熱流体力学 第4章 番外編 熱力学的系 状態方程式 熱力学で扱う偏微分公式 熱力学の第一法則(工学系と物理系)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
Division of Process Control & Process Systems Engineering Department of Chemical Engineering, Kyoto University
Advertisements

1 線形代数学. 2 履修にあたって 電子情報システム学科 必修 2005 年度1セメスタ開講 担当 草苅良至 (電子情報システム学科) 教官室: G I 511 内線: 2095 質問等は上記のいずれかに行なうこと。 注意計算用のノートを準備すること。
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
陰関数定理と比較静学 モデルの連立方程式体系で表されるとき パラメータが変化したとき 如何に変数が変化するか 至るところに出てくる.
1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
FUT 原 道寛 名列___ 氏名_______
4・6 相境界の位置 ◎ 2相が平衡: 化学ポテンシャルが等しい     ⇒ 2相が共存できる圧力と温度を精密に規定     ・相 α と β が平衡
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
1.ボイルの法則・シャルルの法則 2.ボイル・シャルルの法則 3.気体の状態方程式・実在気体
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
医薬品素材学 I 1 物理量と単位 2 気体の性質 1-1 物理量と単位 1-2 SI 誘導単位の成り立ち 1-3 エネルギーの単位
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
Fortran と有限差分法の 入門の入門の…
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
全加算回路 A, Bはそれぞれ0または1をとるとする。 下位桁からの繰り上がりをC1とする。(0または1)
医薬品素材学 I 3 熱力学 3-1 エネルギー 3-2 熱化学 3-3 エントロピー 3-4 ギブズエネルギー 平成28年5月13日.
熱力学Ⅰ 第1回「熱力学とは」 機械工学科 佐藤智明.
一次関数と方程式 本時の流れ ねらい「二元一次方程式をグラフに表すことができる。」 ↓ 課題の提示 yについて解き、グラフをかく
2009年4月23日 熱流体力学 第3回 担当教員: 北川輝彦.
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2013年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
スペクトル法による数値計算の原理 -一次元線形・非線形移流問題の場合-
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
論理式の表現を数学的に取り扱いやすくするために代数学の助けを借りる.
2009年5月28日 熱流体力学 第7回 担当教員: 北川輝彦.
医薬品素材学 I 4 物質の状態 4-1 溶液の蒸気圧 4-2 溶液の束一的性質 平成28年5月20日.
5章 物質の三態(気体・液体・固体)と気体の法則 2回
第二回 連立1次方程式の解法 内容 目標 連立1次方程式の掃出し法 初期基底を求める 連立1次方程式を掃出し法を用いてExcelで解析する
一成分、二相共存系での平衡 一成分 固液共存系    氷-水.
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
重力レンズ効果を想定した回転する ブラックホールの周りの粒子の軌道
電気回路Ⅱ 演習 特別編(数学) 三角関数 オイラーの公式 微分積分 微分方程式 付録 三角関数関連の公式
10. 積分 積分・・確率モデルと動学モデルで使われる この章は計算方法の紹介 積分の定義から
誤差の二乗和の一次導関数 偏微分.
動力学(Dynamics) 運動方程式のまとめ 2008.6.17
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
本時のねらい 「相似の意味と性質を理解し、相似な図形の辺の長さや角度を求めることができる。」
課題 1 P. 188.
計算力学技術者2級 (熱流体力学分野の解析技術者) 認定試験対策講習会 - 3章・1 熱力学・伝熱学の基礎 -
2009年5月21日 熱流体力学 第6回 担当教員: 北川輝彦.
スペクトル法の一部の基礎の初歩への はじめの一歩
黒体輻射 1. 黒体輻射 2. StefanのT4法則、 Wienの変位測 3. Rayleigh-Jeansの式
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
課題 熱力学関数 U, H, S, A, G の名称と定義を書け dS, dGの意味を書け ⊿U, ⊿H, ⊿G の意味を書け.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
本時の目標 平行移動の意味と性質を、図をかくことにより理解する。
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
2009年4月23日 熱流体力学 第3回 担当教員: 北川輝彦.
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
2009年7月9日 熱流体力学 第13回 担当教員: 北川輝彦.
計測での注意事項 計測では、重さか厚さのどちらか1つを選択すること。 計測では誤差が生じますが、なるべく誤差が少なくなるように工夫すること。
課題 1 P. 188.
進化ゲームと微分方程式 第15章 n種の群集の安定性
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
2009年7月2日 熱流体力学 第12回 担当教員: 北川輝彦.
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
◎ 本章  化学ポテンシャルの概念の拡張           ⇒ 化学反応の平衡組成の説明に応用   ・平衡組成       ギブズエネルギーを反応進行度に対してプロットしたときの極小に対応      この極小の位置の確定         ⇒ 平衡定数と標準反応ギブズエネルギーとの関係   ・熱力学的な式による記述.
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
熱量 Q:熱量 [ cal ] or [J] m:質量 [g] or [kg] c:比熱 [cal/(g・K)] or [J/(kg・K)]
相関分析 2次元データと散布図 共分散 相関係数.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
2009年5月14日 熱流体力学 第5回 担当教員: 北川輝彦.
3 一次関数 1章 一次関数とグラフ §4 方程式とグラフ         (3時間).
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
固体→液体 液体→固体 ヒント P131  クラペイロンの式 左辺の微分式を有限値で近似すると?
Presentation transcript:

熱流体力学 第4章 番外編 熱力学的系 状態方程式 熱力学で扱う偏微分公式 熱力学の第一法則(工学系と物理系)

1 .熱力学で考える,想定する系 ・孤立系 (isolated system) :系の境界(外界)を通じて,エネルギおよび物質の交換はし ない系 ・閉鎖系 (closed system) :系の境界(外界)を通じて,エネルギの交換はするが,物質 の交換はしない系 ・開放系 (open system) :系の境界(外界)を通じて,エネルギおよび物質の両方を交 換する系 Q :上の 3 つの系について,物質,エネルギを考えたイメージ図を書け。 2.熱力学的な系の状態 ○ 系の状態は次の状態量(状態変数)( state variable )で与えられる。 ・体積 V ,圧力 p ,温度 T ,化学成分のモル数 n または質量 G ○ 示量変数と示強変数 ・示量変数( extensive variable ):系の質量 G ,体積 V ,モル数 n ,エネルギ U ,エントロ ピ S などのように系の大きさに依存する量。二つの系があれば,系を合体させたとき 足し算が可能な変数。 ・示強変数 (intensive variable) :温度 T ,圧力pのように系の大きさには依存せず局所の 性質を指定する量,二つの系を合体させたとき足し算ができない変数。 ・示強変数は示量変数の偏微分で表わすことができる。 例:温度 ← 添え字はこれを一定として微分することを意味する。 Q :上の 2 つの変数(示量変数,示強変数)を理解するために,2つの箱 ( 系 ) を考え,(体 積,質量,エネルギ,温度,圧力)について,系のイメージ図を書き,理解せよ。

○ 状態方程式 通常,物質の状態は体積 V ,圧力p,温度 T の関係を表わす次の方程式で与 えられる。 ・例えば,ボイル・シャールの法則:p V-nRT=0← 状態方程式という。 ☆次の量は状態量の関数,つまり状態関数( state function )であり,状態量 はないので注意すること。 ・例:内部エネルギ: ← 関数であることをしばしば熱 力学ではこのように表わす。 または, → 他の示量変数でも 表わされる。 ・例:エントロピ: ← 関数であることをしばしば熱 力学ではこのように表わす。 または, → 他の示量変数でも 表わされる。 3.熱平衡および非平衡系 ☆熱平衡:外界から孤立した系では,十分長い時間が経過すれば,状態量 (圧力,温度,体積)が時間的に一定の状態になることを経験法則として 知っている。この状態を「熱平衡」という。 ☆非平衡:最終的に熱平衡状態にたどり着くわけだから,そこへの非可逆過 程の経過状態を意味する。

4.熱力学でよく使う偏微分と公式 4.1 多変数関数の微分 エネルギ U のように多変数 T,V,n の関数では,関数 U のある変数に関 する偏微分は,その他の関数をすべて一定に保つことによって定義 される。例えば, に対して, の偏微分は熱力学では以下のように表記し, 結果は次のようになる。 ; ; ・・・・( 4.1 ) 4.2 多変数関数の全微分 エネルギのような多変数関数の全微分は, ・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 4.2 ) 注)ただし,一定に保つ変数(添え字)が自明なときは省略することがある。 Q :立体的な 3 次元直交座標系を描き,式 (4.2) 意味を図解して説明し理解せよ。

多変数関数の 2 次変微分について,例えば, , があり, 特に次に示すような交差偏微分 では, 次の 公式が成 立する。 (偏微分順序の入れ換 え)・・・( 4.3 ) 4.3 演習問題 (1)圧力pが 3 次元直交座標(x,y,z)の関数であ るとき,すなわち, p=p(x,y,z) であるときの等圧力面方 程式を書け。 (2) a,b,c を定数として,関数 に ついて以下の偏微分を求めよ。 ア) ,イ) ,ウ) ,エ) オ) ・・ア)をyで微分, カ) ・・イ)をxで微分 この結果,このようにzがx,yの滑らかな関数であれば,オ), カ)が一致し,公式( 4.3 )が成立していることを確認せよ。この 性質を完全微分といい熱力学では大切な性質である。

熱力学の第一法則 符号のとり方について