ディジタル信号処理 Digital Signal Processing

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1 線形代数学. 2 履修にあたって 電子情報システム学科 必修 2005 年度1セメスタ開講 担当 草苅良至 (電子情報システム学科) 教官室: G I 511 内線: 2095 質問等は上記のいずれかに行なうこと。 注意計算用のノートを準備すること。
22 ・ 3 積分形速度式 ◎ 速度式: 微分方程式 ⇒ 濃度を時間の関数として得るためには積分が必要 # 複雑な速度式 数値積分 (コンピューターシミュ レーション) # 単純な場合 解析的な解(積分形速度式) (a)1 次反応 1次の速度式 の積分形 [A] 0 は A の初濃度 (t = 0 の濃度.
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Presentation transcript:

ディジタル信号処理 Digital Signal Processing 第06講 Z変換(1)

2.3 Z変換

事前知識 ディジタルフィルタ計算の簡単化 フィルタ計算は周波数領域での計算処理であるが,時間領域での複雑な演算が必要である。この計算を演算子を用いて代数演算に変換する(アナログ計算におけるラプラス変換:演算子sを用いて代数計算で答が出せる)に匹敵するz変換を用いれば簡単に計算できる。 メーカが提供するたくさんのフィルタのうちの一つを選び,数値(効果の度合い)を変えて期待する効果が得られるかチェックする,いわゆる試行錯誤でフィルタリングを行うこともできる。

演算子法 微分方程式の解法などに演算子を形式化して用いる方法(大辞林) 古くから,計算を簡単かつ高速に行う方法が考えられてきた ヘビサイド(英Oliver Heaviside;1850―1925) ラプラス(仏Pierre-Simon Laplace;1749- 1827 ) 差分方程式の解法についても同じような考え方がある

Z変換 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 関数解析学において、Z変換(Z-transform)とは、離散群上で定義される、ローラン展開をベースにした関数空間の間の線形作用素。関数変換。 Z変換は離散群上でのラプラス変換とも説明される。なお、Z変換という呼び方は、ラプラス変換のことを 「s変換」と呼んでいるようなものであり、定義式中の遅延要素である z に由来する名前である。

ラプラス変換と z 変換 フーリエ変換における微分を表す変数 jω を s と置いて、微分方程式の解析を行うのがラプラス変換である。これに対して、離散関数のフーリエ変換における時間シフトを表す変数 exp(jTsω) を z と置いて、差分方程式の解析を行うのが z 変換である。 アナログシステム(連続信号)は微分・積分を用いて表現するのでラプラス変換を用いてシステム解析を行う。 一方、ディジタルシステム(離散信号)は差分・和分を用いて表現するので z 変換の出番となるのだ。

s変換(ラプラス変換) z変換

2.3.1 z変換の定義と性質 ∞ x*(t)= Σ x(nT)δ(t-nT) n=-∞ 離散時間信号が次式で表されることは既に学んだ 2.3.1 z変換の定義と性質 離散時間信号が次式で表されることは既に学んだ         ∞    x*(t)= Σ x(nT)δ(t-nT)          n=-∞ x*(t)のn≧0におけるラプラス変換をX*(s)とすると            ∞    X*(s)= Σ x(nT)exp(-nsT)            n=0 となる。ここで,exp(sT)=z と置くと,s=1/T ln z となるので             ∞    X*(s)|s=1/T ln z = Σ x(nT)exp(-nsT)             n=0 となる。これがz変換の定義である。x(nT)のz変換は,    Z[x(nT)]=X(z) = Σ x(nT)z-n ・・・(2.65) である

0.8:信号の大きさ z-7:原点からの遅れ(時刻7T)

基本的な関数のz変換 インパルス関数δ(nT)のz変換 単位ステップ関数u0(nT)のz変換             ∞    Z[x(nT)]=X(z) = Σ δ(nT)z-n =δ(0)=1             n=0 単位ステップ関数u0(nT)のz変換             ∞               ∞ 1 z        Z[x(nT)]= Σ u0(nT)z-n =Σ z-n = =             n=0             n=0 1-z-1 z-1

基本的な関数のz変換 単位インパルス 単位ステップ ランプ関数 指数関数 指数関数 (エクスポネント) 三角(余弦)関数 三角(正弦)関数

z変換の諸定理 z変換に関するいろいろな定理を見ていく

(1) 線形性(linearity) a,bを任意の定数とし, Z[x1(nt)]=X1(z) Z[x2(nt)]=X2(z) とするとき, Z[a・x1(nt)+b・x2(nt)] =a・X1(z)+b・X2(z) [証明] Z[a・x1(nt)]=a・X1(z) Z[b・x2(nt)]=b・X2(z) Z[a・x1(nt)+b・x2(nt)] = Z[a・x1(nt)]+Z[b・x2(nt)] =a・X2(z)+b・X2(z)

(2)遅延 遅延推移(translation)と先行推移 x(nT)=0  (n<0) Z[x(nT)]=X(z) のとき,正整数mに対して,次式が成り立つ ⅰ)先行推移                 m-1 Z[x(nT+mT)]=zm[ X(z) –Σx(nT)z-n]   (5.3a)                 n=0 ⅱ)遅延推移 Z[x(nT-mT)]=z-mX(z)              (5.3b)

