平成23年度    少人数学級編制に係る研究(報告) 平成24年8月22日 大阪府教育委員会事務局 市町村教育室 小中学校課.

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平成23年度    少人数学級編制に係る研究(報告) 平成24年8月22日 大阪府教育委員会事務局 市町村教育室 小中学校課

Ⅰ.少人数学級編制の現状

1.平成23年度の学級数と平均人数 2年生 934学級 661学級 26.4人 37.4人 1学級の人数が35人を超える学年に教員を配置 (2年生273学級増) その結果、小学校2年生では1学級当たりの平均人数が、それぞれ11人程度減少 小学校1年生は、国の措置によって35人以下学級 学級数 1学級平均児童数 35人学級実施 40人学級の場合 2年生 934学級 661学級 26.4人 37.4人 (273学級増) (11人減)

2.府内公立小学校における1・2年生の学級人数 (5月1日) 全体の約6割の学級が30人以下になっています。 学級人数について、府内の全公立小学校(1014校)1・2年生における1学 級あたりの人数の割合をグラフにしたものです。 学級人数が20人以下の学級のなかには、学校自体が小規模であり、学年 の総児童数が20人に満たない学級も含まれています。

3.学年ごとの学級収容人数割合 (5月1日) 学年 ~15人 16~20人 21~25人 26~30人 31~35人 36人~ 1学年 (2557) 0.9% 4.4% 17.1% 41.6% 35.7% 0.3% 2学年(2616) 0.7% 4.9% 18.3% 42.7% 33.2% 0.2% 3学年 (2384) 0.6% 1.6% 10.6% 23.7% 36.6% 27.0% 4学年 (2457) 0.4% 1.1% 9.6% 24.5% 39.6% 24.8% 5学年 (2490) 0.5% 1.5% 9.5% 23.3% 39.5% 25.8% 6学年 (2529) 1.3% 8.5% 24.7% 40.3% (  )内は学級数 *1・2年生で36人~が0.3%、0.2%となっているが、これは、転出予定児童がいる等の理由により、5月1日時点で36人を超える学級があるため。

Ⅱ.少人数学級編制の効果

1.効果検証の経緯 年度 学年 編制基準 増学級数 主な調査研究内容 アンケート 調査対象 16 1年生 38人 97学級 主な調査研究内容  アンケート 調査対象 16 1年生 38人 97学級 「学習習慣・生活習慣」「学習指導」 「学校独自の教育課題に対する効果」 41市町村 教育委員会 2年生 40人 17 98学級 「学校生活」「授業」「保護者への対応」等 (教員の経験則に基づく評価のまとめ) 研究指定校 201校 121学級 18 35人 265学級 「学校生活」「授業」「保護者への対応」 「児童の実態による評価、及び児童・保護者からの評価」等 (客観的データに基づく多方面からの分析) 338校 99学級 19 283学級 ※平成18年度との年度間比較の項目を追加 462校 269学級 20 273学級 「平成19年度の効果の継続的な検証」 「学級人数の規模と効果の相関関係」 「20人以下学級について、集団で学ぶ場面の工夫や取組みの把握」 府内小学校 270校の 1.2年生 275学級 21 「平成20年度の効果の継続的な検証」 「集団で学ぶ場面の工夫として合同授業の取組みの把握」 276学級 22 267学級 「平成21年度の効果の継続的な検証」 「指導効果を上げる取組みや授業等の工夫の把握」

学校に対する質問紙による調査(35人以下学級となるように 2 .平成23年度の効果検証について 1.効果検証の目的   平成22年度の効果検証で見られた効果が継続的なものか    どうか検証する。 2.効果検証の枠組     学校に対する質問紙による調査(35人以下学級となるように      教員を配置した府内の小学校273校に実施)

3.平成23年度に見られる効果 《効果1》 1学期の欠席者率が減少 1年生 2年生 合計 H15年度 2.12% 2.05% 2.09% 《効果1》  1学期の欠席者率が減少         1年生    2年生     合計 H15年度  2.12%  2.05%  2.09%  H19年度 1.78%  1.85%  1.81% H20年度 1.58%  1.66%  1.62% H21年度  1.51%  1.53%  1.52% H22年度  1.75%  1.77%  1.76% H23年度  1.73%  1.74%  1.73% 1学級 40人 1学級 35人 学校生活のスタート時である小学校1年生の欠席者率は15年度と比較して減少しており、継続した効果が現われていると言えます。 (延べ欠席者×100) 〔欠席者率算出方法〕 欠席者率= (在籍児童数×授業日数)

平成15年度と平成23年度とを比べると、 欠席者数が延べ 約1万2千人 減少(1・2年合計) 1学期集計 欠席者率 延べ欠席者 (在籍児童数×授業日数) H23年度 1.73% 59,183人 3,409,999人 《考え方》 平成15年の欠席者率 (2.09%)を、仮に平成23年度に当てはめてみると、3,409,999人×2.09%=71,269人 平成23年度の児童延べ欠席者は、59,183人であり、その差は、 71,269人-59,183人= 12,086人 つまり平成23年度の1学期欠席者数は、 平成15年度と比べると府内273校で  約12,000人減少 したこととなります。 ◎ 少人数学級編制により、教師が一人ひとりの子どもの話をしっかり聞くなど、  きめ細かな対応をすることで、子どもたちの安心感が増し、落ち着いた学校生  活を送れるようになった結果として欠席者率が減少したものと考えます。

