『マクロ金融特論』 ( 2 ) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論
2 伸縮価格マネタリー・アプローチ
3 伸縮価格マネタリー・アプローチと購買力 平価 伸縮価格マネタリー・アプローチは、購買力 平価の発展形。 購買力平価は、自国と外国の物価水準の相対 比として為替相場が決まる。 それでは、物価水準はどのように決まるの か? ↓ この問いに答えるのが、伸縮価格マネタ リー・アプローチである。
マクロ金融特論 伸縮価格マネタリー・モデルの 特徴 購買力平価が常に成立する。 物価が伸縮的である。 物価の決定は、貨幣の需給による。 為替相場決定は、貨幣の需給による。
マクロ金融特論 購買力平価とマネタリー・アプ ローチ 絶対的購買力平価 貨幣市場均衡式
マクロ金融特論 伸縮価格マネタリー・モデルにおける為替 相場決定式 為替相場は、相対的貨幣供給量と相対 的貨幣需要量によって決定される。 (1) ・ (2) ・ (3) 式より、
マクロ金融特論 貨幣の需要供給が為替相場を決める 自国貨幣供給量の増加⇒自国物価上昇⇒ 自国通貨減価 外国貨幣供給量の増加⇒外国物価上昇⇒ 自国通貨増価 自国貨幣需要量の増加⇒自国物価低下⇒ 自国通貨増価 外国貨幣需要量の増加⇒外国物価低下⇒ 自国通貨減価
マクロ金融特論 対数表示化したモデル (仮定)貨幣需要関数: 但し、 :貨幣需要の所得弾力性、 :貨幣需要の 利子半弾力性( semi-elasticity) (1) ・ (2) ・ (3) 式の対数表示
マクロ金融特論 対数表示化したモデルにおける為替相場決 定式 為替相場決定式(対数表示) ①自国貨幣供給成長率⇒同率の自国通貨減価 ②外国貨幣供給成長率⇒同率の自国通貨増価 ③自国所得成長率⇒ 倍の自国通貨増価 ④外国所得成長率⇒ 倍の自国通貨減価 ⑤自国利子率変化量⇒ 倍の自国通貨減価 ⑥外国利子率変化量⇒ 倍の自国通貨増価
マクロ金融特論
マクロ金融特論 硬直価格マネタリー・アプローチ
マクロ金融特論 硬直価格マネタリー・モデルの特 徴 財市場の調整に時間が要する。短期的 には価格が硬直的。 購買力平価が長期的には成立するが、 短期的には成立しない。
マクロ金融特論 硬直価格マネタリー・モデル 長期的購買力平価 貨幣需給均衡式 金利平価式 予想為替相場 財市場の動学
マクロ金融特論 長期的購買力平価 購買力平価が長期的には成立するが、 短期的には成立しない。 但し、バーの付いた変数:長期均衡水準
マクロ金融特論 貨幣需給均衡式 貨幣需給均衡式
マクロ金融特論 金利平価式+予想為替相場変化率 金利平価式 予想為替相場変化率(回帰的予想)
マクロ金融特論 回帰的予想
マクロ金融特論 財市場 物価変化率 総需要=消費+投資+政府支出+純輸出 消費 ← 所得 投資 ← 利子率 純輸出 ← 自国財に対する外国財の相 対 価格(= )
マクロ金融特論 伸縮価格の下での為替相場、物価、金利 の動向
マクロ金融特論 硬直価格の下での為替相場、物価、金利 の動向
オーバーシューティングの発生メカニ ズム 長期(伸縮価格) 短期(硬直価格) マクロ金融特論
マクロ金融特論 硬直価格の下での為替相場決定 自国貨幣供給が増加すると、価格が硬直的であ るために、即時的には実質貨幣供給量が増加す る。貨幣市場の超過供給により、利子率が低下 する。このため資本流出によって即時的に為替 相場は、自国通貨減価のオーバーシューティン グを引き起こす。 時間の経過とともに物価が上昇するにつれて、 実質貨幣供給量が減少し、そのために利子率が 上昇し続けることによって、自国通貨増価に向 けて為替相場が徐々に変化する。 物価が完全に反応する長期において、自国貨幣 供給成長率と等しいだけの自国通貨の減価とな る。
マクロ金融特論 ポートフォリオ・アプローチ
マクロ金融特論 ポートフォリオ・アプローチの 特徴 内外資産が不完全代替( ← 為替リス ク) 分散投資(ポートフォリオ)によって リスクを軽減可能。 経常収支黒字累積 → 外国資産流入 → 国 際ポートフォリオ → 為替相場
マクロ金融特論 内外資産のポートフォリオ・バラ ンス(供給面) ポートフォリオ・バランス供給
マクロ金融特論 内外資産のポートフォリオ・バ ランス(需要面) ポートフォリオ・バランス需要 ← ①予想内外収益率格差 ②為替リスク
マクロ金融特論 内外資産のポートフォリオ・バ ランス(需要面) ポートフォリオ・バランス需要式の特 定化
マクロ金融特論 ポートフォリオ・バランス需給 均衡式 需給均衡式
マクロ金融特論 ポートフォリオ・アプローチに おける金利決定式 (1) 金利決定式 (参照)カバーなし金利平価式
マクロ金融特論 ポートフォリオ・アプローチに おける金利決定式 (2) 国内資産に対するリスク・プレミアム 外国資産に対するリスク・プレミアム
マクロ金融特論 内外資産のリスク・プレミアム 為替リスク 内外資産供給残高 ↑ ポートフォリオ・バランス需要とポー トフォリオ・バランス供給の相違
マクロ金融特論 ポートフォリオ・アプローチに おける為替相場決定式 為替相場決定式 (参照)カバーなし金利平価
マクロ金融特論 ポートフォリオ・アプローチに おける為替相場決定要因 内外金利差 将来の予想為替相場 為替リスク 内外資産供給残高 ↑ ポートフォリオ・バランス需要とポー トフォリオ・バランス供給の相違
マクロ金融特論 長期的な財政赤字の効果 1980 年代の米国の財政赤字の結果、 80 年代前半にドル高、 80 年代後半にドル 安。 財政赤字の短期的効果⇒金利上昇⇒ドル 高 長期的な財政赤字の効果⇒ドル建て債 の累積⇒ドル資産のリスク・プレミア ム上昇⇒ドル安