I:線吸収 2006年12月11日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一

Slides:



Advertisements
Similar presentations
大学院物理システム工学専攻 2004 年度 固体材料物性第 8 回 -光と磁気の現象論 (3) - 佐藤勝昭ナノ未来科学研究拠点.
Advertisements

宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
E:ダスト光学  E:ダスト光学.
電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
2.2.1 Transport along a ray The radiation transport equation
較正用軟X線発生装置のX線強度変化とスペクトル変化
天体物理学 I : 授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。
天体物理学 I : 授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2013年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
平成25年度 東京工業大学 大学院基礎物理学専攻
第9回 星間物質その2(星間塵) 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
D: 色等級図 2006年10月30日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
平成25年度 東京工業大学 大学院基礎物理学専攻
F:天体ダスト 単位名 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一 12月8日は休講です。 授業の内容は下のHPに掲載される。
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
第2課 黒体輻射とカラー 2.1. 黒体輻射の式 熱平衡にある振動数νの輻射を考える。 フォトンの個数は常に揺らいでいる
第4回 放射輸送の基礎 東京大学教養学部前期課程 2015年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
電磁気学C Electromagnetics C 7/13講義分 電磁波の電気双極子放射 山田 博仁.
第4回 放射輸送の基礎 東京大学教養学部前期課程 2014年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。 授業計画は、
授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。 授業計画は、
天体物理学 I : 授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。
天体物理学 I : 授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。 授業計画は、
第11課 ダストの光学 講義のファイルは 平成17年 1月 17日
黒体輻射とプランクの輻射式 1. プランクの輻射式  2. エネルギー量子 プランクの定数(作用量子)h 3. 光量子 4. 固体の比熱.
前期量子論 1.電子の理解 電子の電荷、比電荷の測定 2.原子模型 長岡モデルとラザフォードの実験 3.ボーアの理論 量子化条件と対応原理
マイケルソン・モーレーの実験の検証 マイケルソン・モーレーの実験ではもう一つの往復光を垂直方向に分けて行った。
正規分布確率密度関数.
大学院物理システム工学専攻2004年度 固体材料物性第7回 -光と磁気の現象論(2)-
ミンコフスキー時空間 双曲筒 s2= x2+y2ーc2t2 双曲皿 s2= c2t2+y2ーx2 世界円筒 静止 s2 =x2+y2
電磁気学C Electromagnetics C 5/28講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
第8課 エディントン近似 平成17年12月12日 エディントン近似 Eddington Approximation
黒体輻射 1. 黒体輻射 2. StefanのT4法則、 Wienの変位測 3. Rayleigh-Jeansの式
第9課: 恒星のスペクトル 2005年12月19日 授業の内容は下のHPに掲載されます。
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/30講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
J: 連続吸収 2006年12月18日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
第12課 星間ダスト 平成17年 1月 24日 講義のファイルは
4次元時空間(複素数)と ミンコフスキー時空間(実数)の差異
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
実習課題B 金属欠乏星の視線速度・組成の推定
B: 黒体輻射 2006年10月16日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/4講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
電磁気学C Electromagnetics C 5/29講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
パイプ風鈴の振動理論 どの様な振動をしているか。周波数は何で決まるか。 (結論) ・振動数は棒の長さLの二乗に反比例する。
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第5回 -磁気光学効果の電子論(1):古典電子論-
第9課:吸収係数 平成16年1月19日 講義のファイルは
第4課 輻射の方程式 I 平成16年11月1日 講義のファイルは、
I:銀河系 単位名 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一 授業の内容は下のHPに掲載される。
1:Weak lensing 2:shear 3:高次展開 4:利点 5:問題点
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
K: 恒星スペクトル 2007年1月22日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
第5課 輻射の方程式 II 平成16年11月8日 講義のファイルは
F: エディントン近似 2006年11月13日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一
2・1・2水素のスペクトル線 ボーアの振動数条件の導入 ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列.
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 学生番号 B02-014 伊藤 誠
ここでは、歪エネルギーを考察することにより、エネルギー原理を理解する。
電磁気学C Electromagnetics C 7/10講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/7講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
Presentation transcript:

I:線吸収 2006年12月11日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一 教官名     中田 好一 授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。 成績は「レポート+出欠」でつけます。 レポート出題は今日が最終回です。 授業の内容は下のHPに掲載されます。 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html 休講:1月15日、1月29日 I: 線吸収

