水系の2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(ABN) の分析法

Slides:



Advertisements
Similar presentations
下水処理場におけるノニルフェノール関 連物質の LC/MS を用いた分析 永光 弘明 * 加藤 康伸 * 熊谷 哲 ** 中野 武 *** 永光 弘明 * 加藤 康伸 * 熊谷 哲 ** 中野 武 *** * 姫路工業大学工学部 * 姫路工業大学工学部 ** 姫路工業大学環境人間学部 ** 姫路工業大学環境人間学部.
Advertisements

生体試料における PCB 分析 生体試料における PCB 分析 ○ 上瀧 智巳 1 ) 、 森 千里 2 ) 、 中野 武 3 ) 1 ) ㈱エスアールエル、 2 ) 千葉大学大学院医学研究 院、 3 ) 兵庫県立健康環境科学研究センター.
π電子自由自在 -C≡C- ポリジアセチレン ナノワイヤー FET素子 結晶工学 ナノ複合体 結晶内反応 イナミン化合物 環状化合物
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
1.ボイルの法則・シャルルの法則 2.ボイル・シャルルの法則 3.気体の状態方程式・実在気体
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
LC/MSを用いた生物試料中の ジラム、マンゼブの定量
医薬品素材学 Ⅰ 相平衡と相律 (1) 1成分系の相平衡 相律 クラペイロン・クラウジウスの式 (2) 2成分系の相平衡 液相―気相平衡
分子・物質合成プラットフォームにおける利用成果
LC/MSを用いた水道水源における 解離性有機リン系農薬とその分解物の一斉分析法の開発
1 アルミニウム関連素材等への 抽出クロマトグラフィーの応用 信越化学工業㈱ 群馬事業所 国谷 譲治
環境中のポリ塩化ナフタレンの分析手法開発に関する検討
高分子電気絶縁材料の撥水性の画像診断に関する研究
社内使用禁止物質の 事前チェック.
医薬品素材学 I 4 物質の状態 4-1 溶液の蒸気圧 4-2 溶液の束一的性質 平成28年5月20日.
UPLC/MS/MSを用いたハロ酢酸分析法開発 ○佐藤信武,津田葉子,小西泰二,江崎達哉 (日本ウォーターズ株式会社)
国内で市販されているワイン中の残留農薬 ○山口之彦、板野一臣   (大阪市立環境科学研究所).
研究の背景 緒言 オゾンの効果 ①除菌 ②脱臭 ③脱色 食品衛生 室内空間を快適にする 水を透明にする 利用した製品は多数ある.
有害廃棄物管理棟(旧廃棄物管理施設) 指導教官: 町田 基(教授),天野 佳正(助教),鮫島 隆行(技官) 研究分野:
PFCsの環境分析 上堀美知子 (大阪府環境農林水産総合研究所) 2009/08/01 第8回e-シンポジウム.
パッシブエアーサンプラーにおける各ピークのサンプリングレート 算出の試み
福岡市内の公共用水域におけるLASの調査結果について
LC/MS/MSを用いた環境試料中の農薬分析
科学的方法 1) 実験と観察を重ね多くの事実を知る 2) これらの事実に共通の事柄を記述する→法則 体積と圧力が反比例→ボイルの法則
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の分析検討
LC/MSによる環境汚染物質の分析条件の検討. -マネブ系農薬・界面活性剤の分析-
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
液クロユーザのための基礎講座.
神戸周辺沿岸海域における 有機フッ素化合物の分布と推移
IC/MS/MS法を用いた環境水及び水道水中のハロゲン酸分析法と 過塩素酸の検出
9 水環境(4)水質汚濁指標 環境基本法(水質汚濁防止法) ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 
カラムスイッチングとコールドトラップを利用した
環境水中の 抗てんかん薬の分析 岩手県環境保健研究センター 環境科学部 鎌田憲光 佐々木和明 嶋弘一 齋藤憲光
9 水環境(4)水質汚濁指標 ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 環境基本法 地下水を含む全公共用水域について適用
下水試料中の女性ホルモン 測定法の課題 -LC/MS/MSとELISAの比較から-
SBSE-TD-GC/MS法による農薬分析
浄水処理過程で生成する臭素化消毒副生成物の濃度分布
リチウムイオン内包フラーレン修飾体の13C NMR測定
LC/MS/MSを用いた環境試料中の農薬分析
LC/MSを用いた生物試料中の ベンゾトリアゾール系化合物定量法
GPCクリーンアップを用いた PCBs、PCNs、PCTs及びPBBsの 同時分析
○清家伸康・大谷 卓 (農業環境技術研究所)
ガスクロマトグラフィー研究懇談会講習会「プロが教える“ガスクロ自由自在”」
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
水中のフェノール類測定に用いる 抽出固相の検討
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
化学生命理工学実験 II アフィニティークロマトグラフィー (3)
化学生命理工学実験 II アフィニティークロマトグラフィー (1)
酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築
福岡市の河川水におけるPFCsの実態調査
水田における除草剤ブロモブチドの濃度変動と挙動
多摩川水系におけるHBCDの 排出実態について
水中農薬一斉分析における 固相前処理法の簡略化の検討
誘導体化を用いた フッ素テロマーアルコールの高感度分析 ○竹峰秀祐 環境省 環境調査研修所.
水ジェットキャビテーションによる 有機物分解効率の向上に向けた基礎研究 2002年12月26日
LC/TOF-MSを用いた臭素系難燃剤の分析
(解答) 式(6.12)  Δp = (ΔH / ΔV )×ln (Tf / Ti)
○仲摩 翔太 1,上野 孝司 2,西野 貴裕 2, 高橋 明宏 3, 北野 大 1
廃棄物試料中の有機フッ素化合物の分析法の検討
14 水酸化PCBの生成について (1日鉄環境エンジニアリング㈱,2大阪市立環境科学研究所,3元大阪府環境情報センター)
ガスクロマトグラフィー/負イオン化学イオン化 質量分析法による河川水中フェノール類の 高感度定量
水酸化PCBの生成について 日鉄環境エンジニアリング株式会社         福沢 志保.
UPLC/MS/MSを用いたリテンションギャップ法によるPFCs分析とPFOS異性体分離
大阪府域における 有機フッ素化合物の環境実態調査
LC/MSを用いた水環境中における ネオニコチノイド系農薬の分析方法と存在実態
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
神戸沿岸海域における 有機フッ素化合物濃度及び組成の経年変化
GC/MSによるノニルフェノキシ酢酸類の分析
名古屋市内河川におけるネオニコチノイド系農薬および代謝物の濃度分布
沿道植物中のEROD活性による 大気汚染のバイオモニタリング ー研究の概略ー.
Presentation transcript:

