バランス理論と固有値分解 小杉考司(関西学院大学) 藤澤隆史(関西大学)
ソシオン理論の 三者関係における仮定 四種類の転移と三種類の推移 バランス理論をもとにした「推移性」の考え方
バランス理論とは バランス理論は「バランス状態」と「インバ ランス状態」を定義し、人はバランス状態を 好む、とする。 なぜ,インバランス状態は,インバランスである のか?
バランス理論に潜む論理 性 ならば A は B のことが好きである。(一段 目) A BC B は C のことが嫌いである。(二段 目) A は C のことが嫌いである。(三段 目) 二つの関係から第三の関係が導かれるルール を、特に推移性( transitivity )という。
バランス理論は論理的ではな い 一段目と二段目から、三段目を導く(演繹す る)ことは、論理的には飛躍している。 しかしながら、実際の認知的操作では「味方の 味方は味方」や、「敵の敵は味方」と導き出す ことがよくあるので、これを特に心の論理、す なわち「心理-論理( Psycho-Logic )」と呼ぶ。 Abelson & Rosenberg(1958) や、 Phillips(1967) による心 理論理の体系化へ
「心理 - 論理」体系 加法 「 positive 」+「 positive 」=「 positive 」 「 negative 」+「 positive 」=「 ambivalent 」 「 positive/negative 」+「 null 」= 「 positive/negative 」 乗法 「 positive 」 × 「 positive 」=「 positive 」 「 negative 」 × 「 negative 」=「 positive 」 「 positive 」 × 「 negative 」 = 「 negative 」 これらは代数演算に対応する。 → 行列の代数演算の論理的基 盤
トライアッド・パターンと固有値・固有 ベクトル 階数が 1 階数が 3 説明に要する次元数が 1 つ説明に要する次元数が 3 つ バランス状態はより単純な組み合わせである。
バランスが取れているということ は・・・ N 個の対象があれば,対象間関係の情報は N× ( N-1) 個も存在するが, N 個からなる一組の 評価群だけの情報量であれば,頭の中で保持 しておくべきデータが少なくてすむ. 認知的に経済的だから(覚えておくことが少 なくてすむから),人はバランス的に解釈し たがるし、バランス関係が良いものだと考え られる,というのが心理-論理の背景にある 原則である(認知的経済性の原則).
①認知 情報圧縮パラダイムに基づい た社会関係の捉え方 ①社会関係の認知・把握 ⇒実験①:記憶実験 Personal Net Collective Net ②関係情報圧縮のための認 知的操作 ③操作結果の反映のため の行為 ④現象としての現実 の人間関係の推移 ⇒実験②:ソシオマト リックスの分析 ③行為
実験①:社会関係の認知記憶実 験 固有値構造のタイプ別に,記憶課題を3タイプに分類し た. 甲: [3, 0, 0] 乙: [1+√3, 1, 1-√3] 丙: [2, 2, -1] その結果,パターン甲は他のパターンよりも,有意に短 い記憶時間で記憶されていることが分かった.
実験②:ソシオメトリックデータへ の応用 時系列的ソシオメトリックデータをエル ミート形式モデルで分析。第一固有値の寄 与率の推移を示す。
6つの中からランダムに1つの荷重を選択し、 推移性が成り立つように、荷重の値を更新す る。 実験③:荷重の推移に基づく三者関 係のバランス・パターンのシミュ レーション 6つの荷重 ( W ) 更新ルールの図解
参考文献など 小杉考司・藤澤隆史・藤原武弘 2004 バランス理論と固有値分解, 理論と方 法,19(1), 連絡先 「小杉考司」か「 Kosugitti 」で検索して下さ い