I.1.古典的双極子による吸収 固有振動数νoの双極子モーメント p=‐qz が密度Nで散らばる媒質を考える。 この媒質の誘電率をεとすると、 εE=E + 4πNp=(1 + 4πNα)E である。 この媒質を振動数νの電磁波Eが伝わる時、電磁波に起こる変化を求めよう。 入射電磁は真空中 (屈折率m=1)で   E=Eo exp[ 2πi(νt – kx)]  媒質(屈折率 m=n-iκ)中で   E=Eo exp[ 2πi(νt – mkx)] = Eo exp[2πi(νt – nkx+iκkx)] p p p 電荷qの運動は、    γ=g/m, (2πνo) 2=K/m, と置き、 I: 線吸収

-q z q z=A exp(i2πνt)とおいて、(-(2πν)2+i2πγν+(2πν0) 2 ) A= -(qEo/m) 双極子モーメントp=-qzは 従って、p=αE, (α=感受率 susceptibility) とおくと、 I: 線吸収

次に、双極子モーメントpが密度Nで存在する媒質の誘電率εを求める。  εE=E + 4πNp=(1 + 4πNα)E ε=誘電率(dielectric constant) 複素屈折率   m=n-iκ   複素誘電率      ε=m2=(n-iκ)2   ( refractivity)            (dielectric constant)  星間空間では、誘電率ε=1+Δεとすると、Δε<<1である。 したがって、m=1+(Δε/2)と近似できる。 mを実部と虚部に分けて、 I: 線吸収

上ではν=ν0付近のみを考えて、(νo 2 –ν2)=2ν0(νo –ν)と近似している。 真空中(m=1)で E=E0exp[ 2πi(νt – kx)] の電磁波が 屈折率 m=nー iκ の空間に入ると、 E=E0exp[ 2πi(νt –mkx)]= E0exp[ -2πκkx)]exp[ 2πi(νt –nkx)] となる。これは減衰する電磁波を表している I: 線吸収

E=Eo・exp(-2πκkx)・ exp[ 2πi(νt – nkx)] (Nq2/mνoγ) 媒体の 複素屈折率 m=n-iκ κ 0 n-1 -2(γ/4π) 0 2(γ/4π) (νo –ν) E=Eo・exp(-2πκkx)・ exp[ 2πi(νt – nkx)] E=Eo exp[ 2πi(νt – ikx)] |E|2=Eo2 |E|2=Eo2exp( -4πκkx) X I: 線吸収

S D σ(ν)=双極子1個の吸収断面積 、 N=双極子の数密度とすると、 |E|2=Eo2 exp( -Nσ x) である。 前ページの|E|2=Eo2exp( -4πκkx) と比べると、 4πκ(ν)k(ν)=4πκ(ν)(ν/c)=Nσ(ν) [復習] κとσの関係 σ=吸収断面積( m2 )n=粒子数密度 (m-3) N=nSD= S×Dの筒内粒子数 透かして見ると、Sの内不透明部分の面積X=Nσ = nSDσ 入射光線F=ISが距離Dを通過する間にX/Sが失われるから、 dI=-I(X/S)=-I(nSDσ) /S= -I nσD=-IκD S D I: 線吸収

I.2.振動子強度 (Oscillator Strength、f-value) σ(ν)=(q2/mc) (4π/γ) / {1+[(νo –ν)/(γ/4π)] 2} の双極子が数密度nで 分布する媒質を考える。厚みLの媒質を通過した光は、   I´(λ)=I(λ)exp(-nLσ(ν))   I´(λ) L I(λ) I(λ)-I´(λ)=I(λ)[1-exp(-nLσ(ν))] 弱吸収では、 [I(λ)-I´(λ)] / I(λ) = nLσ(ν) Fc 等値巾 (Equivalent Width)  W=∫ [I(λ)-I´(λ)] / I(λ) dλ 弱い吸収では上式より、    W= ∫nLσ(ν)dλ     =nL∫σ(ν)dλ  Fλ Wλ F=0 λ I: 線吸収

吸収断面積σ(ν) 吸収断面積の積分からはγが消える (q2/mc)(4π/γ) 積分値= (πq2/mc) γ/2π はγに依らない。 σ a o-2 γ /4 o- o o+ o+2 3 f[2mc 2 /(h ] ∫σ )d = α fc/ λ c =( q /mc)f νo-2γ/4π νo-γ/4π νo νo+γ/4π νo+2γ/4π 吸収断面積σ(ν) (q2/mc)(4π/γ) 積分値= (πq2/mc) はγに依らない。 γ/2π I: 線吸収

