日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 西山教行(京都大学)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
言語教育論演習 「 日 本の高校における 英 語の授業は 英 語で行うのがベストか?」 - 誤 ったグローバル化のためでなく 多 文化尊重のための英語教育へ - ドイツ語圏文化文学コース 立野真 央.
Advertisements

中学校 高校 小学校 「言語活動の充実」を意識した授業につ いて (対象者:小学校 178 名、中学校 68 名、高校 30 名の国語指導者、計 276 名) 児童・生徒、指導者の意識調査の結果 (単位 % ) 平成 21.
1 第3回 英語教育推進委員会 資料 平成24年12月20日 福井県国際交流会館. 小中高一貫した英語教育 イング リッ シュ・ シャワー ○ 「イングリッシュ・デイ」の設定 オールイングリッシュの授業、授業以 外にもALTや英語教員が積極的に英 語で会話する日を設定 中学校 ○ 「イングリッシュ・シャワー」の継続.
インドネシアの高等教育における 日本語教育の現状と問題 Wawan Danasasmita インドネシア教育大学( UPI )
言語教師としての 役割と認知 平成 21 年度教員免許状更新講習 3 共立女子大学 02/08/2009 笹島茂 1.
日本語教授法 & 日本語教育とは  外国語としての日本語、 第二言語としての日本語 についての教育の総称である。
熱海市教育振興基本計画 1.子どもの力を伸ばす教育の推進 2.学校・教職員の力を高め、安全・安心な 教育環境の整備 3.子どもの未来を応援する教育環境の整備 2.学校・教職員の力を高めます 3.みんなで子どもの未来を応援します 4.生涯学習を支えます 4.循環型生涯学習社会の整備 1.子どもの力を伸ばします.
平成21年度小学校外国語活動中核教員研修 小学校外国語活動基本理念 ~新学習指導要領等について~
平成19年度 「長崎県国語力向上プラン」 地区別研修会
総合大学校の指導員研修について 平成16年11月16日(火) 雇用・能力開発機構 職業能力開発総合大学校 研修課.
平成19年度長崎県国語力向上プラン地区別研修会
教育の情報化に関する手引のポイント 平成21年6月 平成21年度情報教育担当者研修
日本の英語教育 c 奥田波奈.
日本語教育学臨地研究 香港大学 派遣期間:2006年9月15日~29日
日本の高校における英語の授業は 英語で行うのがベストか? 日本語の介在の意義
徳島の子どもの学力向上及び 生活習慣・学習習慣等の改善をめざして
教員免許更新制の概要 平成19年6月の改正教育職員免許法の成立により、平成21年4月1日から教員免許更新制が導入されることになりました。
マイクロティーチング 演習 指導案作成 模擬授業発表
スポーツプロモーション第二回 スポーツ振興・キャンペーンの紹介 発達科学部人間行動学科身体行動論コース  d 八重樫将之.
教職院 ナッキョン 奈良市高畑町 得意: 授業での「つかみ」
2006日本中東学会 第22回年次大会 会長挨拶 第11期 会長 三浦 徹 お茶の水女子大学.
フランス語学習・教育の活性化に向けた双方向的学生交流の実践について
2004年11月22日 第2分科会 国際競争力のある人材育成.
日本の高校における英語の授業は英語でがベストか?
進化する香川大学 -地域の知の総合拠点- 2009年6月29日 一井 眞比古 KAGAWA UNIVERSITY.
第1回 英語教育推進委員会 資料 平成24年5月30日 福井県国際交流会館 1.
欧州評議会から外国語教室にいた るまで…『言語・文化への多元的ア プローチ』への長い道のり (1)
