脱・フリーター社会 京都大学橘木研究室
1.フリーター・日本の労働市場の現状 フリーターの定義(厚生労働省による) フリーターとは 15~34歳の学卒者(女性は未婚者)のうち 1.フリーター・日本の労働市場の現状 フリーターの定義(厚生労働省による) フリーターとは 15~34歳の学卒者(女性は未婚者)のうち ①パート・アルバイトとして働いている者 ②パート・アルバイトを希望する無業者
フリーター数 ー 約209万人(2002年度) → 90年代以降急激に増加 フリーターの学歴別 - 中・高卒が多い (約139万人:02年) フリーター数 ー 約209万人(2002年度) → 90年代以降急激に増加 フリーターの学歴別 - 中・高卒が多い (約139万人:02年) 労働市場 ー 特に高い若者の完全失業率 15~19歳で12.8% 20~24歳で9.3% (平均5.4%) :02年平均
2.フリーターをめぐる議論 労働供給側に原因を求める (=フリーター側に主要な責任がある) 労働需要側に原因を求める 労働供給側に原因を求める (=フリーター側に主要な責任がある) 労働需要側に原因を求める (=企業に主要な責任がある)
2.1 労働供給側に原因を求める立場 若者の就業意識の変化 若者を取り巻く環境の変化 ↓ モラトリアム期間の延長 パラサイト・シングル現象
2.2 労働需要側に原因を求める立場 新卒採用の抑制 → 若者の就業機会が奪われている (背景) ・ 解雇条件が厳しい 2.2 労働需要側に原因を求める立場 新卒採用の抑制 → 若者の就業機会が奪われている (背景) ・ 解雇条件が厳しい ・ 人材育成コストをかけたくない
3.1 我々の見解 フリーター増加の要因 → 労働需要側に主要な要因がある (企業)
フリーターの多くは正社員を希望している 図1 フリーターと正社員の希望職種比較 資料出所:『平成15年度版国民生活白書』
パラサイトシングルはフリーター特有の現象ではない (表2) フリーターの家族・居住形態構成(%) 資料出所:吉田・小杉・森(2001) → 若者の就業意識のみに、 フリーター増加の原因を求めるのは難しい
3.2 フリーター増加の要因 雇用戦略の変化 長引く不況 →人件費の安く、雇用調整が容易な パート・アルバイトを雇用 → 新規学卒採用の抑制
② 新たな労働需要の創出が抑制されている 図3 総実労働時間と所定内労働時間 総労働時間は減少 ⇔ データには現れないサービス残業が存在
サービス残業は 平均8.7時間 (連合アンケートより) → サービス残業は増大している サービス残業は 平均8.7時間 (連合アンケートより) 図4 労働者の申告労働時間と企業の申告労働時間との「差」 → サービス残業は増大している
フリーター増加の原因となっている。 不況による雇用抑制 → 一人当たりの仕事量の増加 → サービス残業の増加 →新たな労働需要創出を抑制 不況による雇用抑制 → 一人当たりの仕事量の増加 → サービス残業の増加 →新たな労働需要創出を抑制 あるべき労働需要を抑制することが フリーター増加の原因となっている。
4.1 労働需要側を対象とする政策提言 短期 サービス残業の削減 ↓ 時間外割増賃金率の引き上げ 長期 ワークシェアリングの導入
4.2 サービス残業削減のために ①労働基準監督官の増員 ②労働時間管理の徹底 ③厚生労働省は調査の詳細な報告を ④サービス残業告発の支援 4.2 サービス残業削減のために ①労働基準監督官の増員 ②労働時間管理の徹底 ③厚生労働省は調査の詳細な報告を ④サービス残業告発の支援 ⑤労働者の権利に対する意識の強化 ↓ サービス残業の削減
サービス残業がゼロになった場合のシミュレーション 労働需要関数の推計 ln(L)=3.79-1.07*ln(h)+0.50*ln(Y)-0.008*i (3.19)(-7.88) (5.18) (-4.79) L:常用雇用指数 h:総実労働時間指数 Y:実質GDP i:トレンド変数 ( )内はt値 →約249万人の新規雇用を生み出す
4.3 時間外割増賃金率の大幅な引き上げを 残業の削減 サービス残業廃止後、 既存の労働者に時間外労働をさせるか、 新たに人を雇うか 4.3 時間外割増賃金率の大幅な引き上げを サービス残業廃止後、 既存の労働者に時間外労働をさせるか、 新たに人を雇うか → 現行の割増率では時間外労働が合理的 + 国際的に低い割増率 時間外割増賃金率の引き上げ ↓ 残業の削減
新たな労働需要の創出を若者に向けるために 若年者トライアル制度 ハローワークから紹介された30歳未満の者を、企業が最大3ヶ月まで試行的に雇い、本採用するかを決める制度である。 採用者1人につき1ヶ月当たり5万円の奨励金が厚生労働省から採用した企業に支給される。 トライアル制度の拡張 ① 対象人数の拡大 ② 期間の延長 ③ 補助金の増額
4.4 ワークシェアリングの導入を なぜ長期か? ①企業が導入に消極的 ②現状のままでの導入は、企業、 低所得者層に負担 4.4 ワークシェアリングの導入を なぜ長期か? ①企業が導入に消極的 ②現状のままでの導入は、企業、 低所得者層に負担 → 短期での導入は困難 しかし、最終的には「ワークシェアリング」を導入すべき
4.5 フリーターの能力開発 日本の職業教育の現状 中学・高校での実践的教育は不足している 企業が多くを担っていたが、不況下で撤退傾向 4.5 フリーターの能力開発 日本の職業教育の現状 中学・高校での実践的教育は不足している 企業が多くを担っていたが、不況下で撤退傾向 = フリーターは在学中も、学卒後も 能力開発の機会が極めて少ない ↓ 中高生に実践的教育を受ける選択肢を与えるべき フリーターに職業訓練の機会を与えるべき
職業訓練の具体的施策例 デュアルシステム インターンシップの充実 求人の多いIT・医療系の専門教育の充実 社会人の職業教育への参加 etc
おわりに フリーター増加の原因 パート・アルバイトによる業務の代替 サービス残業の横行 ↓ 若者の正規雇用としての就業機会の減少 パート・アルバイトによる業務の代替 サービス残業の横行 ↓ 若者の正規雇用としての就業機会の減少 ☆ 若者は正規雇用を望んでいる! 新たな正規雇用創出のための具体的な方策 ・ サービス残業の削減→時間外割増賃金率の引き上げ ・ トライアル制度の拡充 ・ ワークシェアリングの導入 ・ 職業訓練教育・教育システム改革
御静聴ありがとうございました 橘木研究室一同