水系の2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(ABN) の分析法       長野県環境保全研究所   笹井春雄 渡辺哲子 薩摩林 光 土屋としみ 2004年3月 2006年9月

ABNの構造        CH3        CH3  H3C   C   N  N   C   CH3        CN         CN R-N=N-R → 2R・+N2

ABNの物性 物質 分子量 融点*) 沸点*) LogPow*) (℃) (℃) ABN 164.21 101.5 融点以上分解 1.1           (℃)        (℃)               ABN       164.21   101.5    融点以上分解     1.1             物質       水溶解度*)        蒸気圧*)          用途     (mg/100mL)      (mmHg)   ABN        35           0.0067(25℃)    重合開始剤、発泡剤  *) SRC  PhysProp Database

ABNの調査目的(環境省エコ調査) 1)ABNはポリマー産業で重合開始剤として閉鎖系で多く使用されている。  1)ABNはポリマー産業で重合開始剤として閉鎖系で多く使用されている。  2)PRTR法の第一種指定化学物質であるが排出量が少なく、指定を検討する。  3)生態リスクの評価に必要(生態毒性が認められ、生産量多い → 環境データない)

TMSN:Tetramethylsuccinonitrile ABNの注入口での分解 ABN TMSM ABN TMSM 注入口温度 150℃ TMSN:Tetramethylsuccinonitrile R-N=N-R → 2R・+N2 ABN:Tetramethylsuccinonitrile TMSM TMSM 注入口温度 240℃

注入口温度とABNの分解 反応温度は室温で

ABNとTMSNのマススペクトル サロゲート誘導体 ABN TMSN

注意点 1.GC注入口 110℃ 2.GCカラム 恒温槽が100℃以下でABN が溶出するカラム(5%フェニルメ チルシリコン系) 1.GC注入口  110℃ 2.GCカラム   恒温槽が100℃以下でABN             が溶出するカラム(5%フェニルメ チルシリコン系)  (WAX等ではGCカラム中で分解しブロードなピーク)    3.固相抽出後、脱水を充分にする

GC/MS条件 カラム: DB-5MS 30mX0.32mmX0.25μm  温度 : 60℃(1分)-5℃/分-100(0分)-20℃/分                                           -280℃(5分)  注入口温度:110℃  キャリアー: He 35kPa  m/Z:     ABN  68(定量用)69,121(確認)     内標準        4-ニトロトルエン-d7  144

分析フロー 水質 水試料 → 固 相 抽 出 → 脱 水 → 300mL PS-2 Air purge 45min. 水質                     水試料  →  固 相 抽 出 →  脱  水  →  300mL       PS-2     Air purge 45min.               溶 出  →  内標準添加   → GC/MS   Dryカートリッジ  4-ニトロトルエン-d7    エタノール5mL    

検出下限等 検出下限と定量下限 水質(μg/L) 検出下限 定量下限 0.042 0.11 装置検出下限(IDL)      検出下限  定量下限          0.042   0.11 装置検出下限(IDL)   IDL      濃縮率     試料濃縮換算値  (μg/mL)               (μg/L)   0.0032     300         0.011

添加回収実験 試料 精製水 河川水 海 水 試料量(mL) 300 300 300 添加量(μg) 0.1 0.1 0.1 試料        精製水  河川水  海 水   試料量(mL)    300    300    300   添加量(μg)    0.1     0.1     0.1   測定回数       7      7      3       回収率(%)    100      99     96      C.V.(%)       2.7     3.3     4.2    

検量線の一例

標準物質のSIMクロマト IS IS ABN ABN ↑

分析例(河川水) 河川水無添加 ↑ 河川水添加 ↑

分析例 (海水) 海水無添加 ↑ ↑ 海水添加 ↑

保存性 河川水にフルアジナムを添加し(1ppb)冷蔵庫中に保存した。 河川水にABNを添加し(0.1μg/L)冷蔵庫中で保存

ま と め 水試料のABNの分析法を検討した。 (1)本法により水中にppbレベルで存在するABNの分析が可能である。 ま と め   水試料のABNの分析法を検討した。 (1)本法により水中にppbレベルで存在するABNの分析が可能である。 (2)調査した河川水、海水からABNは検出されなかった。