結局、等値巾Wは吸収が弱い近似で計算すると、 で、どの吸収線も強度は一定となる。しかし、実際には吸収線毎にその強度は様々な値を取る。古典的電気双極子モデルではこの違いを説明できなかった。 量子力学によって電気双極子の吸収を計算すると、古典電磁気学が与えた吸収断面積に f という係数をかければよいことが分かる。 したがって、量子力学的双極子による吸収断面積は f=oscillator strength またはf-値( f-value) 。 また、等値巾Wは I: 線吸収

概算の場合は、吸収線ピークの吸収断面積は線幅Dを使って、 σp=(πq2/mc) (λ2/c) f/D=2.654・10-2(cm2sec-1)f・(λ2/Dc) Hα: λ=0.65μ=0.6563・10-4cm D=0.0001μ=10-8cm c=2.998・1010cm/sec f=0.6407   を代入すると、 Hβ: λ=0.4861μ=0.4861・10-4cm D=0.0001μ=10-8cm c=2.998・1010cm/sec f=0.1193   を代入すると、 I: 線吸収

振動子強度の例 例1:Lα線 selection rules g=4 g=2  振動子強度の例 例1:Lα線 n=2 l=1 S=1/2 L=1 n=2 l=0 S=1/2 L=0 n=1 l=0 S=1/2 L=0 2P3/2 2P1/2 2S1/2 g=2 g=4 g (1s2S1/2) f(1s2S1/22p2P1/2)=0.2774, f(1s2S1/22p2P1/2) =0.1387 g (1s2S1/2) f(1s2S1/22p2P3/2)=0.5547, f(1s2S1/22p2P3/2) =0.2774 g (n=1) f(n=1n=2)=0.2774+0.5547=0.8321, f(n=1n=2) =0.4161 selection rules Δl=±1 ΔS=0、ΔL=0、±1、  ΔJ=0、±1   (J=0J=0、 L=0L=0を除く) I: 線吸収

例2:Hα レベル間遷移(ライン)のf-値 3d2D5/2 3d2D3/2 3p2P3/2 3p2P1/2 3s2S1/2 2p2P3/2 g=6 g=4 g=2 2p2P3/2 2p2P1/2 2s2S1/2 g=4 g=2 レベル間遷移(ライン)のf-値 ターム間遷移(マルチプレット)のf-値 transition gLfLU gL fLU 2s2S1/23p2P1/2 0.5796 2 0.2898 2s2S1/23p2P3/2 1.1592 2 0.5796 2p2P1/23s2S1/2 0.05434 2 0.02717 2p2P3/23s2S1/2 0.10468 4 0.02717 2p2P1/23d2D3/2 2.782 2 1.391 2p2P3/23d2D3/2 0.5564 4 0.1392 2p2P3/23d2D5/2 5.008 4 1.252 transition gLfLU gL fLU 2s3p 0.8694 2 0.4347 2p3s 0.08151 6 0.01358 2p3d 4.6732 6 0.6955 Hα線のf-値 23 5.1241 8 0.6405 I: 線吸収

I.3. Voigt Profile v=V 速度Vで動いている原子に、静止系で振動数νの光が当たる。原子は光の振動をνDと見る。 ν (νD-ν)/ν= V/c ドップラーシフト νD=ν+(V/c)ν=ν+D 静止している原子の吸収断面積は、 速度分布 f(V) で動く原子の 平均吸収断面積σT(ν)は ? 1.速度Vの原子の吸収断面積 σV(ν)=σ(νD)   ここで、Vは光と同じ方向の速度成分であることに注意。 I: 線吸収

2.速度分布 f(V)、∫f(V)dV=1で規格化、 の原子の平均吸収断面積は   σT(ν)=∫σV(ν)f(V)dV=∫σ(νD)f(V)dV   で与えられる。 D=(V/c)ν なので、 ただし、 I: 線吸収

3.σT(ν)=∫σ(νD)f(V)dV をDの積分で表示すると、 3.σT(ν)=∫σ(νD)f(V)dV をDの積分で表示すると、 4.νDで規格化する。 I: 線吸収