《効果2》 保護者の多数は肯定的評価 子どもの様子 先生の対応 《効果2》 保護者の多数は肯定的評価  「学校教育自己診断」等を活用し、項目にあてはめて診断してもらいました。平成23年度は、平成22年度と同様に、子どもの様子や先生の対応について、多くの保護者が肯定的な評価をしています。 子どもの様子 先生の対応 「学校が楽しみである」や「保護者の相談に応じてくれる」の項目で、いずれも高い数  値を示しており、子どもが学校で充実した生活を送っていることや教師の対応に満足  している保護者の意識が反映されているものと考えます。

「子どもに対して教師の目が行き届くようになった。」(98.7%) 《効果3》 教師の指導や児童のようすに変化 「子どもに対して教師の目が行き届くようになった。」(98.7%) ( )内の%で表している 数字は、平成22年度2学期の「とてもそう思う」「そう思う」を合わせた肯定的な回答の割合です。 《教師の指導に見られる変化》 「配慮を要する子どもに何回も声かけができるようになった。」(96.0%) 《教師の指導に見られる変化》

「子どもたちの話に耳をかたむけられるようになった」(95.2%) 《教師の指導に見られる変化》 「子どもたちとの接触時間が増え、良好な人間関係が築かれる。」(96.3%) 《教師の指導に見られる変化》

「子どもたちが落ち着いて学校生活が送れる」(97.4%) 「給食の準備にかかる時間が減り、ゆっくり食べられる。」(88.5%) 《児童のようすに関する変化》 「子どもたちが落ち着いて学校生活が送れる」(97.4%) 《児童のようすに関する変化》

「子どもどうしの話し合い活動がうまくいくようになった」(93.0%) 《児童のようすに関する変化》 「子どもどうしのトラブル・けんかが減った。」(88.6%) 《児童のようすに関する変化》

「一人ひとりの進み具合を把握しやすく,それに合わせた指導がしやすい」(96.9%) 《教師の指導に見られる変化》 「ノート指導、作品へのコメントなどがていねいにできる。」(97.4%) 《教師の指導に見られる変化》

「遅れがちな児童への個別指導がしやすい。」(94.9%) 《教師の指導に見られる変化》 「学ぶ意欲を高める工夫がしやすい。」(94.1%) 《教師の指導に見られる変化》

「授業の中での一人ひとりの発言が大切にできる。」(98.0%) 《教師の指導に見られる変化》 「総じて児童の学力が向上している。」(96.2%) 《児童のようすに関する変化》

「授業で話し合い活動を取り入れやすい。」(90.8%) 《教師の指導に見られる変化》 「授業で一人ひとりに体験活動を保障しやすい。」(96.9%) 《教師の指導に見られる変化》 学校からは、「子どもたちが落ち着いて学校生活が送れる」等の生活面での効果や、「総じて児童の学力が向上している」という学習面での効果が継続的に報告されています。

《効果4》 高い基礎基本の到達率 (平成22年度、23年度2学期末現在) ◎数字は、35人以下学級となるように教員を配置した273校(府内の小学校の約4分の1)から回答のあった、1・2年生の児童数に対する、項目ごとの目標に到達している児童数の割合です。 ◎基礎基本(くり上がり・くり下がりのある計算、ひらがなの読み書き、漢字の読み書き)については、平成22年度と同様に、項目ごとの目標で、高い到達率を維持しています。    個別指導や繰り返し指導等、きめ細かな指導が、基礎基本の高い到達率につながっていると考えます。

4.平成23年度に見られる効果と考察 ◎ 少人数学級編制を行っただけで、子どもたちや学校の課題がただちに改善されるも 少人数学級編制により、教師が一人ひとりの子どもの話をしっかり聞くなど、きめ細かな対応をすることで、子どもたちの安心感が増し、落ち着いた学校生活を送れるようになった結果として欠席者率が減少したものと考えます。《効果1》 子どもの様子や教師の対応について、保護者の多数は肯定的な評価をしています。具体的には「子どもは学校へ行くのを楽しみにしている」や「保護者の相談に応じてくれる」の項目で、いずれも高い数値を示しており、子どもが学校で充実した生活を送っていることや教師の対応に満足している保護者の意識が反映されているものと考えます。《効果2》 学校からの回答は、「子どもたちが落ち着いて学校生活が送れる」等の生活面での効果、 「子どもに対して教師の目が行き届くようになった。」や 「総じて児童の学力が向上している」等の学習面での効果が継続的に報告されています。《効果3》 個別指導や繰り返し指導等、きめ細かな指導が、算数や国語の基礎基本の定着率の向上につながっていると考えます。《効果4》 ◎ 少人数学級編制を行っただけで、子どもたちや学校の課題がただちに改善されるも   のでなく、少人数学級編制を生かした教師の指導の工夫、学校の取組みが伴ったとき   に、大きな効果が期待できるといえます。