緩衝液-buffer solution-.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
気候 - 海・陸炭素循環結合モデルを用い た 地球温暖化実験の結果 吉川 知里. 気候 - 海・陸炭素循環 結合モデル.
Advertisements

ムラサキキャベツ液の pH による色の変化を 利用した実験 浅田和哉. (1)橘小学校での授業 研究内容 (2)ムラサキキャベツ液を用いた ・光合成 ・中和滴定 ・塩化ナトリウム水溶液の電気分解 小学校における ムラサキキャベツ液の 教材性の高さ! 中学校や高校でもムラ サキキャベツ液を使っ.
色がかわる! 「Belousov-Zhabotinsky反応 」
溶解、酸化・還元、酸・塩基 埼玉大学 教育学部 理科教育講座 芦田 実
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
溶解、酸化・還元、酸・塩基 埼玉大学 教育学部 理科教育講座 芦田 実
○化学反応式:同種元素は左辺と右辺で等しい。反応に無関係な化合物を入れない。
アルギン酸 アルギン酸とは‥ 化学構造 ・昆布、わかめに代表される褐藻類の細胞間物質の主成分
化学的侵食 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
ご案内   ナノ分子除菌消臭剤      染めQテクノロジィ社・アメリカ航空宇宙局NASA                共同開発 kadoyaaomori presents.
無機物質 金属元素 「金属イオンの分離」 3種類の金属イオン      をあてよう! 実験プリント 実験カード.
薬品分析学3.
医薬品素材学 I 4 物質の状態 4-1 溶液の蒸気圧 4-2 溶液の束一的性質 平成28年5月20日.
薬学物理化学Ⅲ 平成28年 4月15日~.
洗剤の適切な使用量とは ーー臨界ミセル濃度を調べるーー
HPLCにおける分離と特徴 ~逆相・順相について~ (主に逆相です)
天然物薬品学 天然物質の取扱い.
アンモニア(アミン類) 配位結合:結合を形成する2つの原子の一方からのみ結合電子が分子軌道に提供される化学結合。
緩衝作用.
○ 化学反応の速度     ・ 反応のある時点(たいていは反応開始時、ξ=0)について数値      として示すことが可能
塩を溶かした水溶液の液性.
ベルリン青染色 Berlin blue stain (Prussian blue stain)
輸血の生理学 大阪大学輸血部 倉田義之.
サフラニンとメチレンブルーの 酸化還元反応を利用
生物の実験 9.酵素のはたらき.
酸、アルカリとイオン 酸性、中性、アルカリ性とは?.
3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
3.いろいろな気体.
10mMの酢酸が完全に電離している時のpHは?
(b) 定常状態の近似 ◎ 反応機構が2ステップを越える ⇒ 数学的な複雑さが相当程度 ◎ 多数のステップを含む反応機構
PHとは・・・ pHとは、水溶液の性質をあらわす単位にすぎません。ちょうど長さをあらわすのにm(メートル)という単位があるように、水溶液の性質を知るために必要な単位です。 では、pHは水溶液のどのような性質をあらわす単位なのでしょう。 水溶液の性質(酸と塩基) 1746年にW.Lewis(英)がまとめた考え。
酸・アルカリのイオンの移動 やまぐち総合教育支援センター                          森 田 成 寿.
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved
科学的方法 1) 実験と観察を重ね多くの事実を知る 2) これらの事実に共通の事柄を記述する→法則 体積と圧力が反比例→ボイルの法則
化学的侵食 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
HE染色.
微粒子合成化学・講義 村松淳司
モノカルボン酸の中和 【化学班】 大澤 祐介  多田 直弘  西村 有史.
酸性・アルカリ性を示すものの正体を調べよう。
物理化学III F 原道寛.
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
7-3.高度な木 (平衡木) AVL木 平衡2分木。回転操作に基づくバランス回復機構により平衡を保つ。 B木
専門海洋生命・分子工学基礎実験 タンパク質の取扱い (1)
常に強酸・強塩基から弱酸・弱塩基ができる方向。( )内はpKa
化学生命理工学実験 II アフィニティークロマトグラフィー (2)
Auto2Dデモ事前アンケートご協力のお願い
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
化学的侵食 コンクリート工学研究室 岩城一郎.
平成30年度 教職員サマーセミナー  【教師も楽しむ理科実験】 酸性・アルカリ性.
中和反応 /16.
平成30年度教員免許更新講習 小学校理科の実験講習 2.水溶液の性質.
課題 1 P. 188.
化学実験 「レモン汁を使った  中和滴定」 中和滴定のやり方を マスターしよう!!.
高速カメラの分光システム開発の現況 磯貝 /13 1: 分光システムの開発要素 ・分散素子 ・フィルター
酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築
使用する器具・試薬 mol/Lシュウ酸水溶液,0.200mol/L水酸化ナトリウム水溶液, 指示薬:フェノールフタレイン溶液
実験21.カルボン酸とエステル 実験方法.
化学1 第12回講義        玉置信之 反応速度、酸・塩基、酸化還元.
◎ 本章  化学ポテンシャルの概念の拡張           ⇒ 化学反応の平衡組成の説明に応用   ・平衡組成       ギブズエネルギーを反応進行度に対してプロットしたときの極小に対応      この極小の位置の確定         ⇒ 平衡定数と標準反応ギブズエネルギーとの関係   ・熱力学的な式による記述.
薬品分析学3.
1:Weak lensing 2:shear 3:高次展開 4:利点 5:問題点
中和滴定の実験器具.
物質とエネルギーの変換 代謝 生物体を中心とした物質の変化      物質の合成、物質の分解 同化  複雑な物質を合成する反応 異化  物質を分解する反応 
イミダゾリウム系イオン液体(3)ー分子性液体(2)混合溶液の二酸化炭素溶解度(1)
中 和 反 応.
電解質を添加したときの溶解度モデル – モル分率とモル濃度
外部条件に対する平衡の応答 ◎ 平衡 圧力、温度、反応物と生成物の濃度に応じて変化する
有機バイオ材料化学 3. アルコールの反応.
ヒント.
Presentation transcript:

緩衝液-buffer solution-

緩衝液とは 緩衝液(buffer solution)は、少量の酸や塩基を加えたり、多少濃度が変化 したりしてもpHが変化しないようにした溶液のこと。 微生物の培養や化学物質の保存・分離などに用いられる。 生物や化学物質にはpHに敏感なものが多い

何故緩衝液でなくてはならないか よってpHを(ある程度)一定に保てる緩衝能を必要とする。 取り扱い時にその制御が必要 例えば純水を使った場合、  ・外的な要因(大気中のCO2など)  ・内的な要因(微生物自身の代謝産物など) これらの要因によって、pHが容易に変動してしまうため、 保存や反応の際には 不適となる。 よってpHを(ある程度)一定に保てる緩衝能を必要とする。 取り扱い時にその制御が必要

緩衝液の作り方 弱酸または弱塩基+その塩 で、緩衝能を持つpHに合わせる。 例:酢酸+酢酸ナトリウム    例:酢酸+酢酸ナトリウム    弱酸+強塩基または弱塩基+強酸 で調整する方法もある。    例:トリス緩衝液(トリス水溶液(弱塩基)を塩酸で調整)    ポイントは、弱酸または弱塩基を使うことである。

弱酸・弱塩基を使う理由 弱酸、弱塩基は電離度が低いので一部の分子しか電離していない。 例:酢酸 電離しているものが少ないためほとんどはCH3COOHの形態で溶液中に 存在している。 これらの酸は平衡を保っているので、平衡定数Kが存在する。酸の平衡定 数を酸解離定数と呼び、Kaで表す。 この式を変形すると、

この式を、ヘンダーソン‐ハッセルバルヒ式  という。 また、酢酸の電離度は低いため、系中に存在する酢酸イオンの濃度は加えた酢酸ナトリウムの量にほぼ等しい。したがって、この溶液のpHは次のように近似することもできる。

HAという弱酸の場合、 このように一部分が電離し、H+、A-、HAが共存している状態になっている。 その時の解離定数は、 となり、 この式を、ヘンダーソン‐ハッセルバルヒ式  という。

H+ 液中のバランスは変わらない=pHの変化もない CH3COO-と結合して、CH3COOHとなる 加えられたH+はほとんど消費される

OH- 液中のバランスは変わらない=pHの変化もない H+と中和し、減少したH+は電離して補充される 加えられたOH-はほとんど消費される    :CH3COOH    :CH3COO-    :H+

緩衝能が最大になるとき 緩衝能は、濃度がHA=A-のときに最大になる。 [A-],[HA] が十分に存在するとして、ここで酸を加えれば当たり前ですが [A-] が減少し [HA] が増えます。 加えた酸が少量ならこの変化量は同程度である。 つまり,[A-]/[HA] は ([A-]-δ)/([HA]+δ) に変化する。 このとき,[A-] も [HA] も十分にあるのであれば,この比の変化は小さく,結局 [H+] の変化も小さいということがいえる。 例えばH+が2、HAが2、OH-が1だとすると、結局比としては変わらないので、緩衝能は 変わらなくなる。

もし,[A-] が小さく [HA] は大きい場合には,[HA] の変化は無視できるが,[A-] の変化は無視できず,結局 [A-]/[HA] は変化することになる。[HA] が少なくても同じことである。 例えば、H+が2、A-が1、HAが4だとして、加えた酸 を0.5だとすると、 これらのことから、加える酸(または塩基)の影響が最も小さくなるときは、 HA=A-のときとなる。 よって、緩衝能が最も大きくなるのは、HA=A-のときになる。

pK pH = a つまり、[A-]/[Ha]=1の時に最大になる。 これをヘンダーソン‐ハッセルバルヒ式 に入れてみると、 となるので、酸解離定数KaのpH近くにに合わせて調整すると、最も緩衝作用の強い緩衝液が出来る。 酢酸: トリス:8.3(20℃) HEPES:7.5 CAPS:10.4 主なPka値

右図は0.1mol/l の酢酸水溶液の中和曲線  図のa点…酢酸水溶液のpH         電離度が小さいから,         pHはあまり小さくない  図のb付近…pHの変化が小さい           酢酸と酢酸ナトリウ               ムが存在し,緩衝溶          液となっている        図のc点…中和点は塩基性を示          す。         酢酸ナトリウムの加水         分解により塩基性を         示す。

身近にある緩衝液 私たち人間の身体には、様々な緩衝液があります。 例えば、 また、河川の水には緩衝作用はないが、海水には緩衝作用がある。 ・血液 ・体液 ・唾液 など また、河川の水には緩衝作用はないが、海水には緩衝作用がある。 次回緩衝液の種類や、体液の緩衝作用について勉強したいです。