推移(先行,遅延) Z[x(nT-mT)]=z-mX(z) x(nT-T)のz変換は Z[x(nT-T)]=Σx(nT-T)z-n=x(-T)+z-1Σx(nT-T) z-(n-1) ∴ Z[x(nT-T)]=x(-T)+z-1X(z) 同様にx(nt-2T)のz変換は Z[x(nT-2T)]=x(-2T)+ z-1 x (-T) +z-2X(z) ・・・・ 過去(マイナス)における値を0とするので Z[x(nT-mT)]=z-mX(z) が成り立つ(先行の場合も同様に証明できる・・・自分でやってみてください)

例 遅延定理の応用 y(nT)=x(nT)+0.2y(nT-T)のとき 出力y(nt)のz変換Y(z)を求める 例 遅延定理の応用 y(nT)=x(nT)+0.2y(nT-T)のとき  出力y(nt)のz変換Y(z)を求める  Z[0.2y(nT-T)]=0.2Y(z)z-1 ∴Y(z)=X(z)+0.2Y(z)z-1   (1+0.2z-1)Y(z)= X(z)           X(z)      Y(z)=         (1+0.2z-1)

(3)指数関数信号の積 anとの乗算 x(nT)に指数関数信号anを乗じたan x(nT)のz変換は   Z[an x(nT)]=Σan x(nT)z-n= Σx(nT)(a-1z)-n であるから   Z[an x(nT)]=X(a-1z)        が成り立つ   Z[a-n x(nT)]=X(az) も成り立つ [証明]   Z[an x(nT)]=Σan x(nT)z-n= Σx(nT)(a-1z)-n ∴  Z[an x(nT)]=X(a-1z)

例 指数信号との乗算の応用 an sin nωTのz変換を求める 公式より zsinωT Z[sin nωT]= z2-2zcosT+1 例 指数信号との乗算の応用 an sin nωTのz変換を求める  公式より             zsinωT  Z[sin nωT]=            z2-2zcosT+1               a-1zsinωT ∴ Z[an sin nωT]= (a-1z)2-2(a-1z) cosT+1

(4) たたみ込み 2つの信号x1(nT)とx2(nT)のたたみ込み和のz変換は (4) たたみ込み 2つの信号x1(nT)とx2(nT)のたたみ込み和のz変換は  Z[x1(nT)*x2(nT)]=Z[Σ x1(kT)x2(nT-kT)]   = X1(z)X2(z)             (5.6) [証明] たたみ込み和の式をz変換の定義式に代入して順序を変更すると Z[Σ x1(kT)x2(nT-kT)]=ΣΣ x1(kT)x2(nT-kT)z-n =Σ x1(kT) Σx2(nT-kT)z-n =Σ x1(kT) z-k Σx2(nT-kT)z-(n-k) =X1(z)X2(z)

(5) 微分・・・・パラメータ微分 信号x(nT)がパラメータaを含んでいるとき,x(nT)をaで微分した導関数のz変換は,aがnの関数でないなら,    Z[dx(nT)/da]=dX(z)/da  となる 例えば,x(nT)=x1(nT)+ax2(nT)の場合  dX(z)/da=dΣ{x1(nT)+ax2(nT)}z-n/da  =Σ x2(nT)}z-n =Z[dx(nT)/da] ∴ Z[dx(nT)/da]=dX(z)/da

例題2.11 図の信号のz変換を求めよ   なぜこうなるのかな?

例題2.12 x(nT)=δ(nT)+2 δ(nT-T) について, x(nT)とx(nT-T) の畳み込み和のz変換を求めよ

(5)’ 微分・・・・z領域微分 Z[nTx(nT)]= -Tz dX(z) /dz [証明]X(z)をzで微分すると, (5)’ 微分・・・・z領域微分 Z[nTx(nT)]= -Tz dX(z) /dz    [証明]X(z)をzで微分すると, dX(z) /dz=dΣx(nT) z-n /dz  =-n Σx(nT) z-n-1 =Z[-nx(nT)] ∴  -dX(z) /dz =n Σx(nT) z-n-1 =Z[nx(nT)] ∴  -TdX(z) /dz =nT Σx(nT) z-n-1                =Z[nTx(nT)]

(6) 初期値定理 x(0)= lim X(z) z→∞ [証明] z変換の定義より ∞ n=0 ∞ (6) 初期値定理 x(0)= lim X(z)         z→∞ [証明] z変換の定義より      ∞ X[z]=Σx(nT)z-n=x(0)+x(1)z-1+ x(2)z-2+ x(3)z-3+・・・・     n=0              ∞ ∴ lim X[z]= lim Σx(nT)z-n=x(0)+x(1)∞-1+ x(2)∞-2+・・=x(0)     z→∞    z→∞ n=0

(7) 最終値定理 x(∞)= lim x(nT)= lim (1-z-1)X(z) n→∞ z→1 [証明]z変換の定義より ∞ ∞ (7) 最終値定理 x(∞)= lim x(nT)= lim (1-z-1)X(z)             n→∞ z→1 [証明]z変換の定義より Z[x(nT)]-Z[x(nT-T)]=X(z)-{(z-1X(z)+x(-T)} =(1-z-1)X(z)-x(-T)       ∞ ∞ ∴ lim(1-z-1)X(z)=lim {Σx(nT)z-n-Σx(nT-T)z-n}+x(-T)    z→1         z→1 n=0 n=0   =x(∞)-x(T)+x(T)=x(∞)