教育訓練と能力開発 2014 年 12 月 16 日 人事労務管理論 B (第 11 回) LT1011 教室 LT1012 教室
先週の復習 労働時間関連法の規制緩和の経過 年 月 内 容 1985 年 6 月労働者派遣法の成立 1987 年 9 月労基法改正(変形労働時間制拡大、フレックスタイム制、専門 業務型裁量労働制) 1993 年 6 月労基法改正( 1 年単位の変形労働時間制、週 40 時間労働制) 1996 年 6 月労働者派遣法改正(対象業務 16 から 26 業務に拡大) 1997 年 6 月労基法改正(女子保護規定の撤廃、専門裁量制の対象業務拡 大) 1998 年 9 月労基法改正(企画業務型裁量制、 1 年単位の変形労働時間制要件 緩和、有期雇用期間の上限を 3 年へ) 1999 年 6 月労働者派遣法改正(原則自由化ネガティブリスト方式へ) 2003 年 6 月労基法改正(企画業務型裁量制の要件緩和) 派遣法改正(製造業派遣解禁、 3 年ルールへ) 2006 年 12 月労働政策審議会、ホワイトカラー・エグゼンプション制度導入 を答申 2
労働時間制度の規制緩和 効率性の追求 仕事にあわせて働く → 時間ではなく、仕 事で管理! 労働時間規制制度の緩和 時間規制のない層の拡大 → 労基法 41 条の利 用 名 ばかり管理職・店長 仕事にあわせた働かせ方 → フレックスタイ ム制 変 形労働時間制 み なし労働時間制 3
労働時間の柔軟化(規制緩和) フレックスタイム制 コアタイム、総労働時間内の勤務時の自由化 変形労働時間制 合法的残業手当不払い策 1週単位: 1ヶ月単位:変形労働時間制の最も平均的な形 1年単位 みなし労働時間 実際の労働時間にかかわりなく決められた時間働いたと みなす制度 ・事業場外労働:事業場外で労働している場合で労働 時間 が算定しがたい ・裁量労働 : 4
裁量労働制 裁量労働制 みなし労働時間制の一種 種類 専門業務型:業務の性質から労働者の裁量に委 ね る必要があると思われる19 業種 企画業務型 : 事業場の事業の運営に関する業務 企画、立案、調査及び分析の 業務 研究者、デザイナー、プログラマー、新聞記者、ディ レクター、弁護士、大学教員、中小企業診断士、公認 会計士 適用に当たっては本人の書面などの同意が必要! 5
さらなる規制緩和 アベノミクスの第 3 の矢 ( 成長戦 略 ) 「日本再興戦略」 (2014 ) 時間ではなく成果で評価することができるよう な新たな労働時間制度の創設! その条件として 「例えば少なくとも年収 1000 万円以上」という けど その新たな労働時間制とは 労働時間の長さと賃金のリンクを切り離す =ホワイトカラー・エグゼンプショ ン制度! 6 労働政策審議会で結論を出し、次期国会で成立をめざすとしていたが・・・
ホワイトカラー・エグゼンプショ ン制度とは何か 2005 年 6 月、経団連「 WCE 制度に関する提 言」 ・みなし労働時間制度は時間規制を外してない ・ WC の仕事は時間管理になじまない 労働時間規制の撤廃 エグゼンプション exemption とは 残業手当を払う義務を免除するという意味 仕事を完遂することだけを義務づけ ・ 時間管理から外す ・ つまり残業手当は支給しない 7
WCE批判(1) 導入の根拠がない:意図は長時間労働隠し、も しくは労働者への責任転嫁 仕事の質と量を不問のままでは、長時間労働誘 発システム 現行でもエグゼンプション制度がある(労基法 41 条 2 号の管理監督者) → 適用労働者の割合 12 %! 全国の管理職の57%が「自分は名ばかり管理職」と 回答 アメリカと日本の法体系、労働市場、労働慣行 の相違を無視している: 日本は 1 日の労働時間の適用除外 アメリカは割増賃金支給義務の適 用除外 8
WCE批判(2) 賃金管理と時間管理の意図的な結合 「賃金がどう決まるか」という問題と「一日何 時間働くか」とを同一レベルで論じてはならな い 賃金水準と労働時間は労働条件の重要課題 労働CSRという視点 CSRとは、企業の行動について、社会がそれ を評価し、責任を果たすように監視すること 国連のグローバルコン パクト OECD多国籍企業行 動指針 人間らしい働かせ方させる責任:労働CSR 9
人と仕事の結びつき 人 仕事 10
職業教育と教育訓練 (アメリカの場 合) 仕事ができる人を採用 学校での職業教育が重視される: 義務教育最後の高校での職業教育 大学生の場合も同様 → 職業能力向上は自己責任で 大学進学、大学院進学 企業内教育は重視されなかった → → 11
一つの事例:ある高校の場合 (1) 歴然な収入格差 学歴社会 社会を意識した 学校教育 12
設置科目:ある高校の場合 (2) 8分野 経営とコンピュータ関連、生命科学関連、英語、 技術、外国語、数学、社会、科学 学習は教室の中だけではない 実用性を重んじるためか実習や体験学習が多い Work Experience, Professional Internship Community Services, Marketing & Management (School Store) 学力別のクラス Advanced Placement 13
大学は? 各大学の独自の入学試験はない GPA の点数と ACT/SAT という試験結果で決まる 地元の大学には行かない 学年制というよりは学期制 (semester) 一定の成績を取っていないと退学 学期のはじめに勧告 単位取得だけでなく GPA の点数も卒業要件 入学は資格 ( 学士 bachelor) 取得のため 日本は入学することが目的(?) 14
職業教育と教育訓練 (日本の場合) 採用したあと仕事ができるように訓練す る 新入社員教育、企業内教育の重視 長期間にわたる教育: → 企業特殊的能力 その企業でしか通用しない能力: 学校教育の意味 普通高校の偏重、職業高校の軽視 教育と職業が結びついてない: 15
職務遂行能力と賃金の関係 賃金カーブ 働き(成果)カーブ + - + 40歳 ?歳 16
人事制度と能力開発 職能資格制度 賃金、昇格・昇進だけでなく、能力開発へのモ チベーションも組み込まれた管理システム → Career Development Program : CDP ・ 従業員の処遇(配置、異動、昇進、退職)を 長期的・計画的に管理していく制度 ・育成面接、自己申告制、自己評価 17
教育訓練・能力開発の新傾向 個性重視と自己責任:選択型研修、自己 啓発 一律型(企業丸抱え型)から多面的・個性重視 型 (自己責任型)へ → エンプロイヤビリティ: 職業能力育成と開発は社会的課題 未整備なままの状況下では企業の雇用責任の放 棄 コンピテンシー:即戦力重視 → 18
Employability エンプロイヤビリ ティ A CB A BC 企業による支援・仕事を 通して身につけた能力 自助努力で 身につけた能力 企業による支援・仕事を 通して身につけた能力 自助努力で 身につけた能力 19
課題 職業能力開発の社会的システム ・学校教育の課題 ・地域の課題 企業の課題 ・雇用責任 ・人材育成は人事労務管理の課題 ・安易な成果主義の放棄 20