σT(ν) νD=熱運動に よるドップラー巾 = Voigt function ∫V(u,a)du=1 =中心周波数との差 =吸収線自然巾    よるドップラー巾 = Voigt function ∫V(u,a)du=1 =中心周波数との差 =ドップラーシフト =吸収線自然巾 熱運動をする気体原子の平均吸収断面積σT(ν) σT(ν) ドップラー     核 ローレンツ    ウィング a=0 a=0.03 ν I: 線吸収

(1)a<<1の場合 (自然巾<<熱運動の巾、大抵の吸収線では成立) Voigt関数の性質 (1)a<<1の場合 (自然巾<<熱運動の巾、大抵の吸収線では成立) H or G (2) 1/(aπ) 2a x ‐u I: 線吸収

(3) H(u=0) << G(x=-u) 、 大体 u<≒1、 の領域では 原子の熱運動によるドップラーシフトが支配的でガウス型のプロファイルとなる。吸収線の中央部分なので、ドップラーコアとも呼ばれる。 (4) H(u=0) >> G(x=-u) 、大体 1<<u、の領域では 吸収線中心から離れるとドップラーシフトの影響が弱くなり、静止原子のローレンツ型プロファイルが再び出現する。 I: 線吸収

I.4. 線形大気での吸収線形成 吸収線形成を簡単なモデルで考えるために、次のような沢山の仮定をする。 (1) 局所平衡(LTE) (1) 局所平衡(LTE)     Sλ(τR)=Bλ[T(τR)]          (τR=ロスランド光学深さ) (2) エディントンモデル     T(τR)4=(3/4)Te4 ( τR+2/3)    (3) 線形大気     Sλ(τR)=Aλ+ Bλ・τλ  生憎、(1)と(3)は厳密には両立しない。そこで、(1)をτR=0のまわりで一次式で展開して近似的に(3)と考える。 I: 線吸収

線形大気S(τ)=A+Bτの大気表面からのフラックスは F=π[A+B・(2/3)]=πS(τ=2/3)である。したがって、 したがって、(3)において、 と見なせば、(3)を(1)と両立させうる。 線形大気S(τ)=A+Bτの大気表面からのフラックスは F=π[A+B・(2/3)]=πS(τ=2/3)である。したがって、 または、 この式から分かるように、Fλ=α+(β/τλ)の形をしていて、 τλが大きい所ではFλが小さくなる。これが、吸収係数が大きい波長で吸収線が現れる原因である。 I: 線吸収

浅いので温度が低く、フラックスが小さい。 もう少し物理的に考えると。 吸収係数が次の図のように、λ=λLで盛り上がっているとする。  λLでは吸収が強いので、浅いところでτL=2/3に達する。浅いためにそこの温度は低い。 κλ 浅いので温度が低く、フラックスが小さい。 深いので温度が高く、フラックスが大きい。 λL τR= 0.0  0.2 0.4 0.6 0.8 大気表面 τλ=2/3 λ I: 線吸収

吸収係数と吸収スペクトルの関係をもう少し調べてみよう。 λ= λLの付近で、κ= κC+κLとする。 κ(λ) κC λ λL に注意して、前々頁のFの式を書き直すと、 I: 線吸収

前頁の式を検討すると、まず、下から2行目に出てくる はλL付近での連続スペクトルとなっていることがわかる。 連続スペクトルの強さは、 κCとκRの強さの比で決まる。    κR< κC  Fo<Fe=πB(Te)    κR> κC  Fo>Fe=πB(Te) 次に下から2行目の最後の項 は、吸収線を表す。吸収が弱い(κL<κC)場合、吸収の深さがκLに比例することがわかる。 最後の行の I: 線吸収

は吸収が強い場合には、大気の表面(T=To)しか見通せないことを示している。 図示すると以下のようである。 弱いライン 大気表面T=To ライン波長で見通せる深さ 連続光波長で見通せる深さ 有効温度T=Teの深さ I: 線吸収

ピュアな吸収の場合、強い吸収の極限はT=Toの大気表面からの輻射がスペクトルの底になる。 強いライン 大気表面(T=To) ≒ ライン波長で見通せる深さ 連続光波長で見通せる深さ 有効温度T=Teの深さ ピュアな吸収の場合、強い吸収の極限はT=Toの大気表面からの輻射がスペクトルの底になる。 I: 線吸収

