「建築構法」 1回目の授業 住宅構造の変遷 平成28年4月18日(月) 今岡 克也.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
新診断ソフト 木耐博士Sについて エイム株式会社. □ はじめに 耐震診断方法の変更に伴い、木耐博士も新 しく開発することになりました。
Advertisements

基盤構造研究室(担当茂木) 10TC005 新田裕恭, 10TC010 内海満希, 10TC040 田中優 希 建設工学科棟2号館の耐震診断.
平成25年11月11日 発刊 A5版 196ページ オールカラー み り ょ く 呉市の生い立ち 明治35年( 1902 年) 宮原村,和庄村,荘山田村,二 川町が 合併して 呉市が誕生 昭和 3年 (1928 年) 吉浦町,警固屋町,阿賀町 昭和16年 (1941 年) 広村,仁方町と合併 昭和31年.
ケムリガエシ梁の継ぎの状況 (追っかけ大栓継) 工事のようす. 牛梁+大黒柱の仕口 牛梁の継手(台持継) だいもちつ ぎ.
木造住宅の耐震補強への取り組み 名古屋工業大学社会開発工学科建築系 助教授 井戸田 秀樹 ■ 名古屋工業大学「東海・東南海地震防災合同プロジェクト」
第4回  親子・孫3代で使える木造住宅で 人生トータルコストダウンの家づくり 監修 一般社団法人住まい教育推進協会.
筋交い付の柱のN値法 ・教科書 図解「建築の構造と構法」  p.48~53.
OPEN (2日間限定) kawai.co (株式会社河合工務店)
旧高野家常時微動調査 07TC040 小山梨紗 07TC076 本郷博之.
図解「建築の構造と構法」 72~79ページ 必携「建築資料」 22~23ページ
2.災害公営住宅の概要     完成イメージ ◇ 入谷地区の完成イメージ 集合住宅 戸建住宅 ◇ 名足地区の完成イメージ 集合住宅 戸建住宅 13.
学習目標 1.欧米の精神医療の変遷について概観し,それぞれの時代における特色を理解する. 2.日本の精神医療の変遷について概観し,それぞれの時代における特色を理解する. 3.世界の精神医療の現状と問題点について理解する. SAMPLE 学習目標 1.欧米の精神医療の変遷について概観し,それぞれの時代における特色を理解する.
「熱負荷計算モデル」の入力パラメータとの関連
図解「建築の構造と構法」 156~161ページ 必携「建築資料」 56~65ページ
図解「建築の構造と構法」 156~161ページ 必携「建築資料」 56~65ページ
08TC005 岩田靖央 08TC048 二階堂圭太 08TC065 松山幸司 指導教員 茂木秀則准教授
建築構法 第9回 2017/3/11 「建築構法」 12回目の授業 鉄骨構造の変遷 平成27年7月6日(月) 今岡 克也.
東京女子大学 現代社会学部 コミュニケーション特論C(社会) 災害情報論 第2回 阪神・淡路大震災の教訓
・ダムを効率的に建設する技術 ・既存のダムを有効利用する技術.
Technology for Wonderful Life!
能力開発セミナーのご案内 木造住宅における性能表示 (構造の安定編)コース コース番号 日 程 受講料 定員 講 師 PH06
徳島市内の公共的施設・空間における受動喫煙曝露の実態調査 徳島阿波おどり空港、喫煙室2カ所(2010年6月30日、7月1日)
住宅における緑のカーテンの 温熱環境緩和効果の実測
・図解「建築の構造と構法」 26~33ページ ・必携「建築資料」 16 ~19ページ
木造住宅の 常時微動観測 05TC012 押野雅大 05TC021 川村潤也.
伝統木造建築物の耐震診断・補強法の開発と推進
人文地理学の空間データベースの課題 高阪宏行・荒井良雄.
建築構法 第9回 2014/6/16 「建築構法」 8回目の授業 鉄筋コンクリート 構造の変遷 平成28年6月6日(月) 今岡 克也.
イソタンシステム 発泡ウレタン断熱・防水システム 特徴 用途 断熱と防水を同時に実現 軽量 工期短縮 結露防止 簡単な屋根補修
歴史的環境と共存するニュータウンのあり方
× △ ○ 3大構造の比較 大空間が作れるか? 木構造 鉄筋コンクリート構造 鋼構造
工事写真用台紙 写真貼付け 写真貼付け 住宅ストック循環支援事業用 補助事業者名 共同事業者名 写真No 工事箇所 対象工事内容 写真No
福井地震 02T3020B 亀山 由佳.
安全な除雪作業をするためのチェックリスト
鉄筋コンクリート構造の施工 ・図解「建築の構造と構法」    98ページ   114~115ページ ・必携「建築資料」   施工工程:68~69ページ.
「地震保険及び建物構造の 基礎知識と支払査定基準の解説」
図解「建築の構造と構法」 72~79ページ 必携「建築資料」 31~32ページ
関東地震 02T3601D 荒木太郎.
鉄骨造の床スラブと階段 ・図解「建築の構造と構法」 床スラブ:145ページ 階段: 146ページ ・必携「建築資料」
日本建築史  ~日本の住居の移り変わり~.
旧高野家常時微動調査 07TC040 小山梨紗 07TC076 本郷博之.
4班 木下雄帆 岸本将成 木村亮介 黒澤徹也 小林隼人
縄文海進.
縄文海進.
豊田市 K邸の新築工事 (5/10).
H30.2.5破壊実験フィンクトラスの改良点 初代フィンクトラス 改良型フィンクトラス.
壁式鉄筋コンクリート構造 ・図解「建築の構造と構法」    116 ~119ページ ・必携「建築資料」     76~77ページ.
制振模型製作 山田研究室  浦冨明日香.
・ガイダンス ・建築構法の変遷 ・住宅構造の変遷
鉄骨構造の特徴 Steel Frame Structure
建築物の環境配慮のあり方について~温暖化対策部会報告の概要~
鉄骨構造の接合方法 ・図解「建築の構造と構法」    132 ~137ページ ・必携「建築資料」    108~111ページ.
木材利用による業務用施設の断熱性能効果検証事業
老後の生きがいある里山生活のための自然エネルギー利用・快適住宅
電話/Eメール/当社HP申込フォームより 締切は イベント前日  17時
鉄筋コンクリート構造の特徴 ・図解「建築の構造と構法」 84~90ページ ・必携「建築資料」 ラーメン構造:74~75ページ
江戸時代に築かれた木製・石積用水路の築造技術にかかる考察
構造物の常時微動計測 ~難波田城公園~ 基盤構造工学研究室 小田 優介 川満 大輔.
鉄骨鉄筋コンクリート構造 Steel framed Reinforced Concrete
在来軸組木造住宅例 の設計図書 ・図解「建築の構造と構法」    20~25ページ.
空き家地域貢献活用 現状図と課題(必要改修箇所)
鋳造(Casting).
都市型建築の効果的な耐震補強・改修法の開発と推進
第3回防災訓練(図上訓練 in 台組) 平成27年6月14日(日)午後7時~
× × × 耐震補強フレーム FRAME+ (フレームプラス) 地震から家族を守る「フレームプラス」
・課題の説明 ・柱の引抜耐力(N値)の計算 ・内壁と天井 ・床と階段
建築構法の変遷と分類 教科書 p.10~15.
建築構法の変遷と分類 教科書 p.10~15.
「建築構法」 1回目の授業 木造住宅の構造の変遷 平成29年4月17日(月) 今岡 克也.
安全快適な 託児室の設置について 中家 剛&野尻 美保子 2001年秋日本物理学会分科会 立命館大学開催を例に.
Presentation transcript:

