第Ⅱ部 協力ゲームの理論 第9章 シャープレイ値.

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第Ⅱ部 協力ゲームの理論 第9章 シャープレイ値

内容 シャープレイ値 シャープレイ値の公準 投票力指数 投票ゲーム 重みのパラドックス

限界貢献度 各プレイヤーにとって,得られると予想される値は, そのプレイヤーが参加可能な提携において, どれだけの利得の増加に貢献できるかによる. 提携Sからプレイヤーiが抜けたときの利得の差を, 提携Sにおけるプレイヤーiの限界貢献度という. 以下ではゲーム(N,v)はゼロ単調とする.

シャープレイ値の定義 ゲーム全体としてのプレイヤーiの貢献度は, プレイヤーiが参加する可能性のある提携における プレイヤーiの限界貢献度の平均値と考えることができる. したがって,あるプレイヤーが貢献しうる提携が, どの程度の確率で形成されるかを考えて, その確率のもとで限界貢献度の期待値を考える.

シャープレイ値(例) 3つの企業による共同事業を行う. それぞれの提携とその提携値は プレイヤー1にとって参加可能な共同事業

シャープレイ値(例) プレイヤーが話し合いにやって来る順序を(i,j,k)と表すと 3!=6通り そのときのプレイヤー1の限界貢献度は, 上に同じ 上に同じ

シャープレイ値(例) 6通りが起こる確率は同じ. プレイヤー1がゲームに参加するにあたって,期待できる利得は, 同様にして このときシャープレイ値

シャープレイ値の定義 プレイヤーiのシャープレイ値は,プレイヤーiの 参加可能な提携すべてについての 限界貢献度 プレイヤーiが最後に参加して提携Sが成立する確率

シャープレイ値の公準 全体合理性(効率性,パレート最適性) ナルプレイヤー(またはダミープレイヤー)のゼロ評価 対象性,代替性,無名性 加法性 単調性   (ⅰ)全体提携単調性   (ⅱ)強単調性 自明性 提携の戦略上同等性 順序保存性 整合性

シャープレイ値の定理 ゼロ単調ゲームにおいて,シャープレイ値は,全体合理性, ナルプレイヤーのゼロ評価性,対称性(無名性),加法性の 4つの公準をみたす. またこの4つの公準を満たすゲームの解はシャープレイ値に 限る. シャープレイ値は個人合理性を満たす. したがって,シャープレイ値は個人合理性と全体合理性を 満たすから配分である 利得測定法からの独立性(戦略上同等性)

公準9 内部整合性

公準9 内部整合性

投票ゲーム 投票による集団の意思決定の問題をゲームとして定式化する. 協力ゲームでも非協力ゲームでも定式化できるが,ここでは 協力ゲームとして扱って投票力指数の議論をする 勝ち提携が得る利得は1,負け提携が得る利得は0とする. 例,3人拒否権ゲーム(プレイヤー1が拒否権) W:勝ち提携の集合 v :特性関数

投票ゲーム プレイヤーの集合Nと勝ち提携の集合Wが与えられると, 特性関数は このようにして表された提携ゲーム(N,v)を投票ゲームという 空集合は負け集合である. 全体集合は勝ち提携である. 単調性.勝ち提携を含む提携は勝ち提携である. 正規性.互いに交わらない2つの勝ち提携はない.

重み多数決ゲーム ある市議会は定数が15名 6名の自民党員,4名の社会党員,2名の民主党員, 2名の公明党員,1名の共産党員 単純1/2多数決とすると基準数は8 この場合の勝ち提携の集合W

投票力指数 シャープレイ・シュービック指数のことを指す. 各プレイヤーが,どれだけの決定力をもっているかを示す指数 彼がある提携に加わることによって, その提携が負け提携から勝ち提携に 変わる状況にあるとき, このようなプレーヤーを要の投票者(pivot)と呼ぶ 各プレイヤーが要の投票者になる確率を求め, 決定力の期待値で表す

投票力指数 重みつき多数決4人ゲーム そのときの勝ち提携の集合Wは 投票が基準数を超えたらそこで 投票を打ち切るとき最後の投票者が 要の投票者になる 各投票者が要の投票者になる場合

投票力指数 プレイヤー1が要の投票者になる確率 プレイヤー1の投票力指数 どうようにして求めるとこのゲームの 各プレイヤーの投票力指数は プレイヤー1 プレイヤー2 プレイヤー3 プレイヤー4 プレイヤー1の投票力指数 どうようにして求めるとこのゲームの 各プレイヤーの投票力指数は

重みのパラドックス 前の例でも分かるように投票力指数と 各プレイヤーの持つ重みとは必ずしも一致しない (1)再配分のパラドクス プレイヤー1にとって議席が減少したにもかかわらず 投票力指数が大きくなっている プレイヤー1にとって組む相手が増えたため 勝ち提携をつくる際の影響力が大きくなった

重みのパラドックス (2)分割のパラドックス(または統合のパラドックス) ここで政党プレイヤー3が3つに分裂 新しいゲームのプレイヤー3,4,5の3人の投票力指数の和(12)は 分裂前の投票力指数(10)より大きい

重みのパラドックス (3)新規参入のパラドックス 議席の定員が増えて8人となり, 新しい当選者(新規参入者)が1つの政党を作る プレイヤー1の投票力指数が増加し, プレイヤー2,3の投票力指数は減少している