高次のサンプリングとスプラインを用いた電子エネルギー分布のサンプリング

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高次のサンプリングとスプラインを用いた電子エネルギー分布のサンプリング Development of novel sampling technique of electron energy distribution using higher order sampling and spline 木 村 太 朗* ,佐 藤 孝 紀,伊 藤 秀 範 (室蘭工業大学) 1. はじめに 2. 計算方法 背景 本研究で開発した方法は,高次のサンプリングと平滑化スプラインとの2つの部分から構成される 気体放電プラズマの応用分野 2-1. 高次のサンプリング(Higher Order Sampling:HOS) ガスレーザ,プラズマディスプレイ,プラズマCVD,半導体プラズマプロセシング,有害化学物質の除去など 多項式を用いて各bin内における電子数の密度勾配を表現する方法 これらの技術を適切に制御して使用するためには,放電の性質の理解が必要 SSと異なり,bin内における電子エネルギー分布の詳細な変化を表現できるので,bin幅を広げることが可能 放電の性質 気体放電プラズマ中には様々な種類の粒子が存在し,これらの粒子によって放電が維持されるが,特に,電子群の性質が放電の性質を決定付ける bin幅を広く設定することができるので,1つのbin当りにサンプリングされる電子数が減少せず,統計変動は増加しない 理由① 電子は気体放電プラズマを構成する粒子(中性気体分子(原子),励起分子,正イオン,ラジカル,光子等)の中で最も質量が小さく,電界によって容易に加速され高エネルギー状態になり,他の粒子に大きな影響を及ぼすため したがって,追跡電子数を増やす必要がなくなるため,計算時間の増加を抑えることができる 理由② 気体放電プラズマを構成する各粒子は,中性気体分子(原子)に電子が衝突することによって生成されるため ここでは,第9項目までを考慮したLegendre多項式を用いて電子の密度勾配を表現している Legendre多項式 電子群の性質 気体放電プラズマ中の電子群の性質は,電子スオームパラメータによって表され,これは電子エネルギー分布から計算される iはbinの番号を表す Niは区間ei ~ei+1 に含まれる電子数を表す 電子エネルギー分布を知ることは放電の性質を知ることに等しい HOSでは,bin毎に独立して多項式を求めるため,binの境界では電子エネルギー分布の連続性が保証されない 電子エネルギー分布の計算方法 コンピュータを用いたシミュレーション方法の一つであるモンテカルロシミュレーションによって,電子のエネルギーをサンプリングし,電子エネルギー分布を得る 平滑化スプラインを用いて,全てのbinに対する電子エネルギー分布が連続性を持つようにつなぐ 従来のサンプリング技法(Standard Sampling:SS) エネルギーの範囲を微小区間(bin)に区切り,各bin内のエネルギーを持った電子数をカウントし,そのヒストグラムを作成して電子エネルギー分布を表現する 2-2. 平滑化スプライン データ点の補間を行う関数式 問題点 「データ点を忠実に通過すること」および「得られる関数が滑らかであること」のうち,どちらを優先するかについて,自由に設定することができるという特徴をもつ 詳細な電子エネルギー分布を求めるためには,binを密にしなければならない 統計変動を低減させるには追跡電子数の増加が必要となる n点のデータ点に対する(2m-1)次の平滑化スプライン 統計変動が増加する 計算時間が増加する LPWS(Legendre Polynomial Weighted Sampling)法 Pm-1(x)はm-1次以下の多項式を表す Ventzek[1]らが提案したサンプリング技法であり,高次のサンプリングとそのオーバーラップサンプリングによって,計算時間の増加を抑えつつ詳細な電子エネルギー分布を求める方法 biはデータ点の座標および優先度の設定によって定まる係数 高次のサンプリングを使用することで,計算時間の増加を抑えることができるが,binの境界で電子エネルギー分布が不連続になるので,binをオーバーラップさせながらサンプリングして重ね合わせることにより,全エネルギー範囲にわたって連続した電子エネルギー分布を得る 3. 計算条件 問題点 オーバーラップさせることによって,計算に無駄が生じること サンプリングされる電子数の差によって,bin毎に電子エネルギー分布の信頼性が異なるのだが,その点が考慮されていないこと 本シミュレーションは下記の条件を用いて行い,SST(steady state Townsent)実験の平衡条件における電子エネルギー分布を求めた 対象ガス CF4 (0 ℃, 1 Torr) 換算電界E/p 400 Td 初期電子数n0 103 個および106 個 電極 2.0 cm間隔, 電子の完全吸収壁 サンプリングのbin幅De HOS → 10 eV, SS → 0.02 eV サンプリングのエネルギー範囲 0~40 eV 目的 高次のサンプリングと平滑化スプライン[2]を用い,オーバーラップサンプリングを行わずに計算時間の増加を抑えつつ,詳細な電子エネルギー分布を求める方法を開発した [1] Peter L. G. Ventzek et al. : J. Appl. Phys. 75. 15. 3785 (1994) [2] 吉村 和美 他:「パソコンによるスプライン関数」,東京電機大学出版局 (1988) 4. 計算結果 4-1. HOSおよびSSで得られた電子エネルギー分布 4-3. 標本値に対する平滑化スプライン(present)の適用 全エネルギーにわたって連続した電子エネルギー分布が得られることがわかる HOSによって得られた電子エネルギー分布は,SSによって得られた電子エネルギー分布の存在する範囲から大きく外れることがないため,矛盾しない値であることがわかる 滑らかさを考慮しているため,全ての標本値を忠実に通過しているわけではないことがわかる 拡大図から,binの境界においては,不連続になっていることがわかる (    はHOSにおけるbin幅(De =10 eV)) 4-4. SSとの比較 4-2. HOSの標本値抽出 今回得られた結果を,n0 =106に増加させたときのSSによって得られた電子エネルギー分布(統計変動が十分小さい)と併せて示す 多数の点に対して平滑化スプラインを求めることは難しいので,各bin当り20点の標本値(sample value)を抽出して平滑化スプラインを求める 両者の曲線が非常に良く一致していることがわかる binの境界においては,各binでサンプリングされる電子数の重みをつけて平均した値(average value)を境界での標本値としている HOSとスプライン関数を用いることにより,計算時間の増加を抑えつつ,詳細な電子エネルギー分布が得られることがわかった 5. まとめ HOSと平滑化スプラインの組合わせによる電子エネルギー分布の新しいサンプリング技法を開発した Legendre多項式を用いることによって,各binにおける電子数の密度勾配を詳細に表現することができた 各bin毎に20点の電子エネルギー分布の値を標本値として抽出し,この標本値に対して平滑化スプラインを適用することで,全エネルギー範囲にわたって連続した電子エネルギー分布が得られた 今回の方法によって得られた結果を,追跡電子数を増加させ統計変動が十分小さい場合のSSによって得られた電子エネルギー分布と比較すると,非常に良く一致することがわかった