テストと評価をどう改善したらよいか 2005年7月25日 兵庫教育大学 成田 滋.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
情報科指導法Ⅰ 第 15 回 模擬授業と総括. 自由利用マーク 文化庁 2003 年~ プライバシーマーク.
Advertisements

キー・コンピテンシーと生きる 力 キー・コンピテンシー – 社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力 – 自律的に行動する力 – 社会的に異質な集団で交流する力 生きる力 – 基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと, 自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え, 主体的に判断 し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力.
第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
1.情報教育について 2 情報教育. 情報教育とは 児童生徒が自ら考え、 主体的に判断・表現・行動 児童生徒は主体的に学ぶ 「情報活用能力」を育成する教育.
数学教育法Ⅰ 第 4 章数学教育における心理学的知見 1 ,ピアジェの発達段階 2 ,ヴィゴツキーの発達の最近接領域理論 第 5 章数学教科における教育評価とテスト 評価,評定,偏差値とは何か.
日本教育のゆくえ c 甲藤 瞳.  大学入学後、目標見失う  受験勉強で得た詰め込みの利用法 きっかけ.
1 数学科教育法Ⅰ数学科教育法Ⅰ数学科教育法Ⅰ数学科教育法Ⅰ 平成16年10月20日(水) 3班 情報工学科 牧野 寛之 情報工学科 牧野 寛之 情報工学科 吉田 美 幸 情報工学科 吉田 美 幸 情報工学科 山本 和 樹 情報工学科 山本 和 樹 建築学科 吉田 絢 子 建築学科 吉田 絢 子 ★
平成 22 年度 情報教育担当者研修講座 研修1 「教育の情報化」 愛媛県総合教育センター 情報教育室 ○ 国、文科省の政策 ○ 教育の情報化 ○ 授業におけるICT活用.
研修のめあて 授業記録、授業評価等に役立てるためのICT活用について理解し、ディジタルカメラ又はビデオカメラのデータ整理の方法について研修します。 福岡県教育センター 教員のICT授業活用力向上研修システム.
平成19年度 「長崎県国語力向上プラン」 地区別研修会
平成19年度長崎県国語力向上プラン地区別研修会
日本の英語教育 c 奥田波奈.
mukogawa-u.ac.jp/~kitaguti/
いじめ防止全体指導計画 【対応1】 未然防止・早期発見 【対応2】 緊急対応・早期対応 いじめ発生 基本姿勢 雲仙市立千々石第一小学校
徳島の子どもの学力向上及び 生活習慣・学習習慣等の改善をめざして
総合的な学習の時間     はじめるにあたって….
富山大学教育学部 附属教育実践総合センター 助教授 小川 亮
オンエンテーション・教科「情報」の概要 情報科教育法 1回目 2004/4/17 太田 剛.
サドベリバレイ校の教育 子どもは自発的に勉強するのか.
ー大学院教育課程強化に関するプログラムについてー
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
AO選考とともにポートフォリオ型一般入試へ進化 ~脱個別学力試験/学力検査の工夫策~
町田高校情報科 小原 「情報」の授業について 町田高校情報科 小原 /3/13.
日本の高校における英語の授業は英語でがベストか?
町田高校情報科 小原 「情報」の授業について 町田高校情報科 小原 /3/15.
学校薬剤師仕事(中教審/学校保健安全法)
東京経営短期大学 経営総合学科 准教授 玉田 和恵
平成26年度 鶴ヶ島市立新町小学校グランドデザイン めざす学校像 一人ひとりが輝き、確かな学力が獲得できる学校
