中東諸国における 非民主体制の持続要因 レンティア国家論と 体制変動の経路依存性 日本国際政治学会 2005年度研究大会 山形大学 浜中新吾
はじめに 中東は民主化の「例外地帯」 リプセット・モデルに当てはまらない レンティア国家論による説明 レント概念の拡張(「政治レント」) 体制の移行経路には、移行前の体制が持つ制度的特徴が意味を持つ ・どういう現象を見て:中東諸国は民主化していない。 ・なぜその現象が問題なのか:近代化論(リプセット・テーゼ)から言えば、民主化しているか、民主化の移行期に入るケースが出ているはずだから。 ・別の説明はないのか①:レンティア国家論による説明がある。しかし両者は架橋されていない。 ・別の説明はないのか②:経路依存性による説明がある。
本研究の課題 レンティア国家論と体制の制度的特徴による説明(経路依存性)の実証分析 大量調査型研究法(Large N studies) フォーマルモデル・ビルディングによって因果関係を明確化 なにをやるのか:レンティア国家論と経路依存性による説明と近代化論を架橋し、中東の非民主体制の持続を説明する どういう着眼で:レンティア性と現体制の制度的特徴が民主化のインセンティブを削いでいることを理論化する
Boix-Stokesモデル
経済水準と民主化効用
計量分析の方法 Dynamic Probitモデル Adam Przeworskiが考案 民主化移行、定着、退行の分析を得意とする 本研究に使用したデータセットはオリジナルのもの
データの観察
データの観察
Dynamic Probit分析① 経済成長は民主化を促進し、退行を阻止 石油レントは民主化を抑制する
Dynamic Probit分析② 鉱物・送金 ともに影響なし
Dynamic Probit分析③ レント変数で有意なものは石油レントのみ
Geddesの権威主義体制モデル 3つの理念型モデル 混合型モデル 「軍部支配体制」 「一党支配体制」 「個人支配体制」 「軍部‐党」「党‐個人」「個人‐軍部」 「軍部‐党‐個人」
軍部支配と一党支配のゲーム 支配戦略 支配戦略
個人支配ゲーム p≦4/7の時、ナッシュ均衡
個人支配ゲーム p>4/7の時、ナッシュ均衡
危機の一党支配ゲーム p≦5/6の時ナッシュ均衡
危機の一党支配ゲーム p>5/6の時ナッシュ均衡
中東諸国の政治体制の類型
生存分析の結果
結論 経済発展は民主化を促すものの、石油レントが非民主体制の持続要因になる レンティア国家論は石油レントに関して正しいと言える 「君主制」および「個人・軍部・党」体制はより長期間持続する傾向がある
考察 「レントに依存する国家が開発戦略を変更できない」Karl(1997)の主張 本稿の結果は「石油のレント性」を強調 他の資源や送金は民主化抑制要因とはならなかった
考察 「中東諸国の民主化」は「ゴドーを待ちながら」なのか? 「権威主義体制の成功要因を研究すべきだ」とするAlbrechat & Schlumberger(2004)の主張 暴力装置の能力と意思が「成功要因」だとするBellin(2004)の意見