学生ボランティアを中心とした障害学生支援の課題 日本福祉大学における障害学生支援を手がかりとしての考察

Slides:



Advertisements
Similar presentations
個人情報を保護する仕組みに 関する一考察(その2) 満保 雅浩 東北大学 情報処理教育センター 情報科学研究科.
Advertisements

介護支援サービス(ケアマネジメント) 要援護者やその家族がもつ複数のニーズと社会資源 を結びつけること。 要援護者の生活の質を高めること。 保健,医療,福祉,住宅等の各種公的サービスだけ でなく,家族、ボランティア,近隣等の支援とも調整 し,在宅生活を支えていくもの.
1 障害学会第12回大会(2015年度)発表資料 発達障害学生への支援 関西学院大学 総合支援センター キャンパス自立支援室 コーディネーター 西岡 崇弘.
「ストレスに起因する成長」に関する文献的検討
4月1日から新しい「地域づくり」が始まります。 地域のみんなで一緒に取り組む介護予防活動を応援します
安心おたっしゃ訪問事業 杉並区保健福祉部 高齢者在宅支援課.
大学入門講座の 実施に向けて ●桑折範彦   
シンポジウム 子どもの豊かな育ちを 支援する地域力
子ども達への科学実験教室の運営方法論 -環境NGO「サイエンスEネット」の活動事例をとおして- 川村 康文
市町村による精神障がい者の地域移行を進めるための支援策について(案)
第2章 経済生活とビジネス 1 経済のしくみとビジネス 5秒間待つか,クリックすると次の画面に変わります。
生きがいのもてる高齢者が イキイキと暮らす上田市へ
Ⅱ 訪問介護サービス提供プロセスの理解 Ⅱ 訪問介護サービス提供プロセスの理解.
財団法人倶進会助成研究 高等教育における 障害学生支援の研究
インターネットの進化と可能性 第1回「授業概要」
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
eラーニングを活用した 盲ろう担当教員研修
PT、OT、ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業(新規) 平成20年度予算額(案) 42,790千円              
【資料3】 条例検討会議について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
日本教育工学会 第22回大会報告 大学院での遠隔教育と 障害学生支援
e-learningを利用した看護大学大学院・継続教育システムの 構築と評価
対面販売型生保VSネット生保 -対面販売型生保派-
ラーニング・ウェブ・プロジェクト(Learning Web Project) -自立・共愉的な学習ネットワークの形成に向けて-
4 第3次障害者基本計画の特徴 障害者基本計画 経緯等 概要(特徴) 障害者基本法に基づき政府が策定する障害者施策に関する基本計画
情報系大学生の将来目標に関する 情報共有システムの構築と活性化方法
重症心身障害児者等 コーディネーター育成研修 3 支援体制整備④ 資源開拓・創出方法
於:大阪弁護士会館 2013年6月22日(土) 介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット 共同代表 弁護士 藤 岡 毅
教師教育を担うのは誰か? 日本教育学会第70回大会ラウンドテーブル 2011年8月24日 千葉大学 2108教室
Ⅲ.サービス開発の方法.
第2次総合計画 【H22~H26】 ~本市の基本的な計画
大学ノートテイカー養成講座  受講者 募集!!   本学には聴覚に障害のある学生が複数在籍しており、授業の情報保障の一環として大学としてノートテイク支援を実施しています。現在、ノートテイカーとしてご協力いただけるボランティアを募集しています。ぜひ皆さんのご協力をお願いいたします。     1.日.
国立大学法人 宮城教育大学 平成19年度学生支援GP 「障害学生も共に学べる総合的学生支援」.
聴覚障害学生高等教育支援ネットワークの構築に向けて
平成12・13・14年度 文部科学省教育研究開発学校指定
メディア教育開発センター制作(2002年11月販売開始) ビデオ教材 (字幕付き) 『高等教育のバリアフリーを目指して』
障害者福祉ゼミとインターネット 広がる当事者へのアプローチの可能性と課題
基礎看護の授業を通して思考力,判断力,表現力,技能を育成する指導方法の工夫改善についての研究
管理的側面 管理者に必要な経営知識 経営学の基本 ①マネジメントと組織.