ラーニング・ウェブ・プロジェクト(Learning Web Project) -自立・共愉的な学習ネットワークの形成に向けて-
保健学習の進め方・指導案の書き方 さいたま市立三橋小学校   豊島  登.
大分県立宇佐支援学校 グランドデザイン (平成28年度版)
薩摩川内市小中一貫教育特区 (連携型) 平成18年4月~平成20年3月
丹波市立西小学校 教諭 細見 隆昭 2007年2月25日(日) 神戸市ハーバーランドダイヤニッセイビル
ヘルスプロモーションのための ヘルスリテラシーと 聖路加看護大学『看護ネット』
<校訓> つよく・あかるく・たくましく 【目指す宇佐支援学校の児童生徒像】
基礎看護の授業を通して思考力,判断力,表現力,技能を育成する指導方法の工夫改善についての研究
「確かな学力を育てるために」 学習評価を踏まえた授業づくりの道すじ
「確かな学力を育てるために」 学習評価を踏まえた授業づくりの道すじ
地域・社会貢献をするために人として必要な資質
目標に準拠した評価について 京都府城陽市立南城陽中学校 竺 沙 敏 彦
東京経営短期大学 経営総合学科 准教授 玉田 和恵
アメリカ教育 20世紀末から21世紀へ.
平成19年度地域教育フォーラムin京都   第5分科会 「学力向上アクションプラン」     ~洛西方式Ⅱ~  京都市立洛西中学校 2007,7,31.
思考力・判断力・表現力等の育成に向けて 平成20年12月26日 徳島県立総合教育センター.
組織論による特色ある カリキュラムの理論と実際 第11回 特色あるカリキュラムづくりの理論と実際 兵庫教育大学大学院 教授
第60回 北海道小学校長会教育研究 宗谷・稚内大会
情報科の評価 情報科教育法 後期5回 2004/11/05 太田 剛.
日本教育の特質 国際教育論2.
学習指導要領の変遷④ 第8回 特色あるカリキュラムづくりの理論と実際 兵庫教育大学大学院 教授 2018年6月4日(月)
ルーブリック・チャート(評価) の活用と課題
課題研究ルーブリック評価の 活用マニュアル 平成30年1月10日 愛媛大学高大接続推進委員会 「課題研究」評価ワーキンググループ
教師にとっての「生の質」 青木直子(大阪大学).
多文化共生社会への取り組み: 多文化共生教育の現状 2
『組織の限界』 第1章 個人的合理性と社会的合理性 前半
心理学概論Ⅱ 第13講 2012年1月17(火) 担当:岡田佳子.
デジタルアーカイブ専攻 コア・カリキュラム構成の設定と学習内容・行動目標 デジタル・アーキビスト の養成 育成する人物像 入学前課題
まんのう町立琴南中学校 2008.6  町としては県下最大級の面積を有する「まんのう町」の南東部琴南地区に位置する小規模校で,約86%が山林でしめられ緑豊かな地区である。    近年少子化と過疎化とともに生徒数が減少しているが,将来を担う人材育成という期待から,教育環境整備や教育活動に理解と協力がある。 
(中学校)学習指導要領前文 これからの学校は 子どもたちの育成 教育課程を通して =「社会に開かれた教育課程」の実現
平成30年度グランドデザイン 学校の教育目標 生きる力 佐伯市立宇目緑豊小学校 ふるさとを愛し、 豊かな心と自ら学ぶ意欲をもち、
平成23年度 大阪府学力・学習状況調査の結果概要 大阪府教育委員会
平成30年度 ○○○立○○中学校 学力向上プラン(例)
第12講 ALとしての単元計画をつくろう 米国のC3フレームワークを参考に
国際教育論1 オリエンテーション.
図15-1 教師になる人が学ぶべき知識 子どもについての知識 教授方法についての知識 教材内容についての知識.
文脈 テクノロジに関する知識 教科内容に関する知識 教育学 的知識
一問一答式クイズAQuAsにおける学習支援の方法
学校における教育の情報化の推進と校内研修の企画運営
平成20・21年度 国立教育政策研究所・教育課程研究センター指定
学習指導要領の改訂 全国連合小学校長会 会長 大橋 明.
Presentation transcript:

テストと評価をどう改善したらよいか 2005年7月25日 兵庫教育大学 成田 滋

目 次 アメリカの教師との対話 テストの現状 保護者からの質問 評価の歴史 生徒による評価の受けとめ方 評価の方法 相対評価の注意点 目 次 アメリカの教師との対話 テストの現状 保護者からの質問 評価の歴史 生徒による評価の受けとめ方 評価の方法 相対評価の注意点 絶対評価と目標準拠 個人内評価 個人内評価と総合学習 評価の過剰 

アメリカの教師との対話 フルブライト財団派遣教師 “No Child Left Behind” 連邦政府--機会均等のインフラづくり、競争的補助金 州政府--運営と説明責任 州標準学力テストの実施と修了要件の強化 学力評価結果と学校への指導介入 

国際学力調査--数学と授業時間

テストの現状 「指導と評価の一致」 「テストは教育行為の領収書」 “成績評価を数値化しないと問題”  評価についての過剰な対応

保護者からの質問 個々の教師の能力がまちまちなのに絶対評価に変更され、生徒の評価がすべて教師に任されてしまうのはおかしい。 子どもは学校を選べない。教師のプライドに左右されることもありうるし、教師のご機嫌をとる子どももいる。 曖昧な絶対評価で評価されるのに、入試は相対評価だ。 相対評価による配分と全く同じ割合で絶対評価をつけていた学校が明らかになったのはなぜか。 

評価の歴史 自由面接 客観テスト 相対評価 個人内評価 絶対評価 批判:恣意的、主観的 論述、選択、空所補完 統計学の進歩 過度の期待と偏重 形成的な評価

生徒による評価の受け止め方 テストを行う長所と短所 テスト不安と学習の方略 学習性無力感 学習できないことを学ぶ 評価基準、学習目標、学習活動 生徒は成績を目標とする 学習目標は試験をパスすること 

評価方法-- 評価時期と手法 実施時期 評価目的 評価方法 単元導入 診断的 絶対評価 相対評価 中 間 形成的 個人内的評価 単元終了 中 間 形成的 個人内的評価 単元終了 総括的 相対評価、個人内評価

相対評価の注意点 1 準拠する集団の設定 2 小集団の学力は、正規分布しているか。

相対評価の長所と短所 1 相対的な位置の記述 2 学習目標と達成度の基準は曖昧 3 学力保障と無関係 4 職員集団の”世間体”の問題

相対評価の重要な点 1 問題の適切な標準化 2 問題の難易度が明確 3 学習すべきことと整合性があること 4 生徒の理解度について弁別能力があること

絶対評価と目標準拠 習熟度での評価 生きる力 評価規準 「関心・意欲・態度」「思考・判断「技能・表現」「知識・理解」 1.豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。 2.自ら学び、自ら考える力(生きる力)を育成すること。 3.ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること。 4.各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること。 教育課程審議会答申 (平成10年6月) 評価規準 「関心・意欲・態度」「思考・判断「技能・表現」「知識・理解」 国立教育政策研究所 “学習評価の工夫改善に関する調査研究”(2004年)  

絶対評価の留意点 目標の具体化と評価時期 情意面と学習活動(科学技術への関心の比較指数--OECD) 到達目標は言葉で具体的に説明 到達目標は言葉で具体的に説明  単元レベルで評価(北尾, 2002) 「関心・意欲・態度」--観点別指導事項(茨城、福島、東京など) 情意面と学習活動(科学技術への関心の比較指数--OECD)

絶対評価と個人内評価 教育課程審議会 児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方 (平成12年12月)

個人内評価 Portfolio Assessment B. Bloomの完全習得学習論(タクソノミー) 学習者本人の評価 自己評価能力 形成的な評価 Portfolio Assessment 

個人内評価の問題点 絶対評価や目標準拠評価ではない 規準が本人のなかにあるかどうか 到達目標は個人内にあるかどうか 教師と生徒の目標が異なっていてよいか 生徒は独力で理解目標を設定できるのか

個人内評価と総合学習 特定の正解のない社会的なテーマの選択 生徒の自主的な目標の設定でよいのか 生徒の到達目標は適切か否かの判断 “調べ学習” “探索学習” “共同学習“ 生徒の自主的な目標の設定でよいのか 生徒の到達目標は適切か否かの判断 専門家の協力が必要

問題解決型と総合学習 4つの課題 生徒の自主性に依存した目標設定 到達度の評価の困難さ 体系的な知識の獲得が保障されない 賢い生徒は伸びる 過度の放任主義 到達度の評価の困難さ メタ認知の難しさ 体系的な知識の獲得が保障されない 這い回る経験主義 賢い生徒は伸びる 格差の拡大と再生産    (平, 2000)            

評価の過剰 序列化の過剰 評定対象の過剰 作業記録の過剰  (国民教育文化総合研究所, 1998)

テストと評価の改善策は ?

参考資料 評価規準および評価方法等の改善と開発に関する研究 「学習評価の工夫改善に関する調査研究 「通信簿に関する調査研究」 指導方法の工夫改善による教育効果に関する比較調査研究(第二次・最終報告書) 「ポートフォリオ評価を活用した指導と評価の改善に関する開発的研究」 国立教育政策研究所  http://www.nier.go.jp/