薬物間相互作用について (PISCS) 李英健.

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薬物間相互作用について (PISCS) 李英健

情報とは? あることがらについてのしらせ。 判断を下したり行動を起こしたりする ために必要な、数々の媒体を介しての 知識。 (広辞苑より引用)

クスリ(医療)はリスク 医療情報の特殊性 最適の臨床判断を行うために必要な、医療 に関する事実、知実。 誤りを内包する情報、あるいは最適の判断 につながらない情報はノイズとなる。 異なる集団に関する情報は、異なる結果に つながる可能性になる。 クスリ(医療)はリスク

医薬品は不完全な商品である。 医薬品は多くの患者が命をかけて 育てるという宿命をもつ商品である。 こうした現実と戦う宿命をもつ者たちが 専門家である。 平成24年度 病院薬局協議会特別講演 2012.10.26 全国薬害被害者団体連絡協議会 花井十伍さんより

副作用 報告件数 副作用被害 救済件数 出典:独立行政法人医薬品医療機器統合機構「平成23年度事業報告」など

高齢化の推移と将来統計 現役世代1.3人で1人の高齢者を支える社会の到来!!

薬の代謝・排泄に重要な肝臓・腎臓の機能が低下!!

肝代謝型薬物の薬物間相互作用について

代謝を受ける1000成分×阻害する100成分 =10万程度の併用の組み合わせ 日本で使用されている薬の種類⇨約3000成分 シトクロムP450(CYP)による代謝を受ける薬⇨約1000成分 CYPを阻害する薬⇨約100成分 代謝を受ける1000成分×阻害する100成分 =10万程度の併用の組み合わせ

添付文書のみでは適切に注意喚起出来ていない 相互作用も少なくない!

インタビューフォーム Pubmed 添付文書 PISCS 唯一法的根拠のある 公的文書 情報の海

PISCS?

PISCS ・CYPを介した薬物間相互作用における影響の度合いを評価 ・臨床試験が行われていない相互作用も含めて、理論的かつ Pharmacokinetic Drug Interaction Significance Classification System PISCS 監修 東京大学医学部付属病院 薬剤部長・教授 鈴木 洋史先生 ・CYPを介した薬物間相互作用における影響の度合いを評価 ・臨床試験が行われていない相互作用も含めて、理論的かつ    網羅的に薬物相互作用のリスク評価 ・臨床でのマネジメントは一つのScienceだけに基づくので    はなく、多面的な視点で判断することが大事!

シンバスタチンの処方を考えていますが、 すでにボリコナゾール(ブイフェンド)を服用しています。 シンバスタチンとの相互作用はありますか?

PISCSを用いて計算すると、 ブイフェンド×リポバスの併用で リポバスのAUCが20倍以上に上昇する。  ブイフェンド×リポバスの併用で  リポバスのAUCが20倍以上に上昇する。 PISCSを用いてAUCが上昇しにくい 同種同効薬(スタチン系薬剤)も選択可能。

添付文書情報の分析 〔Hisaka A,et al:Clin Pharmacokinet,48(10):653-666,2009〕

リポバスのAUCが20倍以上に上昇は併用禁忌レベル ブイフェンド×リポバスの併用で リポバスのAUCが20倍以上に上昇は併用禁忌レベル 〔Hisaka A,et al:Clin Pharmacokinet,48(10):653-666,2009〕

PISCS ~阻害薬併用におけるAUCの変化率~ CR(CYP3A4):基質薬のCYP3A4に対する寄与率 R(inhibitition)=AUC(+阻害剤)/AUC(コントロール)        =1/{1-CR(CYP3A4)・IR(CYP3A4)} 〔Ohno A,et al:Clin Pharmacokinet,46(8):681-696,2007〕 CR(CYP3A4):基質薬のCYP3A4に対する寄与率 IR (CYP3A4):阻害薬のCYP3A4の阻害率