聴覚障害学生高等教育支援ネットワークの構築に向けて
社会保障システムのなかのフードバンクの役割
地域ネットワークを構築 相談支援事業が核 甲賀地域障害児・者サービス調整会議(甲賀地域自立支援協議会)の運営 図3 約80機関で構成
輝いて、自宅で ~終わりよければすべてよし~
相談支援従事者初任者研修のカリキュラムの改正について
The Road to “New Public Commons” (ネットワークとコア機能の考察)
第7回 社会福祉の法制度.
教育センターにおける エネルギー環境教育講座実施の実態 ( 川村先生)
筑 波 技 術 大 学 JASSO客員研究員 石 田 久 之
私立大学情報教育協会 研修運営委員長 南 雄三
生活支援 中央研修 H26.9.4(木)~5(金) 品川フロントビル会議室 H26.9.6(土)~7(日) JA共済ビルカンファレンスホール
(中学校)学習指導要領前文 これからの学校は 子どもたちの育成 教育課程を通して =「社会に開かれた教育課程」の実現
エコアクション21で企業価値を高めることができます
我が国の自殺死亡の推移 率を実数で見ると: 出典:警察庁「自殺の概要」
学部新入生オリエンテーション 大阪大学における初年次共通教育 「学び方を学ぶ」    ための 1年ないし1年半 全学教育推進機構長 下田 正.
SCS研修「高等教育における障害者支援(2)」 国際的な障害者の権利保障と教育
資料10-1 エコアクション21  事業概要.
教師教育における 数学的ディスコースについて ─ 算数授業の談話分析を通して ─
平成16年度大学情報化職員基礎講習会 「これからの教育・研究支援と その体制」
Cisco Spark & Spark Board による大学教育現場の 新たなコラボレーション スタイル ― 東洋大学
理科支援員等配置事業事務局(SCOT事務局)
メディア教育開発センター制作(2003年7月7日販売) ビデオ教材 (字幕付き) 『USA発 高等教育のバリアフリー』
有料道路事業(阪神高速)約1,600億円 【阪高出資金:なし】
宇佐支援学校 学校評価実施計画 改善 教職員自己評価 自分らしく 生活する 子ども 保護者・ 地域から 愛される 学校 のびのびと 過ごせる
Ⅳ.生活支援コーディネーターが行うべきアセスメントと支援の視点
あいサポート条例(愛称)素案の概要 1 制定の目的 2 条例案の内容
図15-1 教師になる人が学ぶべき知識 子どもについての知識 教授方法についての知識 教材内容についての知識.
移行定着支援事業(新規) 1 事業の目的   小規模作業所等が障害者自立支援法に基づく新体系サービス(地域活動支援センターを除く。)の事業へ  移行した場合に、新たな事務処理を定着させるために要する経費や移行前の小規模作業所等の当時からの利用  者が継続して利用し、定着できるために実施する経過的な施策に要する経費等を助成することにより、新体系.
2019年度 すべての教職員のための授業改善研修 本研修の背景とねらい
メンタルフレンドについて 福島大学総合教育研究センター   中野 明德.