「建築構法」 1回目の授業 住宅構造の変遷 平成28年4月18日(月) 今岡 克也

住宅とは? 「生活の器」:人(家族)が生活するための空間 快適(健康・省エネ),安心・安全,接客,外観‥ ‥ 「住む人を表現するもの」:   快適(健康・省エネ),安心・安全,接客,外観‥ ‥ 「住む人を表現するもの」:   住宅は、住人の考え方・伝統・風習などを反映 「時代と文化を映す鏡」:   ① 気候や地形,災害危険度などの自然条件   ② 生活する場(ケ)と接客の場(晴れ)   ③ 技術の進展(最新)や社会の規制(合理性)

環濠集落と竪穴式住宅 前3世紀~2世紀頃 住宅跡 環濠 約 120 m 横浜市 大塚遺跡 115棟の竪穴式住宅

環濠集落の立地条件 湿気を避けた乾燥した場所 日当りの良い高い丘の上 排水性が良い土の上 ・周囲に溝である濠を巡らせる  およそ120m×170m

竪穴式住居の遺跡の例 地面から80cmほど掘り下げて 柱の根本を地中に埋める(掘立柱)

竪穴式住宅の軸組構造 柱に桁を取り付け梁をかけて, 垂木を放射状に架け 縄などで固定 棟木を3本材で支える 棟木 垂木 桁 梁 むねぎ たるき 棟木 垂木 けた 桁 梁 柱に桁を取り付け梁をかけて, 縄などで固定 垂木を放射状に架け 棟木を3本材で支える

