障害の社会モデルの定式化による試み ー発展途上国に向けたバリアフリー化 東京大学大学院総合文化研究科 学術研究員 上野俊行
研究目的 障害者の社会参加のためのバリアフリー研究 バリアフリー: 車椅子の視座からの物理的バリアフリーから社会全 体のバリアフリー 車椅子の視座からの物理的バリアフリーから社会全 体のバリアフリー ベトナムを中心:他の発展途上国への参考 (途上国向けに)社会モデルの定式化の試み
東アジアの障害者の割合 (ESCAP, Disability at a Glance 2012) 国名 割合% 国名 割合% ①ベトナム 7.8 ⑧ミャンマー 2.3 ②中国 6.3 ⑨マカオ 2.0 ③日本 5.8 ⑩ インドネシア 1.4 ④韓国 5.6 ⑪ カンボジア 1.4 ⑤香港 5.2 ⑫マレーシア 1.3 ⑥シンガポール 3.0 ⑬フィリピン 1.2 ⑦タイ 2.9 ⑭ラオス 1.0 (台湾 4.7)
ベトナムの障害者 ベトナムの障害者:7.8%(2009年) 事由:事故、疾病 ベトナム戦争の傷痍兵 枯葉剤後遺症
障害者権利条約の批准日 障害者権利条約:社会モデル(合理的配慮)→地域文化に合わせた理解 国名 権利条約を批准 国名 権利条約を批准 国名 権利条約を批准 国名 権利条約を批准 ①フィリピン 2008年4月15日 ⑦インドネシア 2011年11月30日 ②タイ 2008年7月29日 ⑧ミャンマー 2011年12月7日 ③中国 2008年8月1日 ⑨カンボジア 2012年12月20日 ④韓国 2008年12月1日 ⑩シンガポール 2013年7月18日 ⑤ラオス 2009年9月25日 ⑪日本 2014年1月20日 ⑥マレーシア 2010年7月19日 ⑫ベトナム 2014年11月28日 (台湾:障害者権利条約施行法 2014年12月3日施行)
障害の社会モデル 障害の法律学的用語法 [川島 2011: p313] 障害=インペアメント (またはインペアメント+活動制限) 障害の障害学的用語法 [川島 2011: p314] 障害=インペアメントと社会障壁の相互作用で 生じた不利
相互作用とは何か 細く狭い階段: 一般的な車椅子の利用者には社会障壁(物理的障壁)だが。。 ↓ 他のインペアメントの場合は? 聴覚障害者には? 視覚障害者には? 軽度のインペアメントの車椅子利用者には? ↓ 個々のインペアメントの種類と程度により 社会障壁の度合いが変化する(社会障壁は可変的)
社会的不利 社会的不利=インペアメント×社会障壁 障害の医学モデル :H=I (定式②) 障害の英国社会モデル: H=D (定式③) インペアメントをI(impairment)、社会障壁をD (disability)、社会的不利をH(handicap) 障害の医学モデル :H=I (定式②) 障害の英国社会モデル: H=D (定式③) 障害の米国社会モデル: H= I×D(定式④)
障害者の社会参加可能率 障害の米国社会モデル: H= I×D (定式④) 非障害者: SP=100% (定式⑤) 障害者: SP=(100-H)% (定式⑥) =(100-I × D)% (定式⑦) SPを上昇させるためには、Dを低下させる必要性 D→0 ならばバリアフリー化
障害者の社会参加の地域文化モデル 社会参加可能率:SP=(100-I × D)% (定式⑦) Iはほぼ不変、 D →0 はバリアフリー化、 D=0 の時に完全バリアフリー 合理的配慮 :SP={100-I × (D -R)}% (定式⑧) 途上国モデル:SP={100-I × (D+C)}% (定式⑨)
ベトナムの障害者の状況 ベトナムの全人口(2009年):8578万9573人 5歳以上の国民に対する障害者の割合:7.8% 障害者610万人 :障害の件数 1210万件 視覚障害者 :390万件(33%) 聴覚障害者 :250万件(20%) 運動機能障害者 :290万件(24%) 記憶障害者 :280万件(23%) 多重障害の可能性→障害の程度を I で示す有効性
まとめ バリアフリー:障害者の社会参加 車椅子の視座からの物理的バリアフリーから 社会全体のバリアフリー ⇒経済的要因だけではない 車椅子の視座からの物理的バリアフリーから 社会全体のバリアフリー ⇒経済的要因だけではない ベトナム向けに社会モデル:地域文化への理解も必要 社会モデルの定式化の試み:試みから発展(実践)へ
参考文献 川島 聡(2011)「差別禁止法における障害の定義-なぜ社会 モデルに基づくべきか」松井彰彦, 川島聡, 長瀬修編著『障害 を問い直す』、東洋経済新報社、pp290-318。 杉野 昭博(2007)『障害学 : 理論形成と射程』、東京大学出 版会。 ESCAP Division Social Development (2012), Disability at a Glance 2012. TỔNG ĐIỀU TRA DÂN SỐ VÀ NHÀ Ở TRUNG ƯƠNG (2009), Báo cáo Kết quả điều tra suy rộng mẫu Tổng điều tra dân số và nhà ở 01/4/2009.
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