脳卒中患者等を対象とした高い安全性を有する

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脳卒中患者等を対象とした高い安全性を有する 平成23年度 次世代医療機器評価指標作成事業 運動機能回復型ロボット審査WG 第1回会議 (平成23年12月19日, 品川イーストワンタワー21F 中会議室) 脳卒中患者等を対象とした高い安全性を有する 上肢・下肢リハビリテーションシステム 福井工業大学 工学部 機械工学科 古荘純次

3次元上肢リハビリ訓練装置(機能性流体を用いたクラッチ型アクチュエータを使用) EMUL NEDOプロジェクト「身体機能リハビリ支援システム」(1999年度~2003年度)で開発。 セラフィ NEDO「次世代ロボット実用化プロジェクト」,(平成16~17年度)で研究開発。 最終年度に, 兵庫医科大学病院で行った脳卒中片麻痺患者を対象とした臨床評価において、良好な結果。 (森之宮病院においてfNIRSを用いて脳活動を計測しながらの訓練の様子) 愛知万博で実演展 (手関節を含む上肢リハビリ支援6自由度ロボット)                (理学療法の手法をロボットに導入) PLEMO-Pシリーズ(準3次元上肢リハビリ訓練装置)              (機能性流体ブレーキを使用) 準3次元上肢リハビリシステム PLEMO-P-Prototype (ブレーキのみを用いた力覚提示装置) ブレーキのみを用いているので    本質的に安全 把持部は2次元平面内で動くが,作業平面の傾きを変えることができるので準3次元システムと呼んでいる. (日本バーチャルリアリティ学会論文賞受賞)

ブレーキ型, 及びクラッチ型アクチュエータを用いた上肢リハシステムの安全上の利点 PLEMO-P3 ブレーキを用いたシステム (本質的に安全) クラッチ型アクチュエータを用いたシステム (高い安全性を有する) ロータリーエンコーダ 回転角度情報 アーム 印加電場 を制御 制御器 (コンピュータ) 減速器 PLEMO-P3 機能性流体クラッチ  [薬事法]  1.一般  2.管理  3.高度管理 自力運動訓練(ブレーキ等を用いたもの)                 : 「一般」 モーター等を用いたもの : 「管理」 モータ 等 (定速駆動) クラッチを使用することによる 安全上の利点: 速度,運動エネルギ等の機構的制限 出力トルクの機構的制限

把持部に作業面押しつけ力センサ、把持力センサ、把持部回転センサを装備 PLEMO-P1 PLEMO-P3 PLEMO-P5 把持部に作業面押しつけ力センサ、把持力センサ、把持部回転センサを装備 ・ダイレクトドライブ化 ・左麻痺、右麻痺両者    に対応 機能性流体ブレーキを使用 PLEMO-P3の訓練ソフト 空間配置(Spacing) 時間配列(Timing) 力の調節(Grading) リーチング 軌道追跡 バーチャルサンディング ターゲットへ手を移動させる 動くターゲットを追いかける 4

PLEMO-P3の把持部 作業面押付力, 手首回転, 把持力が測定可能

リーチングソフトの特徴 得点が表示されているターゲット球を追従. 得点,時間,軌道誤差を評価 各ターゲット球は4つのパラメータを持つ 概要 得点が表示されているターゲット球を追従. 得点,時間,軌道誤差を評価 特徴 各ターゲット球は4つのパラメータを持つ 1)位置 2) 得点 3) エリア番号 4) 優先度 これらのパラメータは変更可能 各エリアごとの理想軌道との誤差を評価 共同運動パターンの有無に従って訓練中 に警告を出す,または中断できる

※ Stage:Burunnstrom Recovery Stage 計測結果の代表例(ターゲット8) 手関節可動域 テーブル押付力 把持力 –10 5 10 Reaction force / N Stage Ⅲ Stage Ⅳ Stage Ⅴ Normal 10 –20 20 Wrist angle / deg Stage Ⅳ Stage Ⅲ Stage Ⅴ Normal 過剰な力の発生 手関節の掌屈が見られる –10 2 4 Grip force / N Stage Ⅲ Stage Ⅳ Normal Stage Ⅴ 過剰な力の発生 ※ Stage:Burunnstrom Recovery Stage この結果は Stage Ⅲ 重症 脳卒中の麻痺の 症状を客観的に評価可能 Stage Ⅳ Stage Ⅴ Normal 正常 7

PLEMO-Pを用いた臨床評価(平成21年度) 2週間ずつ実施 通常のリハビリ A群 +PLEMO訓練 B群 通常のリハビリ 各期間の改善度を算出 +PLEMO訓練 1 2 3 4 2 - 1 4 - 3  臨床評価開始時の上肢Burunnstrom Stageが、StageⅢ1名、StageⅣ4名、StageⅤ2名、StageⅥ3名の脳卒中片麻痺患者に対して臨床評価を行った。  臨床評価方法としては、2週間の通常のリハビリ訓練にPLEMO-P3を用いた週3回、1回30分の追加訓練を設けた期間と、2週間の通常のリハビリ訓練のみで追加訓練を設けない期間を設定した。  Fugl-Meyer スケールを用いた臨床評価の結果、Fugl-Meyer スケールの上肢(肩/肘/前腕)の運動機能、totalの改善度において、統計的に有意な改善が見られた。 8