竪穴式住宅の特徴 ① 約 80cm 掘り下げて柱を地中に埋める ② 丸太で柱と桁や梁を組み縄で固定 ③ 垂木を放射状に掛け,藁や茅を葺く ④ 炉やカマドが中央やや奥にある ⑤ 床は土間で,寝間には板や藁を敷く

高床式住宅の構造 梁に柱のほぞ を挿す頭貫 柱に梁のほぞ を挿す貫構造 4世紀頃

奈良時代の貴族の住宅の例 長屋王(684~729)邸の復元模型

母屋と庇 母屋の外周部に 1間(1.82 m)幅の 庇(広縁)を造る 母屋の梁間を2間 (3.64 m)にすれば 桁行は拡張が可能 も や ひさし 母屋と庇 母屋の外周部に 1間(1.82 m)幅の 庇(広縁)を造る 1.82 m 3.64 m 1.82 m 梁間 母屋の梁間を2間 (3.64 m)にすれば 桁行は拡張が可能 桁行

寝殿造の特徴 ① 礎石の上に掘立ての丸い柱 ② 板敷きの床で,人が座る場所に畳 ③ 屋根裏には天井を張らない ④ 開放的な大空間 →多目的に利用 ⑤ 南側に庭園を造り広縁と一体化

書院造の例 角柱 天井 なげし 長押 ちがいだな 違棚 つけしょいん 付書院 畳 1500年頃 銀閣寺の東求堂の同仁斎

書院造の特徴 ① 柱は正方形(角柱),梁は長方形 ② 畳敷きの床(間取りの基準化) ③ 水平な板で天井を張る ④ 襖や引違戸で部屋を仕切る ② 畳敷きの床(間取りの基準化)  ③ 水平な板で天井を張る ④ 襖や引違戸で部屋を仕切る ⑤ 床の間に付書院と違棚

江戸初期の農家造の住宅例 大黒柱

農家造の構造と平面 住宅の中央に 大黒柱等を設ける 変形田の字型平面 小黒柱 大黒柱 田の字型平面

農家造の特徴 ① 屋根が茅葺や板葺が多い ② 東側に土間があり,厩(うまや)を兼ねる ③ 田の字型の平面で,西端には床がある ④ 南側には縁側があり,北側にはない ⑤ 土間の北側に流しやかまどがある

明治中期の都会の賃貸住宅 1890年(明治23年)建築 約130㎡ 夏目漱石の借家 ・瓦葺きの寄棟屋根 ・土間がなくなる ・座敷が南で茶の間は北 ・台所は玄関に近い

明治の都市住宅の特徴 ① 屋根が瓦葺き ② 南側に縁側と客間がある ③ 2階は狭く,子供部屋などに利用 ④ 台所が玄関に近い ← 水道の未発達 ⑤ 便所が離れた場所にある ←汲取り式

大正の洋風住宅 北米の2×4の 壁式住宅を輸入

大正の住宅改善運動 ① 洋間としてイス座とする ② 家族の生活を最優先とする ③ 実用的な設備を導入する ④ 実用的な家具とする ⑤ 田園都市や共同住宅を奨励する

電灯とガスの普及率 電灯の 普及 薪から プロパンガスへ ガス炊飯釜 の特許 ガス焚き 風呂釜の販売 関東大震災

ガスや水道の普及で台所は変化 薪からプロパンガスへ 井戸から水道へ

汲取式から水洗式便所へ 臭気が入るため 屋外に設置 S字トラップの発明

中廊下型住宅の例 昭和初期 西側に玄関,南面に縁側と座敷と茶の間

中廊下型住宅の特徴 ① 南側に居間と広縁などを配置する ② 他の部屋を通らずに移動できる ③ 応接として洋間を設ける ④ 台所・風呂・便所などを北側にする

平成からの木造軸組住宅 ① 床下の湿気防止:柱脚や土台の腐朽防止 ② 屋根の軽量化 → 軽量瓦や化粧スレート等 ② 屋根の軽量化 → 軽量瓦や化粧スレート等 ③ 木材の加工は,プレカット工場で機械化 ④ 接合部の金物補強 ⑤ 耐震基準の強化 → 4分割法で確認 ⑥ 施工性の向上 → 2階床の根太をなくす ⑦ 四隅通し柱から全て管柱へ

べた基礎 アンカーボルト

化粧スレート葺き屋根

プレカットによる接合部の加工 大入れ蟻掛け 柱のほぞ穴 羽子板ボルト 用の穴

2階の根太レス床と梁の接合部 羽子板ボルト

管柱と梁 梁(集成材) 柱頭のほぞ

内壁と天井の石膏ボード (2階) 内壁:t=12mm     不燃材料 天井:t=9.5mm   準不燃材料