日本の高校に於ける英語の授業は 英語で行うのがベストか

Slides:



Advertisements
Similar presentations
全脳アーキテクチャ解明ロー ドマップ 産業技術総合研究所 一杉裕志. 大脳皮質 モデル 大脳皮質モデルを中心とした ロードマップ xx 応用: パターン認識 ロボット制御単純労働様々な労働支援高度な言語処理 時間 到達 目標: 要素 技術: 皮質・基底核連携モデル.
Advertisements

高次脳機能障害について 藤本大樹. 目次 1 .高次脳機能障害とは 1-1 .高次の活動・低次の活動 1-2 .高次脳機能障害の主な症状 .記憶障害 .注意障害 .持続性注意障害 .容量性注意障害 .選択性注意障害
キー・コンピテンシーと生きる 力 キー・コンピテンシー – 社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力 – 自律的に行動する力 – 社会的に異質な集団で交流する力 生きる力 – 基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと, 自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え, 主体的に判断 し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力.
第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
中学校 高校 小学校 「言語活動の充実」を意識した授業につ いて (対象者:小学校 178 名、中学校 68 名、高校 30 名の国語指導者、計 276 名) 児童・生徒、指導者の意識調査の結果 (単位 % ) 平成 21.
日本の高校における英語の授業は 英語でがベストか? A13LA161 文学部2年 米山里香子 英語で授業を行うべきではない.
観点別評価について 北海道滝川西高等学校 英語科. なぜ観点別評価なのか Active Learning 生徒の言語活動主体の授業 多様な生徒が輝ける授業 4技能を育成する授業 観点別評価 Can Do List の活用.
学習指導での ICT 活用 柏市立中原小学校 西田 光昭 教育の情報化に関する手引き【概要】
教授学的状況理論による 日豪数学科授業の比較分析 の試み
平成21年度小学校外国語活動中核教員研修 小学校外国語活動基本理念 ~新学習指導要領等について~
平成19年度長崎県国語力向上プラン地区別研修会
言語教育論演習プレゼン課題 A11LA042 鴨井みのり
CFAレベル1準備コースの特徴 CFAレベル1を受験する際に、会計、ファイナンス、統計などの基礎知識があることを望ましいといわれています。CFAレベル1受験勉強と同時にこれらの科目を独学での勉強することはできますが、本コースで効率的に勉強することができます。本コースでは、会計の基礎及びレベル1の会計問題を解く際の基礎知識を1日で学習します。また、本コースでは、Input、Comprehension、
mukogawa-u.ac.jp/~kitaguti/
表6-1 単元計画の例「明かりをつけよう」 次 学習活動 教師の支援・留意点 第1次 2時間 豆電球に明かりをつけよう
英語学習についての信念 ―現職教員研修のための基礎研究
日本の高校における英語の授業は 英語で行うのがベストか? 日本語の介在の意義
意見・考えを問う授業における インタラクションの特徴
府内の小・中学校に普及 使える英語プロジェクト事業費 「習得」中心の授業
日本語教育における 発音指導の到達目標を考える
教育心理学 学習と認知プロセス 伊藤 崇 北海道大学大学院教育学研究院.
柏市立中原小学校 西田 光昭 教育におけるタブレット活用の             課題と展望 柏市立中原小学校 西田  光昭
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
日本の高校において 英語の授業は英語で行うのがベストか?
言語教育論演習 発表課題 「日本の高校における英語の授業は 英語で行うのがベストか」 A13la111 原健太.
明示的知識とコミュニケーション能力: 文法指導の意義と位置づけに関する提案
日本の高校における英語の授業は英語でがベストか?
日本語統語論:構造構築と意味 No.1 統語論とは
日本の高校における英語の授業を 英語で行うべきか
通訳の原理 理解→転換→表出のプロセスについて.
注意と眼球運動.
どこで、何を使って?(準備物と場の設定)
2011年6月24日(金) 於 名桜大学言語学習センター 国際学群 伊藤孝行
軽度発達障害の理解 中枢神経系における脳の機能障害である。 → 脳の発達の遅れ
基礎看護の授業を通して思考力,判断力,表現力,技能を育成する指導方法の工夫改善についての研究
自由席にしています。 資料のある席へお座りください.
大切にしたいこと(実践編) 小学校外国語活動で 岐阜県教育委員会 学校支援課
英語絵本と読み聞かせ -読み聞かせ体験の有効性-
スピーキングタスクの繰り返しの効果 ―タスクの実施間隔の影響―
カナダ語学研修2013/8/6~2013/9/1 先進繊維工学課程3年 宮下大.
ソフトウェア情報学総論 基盤ソフトウェア学講座
広瀬啓吉 研究室 4.音声認識における適応手法の開発 1.劣条件下での複数音源分離 5.音声認識のための韻律的特徴の利用
高校における英語の授業は英語でがベストか
二重課題による ワーキングメモリの増減  情報システム工学科3年 038 田中 祐史.
 小学校外国語活動で    大切にしたいこと(指導の重点編) 岐阜県教育委員会 学校支援課.
深層学習を用いた音声認識システム 工学部 電気電子工学科 白井研究室 T213069 林健吉.
演習1 英語ノートを使った          ICTによる授業.
日本の高校において、 英語の授業を英語で行うべきか?
「日本語教育 プログラム論」の提案 札野 寛子 (金沢工業大学) 2017年度日本語教育学会春季大会パネルセッション6(早稲田大学)
アルビア・アンドルー JAPN 301S Fall 2012 マリナー・ビスタ小学.
小学部児童が友だちに要求を 受け入れられなかったときに自傷をせず 言葉で伝えることができるための支援
日本の高校における英語の授業は 英語がベストか?
日本の高校における英語の授業は英語でがベストか?
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
歓迎のあいさつ [年度を挿入] 学年度 学校名 教員名 学年 2019/5/5.
国際言語文化研究科日本言語文化専攻 第26回日本語教育学講座講演会
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
福岡県教育センター ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 研修担当の先生へ ※ ※ ※ ※ ※ ※
教育学の授業について 具体的事例から自ら課題を.
IT活用のメリットと活用例 校内研修提示資料.
シカゴ国際体験プログラム in DeKalb
生きる力を育む国語教育 説明的文章の読解を通して 鹿沼市立南摩中学校                 坂井清貴.
Copyright © 2017 Benesse Corporation All Rights Reserved.
図15-1 教師になる人が学ぶべき知識 子どもについての知識 教授方法についての知識 教材内容についての知識.
文脈 テクノロジに関する知識 教科内容に関する知識 教育学 的知識
mi-5. プロダクションシステム 人工知能を演習で学ぶシリーズ(5)
英語音声学 前期・木1・CALL1 担当:福田 薫
1.2 言語処理の諸観点 (1)言語処理の利用分野
平成20・21年度 国立教育政策研究所・教育課程研究センター指定
Presentation transcript:

日本の高校に於ける英語の授業は 英語で行うのがベストか フランス語圏言語文化領域 2年生 溝口 大将 (Hiroyuki Mizoguchi)

「英語を英語で」に対する期待 英語を英語で理解することを促す 音と意味を日本語を介さずにダイレクトに結ぶ 英語を日本語で : Sound → 意味 → Meaning 英語を英語で  : Sound → Meaning

「英語を英語で」に対する懸念 生徒は教師の英語を理解できるのか? 生徒の英語力は教師の使用言語を英語に変更しただけで 伸びるのか?

「英語を英語で」に対する懸念 生徒は教師の英語を理解できるのか? 生徒の英語力は教師の使用言語を英語に変更しただけで 伸びるのか? 脳の観点から考える 生徒の英語力は教師の使用言語を英語に変更しただけで 伸びるのか?

ワーキングメモリー 言語を処理する時に機能する情報処理システム 前頭前野に存在すると考えられる 必要な情報を前もって準備している 前頭前野:計画的な行動の調整を行う 必要な情報を前もって準備している 数秒内に脳内で処理される言語情報を扱える but 容量が限られている

ワーキングメモリーモデル (Baddeley) Central exective 中央実行系 Visuospatial sketch pad 視空間的スケッチパッド Episodic buffer エピソード・バッファ Phonological loop 音韻ループ Visual semantics 視覚的意味 Episodic LTM エピソード長期記憶 Language 言語

ワーキングメモリー 慣れているL1(日本語) 慣れていないL2(英語) 速やかに処理される 理解できる 処理が間に合わない 情報のオーヴァーフロー

ワーキングメモリー 生徒は言語処理に必要な十分な情報を持っていない 言語処理の時間を与える工夫が必要 教師による tuning up ゆっくり話す、ポーズを長く置く、 頻繁に使用する語彙・言い換えを繰り返す ジェスチャーや顔の表情を豊かにする、etc.

「英語を英語で」に対する懸念 生徒は教師の英語を理解できるのか? 生徒の英語力は教師の使用言語を英語に変更しただけで 伸びるのか? 脳の観点から考える 生徒の英語力は教師の使用言語を英語に変更しただけで 伸びるのか?

「英語を英語で」に対する懸念 生徒は教師の英語を理解できるのか? 生徒の英語力は教師の使用言語を英語に変更しただけで 伸びるのか? 脳の観点から考える 生徒の英語力は教師の使用言語を英語に変更しただけで 伸びるのか? 授業形式の観点から考える

Input仮説 と Output仮説 input仮説 (Krashen) output仮説 (Swain) 思考の過程で目標言語を通して考えることで習得に近付く 「英語を英語で」は英語力を高めるための必要条件 先生だけでなく生徒も「英語で」

PPP と TBL Present Practice Produce (PPP) Task-based learning (TBL) 教師が生徒に教え込む 言語形式(正確さ)に焦点が当てられている 分析的処理 Task-based learning (TBL) 生徒自らが英語を使う 意味内容(豊かさ・流暢さ)に焦点が当てられている 全体的処理

「英語を英語で」は可能か 不可能ではないが、全てを英語で行うには限界がある 言語形式(分析的)を扱う場合は日本語で行う 意味内容(全体的)を扱う場合は英語で行う その際、教師は生徒に解りやすい英語を話す 無意識に言葉を使うことを目標にするのであれば、 言葉による説明(input)よりも 練習させる機会(output)を設けるべき

Merci de votre attention Fin Merci de votre attention