CYP3A4の寄与率(CR)による分類 極めて高度(VS)、高度(S)、やや高度(SS)、中程度(M)、軽度(W)、極めて高度(VW) 〔Ohno A,et al:Clin Pharmacokinet,47(10):669-680,2008〕

CYP3A4の阻害率(IR)による分類 極めて高度(VS)、高度(S)、やや高度(SS)、中程度(M)、軽度(W)、極めて高度(VW) 〔Ohno A,et al:Clin Pharmacokinet,46(8):681-696,2007〕

~ブイフェンド×リポバスにおけるAUCの変化率~ PISCS ~ブイフェンド×リポバスにおけるAUCの変化率~ R(inhibitition)=AUC(+阻害剤)/AUC(コントロール)        =1/{1-CR(CYP3A4)・IR(CYP3A4)}        =1/(1-1・0.98) =50 リポバスのCR(CYP3A4):1 ブイフェンドのIR (CYP3A4):0.98 〔Ohno A,et al:Clin Pharmacokinet,46(8):681-696,2007〕

①枠内の色は予想されるAUCの上昇比から禁忌、注意、注意なしで区分されている。 スタチンとアゾール系の薬物間相互作用 表の見方 ①枠内の色は予想されるAUCの上昇比から禁忌、注意、注意なしで区分されている。 ただし、添付文書の注意喚起の方が厳しい場合は添付文書の記載も重視すること。 ②「-」は添付文書に記載なし ③「AUC上昇比」欄のカッコ内は予測値。その他は臨床試験等による実測値。 ④添付文書欄のカッコ内は阻害薬のみ注意喚起が記載されている場合

①スタチンの場合、他の薬効群に比べて体内動態の制御因子は薬剤ごとの違いが大きく、 相互作用で血中濃度が上昇する程度は薬剤毎にかなり異なる。 スタチンとアゾール系の薬物間相互作用 特徴 ①スタチンの場合、他の薬効群に比べて体内動態の制御因子は薬剤ごとの違いが大きく、 相互作用で血中濃度が上昇する程度は薬剤毎にかなり異なる。 ②特にシンバスタチンはCYP3A4に対する寄与率が高く注意が必要 スタチンの種類を変更するときの注意点 ①禁忌の項目などの注意点が、変更することによって問題ないか。

スタチンを変更するときの注意点

①スタチンの場合、他の薬効群に比べて体内動態の制御因子は薬剤ごとの違いが大きく、 相互作用で血中濃度が上昇する程度は薬剤毎にかなり異なる。 スタチンとアゾール系の薬物間相互作用 特徴 ①スタチンの場合、他の薬効群に比べて体内動態の制御因子は薬剤ごとの違いが大きく、 相互作用で血中濃度が上昇する程度は薬剤毎にかなり異なる。 ②特にシンバスタチンはCYP3A4に対する寄与率が高く注意が必要 スタチンの種類を変更するときの注意点 ①禁忌の項目などの注意点が、変更することによって問題ないか。 ②脂質改善作用の強さがスタチン間で異なる。

スタチンを変更するときの注意点

①スタチンの場合、他の薬効群に比べて体内動態の制御因子は薬剤ごとの違いが大きく、 相互作用で血中濃度が上昇する程度は薬剤毎にかなり異なる。 スタチンとアゾール系の薬物間相互作用 特徴 ①スタチンの場合、他の薬効群に比べて体内動態の制御因子は薬剤ごとの違いが大きく、 相互作用で血中濃度が上昇する程度は薬剤毎にかなり異なる。 ②特にシンバスタチンはCYP3A4に対する寄与率が高く注意が必要 スタチンの種類を変更するときの注意点 ①禁忌の項目などの注意点が、変更することによって問題ないか。 ②脂質改善作用の強さがスタチン間で異なる。 ③大規模臨床試験における一次予防および二次予防のエビデンスがスタチンによって異なる。

