2017. 4. 27 有機バイオ材料化学 2. 様々なアルケンおよびアルキンの反応.

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学年   名列    名前 物理化学 第2章 2-1、2-2 Ver. 2.0 福井工業大学  原 道寛 HARA2005.
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2017. 4. 27 有機バイオ材料化学 2. 様々なアルケンおよびアルキンの反応

アルケンのマイケル付加 マイケル付加(1,4-付加)反応 ・ 電子吸引性基(EWG)が置換した電子不足二重結合に対して求核剤が付加する反応 ・ 特にエノン型の場合は1,4-付加(共役付加)と呼ばれる 一般式 EWG = CN, NO2 など Nu = RLi, RMgBr, R2CuLi など δ+ エノン型 δ+ Nu = RLi, RMgBr は硬い塩基1)であり、カルボニル炭素に求核攻撃する(1,2-付加) 1) HSAB (Hard and Soft Acid and Bases) 則 = 酸と塩基の親和性の傾向

アルケンのエポキシ化 マイケル付加型エポキシ化:段階的に進み、アルコキシドが脱離する mCPBA(m-クロロ過安息香酸)によるエポキシ化:協奏的に進み、オレフィンの立体は保持 2つの反応機構の違いに注意!

アルケンの酸化-1- オゾン酸化(オゾン分解) -78℃の低温、不活性溶媒(ジクロロメタン等)を用いて行うC-C二重結合の酸化切断反応 Retro-1,3-双極子付加 モルオゾニド 超不安定 オゾニド 安定 1,3-双極子付加 後処理(還元)

アルケンの酸化-1.5- 過マンガン酸カリウムによる酸化 中性・酸性条件(酸化開裂) 塩基性条件(ジヒドロキシル化) syn付加 アルデヒドでは止まらない 分子内反応 塩基性条件(ジヒドロキシル化) syn付加 cis-ジオール 分子間反応

アルケンの酸化-2- ジヒドロキシル化 cis-ジオール(酸化オスミウム等を用いる場合) trans-ジオール(エポキシを経由する) syn付加 cis-ジオール 再酸化・再利用 塩基性条件下のKMnO4のときと同様の機構で進行する trans-ジオール(エポキシを経由する) 立体的に空いている方から syn付加 anti付加 trans-ジオール anti付加 trans-ジオール カルボカチオンの安定な方から

スチレン重合 ポリスチレンの合成(例:カチオン重合) 開始剤 安定なカチオン中間体を経由 開始剤 = ルイス酸、ブレンステッド酸

アルキンの特徴 アルキン 化学式 CnH2n-2 (n ≧ 2) C-C三重結合 = σ結合1つ + π結合2つ C-C三重結合 = σ結合1つ + π結合2つ ・ 付加(還元)反応を起こしやすい ・ 酸性度(pKa)がアルケン、アルカンよりも低く、容易にプロトンが引き抜かれアセチリドになる   ※アセチリド上の電子対が収容される sp 軌道の s 性が高く、負電荷が安定するため ・ アセチリドは強い求核剤としてC-C結合合成に使われる 

アルキンの付加反応 一般式 当量以上あれば続けて反応し、Markovnikoff則に基づく生成物を与える ブロモ化 接触水素化(水素付加)

アルキンの付加反応-2- アセチレン重合 臭素付加 水付加(水和) アルケンの臭素化と同様の機構で進む 加熱した石英管に通すと3分子で連結する 臭素付加 アルケンの臭素化と同様の機構で進む 水付加(水和) ルイス酸 = BF3, AlCl3 等 Markovnikoff則に従う化学選択性を発現する

アセチリド M = Li, Na, K… 末端アルキン(R-C≡C-H)は微弱な酸性であり、適切な強塩基により引き抜いて金属イオンで置換し、金属アセチリド(metal acetylide)を与え、求核剤となる よく使う試薬例) ブチルリチウムorナトリウムアミドによるプロトンの引き抜き 塩基の選択 末端アルキン(R-C≡C-H)のプロトンはpKa(酸性度)=25であり、それより値が大きな塩基(強塩基)でなければプロトンの引き抜きが生じない