地盤の動的有効応力解析 群馬大学建設工学科 蔡 飛 2004 年3月25日 FORUM8 UC-1 SEMINAR.

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地盤の動的有効応力解析 群馬大学建設工学科 蔡 飛 2004 年3月25日 FORUM8 UC-1 SEMINAR

内容 動的有効応力解析の方法 解析の手順 解析例

液状化三角形

液状化のメカニズム: ダイレイタンシー せん断ひずみを原因として体積が変化する現象 厳密には、非弾性せん断ひずみを原因として非 弾性体積ひずみが生じる現象

液状化のメカニズム: ダイレイタンシー 排水単純せん断試験(龍岡) Dr=94.4 % 74.2% 55.1% 33.6%

液状化のメカニズム: ダイレイタンシー

圧密非排水三軸試験 ( Castro ) せん断ひずみ (%) 偏差応力(k Pa ) Dr=29 % Dr=44 % Dr=47 % Dr=64 %

緩い砂の繰り返し非排水時の挙 動 繰返し載荷により、 有効応力は次第に 減少 → ついにゼロにな る → 砂の液状化! 豊浦標準砂 ( Dr=52%)

密な砂の繰り返し非排水時の挙 動 繰返し載荷により、 有効応力は次第に 減少 → が、ゼロになら ず → サイクリック・ モビリティー Nevada 砂( Dr=60%)

応力~ひずみ関係 ダイレイタンシー(体積変化・過剰間隙 水圧) ヒステリシス ・・・ 砂の繰り返し非排水時の挙動特 性

構成則 構成則の タイプ 応力~ ひずみ ヒステリ シス 体積変 化・ 間隙水圧 構成則の パラメー タ 非弾塑性骨格曲線 Masing 則経験式少 弾塑性 降伏関数 塑性ポテ ンシャル 載荷・除 荷 硬化則 弾塑性構 成則の結 果 多

動的解析 方法プログラム 等価線形解析 SHAKE 、 FLUSH 全応力解析 SADAP 、 UWLC 有効応力解析 (非完全連 成) TARA 、 FLIP 有効応力解析 (完全連成) DYNAFLOW 、 DIANA 、 LIQCA 、 UWLC

u-p 形式の液状化解析 方法一つの節点 での未知量 u-U-p 形式 5(2D), 7(3D) u-w-p 形式 5(2D), 7(3D) u-U 形式 4(2D), 6(3D) u-w 形式 4(2D), 6(3D) u-p 形式 3(2D), 4(3D) u :土骨格の変位 U :水の変位、w =n(U- u) p :間隙水圧 p 消去 (K f ≠∞) w=0(U=u) u-U-p 形式 u-w-p 形式 u-U 形式 u-w 形式 u-p 形式

u-p 形式の支配方程式 力の釣り合い式 (固相+液相) 力の釣り合い式 (液相)・連続 式 有効応力の原理 土骨格の構成式 ひずみの適合条 件

u-p 形式の有限要素法による離散 化 全体系 : 間隙水 : 未知量の種類: 変位加速度、変位速度、変位 間隙水圧速度、間隙水圧 M = 質量マトリクス K = 剛性マトリクス Q = 関連マトリクス H = 浸透マトリクス S = 圧縮マトリクス u = 変位 p = 間隙水圧 f u = 全体系における外力ベクトル f p = 間隙水における外力ベクトル

u-p 形式の時間積分: Newmark 法 数値積分を無条件安定するため:

u-p 形式の時間積分: Newmark 法 残差を消去するために繰り返し計算が必 要!

内部減衰:連続体内部で消費されるエネルギー ■ 粘性減衰 = 弾性振動中にも発生. 速度依存型. ■ 履歴減衰 = 塑性化に起因する. 基本的に速度非依存. 実現象に合うよう,これらを組み合わせる. 内部減衰のモデル化

非線形の応力ひずみ履歴から得られる効果. γ τ γ τ γ τ γ τ γ ~ Δ W =エネルギー損失 W =弾性エネルギー 履歴減衰のモデル化

非弾塑性タイプ構成則: Masing 則 弾塑性タイプ構成則:その能力が問われ る. → 繰返し載荷による硬化・軟化・複雑なダ イレイタンシー特性が考慮されているか. 履歴減衰のモデル化

粘性減衰のモデル化 全体系の運動方程式に粘性抵抗力を導入する u M 変位 u M C : 粘性抵抗の追加

Rayleigh 減衰を用いることが多 い. 粘性減衰のモデル化 せん断弾性係数・減衰定数とせん断ひずみの関 係 ( HD モデル、 γ r =0.001 ) 履歴減衰

ポートアイランド鉛直アレー観測 地点 粘性減衰 なし 粘性減衰 h=2% 粘性減衰の影響

液状化解析のフロー 1. 初期応力等初期条件を設定 2. 時間増分ステップ: n=n+1 3. 初期合成法により残差の反復計算: k=k+1 4. 残差を計算。 5. 連立方程式を解き、加速度及び水圧の微増分を求め。 6. ステップ n+1 の加速度及び水圧の増分を計算。 7.Newmark 法によりステップ n+1 の速度, 変位, 水圧を計算。 8. ひずみ, ひずみ増分を計算。 9. 構成式より応力増分を計算。 10. 残差計算の収束判定( NO : GOTO STEP 3 ) 11. 解析終了の判定( NO:GOTO STEP 2 ) 12. 解析終了し、結果を出力

動的非線形解析法 動的時間積分法: 自動的時間増分を決める。

動的非線形解析法 次のステップに残差を持ち越す 該当ステップで繰返し計算により残差を 解消 動的非線形解析中には、ステップ毎に残差 が生じ、この残差を処理するには一般に二 つの方法がある。