スタチンを変更するときの注意点

①シンバスタチン(リポバス)とクラリスロマイシン(クラリス)は 併用注意だが、AUCが11.9倍に上昇するため、禁忌レベルに相当。 スタチンとマクロライド系の薬物間相互作用 特徴 ①シンバスタチン(リポバス)とクラリスロマイシン(クラリス)は 併用注意だが、AUCが11.9倍に上昇するため、禁忌レベルに相当。 ②マクロライド系抗菌薬でもジスロマックやルリッドは CYP3A4阻害作用が比較的穏やかである。

睡眠導入薬とアゾール系抗真菌薬の薬物間相互作用 特徴 ①トリアゾラム(ハルシオン)はCYP3A4に対する寄与率が高く、とにかく注意が必要 ②ブロチゾラム(レンドルミン)も寄与率が高くハルシオン同様に注意が必要。 睡眠導入薬の種類を変更するときの注意点 ①超短時間型では作用の発現が非常に速く、添付文書の警告でももうろう状態、 夢遊症状、健忘症状が注意喚起されている。 ②リルマザホン(リスミー)は腎不全の場合、通常の半量に減量すべき。

①トリアゾラムとクラリスロマイシンの相互作用試験でAUCが 5.1倍に上昇した報告があり、 睡眠導入薬とマクロライド系抗菌薬の薬物間相互作用 特徴 ①トリアゾラムとクラリスロマイシンの相互作用試験でAUCが 5.1倍に上昇した報告があり、 併用注意ですが、可能な限り併用は避けることが多くの場合妥当。 ②CYP阻害作用の強いクラリスロマイシンと、 CYPに対する寄与が高いトリアゾラムとブロチゾラムの併用には注意が必要。

CYP酵素の薬物代謝への寄与率 CYP3A4,CYP2D6,CYP2C,CYP1A2の分子種で90%以上を占めている。

CYP2D6やCYP2C9などの他のCYP酵素を介した相互作用、 複数のCYP分子種の阻害による相互作用でもCYP3A4と同様の予測精度。 大きい薬物では、個人差にも注意が必要である。 〔Hisaka A,et al:第21回日本薬物動態学会年会,2006.11〕

CYP誘導薬とPISCS

PISCS ~誘導薬併用におけるAUCの変化率~ CR(CYP3A4):基質薬のCYP3A4に対する寄与率 R(induction)=AUC(+誘導剤)/AUC(コントロール)        =1/{1+CR(CYP3A4)・IC(CYP3A4)} 〔Ohno A,et al:Clin Pharmacokinet,47(10):669-680,2008〕 CR(CYP3A4):基質薬のCYP3A4に対する寄与率 IC (CYP3A4):誘導薬のCYP3A4の誘導率

誘導薬のCYP3A4の誘導率 リファンピシンは最も強い誘導薬であり、基質薬のAUCを1/10以下にすることもある。 CR(CYP3A4)が0.13とCYP3A4に対する選択性が極めて低い基質と併用した場合でもAUCが半分程度に減少。

~リファンピシンと基質におけるAUCの変化率~ PISCS ~リファンピシンと基質におけるAUCの変化率~ 基質の寄与率CR(CYP3A4):0.13 リファンピシンの誘導率IC (CYP3A4):7.7 R(induction)=AUC(+誘導剤)/AUC(コントロール)         =1/{1+CR(CYP3A4)・IC(CYP3A4)}         =1/(1+0.13・7.7)         =0.5

フェニトインとアトルバスタチンの併用例 ・PISCSの予測法に基づけば、フェニトイン(IC:4.7)の併用により、  アトルバスタチン(CR:0.68)の血中濃度は約30%に低下する。 ・実際、フェニトインを服用していた患者に高用量の  アトルバスタチンを投与しても効果不十分。  フェニトインの投与を中止したところ脂質異常症の改善が  見られたという症例報告あり。 〔Khandwala :South Med J,99(12):1385-1387,2006〕

Strategist Messenger 医薬品という不完全な商品に対しても予測して注意喚起が可能! 臨床でのマネジメントは一つのScienceだけに基づくのではなく、多面的な視点で判断することが大事! Messenger Strategist 情報の活用 情報の伝達