4 第3次障害者基本計画の特徴 障害者基本計画 経緯等 概要(特徴) 障害者基本法に基づき政府が策定する障害者施策に関する基本計画
比較文化A(2) 異文化間コミュニケーション
Millennium Promise Japan Youth
世界に広がるフランス語: 5大陸で話されるフランス語ーその経緯と現実
日本における多文化共生社会の可能性 「国際理解教育」の取り組み
塩竈市子ども・子育て支援事業計画 塩竈市子ども・子育て支援事業計画(案) のびのび塩竈っ子プラン ・・・削除 ・・・追加 資料 2
新聞活用のアイディア ~楽しくNIEに取り組むために~ 日本新聞協会NIEアドバイザー 仙台市立若林小学校 阿 部   謙.
日本語教育グローバルネットワーク J-GAP
教師教育を担うのは誰か? 日本教育学会第70回大会ラウンドテーブル 2011年8月24日 千葉大学 2108教室
アジア系留学生に対する ソーシャルワーク教育に関する研究(2)
薩摩川内市小中一貫教育特区 (連携型) 平成18年4月~平成20年3月
知・徳・体・地域連携 伏見中学校 教育目標 心豊かに共に生きよう 生き生きした生徒が集う学校 特に今年度取り組んだ点は 知の部分
細川 英雄 (言語文化教育研究所・代表/早稲田大学名誉教授)
日本語教育グローバルネットワーク J-GAPシンポジウム2014 (香港ー日本プロジェクト) 『日本語教育の連関に関する 実態調査』結果報告
複言語・複文化状況における日本語教育 -ことばの教室で私たちがめざすもの
平成17年度関東地区代表高等学校長研究協議会 多様な生徒への個別支援の在り方
聴覚障害学生高等教育支援ネットワークの構築に向けて
校内研修プログラム 研修1 ~外国語教育についての理解を深める~
アメリカ教育5.
小中連携を進めるために! 外国語教育における 三つのステップと大切にしたいこと 岐阜県教育委員会 学校支援課
平成25年3月27日(水) 東京工科大学 コンピュータ蓑寝椅子学部 在学生ガイダンス
第70回全国連合小学校長会 研究協議会北海道大会 第61回北海道小学校長会 教育研究函館大会
平成19年度地域教育フォーラムin京都   第5分科会 「学力向上アクションプラン」     ~洛西方式Ⅱ~  京都市立洛西中学校 2007,7,31.
特別企画:「水谷修先生等を偲ぶ」 「水谷修先生・土岐哲先生・平井勝利先生と日本言語文化専攻」
3言語×3視座: 外国語学部とグローバル教育センターが 目指す人材育成
多文化共生社会への取り組み: 多文化共生教育の現状 2
平成29年度 埼玉県立熊谷特別支援学校グランドデザイン
別紙1:政策学部のカリキュラム ■積み上げ型政策学教育 [基本教育] [導入教育] 大学院進学
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
(中学校)学習指導要領前文 これからの学校は 子どもたちの育成 教育課程を通して =「社会に開かれた教育課程」の実現
NPO教育の現状と課題 山内直人.
学部新入生オリエンテーション 大阪大学における初年次共通教育 「学び方を学ぶ」    ための 1年ないし1年半 全学教育推進機構長 下田 正.
資料6.
SCS研修「高等教育における障害者支援(2)」 国際的な障害者の権利保障と教育
日本と異なる選抜方式 があることを理解しよう
自治体名を記入してください。 【自治体名】の 教育の情報化について 自治体名と部門名 を 記入してください。 ○○教育委員会 ○○
拠点システム構築事業 サブサハラアフリカ諸国の教育改善
国際教育論1 オリエンテーション.
前橋国際日本語学校 新コースのご案内.
2019年度 すべての教職員のための授業改善研修 本研修の背景とねらい
平成20・21年度 国立教育政策研究所・教育課程研究センター指定
Presentation transcript:

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 西山教行(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 2005年11月18日 日本言語政策学会 シンポジウム <ヨーロッパの多言語教育の動向> フランスにおける 多言語主義の現状と展開 西山教行(京都大学)

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 多言語主義教育 母語の他に2言語を学習する体制 他者への拓き 職業能力の一環としての言語学習 民主的ヨーロッパ人の形成 母語による言語・文化の多様性の認識

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 多言語教育政策の理念 個人の言語生活に言語・文化の複合性 複数言語の並列ではない 部分的能力の構築 生涯教育としての言語教育 多言語主義教育と異文化間の対話 他者の言語の学習により、他者への尊厳をはぐくむ

Threshould Levelから『共通参照枠』へ 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) Threshould Levelから『共通参照枠』へ The Threshould Levelの刊行(英語版1975年、現在までに24言語) 学習目的特定のための機能・概念モデルの提示 コミュニカティヴ・アプローチの発展へ 就学前児童から成人までの全レベルの言語教育に共通する共通参照枠の開発へ(1991年以降) 『共通参照枠』の刊行(2001年) 言語教育のシラバス、カリキュラム、教材、試験、評価の共通基準

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 国内言語政策と対外言語政策 ヨーロッパはフランス語普及の最重点地域 ヨーロッパ諸国におけるフランス語の地位の低下 多言語教育により、英語+フランス語の選択肢を確保 多言語教育の模範を狙うフランス ヨーロッパ諸国への影響力を確保する 国内言語教育の充実が対外フランス語普及の担保

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) フランスの言語教育への取り組み 早期教育の導入 義務教育修了までに2言語教育の実施 言語教育の多様化 ヨーロッパ語、地域語、移住者の出身語 諸言語教育館の開設(2002年)

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 早期教育の実施体制 1989年より、試験的に導入(小学5年、週1コマ90分) 2000年より、幼稚園年長(5歳)より導入教育(3年間)+言語教育(3年間)を実施 小学3年より5年までの学習によりA1のレベルをめざす

『参照枠』におけるA1のレベル(基礎段階) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 『参照枠』におけるA1のレベル(基礎段階) 聞くこと:数、値段、時間が理解できる 読むこと:短く、簡単に書かれている指示に従うことが出来る 話すこと、やりとり:誰かを紹介することが出来る 話すこと:個人情報(住所、電話、国籍、年齢など)を伝えることが出来る 書くこと:自分自身について、簡単な表現を使い文を書くことが出来る

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 早期教育の目的 他言語による表現への拓き 他言語との比較により、母語(フランス語)のよりよい理解、とくに読解能力の養成 母語以外の言語を学ぶ喜びと欲求 国際交流(姉妹校交流)の推進 英語教育に限定しない現代語教育

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 初等教育の課題 英語教育への一極化の流れ 初等段階での言語教育から英語をはずすべきとの提言 社会的ニーズの高いものはその後にも学習可能 教員の言語教授能力の養成 児童の家庭に向けた情宣の不足 地域の外国人、民間人との連携

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 中等教育の多言語教育 中学1年からの第1現代語リスト ドイツ語、英語、アラビア語、中国語、スペイン語、現代ヘブライ語、イタリア語、日本語、オランダ語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語 中学3年から第2現代語追加リスト トルコ語、バスク語、ブルトン語、コルシカ語、ガロ語、メラネシア諸語、アルザスやモーゼル地方の諸言語、オキシタン語、タヒチ語

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 中等教育の言語教育実施体制 中学1年より第2現代語の導入 『参照枠』の定めるB2レベルが第1現代語の達成目標(会話能力をのぞく) 外国人TAの活用 ヨーロッパ・セクションの設置 インターナショナル・セクションの設置

『参照枠』におけるB2のレベル(自立した言語使用) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 『参照枠』におけるB2のレベル(自立した言語使用) 聞くこと:かなり長い講演や演説理解することが出来る 読むこと:現代文学のテキストを理解できる 話すこと:関心のあるさまざまな話題について明瞭で詳しく説明することが出来る 書くこと:ある意見についての賛否を明らかにする論文を書くことが出来る

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 中等教育の課題 英語(第1現代語)+スペイン語(第2現代語)が多数 第1現代語(英語、ドイツ語、スペイン語)の固定化 ドイツ語、ロシア語の凋落 移住者の言語教育(アラビア語、ポルトガル語)の低迷 初等教育との連携の遅れ 初等教育での言語選択の影響 2言語教育に立ち遅れる職業学校

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 教員養成の課題 現代語教育の多様性の確保 外国語による教科教育教員の養成

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 高等教育での言語教育 教養課程における言語教育の継続 留学制度の拡充(Erasmus, Erasmus mundus) 言語教育の多様性 103言語を提供(東洋語学校が46言語を提供) 外国語コースでは63.9%が英語を選択

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 課題:英語の寡占化と言語の多様化 英語への一極集中 多様性の確保 ドイツ語の凋落 スペイン語の上昇 移住者の出身語教育の振興

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 元老院からの政策提言 多言語主義教育に向けた世論の形成 地域の言語教育資源の調査 魅力的で、効率的な言語教育への整備 生涯教育の一環としての言語教育 初等教育での教員養成の整備 国際交流、異文化間理解と連動する言語教育へ

日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 日本は何を学ぶか 中等教育と高等教育、生涯教育の連携 諸言語教育(国語、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、中国語、朝鮮語など)の連携 生涯教育としての言語教育 多言語教育へ向けた世論の形成 言語教育と国際交流の推進 多言語教育をめざした教員養成の再編