動的非線形解析法 次のステップに残差 を持ち越す方法: 次のステップに前ス テップの残差を加えた 荷重の方向と実際の荷 重の方向と逆になる可 能性があるから、十分 小さな時間増分を用い なければならない。 u

動的非線形解析法 接線剛性法: ( Newton-Raphson 法) この方法には、材料の特 性が大きく変わると(例 えば、除荷のとき)計算 発散の可能性が極めて高 い。 u

動的非線形解析法 初期剛性法: 載荷、除荷ともに計算 収束ができる。ただし、 収束の速度が遅い。 ライン・サーチと BFGS 法を用い、収束計算を 加速させる。 u f

これまでのまとめ 液状化のメカニズム:ダイレイタン シー u-p 形式より液状化解析方法 内部減衰が必要 時間増分を自動的に決める 残差計算のために初期剛性法が必要

液状化:噴砂

液状化による破壊

地震による破壊

液状化による破壊

解析手順 問題のモデル化 数値解析の実行 解析結果の検討

ステップ 1 .問題のモデル化 与えられた問題の明確化、モデル化 解析手法の検討(使用ソフトの選 定) 構成式の選定、物性値の設定 入力地震波の選定 解析ケースの設定 We cannot expect any more information in the prediction of physical phenomena than the information contained in the mathematical model. By KLAUS-JÜRGEN BATHE, Finite Element Procedures.

ステップ 2 . 数値解析の実行 メッシュ分割 収束条件の選定 データの入力 解析の実行 解析精度の検討

ステップ 3 . 解析結果の検討 計算ケースの検討 解析結果に基づく考察

解析の手順 実際問題 問題のモデル 化 数値解析の実行 メッシュサイ ズ 収束誤 差、・・・ 解析精度を検討 解析結果の検討 設計の改善・最適 化 より詳細な 解析を実行 メッシュの細分 化 収束誤差の縮小 実際問題の変更 モデルの改善

解析例 液状化によるパイプの浮き上がり 液状化によるタンクの沈下 液状化対策工の定量的な効果判定と 最適な工法選定の検討

液状化によるパイプの浮き上が り 大型振動台実験 パイプ直径: 0.4m 見かけ密度: 0.4g/cm 3. 問題のモデル化  解析範囲  境界条件  解析手法  パイプ  構成式  入力波

液状化によるパイプの浮き上が り 三軸試験結果より PZ 砂モデルパラメータの同 定 黒線:実験 青線:計算

液状化によるパイプの浮き上が り メッシュ分割、浮き上がり 計算 実験

液状化によるパイプの浮き上が り 過剰間隙水圧(黒線:実験、青線:計 算)

液状化によるパイプの浮き上が り 加速度(黒線:実験、青線:計算)

液状化によるタンクの沈下 動的遠心実験

液状化によるパイプの浮き上が り 三軸試験結果より PZ 砂モデルパラメータの同 定 σ 3 =147kPa 98kPa 49kPa

液状化によるパイプの浮き上が り 加速度(黒線:実験、青線:計算)

液状化によるパイプの浮き上が り 過剰間隙水圧(黒線:実験、青線:計算)

液状化によるパイプの浮き上が り 沈下量(黒線:実験、青線:計算)

液状化対策工の定量的な効果判 定と最適な工法選定の検討  地震後の許容沈下量や許容不等沈下量等を設 定する。  数値解析により地震後の構造物の沈下量等を 計算し、対策工の効果を定量的に評価比較す る。  液状化による沈下量や不同沈下量をそれぞれ 許容沈下量や許容不同沈下量以下に抑えるこ とができる液状化対策工を選ぶ。  コストの比較を含めて最適な液状化対策工法 を選定する。

液状化対策工の定量的な効果判 定と最適な工法選定の検討 許容沈下量 許容不等沈下量 } を設 定 数値解析により 対策工の効果を評価 対策工の選定 コスト比較により 最適な対策工を選定

液状化対策工の定量的な効果判 定と最適な工法選定の検討 1.地震後の許容沈下 量を 13cm であると仮 定する。 2.液状化対策工(矢 板、鋼管杭、改良土) を選び、地震後の沈下 量を数値解析により計 算する。 液状化地盤 振動 改良 支持地盤 タンク 無改良

液状化対策工の定量的な効果判 定と最適な工法選定の検討 対策工根入れ深さ (m) 沈下量(c m) 無対策- 23.8 矢板 矢板 矢板 矢板 透水性矢板 鋼管杭 鋼管杭 鋼管杭 鋼管杭 鋼管杭: 直径 0.5m 間隔 2D

タンク タンク中心からの距離 (m) cm 深さ(m) 液状化対策工の定量的な効果判 定と最適な工法選定の検討 沈下量: 13cm 8.2×2.25m 改良範囲と加振後のタンク沈下量との関係 (改良土 c=9.81kPa 、 φ=39° )

3. 解析結果より、地震後の沈下量を許容沈下 量以下に抑えることができる対策工を選定 4. コストの比較を含めて最適な液状化対策工 法を選定する。 液状化対策工の定量的な効果判 定と最適な工法選定の検討 ① 鋼管杭(直径: 0.5 m、間隔: 2D 、深 さ: 7.5 m) ② 改良土(改良深さ: 2.25 m、幅: 8.2 m)

液状化のメカニズム:ダイレイタンシー u-p 形式より液状化解析方法 解析手順 解析例:解析の有効性と有用性を示した。 まとめ 1.問題のモデル 化 2.数値解析の実 行 3.解析結果の検 討