薬品分析学3
質問 Q: 向流分配法を行うことで何がわかるのですか? A: 分配クロマトグラフィーの精製原理がわかります。
演習 分配係数が Kd = 0 と近似できる時、分液ロート4個を用いて 向流分配法を行った場合、化合物 (分離対象) はどのような分 布となるか。
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 分配係数 Kd = ≈ 0 の場合 上層の濃度 0.000 1.000 0.000 1.000 0.000 有機層 液層A 水層 0.000 ••••••• 0.000 1.000 0.000 1.000 分液&静置 分液&静置 0.000 1.000 0.000 1.000 有機層 0.000 水層
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 分配係数 Kd = ≈ 0 の場合 上層の濃度 0.0000 1.0000 0.0000 0.0000 0.0000 1回目 0.0000 0.0000 1.0000 0.0000 0.0000 0.0000 0.0000 1.0000 0.0000 0.0000 2回目 0.0000 0.0000 0.0000 1.0000 0.0000
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 分配係数 Kd = ≈ 0 の場合 上層の濃度 0.0000 0.0000 0.0000 1.0000 0.0000 2回目 0.0000 0.0000 0.0000 1.0000 0.0000 3回目 0.0000 0.0000 0.0000 0.0000 1.0000 0.0000 0.0000 0.0000 1.0000 4回目
宿題 (締切: 5/22(金), 提出先:田中の部屋前のカゴ) 分配係数が Kd = 3 の時、分液ロート4個を用いて向流分配法を 行った場合、化合物 (分離対象) はどのような分布となるか。
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 分配係数 Kd = = 3 の場合 上層の濃度 0.500 0.250 0.000 1.000 0.000 有機層 液層A 水層 0.000 ••••••• 0.000 1.000 0.000 0.250 0.750 分液&静置 分液&静置 0.750 0.250 0.188 0.063 0.563 有機層 0.188 水層
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 分配係数 Kd = = 3 の場合 上層の濃度 0.7500 0.2500 0.0000 0.0000 0.0000 1回目 0.7500 0.0000 0.0000 0.2500 0.0000 0.0000 0.1875 0.5625 0.1875 0.0625 0.0000 0.0000 2回目 0.0000 0.5625 0.1875 0.0000 0.0625 0.0000
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 分配係数 Kd = = 3 の場合 上層の濃度 0.0000 0.5625 0.1875 0.0000 0.0625 0.0000 2回目 0.1406 0.4219 0.2812 0.0938 0.0469 0.0156 0.0000 3回目 0.4219 0.0000 0.2812 0.1406 0.0469 0.0938 0.0000 0.0156 0.1055 0.3164 0.3164 0.1055 0.1055 0.0352 0.0117 0.0039 4回目
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 最初は液層Aに化合物の 全てが解けている。 分配係数 Kd = = 1 の場合 上層の濃度 数値: 化合物の分配割合 1.000 0.000 液層A 液層B 0.000 1.000 液層A 液層B 分液&静置 0.500 液層A 液層B
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 下層の濃度 分配係数 Kd = = 1 の場合 上層の濃度 0.500 0.000 液層A 液層B 液層A 0.000 液層A 0.000 0.500 液層B 分液&静置 液層A 0.250 0.250 液層B
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) 図3-7 Kd = 2 Kd = 1 Kd = 0.5 10回 0.2 0.1 0.0 5 10 0.10 100回 0.05 0.00 50 100 1000回 0.02 0.01 0.00 500 1000