) ) 吸収線の強度につれての形の変化 Fc(λ) F(λ) Fo(λ) λ κLと共に深くなる κLが非常に強いと吸収線の底が飽和する I: 線吸収

I.5.等値巾 W (Equivalent Width) 吸収線の近くのみを考え、連続吸収の強度κC=一定、吸収線では κλ=κC+κLとする。 Fλ=πBλ[T(τλ=2/3)] であるが、 τλ=(2/3)の深さは連続光ではτC=(2/3)(κC/κλ) < 2/3 に対応する。 弱い吸収ではκL<<κC なので、 展開して、 I: 線吸収

線輪郭(line profile) Fλ 等値巾 Wλ=∫Rλdλ Rλ Wλ Rλ 1 1 0 λ λ I: 線吸収

弱いライン: ドップラーコア: =光球(τC=2/3)までの原子数 マクスウェル速度分布: dN=(N/ Vo π1/ 2)・exp[-(V/Vo)2]・dV               ここに、Vo = (2kT/μmH)1/2    V ーー> λ=λo (1+V/c) = λo +D ドップラーシフト分布: dN= (N/λDπ1/ 2)・exp[- (λ-λo)2/ λD2]・dD                ここに、λD= λo・Vo /c   I: 線吸収

R(λ1) =Dとなるλ1より内側ではR=Dで飽和する。 Fλ /FC 1 D Bλ(τC=0) ――――― Bλ(τC=2/3) λo λ1 λ I: 線吸収

R(λ1) =Dとなるλ1より内側ではR=Dで飽和する。 Fλ /FC 1 D Bλ(τC=0) ――――― Bλ(τC=2/3) この時期はドプラーコアの吸収のみ で、吸収量Wの増加は小さい。 λo λ1 λ I: 線吸収

非常に強いラインでは、ドップラーコアは完全につぶれてしまい、ウイング 部分が飽和するようになる。ウィングの形はローレンツ型。  ローレンツウィング (Ro>>1) 非常に強いラインでは、ドップラーコアは完全につぶれてしまい、ウイング 部分が飽和するようになる。ウィングの形はローレンツ型。 Fλ /FC 1 D Bλ(τC=0) ――――― Bλ(τC=2/3) λo λ1 λ I: 線吸収

I.6.成長曲線 (Curve of Growth) I.6.成長曲線 (Curve of Growth) 弱いライン I: 線吸収

ドップラーコア ローレンツウィング I: 線吸収

弱ライン、ドップラーコア飽和、ウィング飽和に対するlog(W/DλD )の近似値 (δ/λD=0.1、0.01 )    (δ/λD=0.1、0.01 ) log (X0 /D) log(π1/2 X0 /D) log{2[ ln (X0 /D)] 1/ 2 } log{2(Λ/λD) (X0 /D)1/2 }  -2.0   -1.75  -1.0   -0.75 δ/λD  -0.5   -1.25 0.1 0.01   0.0     0.25 -0.70   0.5 0.75 0.33 -0.45   1.0 1.25 0.48  -0.20   1.5 0.57   0.05   2.0 0.63   0.30   3.0 0.72   0.80 -0.20   3.5    1.05   4.0     0.78     1.30   0.30    5.0    0.83    1.80 I: 線吸収

成長曲線(Λ/λD=0.1 ) 2 Log(W/DλD) 1 -1 -2 -2 -1 0 1 2 3 4 5 log X0/D I: 線吸収

レポート問題 I 出題12月11日 提出12月18日 レポートには、問題番号、学生証番号、学科、学年、氏名を書くこと。 レポート問題 I     出題12月11日    提出12月18日         レポートには、問題番号、学生証番号、学科、学年、氏名を書くこと。 星間ガスは低温なので、可視域ではその放射を無視できる。したがって、星間ガスによる恒星の光の吸収に対する吸収は、I=Io exp(-τ)で表される。 吸収原子のコラム数密度=Nとすると、τ (λ)=Nσ(λ)である。 また、Λ/λD=0.1とする。 授業では温度勾配のある恒星大気での吸収線の成長曲線を扱った。星間空間での 吸収に対する成長曲線を以下の順で考えよ。 1) 吸収が弱いときの等値巾Wを求めよ。 2) Nが増加して、吸収が強くなったときのWの近似式を授業にならって求めよ。 3) この吸収の成長曲線を求め、グラフにせよ。Xoとしてはどんな式が適当か? I: 線吸収