言語学の基礎 ④ 教科書 pp. 40−52
クイズ 世界の言語について述べた次の文のうち,正しいものはどれか。 (a) 発展途上国より先進国の言語の方が複雑である。 (b) 言語は絶えず進化している。 (c) 昔の言語の方が完全な体系を持っていた。 (d) どんな言語も同じように複雑である。 (d)
今日の内容 比較言語について Cf. 対照言語学 言語類型論について
比較言語学の誕生 言語の類似性を説明するための,言語の共通の源をもとめる 19世紀以降に盛んになる イギリス人のウィリアム・ジョーンズ (William Jones, 1746-1794) サンスクリット語と西洋の言語の共通点(P.38-9) 各言語の類似性は,偶然ではなく,共通の源から生じたとする仮説を唱える
インド・ヨーロッパ祖語 (Proto-Indo-European) 比較言語学の誕生 比較言語学の発展 インドからヨーロッパの諸言語は1つの言語が源になっていることが分かる ☟ インド・ヨーロッパ祖語 (Proto-Indo-European) ヤーコプ・グリム(1785-1863) 「グリムの法則」(Grimm’s Law) [p.39] カール・ヴェルネル(1846-1896) 「ヴェルネルの法則」(Verner’s Law)
言語の再建 確認しておくべき用語 同系統の言語を比較し、共通の源にあたる言語を再現することを ------- とい う。 ⇒ 再建(reconstruction) この共通の言語を -------- という。 ⇒ 祖語(parent language) そこから派生した言語どうしを ------- という。 ⇒ 姉妹言語(sister language) *cf. 教科書 p.41
世界の語族 日本語はどのような言語でしょうか? *後から出てくる,孤立語との混同に注意 歴史的、構造的な関係が不明 どの語族にも組み入れられていない このような言語を ------- という。 ⇒ 孤立言語 (language isolate/isolated language/isolate) *後から出てくる,孤立語との混同に注意
対照言語学 もともと違った言語を比較し,それらの言語の異同を歴史的発達を 含め理解する。 外国語習得の理解を深める方法として発達 例)日本語を母語とする者が,英語を学習する場合に障害となる二言語間 の相違を明らかにする 語順 発音 語彙
類型論 複数言語を統語・音韻・文字などを基準に類型化することにより,言 語体系を整理し追求することを目標とする 複数言語を扱い,そこから言語体系を理解しようとする点が,対照 言語学との違いである。
類型論 言語間に共通の_____を求める領域 どのように言語的特徴を分析するのか? ⇒ 言語普遍性(linguistics university) どのように言語的特徴を分析するのか? ① 形態的特徴による分類 ② 語順による類型 ③ 対格言語と能格言語
形態的特徴による分類 アウグスト・シュレーゲル(1767-1845)の分類 言語学者は3つのカテゴリを認定した: ① 孤立語(isolating language) または,分析的言語(analytical language) ② 膠着語(agglutinative language) ③ 屈折語(inflectional language) または,融合語(fusional language)
孤立語 語の変化がない 動詞が時制・人称・数を表す為に屈折しない 名詞にも数の変化がない しばしば単語が1つの形態素からなる どの語が主語、目的語かは語順が示す 例)中国語、ヴェトナム語、サモア語 英語ではよく見受けられる Will you please let the dog out now?
膠着語 「にわかで接着する」というラテン語から 接辞により1つの語または文を形成する 例)トルコ語やスワヒリ語、ハンガリー語 単語が形態素に分けられる 英語も限られた範囲でこの特徴が観察される Lov-ing-ly (愛をこめて) faith-ful-ness (誠実さ) 例)トルコ語やスワヒリ語、ハンガリー語 日本語は膠着語である 内容語(自立語)に機能語(付属語)をつけることで文法的働きを示す 内容語=名詞・動詞・形容詞・副詞 機能語=助詞・助動詞
屈折語 語自体が語形変化を起こす 語形変化によって名詞の性・数・人称が示される ラテン語、ギリシャ語、アラビア語 意味ごとに要素を分離するのは難しい 語形変化によって名詞の性・数・人称が示される ラテン語、ギリシャ語、アラビア語 英語でも,時折現れる went = go + 過去形
その他の分類・議論 膠着語と屈折語の特徴をもつ言語を多総合的言語(polysynthetic language)や抱合言語(incorporating language)と呼ぶ 過去、言語の発達は以下の段階があると信じられていた(ギリシャ 語・ラテン語が最高で最善の言語という考え方): 第一段階 ⇒ 孤立語 第二段階 ⇒ 膠着語 第三段階 ⇒ 屈折語
その他の分類・議論 以上の分類の欠点はなんだろうか? 純粋な形態論的類型だけからなる言語は存在しない 多くの言語は混ざり合った形態論的課程がある 近年、言語学者が言語をさまざまな類型にわけるのには、別の基準を使っ ている
クイズ 日本語について述べた次の文のうち,不適切なものはどれか。 (a) 日本語は膠着語である。 (b) 祖先が同じ言語が見つからない。 (c) 語順が自由に変えられる。 (d) 語彙の半数以上が外国語に由来する。 正解(c) (d)語彙の半数は中国から入った漢語
クイズ 言語の類型的な分類について述べた次の文のうち、不適切なもの はどれか。 (a) 2つの類型に属する言語がある。 (b) 屈折語は言語としても最も進化している。 (c) 動詞が文頭にくる言語がある。 (d) 語順が自由な言語がある。 (b)