特別支援教育総合推進事業 特別支援教育 推進員 高等学校 1(新)特別支援教育総合推進事業【4,752千円】 県教育委員会 特別支援学校
・特別支援教育について ・発達障害等の特性 ・教育環境等の整備
Presentation transcript:

学生ボランティアを中心とした障害学生支援の課題 日本福祉大学における障害学生支援を手がかりとしての考察 障害学会第6回大会 ポスター報告 学生ボランティアを中心とした障害学生支援の課題 日本福祉大学における障害学生支援を手がかりとしての考察 はじめに             報告者は2005年4月から2009年3月まで日本福祉大学(以下、日福)に在籍し、障害学生として、教材の点訳をはじめとする様々な支援を受けてきた一方、ビデオ教材の字幕付けをはじめとする障害学生支援実践の担い手として活動。また、2007年度及び2008年度には、美浜キャンパスにある障害学生支援センターにおいて、障害学生支援に関する諸活動の運営補助等を行う学生スタッフとして活動。 1.日福における障害学生支援の概要 ●通信教育部及び大学院を除く全学生数5351名、うち障害学生145名(94名が障害学生支援センターに登録)。 ●障害学生支援活動のほとんどは学生が無償のボランティアで担っている。   → 点訳、音訳、パソコンテイク、ビデオ教材の字幕付け等を行うサークルによる支援、友人関係に基づく個人的な支援。 ●障害学生支援センター(1998年設置):支援活動そのものを行うのではなく、学生等による支援活動を側面から支援し、支援活動に                           必要な環境を整備するとともに、障害学生が自ら支援を得るための諸活動を支援する役割。   → 何らかの支援を必要とする障害学生は、自ら支援者を探し、必要な支援を依頼することが原則。 2.直面する課題(報告者が直面した課題を中心に)                      報告者が日福において4年間で履修した授業のうち、テキストが指定されていた科目は30科目。                       → うち、大学の費用負担により当該書籍が点訳されたものは2科目、                          大学組織や教員を通して当該書籍のテキストデータを受け取ることができたものは7科目。                          その他のものについては報告者自身が何らかの対応。                           → 学内の点訳サークル・音訳サークル等で全て対応することは困難。                           → 30科目中8科目のテキストについては、自ら利用できる媒体のものを入手できず。                     支援者の慢性的な不足 → 障害学生が自らに必要な支援の担い手を確保するための活動に奔走。     ex:「ノートテイカーの奪い合い」と称される聴覚障害学生の熾烈な戦い。                        自らが履修したい、あるいは履修しなければならない授業よりも、支援を受けられる、あるいは                        受けやすい授業を優先して履修する障害学生。  → 必要な支援を受けることができないリスクを軽減する時間割。 (1)支援の量的不十分さ (2)自ら支援者を確保  することによる負担 (3)奪われる学びの主体性 3.課題の要因と背景 (1)学生生活と支援活動の両立の限界性  進級に従って相対的に減少する支援学生。一方で増大する障害学生の支援ニーズ。 (2)学生の流動性  学生が障害学生支援の諸活動に積極的に取り組むことのできる期間は僅か。 (3)学生が無償のボランティアで障害学生支援を担う意義  「障害学生も、非障害学生も、教職員も、ともに学び育ちあう」という日福の障害学生支援の理念。   → 支援を通した学びあいや育ちあいは、学生ボランティアによる障害学生支援を必然化するものではない。 4.障害学生支援の主体と役割の検討                           支援活動の直接的な担い手:大部分が非障害学生による無償のボランティア。                           支援の調整(コーディネート):一部を除きそれを担う主体が不明確。                           費用負担:原則として費用負担が発生しない仕組み。(一部大学の負担有)                           学生のみで障害学生の支援ニーズを充足しうる十分な支援を行うことは困難。                             → 学内にとどまらず、学外からも確保することが必要。                             → 日福においては、障害学生支援を担いうる機関や人材が大学の周囲に少ない。                             → 学外から支援者をどのように確保するかについては要検討。                                    学外から支援者を確保するには多額の費用が必要。                                    障害学生が大学で学ぶことを権利として認識                                                   ↓                                    その権利を保障するという社会の役割 その結果として、大学が支援の調整の 公的に費用を負担していく仕組みの整備が必要。     役割を積極的に担うことが可能となる。 (1)日福における現在の   障害学生支援の主体と役割 (2) 支援活動の直接的な担い手 (3)支援の調整(コーディネート)と費用負担 おわりに            障害学生支援を通した学びあい・育ちあいのなかで涵養されるもの: ひとりでできることを目指す「自立」の価値、助け合い精神 → 貧困な自立観・障害観    障害学生の支援ニーズを充足しうる支援の実現 → 全てを学内で完結させるような仕組みにとどまらない検討が必要。 安田真之(立命館大学大学院先端総合学術研究科) http://www.arsvi.com/w/ym12.htm