は、精神疾患や非行を引き起こす」という考え方がある。 この考え方は、女性は子供と一緒に家にいるべき、ということを示唆する。 最近の研究では否定されている。広い範囲の大人との安定した関係が重要であるらしい。

基本的信頼から存在論的安心へ 潜在空間…幼児と養育者を関係づけながらも引き離す時間-空間のこと 潜在空間の形成によって幼児は全能感から現実原則へ移行する 潜在空間で習慣や基本的信頼が形成される。

ふつうの生活、という感覚:存在論的安心 ontological security これがないと、人間は不安におしつぶされる。 存在論的安心は基本的信頼(basic trust)から確立される。安心感、秩序感、規則感。安定したアイデンティティという形で経験される。 早期の養育者との関係から生まれる。

存在論的安心ontological security 個人の直接の知覚環境にないものをも含むできごとに対する連続性や秩序の感覚 わからないことはとりあえず「括弧に入れて」人間は自然に・ふつうに生きている。 しかしこの普通という感覚は作り出されたもの

自己アイデンティティとは 個人の特性の集合ではない 生活史という観点から自分自身によって再帰的に理解された自己である。 自己の感覚、個人的特性の感覚、自分がどんな人物であるかということの感覚

Twenty Statement Test 私は~です。という文章を20個書く。

内面的な特徴にかんする文章 「内気」「幸せ」「不安定」 外面的な特徴にかんする文章 「長男」「会社員」「キリスト教徒」

アイデンティティの獲得 第一次的アイデンティティ:ジェンダーやエスニシティなど。子供時代に獲得される。 転職や転居も、自分がどんな人間であるかという個人の感覚に変更を引き起こす。 アイデンティティの獲得や変更は「自己と外部の行為者との間の交渉の過程」(コミュニケーション)で起きる。

G.H. Meadの自己の理論 コミュニケーションをつうじて、個人は自分に対する対象として現れる。 コミュニケーションがあってはじめて自己が成立する。 はじめから「自己」があってその間に情報伝達をするのではない。←人間の特徴

幼児の遊び 大人がすることをまねする 自分で自分にはたらきかける。自分で自分に手紙を書いたり、自分で自分を逮捕したり、自分で自分にモノを売ったりする 自分を「外側から」みること、他者の役割を取ること(role-taking)を覚える。「他人」として自分にたいしてあらわれる。

Play とGame Play ひとつの役割を果たすだけ Game 他人の役割も全体的にわかっていないと自分の役割が果たせない e.g.野球。 重要な他者significant other 親、友人、恋人 一般化された他者generalized other

第一次集団と第二次集団 第一次集団 primary group 家族、友人集団、職場集団など。サイズが小さく、対面的相互行為 face-to-face interactionを特徴とする。 第二次集団 secondary group サイズが大きく、それぞれの成員は他のすべての成員と直接的な相互行為をするわけではない。

内的会話internal communication 行為者はシンボルを用いたコミュニケーションにおいて、そのコミュニケーションが他の行為者に及ぼす影響を想像することができる。 行為者は自分自身と内的会話internal communicationをおこない、他者の反応を推しはかる。

主我Iと客我me 子どもは、他者の目を通して自分自身をみることで、別個の行為主体として--「客我」--としての自分自身の理解を達成する。 「客我」と「主我」の区別ができるようになるとき、われわれは自己認識を達成する。 主我…社会化されなかった面。自然な願望  客我…社会的自我

象徴的相互作用論 symbolic interactionism 反省的能力つまり、自分自身との内面での会話を通じて他者の社会的役割を演じている自分を想像することができるという能力は、社会現象としての自己にとって決定的である。 SIは、社会の行為者間の象徴的コミュニケーション過程としての自己—社会関係の研究である。

役割 role ある個人が特定の社会的地位を占める場合、その人の行動は、その人特有の性格よりは、地位に付随する期待によって決められることが多い。 役割とは、社会的地位に付随する、社会的に定義された属性と期待の集合体である。

社会的地位(社会的位置) 人々が集団や社会のなかで抱く社会的アイデンティティ。 社会的地位(社会的位置)  人々が集団や社会のなかで抱く社会的アイデンティティ。 ジェンダーのように一般的なものもあるし、職業上の地位の場合のように、特殊なものもある。

役割と制度 役割は社会的制度の構成要素である。 たとえば、学校という制度には、教師と生徒役割がある。 「教師」という社会的地位を占める人には、授業を教える、成績をつける、など、期待される行動がある。