上肢リハシステムの評価機としての使用 PLEMO-P3の臨床評価は脳卒中片麻痺患者に 現れる症候を客観的に反映している可能性が高い  症状の重症化に従い、各動作時に発揮される力が強くなる  症状の重症化に従い、滑らかな運動ができない(手関節)  症状の重症化に従い、動作にかかる時間が長くなる  症状の重症化に従い、正常者の平均値から離れていく傾向がある 脳卒中患者の症候  麻痺肢は異常な筋緊張の亢進(痙性)がある  共同運動から逸脱する(分離運動)ことができない  片麻痺患者は目的動作の遂行に過剰な努力を要し、力が入る 今回の実験結果を総括すれば Normalを平均とするのであれば、Reaction Force、Grip Force、Wrist angleともにBr.Stageが重症化するに従い、その平均値から解離していく様子が伺える。Br.Stageは上肢運動の協調性を反映するものとされており、今回の結果はその状況を客観的に反映しているものと考えられる。さらにPLEMOにおける評価から検討すると、Br.Stageが重症化すれば、発揮される力が増大する傾向にあり、この協調性の低下は共同運動による筋緊張の亢進が運動に強い影響を及ぼしているものと考えられる。 つまり、 脳卒中患者に比べ、健常成人は余分な力を入れず、効率的に運動を行っていることがわかる。これに対して脳卒中患者は各動作時に発揮される力が強く、滑らかな運動ができていない。またこれに伴い、脳卒中患者では動作にかかる時間も長くなっている。また、これらのデータは患者の症状が重症化するに従い、正常者の平均値から離れていく傾向を認めている。 これらの特徴は脳卒中片麻痺患者に現れる症候から理解できる。麻痺肢は異常な筋緊張の亢進(痙性)がある。共同運動から逸脱することができない。つまり、片麻痺患者は随意運動が未熟であり、目的をもった運動を行なうことに努力を要するため、余分に力を入れる傾向にある。 これらのことから、本システムを利用した脳卒中片麻痺患者の臨床評価の実用性は高いものであり、これらのデータを患者の回復に関する客観的データとして用いることができると考えられる。 PLEMO-P3の臨床評価は脳卒中片麻痺患者に 現れる症候を客観的に反映している可能性が高い 他のシステムでは患者の客観的・定量的な評価機能は備えていないため, この結果はPLEMO-P3の評価機としての有用性を示唆している

PLEMO-Pシリーズの実用化に向けて 医療現場,老健施設,家庭等で広く用いられるためには,さらなる低コスト化が必要。 JST  A-STEP  FS 起業検証 「安全性の高い低コストかつコンパクトな上肢リハビリ支援システム」 (平成21年度,22年度) プロジェクトリーダー:古荘純次 平成22年度には、加納総合病院、老健施設等でPLEMOシリーズの臨床評価。  医療現場,老健施設,家庭等で広く用いられるためには,さらなる低コスト化が必要。  現在,経済産業省の医療機器関連の大型プロジェクトにおいて,上肢リハシステムの開発を実施中(プロジェクトリーダー:古荘).平成25年度には上市する予定。 PLEMO-X 1次試作機 (経済産業省プロジェクトにおいて, 開発中の上肢リハビリ装置) 10

しかし,システムの安全性に関する 議論があまりない ニューロリハビリテーションのための上肢リハビリシステムとして市販されているものの例. Interactive Motion Technologies, Inc (MIT KrebsのREHAロボット) http://interactive-motion.com/index.htm 株式会社 インターリハ  (芝浦工大&三菱プレシジョン等のロボット) http://www.irc-web.co.jp/ その他,研究例としては,ICORR等のリハビリテーションロボティクス関係の学会で毎年,多数発表されている. しかし,システムの安全性に関する 議論があまりない

2009 International Conference on Rehabilitation Robotics Workshop-1 “Rehabilitation Robotics: Upper Extremity” Organizer: Hermano Igo Krebs (MIT) and Junji Furusho (Osaka University)

短下肢装具の先行研究 【実用化されている制御型装具】 【アクチュエータを用いた能動タイプの研究】 【受動タイプの研究】 Gait Solution(川村義肢株式会社) 立脚初期,踵接地時の足関節の動きを油圧により制動 デメリット:軽度の麻痺であることに限定される SEA(弾性要素直列型アクチュエータ) DCサーボモータ 空気圧アクチュエータ  空気圧バルーン型腱駆動システム 【アクチュエータを用いた能動タイプの研究】 Gait Solution SEA 【受動タイプの研究】 空気圧受動要素 フロー型MRブレーキ 多くは研究段階 臨床評価がなく実用性が不明確 フロー型 MRブレーキ

I-AFO3次試作機の概観 NEDOプロジェクト「人間支援型ロボット実用化技術開発」(2005~2007年度) せん断型MR流体ブレーキを用いた制御型短下肢装具を, 大阪大学古荘研究室が中心となって研究開発 「BLR-G」(蹴り動作のある動的2足歩行 を実現した世界初の2足歩行ロボット) (日本機械学会ロボティクス・メカトロ二クス部門業績賞受賞, 1996年)  総重量 990g (2次試作機より約200g軽量化)

ご清聴ありがとうございました