統計学の入門講義における 達成動機,自己効力感,およびテスト成績の関連 戸髙徳子・寺尾敦 (青山学院大学社会情報学部)
統計学の入門講義における
達成動機,自己効力感,
およびテスト成績の関連
戸髙 徳子 ・ 寺尾 敦 (青山学院大学社会情報学部)
研究動機と目的 学習への動機づけは学習成績に影響する. Research Question: 達成動機と自己効力感を区別する Research Question: 一般的な達成動機と,特定科目についての自己効力感には,相関があるのか? 達成動機は学習成績と関連するのか? 自己効力感は学習成績と関連するのか? 授業の進行にあわせて,達成動機と自己効力感を繰り返し測定する.
方法 対象:青山学院大学社会情報学部1~3年生69名(「統計入門」受講者) 達成動機尺度を6回測定.7件法. 1年生56名,2年生以上13名 達成動機尺度を6回測定.7件法. 自己充実的達成動機 競争的達成動機 自己効力感尺度を6回測定.7件法. 学習成績として,最終成績の得点を使用.
調査日程 達成動機尺度,自己効力感尺度 最終試験 2011年10月4日 10月18日 11月1日 11月22日 12月13日 2012年1月10日 最終試験 2012年1月24日
項目リスト 達成動機尺度(堀野, 1987; 堀野・森, 1991) いつも何か目標を持っていたい ものごとは他の人よりうまくやりたい 決められた仕事の中でも個性をいかしてやりたい 人と競争することより,人とくらべることができないようなことをして自分を活かしたい 他人と競争して勝つとうれしい ちょっとした工夫をすることが好きだ 人に勝つより,自分なりに一生懸命やることが大事だと思う みんなに喜んでもらえるすばらしいことをしたい 競争相手に負けるのはくやしい 何でも手がけたものは最善をつくしたい どうしても私は人より優れていたいと思う 何か小さなことでも自分にしかできないことをしてみたいと思う
項目リスト 達成動機尺度(堀野, 1987; 堀野・森, 1991) 勉強や仕事を努力するのは,他の人に負けないためだ 結果は気にしないで何かを一生懸命やってみたい 今の社会では,強いものが出世し,勝ち抜くものだ いろいろなことを学んで自分を深めたい 就職する会社は,社会で高く評価されるところを選びたい 成功するということは,地位や名誉を得ることだ 今日一日何をしようかと考えることは楽しい 社会の高い地位をめざすことは重要だと思う 難しいことでも自分なりに努力してやってみようと思う 世に出て成功したいと強く願っている こういうことがしたいなあと考えるとわくわくする 自分の好きなことにうまくなるためには努力する 自己充実的達成動機13項目,競争的達成動機11項目
項目リスト 自己効力感尺度(森, 2004) 他の人と比べると,自分はよくやれると思う 授業のレベルについていけると思う 自分はよい成績をとれると思う 他の人と比べると,自分はよい学習者であると思う 他の人と比べると,自分は授業で学習する内容についてよく知っていると思う 自分は,授業でうまくやれると思う 授業で出された問題や課題を,自分はうまくこなせると思う 自分の学習能力は,他の人に比べて優れていると思う 教えられる内容を,自分は理解できる方だと思う Pintrich & De Groot (1990) を,森(2004)が翻訳
平均値は少しずつ下がるが,大きな下降ではない. 尺度得点の平均値の推移 平均値は少しずつ下がるが,大きな下降ではない.
尺度間相関係数の推移 達成動機の下位尺度間の相関は, 比較的高い 達成動機と自己効力感は別のもの
達成動機は,最終試験と相関がない(あるいは負の相関) 尺度得点と最終試験得点の 相関係数の推移 最終試験と自己効力感に相関が認められる 達成動機は,最終試験と相関がない(あるいは負の相関)
結論 一般的な達成動機と,特定科目についての自己効力感との相関は低い. 達成動機と成績との相関は低い. 自己効力感は,成績と正の相関. 授業初期の自己効力感から,その後の成績をある程度予測可能. 10月4日測定の自己効力感尺度と1月24日実施の最終試験の得点に,比較的高い正の相関関係(.38)
引用文献 堀野緑・森和代 (1991). 抑うつとソーシャルサポートとの関連に介在する達成動機の要因 教育心理学研究, 39, 308-315. 森陽子 (2004). 大学生の自己効力感と英語学習方略の関係 日本教育工学会論文誌, 28(Suppl.), 45-48. Pintrich, P. R., & De Groot, E. V. (1990). Motivational and self-regulated learning components of classroom academic performance. Journal of Educational Psychology, 82, 33-40.