向流分配法 (分配クロマトグラフィーの原理) Kd = 2 Kd = 1 Kd = 0.5 10回 0.2 分液ロートの数 (段数) が 増えるほど、全ロ−ト数に 対する相対的ピーク幅が 細くなる 0.1 0.0 5 10 0.10 100回 = 分離がよくなる 0.05 0.00 分離がよいカラムでは、 仮想的な分液ロートの 段数 (= 理論段数) が多 いと考える 50 100 1000回 0.02 0.01 0.00 500 1000
分離メカニズムによる液体クロマトグラフィ分類 液体クロマトグラフィー 分離メカニズムによる液体クロマトグラフィ分類 吸着クロマトグラフィー 水素結合、静電相互作用 分配クロマトグラフィー 2相間の分配平衡 イオン交換クロマトグラフィー 静電相互作用 サイズ排除クロマトグラフィー (ゲルろ過クロマトグラフィー) 分子サイズ 水素結合、静電相互作用 疎水性相互作用、配位結 合を総合的に使用 アフィニティークロマトグラフィー
イオン交換クロマトグラフィー 陽イオン交換体(樹脂) + + ー + ー ー ー ー ー ー ー + ー ー + ー ー 陰イオン交換体(樹脂) ー ー ー + + + + + + + + ー ー + + + +
イオン交換クロマトグラフィー 陽イオン交換体(樹脂) 例) 陽イオン性の 強いものほど ー 強く結合 ー ー ー ー ー 陰イオン交換体(樹脂) 例) 陰イオン性の 強いものほど 強く結合 + + + + + +
イオン交換クロマトグラフィー 陽イオン交換基 強陽イオン交換基 スルホン酸 (-SO3−) 強酸 弱陽イオン交換基 カルボン酸 (-CO2−) 弱酸 陰イオン交換基 4級アミン (-NR3) + 強イオン性 強陰イオン交換基 3級アミン (-NHR2) + イオン性がpH に依存 2級アミン (-NH2R) + 弱陰イオン交換基 イオン交換基の電荷が大きい程イオン交換能は高い
イオン交換クロマトグラフィー 陽イオン交換体(樹脂)からの溶出法 過剰量のNa+源(NaCl): 量的に目的化合物を 遊離させる。 Na+ + Cl− Na+ + Cl− Cl− Na+ ー ー Na+ Na+ ー ー + イオン性の高いもの 又は電荷の多いもの ほど遅れて溶出。 + Cl− ー Cl− ー Na+ Na+ ー Cl− Na+ Na+ + ー Na+ ー ー Na+ + Na+ Cl− 樹脂上のカチ オンが交換された Cl− ー Na+ ー
イオン交換クロマトグラフィー 陽イオン交換体(樹脂)からの溶出法 pHを変えてイオン性 官能基の電荷を消失 させる。 + + ー ー ー ー 樹脂上のカチオン が交換された H+ ー X− + ー H+ ー H+ ー H+ + X− X− ー H+ H+ ー
サイズ排除クロマトグラフィー 別名:ゲルろ過クロマトグラフィー 巨大分子 小分子 ゲルろ過樹脂 多孔質ゲル 移動距離 長い 短い 溶出 早い 遅い
サイズ排除クロマトグラフィー 別名:ゲルろ過クロマトグラフィー でこぼこ道転がるのが早いのは ビー玉か、それともボール大か? ビー玉
サイズ排除クロマトグラフィー 別名:ゲルろ過クロマトグラフィー ボール大のほうが転がるのが早い! ビー玉 路面の穴よりボール大のほうが大きい ボール大には路面は平に等しい ボール大
サイズ排除クロマトグラフィー 別名:ゲルろ過クロマトグラフィー ボール大 ビー玉は路面の穴にはまりながら進む その結果、ビー玉は速度を失う。 穴にはまりながら進む行程はゲルろ過樹脂表面の出来事と 非常に良く似ている。 ビー玉
アフィニティクロマトグラフィー アフィニティ:親和性 用例)生体分子が標的分子に特異的に結合できるのは、 アフィニティが高いため。 歴史:生体分子をリガンドの特異的かつ強い結合を利用 例)ビオチン(低分子)−アビジン(生体分子) Kd = 10-15 M
アフィニティクロマトグラフィー アフィニティービース ビオチン(リガンド) アビジン(生体分子)ああ 標的分子−ビオチン 連結体 ビオチンの連結された分子のみがビーズ上に残る(単離できる)
演習 空欄に入る言葉を書きなさい。 イオン交換クロマトグラフィーではイオン性の強い物質が 溶出する 溶出する 陽イオン交換クロマトグラフィーの樹脂表面には イオン 性の官能基が連結されている。 陰イオン交換クロマトグラフィーの樹脂表面には イオン 性の官能基が連結されている。 サイズ排除クロマトグラフィーでは分子量の 分子が 早く溶出する。
宿題(締切: 5/28; 田中の部屋前のカゴ) 1 下記のイオン交換基(官能基)に関する以下の問いに答えなさい。 スルホン酸 3級アミン カルボン酸 4級アミン 2級アミン (1) 最も強い陽イオン交換能をもつ樹脂の交換基(官能基)を持つ ものはどの交換基か。その理由も答えなさい。 (2) 最も強い陰イオン交換能をもつ樹脂の交換基(官能基)を持つ ものはどの交換基か。その理由も答えなさい。 2 以下の化合物がサイズ排除クロマトグラフィーから溶出してく る順を答えなさい。 NaCl ショ糖 リゾチーム